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2013年8月 1日 (木)

あなたはよいかかりつけ医を見つけられますか?

本日の本題に入る前に、先日近畿地方の病院協会で作る近畿病院団体連合会の委員会でこんな話しが出たという記事を紹介してみましょう。

今年度初の委員会で「分担主治医制」も協議-近病連(2013年7月30日CBニュース)

 近畿地方の10の病院団体でつくる「近畿病院団体連合会」(近病連)の今年度初の委員会が30日、神戸市内で開かれた。同委は、病院の理事長や院長を務める各団体の幹部で構成され、毎年度2回、医療をめぐる諸問題を話し合う。今回は約70人が出席し、勤務医の労働環境などについて意見を交わした。

 この日は、委員長に兵庫県民間病院協会の吉田耕造会長を据える役員人事を決定後、開催県となった兵庫の病院団体の提案で、医療の国際化と「分担主治医制」(複数主治医制)をテーマに協議した。

 兵庫県病院協会は、勤務医の労働環境を改善するため、休日や夜間を含め、1人の医師が診療の全責任を持つ「主治医制」を見直し、診療能力が同等の医師による分担主治医制や、夜間・休日診療を担当する「当直医チーム」の導入を検討することを提案したが、各団体の賛否は分かれた

 団体間の意見交換では、既に導入の動きがあるとする意見もあり、委員会での検討を推す声もあったが、主治医制以外の医療体制に関する注文が多かった。

 京都私立病院協会は、「自由開業医制をどう考えるかも併せて考える必要がある」と問題提起したほか、大阪府病院協会は「日本は急性期病院のドクターの数が少ない。そこを変えなければ、いくら言っても同じだ」と指摘。また、大阪府私立病院協会から「民間病院は、複数主治医制を導入する余裕はない」との意見が出るなど、病院の規模や設置主体によって温度差も見られた。

 一方、兵庫県民間病院協会が提案した医療の国際化では、医療機関や検査センターの国外での開設や、国産の医療機器や医薬品の輸出などについて協議した。各団体からは、医療の国際化の方向性に反対する意見はなかったものの、医療の営利化に対する懸念の声が上がるなど、慎重論も多かった。

 次回の会合は来年3月に開かれる予定で、今回のテーマを引き続き協議するかどうかは、今後、議題を提案した団体の中で検討するとしている。【敦賀陽平】

僻地よりも都市部の方が医師は集まりやすいと言い、また東日本よりも西日本の方が医師数が充足している傾向があると言いますから、近畿地方の病院団体としてはさほど緊急の危機感はないのかと言えばさにあらず、近畿においても医師不足に起因する当直医不足など様々な問題が発生していることは奈良県立病院産科医訴訟などにおいても明らかになっている通りです。
今をさること5年ほど前には阪南市立病院の内科医がごっそり退職して一気に診療科閉鎖に追い込まれたという事件が話題になりましたが、最終的に過重労働に見合った約1.8倍とも言う大幅報酬増で手を打ったように、激務を強いるならそれに見合った待遇くらいは用意しろという考え方も労働者としては当然にあるわけですよね。
一方でいくら金をつまれてももうこれ以上は無理と言う先生方も多く、先日の日経メディカルの調査でも過半数の医師は収入面では満足している一方で転職先探しを続けている医師も多く、その際の条件として「忙しすぎないこと」を挙げる者がダントツで多かったということには大きな意味がありそうに思います。
いずれにしても幾ら金を積まれても無理なものは無理ですから、今後は実際の勤務状況を改善する方向での要求も強まってくるかと思いますが、働かせる側である病院団体がようやくこうした話をするようになってきたのは良い傾向とは言えますが、逆に「馬鹿医者にオレの患者を触らせるな」と主治医制断固支持という先生もいますから、この話は実現に向けてはなかなか難しい部分もあるかも知れませんね。

医師側の労働環境改善という観点からは特に入院では看護師など他職種で行われているチームとしての業務分担が望ましいのは確かなのでしょうが、一方で患者側としてはやはり誰か責任ある(そして出来れば地位もある)先生に自分の専属として診てもらいたいという率直な要望も根強いようです。
日医など医師団体にしても厚労相にしても長年「病気になったらすぐ大病院にかかるのはやめましょう。普段から自分のかかりつけを持ちまずそちらに相談しましょう」などとキャンペーンを張ってきたわけですから、医療要求度の少ない段階では一人の医師が継続的に診る、そして入院でチームで診ることになっても何かしら主治医もそこに加わる事が出来るようになれば患者にとっては理想的なのかも知れません。
アメリカなどではドクターフィーがある関係でかクリニックのかかりつけ医が近所の病院のベッドを間借りしてそのまま入院担当医になるということも多いようですが、日本でも一時そうした制度の導入が言われながら結局定着していないあたり、クリニックのかかりつけ医にしても薄利多売を強いられ患者数の多い状況から「そこまで暇じゃない」と言うことになってしまうのでしょうか。
いずれにしてもかかりつけ医がきちんと病気を拾い上げなければその後はないわけですから、患者にとってはまずはかかりつけ医が信用出来るかどうかが最も重要であることは言うまでもありませんが、その点に関して少し前にこんな興味深い記事が出ていたことを紹介しておきましょう。

