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2013年7月24日 (水)

モンスター放置は共犯に等しい?

先日非常にアグリーな記事が出ていたのですが、まずはこちらの状況をどう考えるでしょうか?

トラブル解決を妨げる医師の「2つの誤解」(2013年7月22日日経メディカル)より抜粋

【ケーススタディー】
迷惑行為を繰り返すアルコール依存症の患者

「アルコール依存症の患者がいて、手に負えないんです。いつも酒のにおいをプンプンさせながらやって来ては、1人で騒いで、ほかの患者さんを怖がらせています。事務長や担当医に相談したところ『もう少し辛抱できないか』と言われたのですが、このまま放っておいても状況は悪くなる一方ですし…。どうしたらいいか、教えていただけないでしょうか」

 こう電話してきたのは、大阪市内のA病院の医療相談室に勤務するBさんだった。私は「たぶん、あのパターンやな」と目星を付けつつ、Bさんに「詳しく話を聞かせてもらえませんか」とお願いした。以下は、Bさんから聞いた話だ。

 患者Xは大阪市内に住む50代男性。腕を骨折し、Y病院で手術して入院したのだが、術後の治りが悪く、患部が少し化膿してしまった。Xはアルコール依存症であり、入院していると酒を自由に飲めないこともあり、まだ入院治療が必要にもかかわらず、「すぐに家に帰りたい」と言って勝手に「自己退院」してしまった。そして、Xの家から最寄りの医療機関であるA病院に通うようになった。

 患者Xは酒を飲んで来院するだけでなく、大声を出したり