「信用できる医者、できない医者」評価ポイント10(2013年5月15日プレジデントオンライン)より抜粋

「大病院のほうが安心できる」――そんな思い込みにとらわれている人は少なくありません。でも、そうした人たちの中には、待合室に延々と待たされたあげく、ろくな問診もされずに「薬を出しておきます」で終わり、といった体験をした人も少なくないはずです。

これがもし、自宅や職場の近所にかかりつけ医がいれば、ふだんの健康状態や過去の病歴なども把握してくれているので、安心して診てもらえ、適切な診療を受けられるでしょう。必要があれば、より高度な医療機器や入院設備を備えた総合病院の専門医や専門病院を紹介してくれます。さらに、その後に通院治療が可能になれば、またかかりつけ医に診てもらう「病診連携」も機能します。

もちろん、近所であれば通院時間も待ち時間も比較的短くすみ、日常の健康管理の相談にものってもらえます。“信頼できる”かかりつけ医を近所で見つけたいところ。ここでは、「ちょっと体の具合が悪いな」と感じたあなたが、近所のドクターを訪ねたと仮定して、その信頼度をチェックしてみましょう。
(略)
こんな先生、病院なら安心!
3項目以下だと「かかりつけ医」としては不安あり

(1)物理的距離・心の距離が近い
家や職場から近い。話しやすく、説明がわかりやすい

(2)内科を主体に標榜している
なんでも相談できる」診療科目がある。

(3)待合室には常に数人の患者が待つ
「完全予約制」では辛いときすぐに対応してもらえない。

(4)毎日、院長が診察に出ている
継続的に、患者の健康状態を把握できる。

(5)問診票にも目を通している
文字や文章をも観察し、問題を探求する姿勢が見える。

(6)診療費の話ができる
患者の不安要素に経済問題も含まれると認識している。

(7)スタッフが親切、短期間で代わらない
院長の方針がスタッフにも共有され、一体感が見える。

(8)往診もしてくれる
臨機応変な対応に尽力している。

(9)医師会に入っている
公益性と専門医とのネットワーク構築への意思表示。

(10)近隣の評判がよい
地元密着型だけに口コミサイトより近隣の評判が大事。

元記事の方はかなりの長文ですので直接リンク先を当たっていただくとして、たぶん多くの臨床医の方々はこれを見て「えっ!?」と感じてしまうのではないでしょうか?
あくまでも患者が言うのではなく編集部の主張でもあり、また顧客満足度という指標に基づいて考えるとこうなると言うことだとすると理解できないものではないかとも思うのですが、注目していただきたいのは医師の場合他人に命を預けるとなればまずもって腕が確かかどうかを第一に考えがちですが、全くと言っていいほどそうした評価基準が含まれていないという点に注目していただきたいと思いますね。
逆に多くの医師は当たり前の常識的判断が出来ればそれでいいと思っていそうな接遇面等もかなり重視しているということが見て取れますし、院長が診察に出ているだとか医師会に入っているだとかややピント外れにも見える項目にもチェックが入れられているというのはおもしろいなと思います(一応それぞれの根拠も書かれてはいるのでご参照ください)。
考えて見ると飲食店なども「食べ物を売るんだからまず味がいいかどうかだろう?」と単純に考えがちですが、実際にはあまりほめられた味とも思えないファミレスやファーストフード店ばかりがどんどん街中に増殖していっているのを見ても、サービスを提供する側の認識と受け入れる側の認識が大いに異なっているということはありそうですよね。
そうした視点からおもしろいなと思ったのがこちら、店側から見たいいお客、悪いお客の評価基準という記事なんですが、一見予想外なようでいてよく見ていますと当該業種に限らず「あるある」な話も多いように思いますし、医療現場から見た「良い患者」という評価にも結びつく話ですよね。

― プロが回答した[好かれる客/嫌われる客]白書【1】 ―(2013年7月12日日刊SPA!)から抜粋

何げなくやっていることが実は嫌われる原因になっていた……なんてのは、職場でも男女間でもよくあること。それはお店とお客の関係でも同様だ。クレーマーや明らかな迷惑行為は別にして、店側から見た[好かれる客/嫌われる客]の“ありがち言動”を、各業種のプロに聞いてみた!
(略)
【キャバクラ】
◯ヘルプで入ったコにも丁寧に接してくれる客
×よく来るくせに指名しないでずっとフリーで入る客
(略)
 結局、好かれるのはこんな客。

「私に別の指名が入っても、『頑張ってこいよ』と優しい言葉をかけてくれる人は好き。嫉妬して不機嫌になる人、多いんで。私が席を離れてるとき、ヘルプで付いたコにも同じように丁寧に接してくれる人も好き。指名のキャスト以外は冷たくあしらう人って結構いるので、あとでヘルプ入ったコから『あの人、感じよかったよ』って聞くと、うれしくなりますね」
(略)
【立ち呑み】
◯混んできたらサッと帰る客
×同じ料理を何度も頼む客
(略)
「ウチのように狭い店だと、大人数で来られると困っちゃいます。無意識に声が大きくなるし、時間も気にしなくなる。空くのを待っているお客さんもいますから。逆に店が混んできたと思ったら、サッと帰るお客さんは最高ですね」(北千住「徳多和良」)。酔っても、ほかの客への気遣いは大切だ。
(略)
【美容院】
◯アシスタントとも気さくに話す客
×「お任せ」「何でもいい」と言う客
(略)
大きな声で他店の悪口を言ってくるお客さんは、リアクションに困るんで嫌われがちですね。自分が試されてるみたいでプレッシャーもかかりますし」

 しかし、実はそれ以上に嫌われるのが、結構ありがちな「お任せ」「何でもいい」というオーダー

「本当に全部任せてくれるならいいですが、そういう人に限って途中であれこれ注文つけてきたり、最後に『ここ切り直して』とか不満げに言うんですよ」とは、「任せる」と言いつつあとで文句つける上司みたい。そりゃ嫌われるわー。
(略)

先ほどの「よいかかりつけ医」評価ではずっとそこにいるだろう院長が自ら見てくれるのがいいと書かれていて、確かにそれはそれで一面の真理ではあるのでしょうけれども、やはりヘルプで入っている非常勤医に当たっても普通に平等に接してくれれば診る方も気持ちよく対応が出来るのは当然ですよね。
また話しやすい先生を求めるのも判りますがこれもケースバイケースで、時折外来が混雑している時に「そう言えばこの前こんなことがあって…」などと長々と話し込んでいる患者がいて相手をする担当医の方も困っていると言う場面がありますけれども、やはり自分だけが気持ちよければそれでよいということではなく他のお客に対する配慮も必要かと思います。
有名な「後医は名医」という言葉もあるように前医批判はよろしくないということはしばしば言われますが、患者側にしろ他院の批判ばかりしている患者は当然他院に行った時には自院の批判もしているだろうと思われるでしょうし、ましてインフォームドコンセントがやかましいこの時代に「お任せします」が一番困るというのはどこの先生も感じていることでしょう。
こうして見てみると結局お客さんは基本的にわがままで困ったちゃんである、なんて要約をしてしまいそうになりますが、サービスを受ける側、提供する側双方にちゃんと理由があってこれがいい、あれは悪いと言っているんだと言うことをきちんと理解しておけば、譲れるところは譲って相手に好印象を与えるということも意図して出来るようになるでしょうね。
とりわけ世間の大抵の商売以上に医療現場はマンパワーの要素が大きいところで、やる気のない名医よりもやる気満々な凡医の方が多くの場合顧客満足度ははるかに高くなりがちですから、結局一番確実な「よいかかりつけ医を持つ方法」とは患者側も相手の立場に立って考えて行動してみる、そして一方的に好意を寄せるだけでなく相手からも好意を寄せられるような相互的信頼関係を結ぶことではないかという気がします。

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コメント

注文の多い患者はこっちから願い下げにゃ!

投稿: たま | 2013年8月 1日 (木) 08時35分

自分の場合スタッフの質とモチベーションはけっこう重視しますね。
きちんと教育されてて元気に働いてる場合医師もしっかりしてることが多い気がします。
でも常に数人待ち患者がいるのに往診までさせようって無理があるんじゃ…

投稿: ぽん太 | 2013年8月 1日 (木) 09時24分

往診ということに期待感を持つ患者は意外と多いように思いますが、昔ながらの往診スタイルではさして出来ることもありません。
一方で最近ではポータブルエコーなど便利な道具も増えてきていて、アリバイだけでなくきちんとした往診をやろうという先生も出てきているようですね。
ただそれで病気が見つかってもきちんと紹介先を確保出来ているかどうかが重要なので、地域の他施設との関係性が良好かどうかも一つの評価基準になるかと思います。
もっともそうしたことはなかなか素人には判りにくい部分でもあるので、個人的には患者離れがいいか悪いかといったことも目安になるのかなとも思うのですが。

投稿: 管理人nobu | 2013年8月 1日 (木) 11時09分

今こそ医者が患者を選ぶ時代だろw

投稿: aaa | 2013年8月 1日 (木) 12時07分

往診ってそんなにいいですか?
家に来てもらっても何が出来るってもんじゃなし、それよりいつでもすぐみてくれるほうがありがたいような。

投稿: たもちん | 2013年8月 2日 (金) 12時35分

9)医師会に入っている→患者側から見て何も関係ないのでは?単に医者の寄り合いにすぎない。

投稿: 逃散前科者 | 2013年8月 2日 (金) 17時30分

医師会に入っている=確実に医賠責加入者なのは唯一患者のメリットと思われ

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年8月 2日 (金) 19時49分

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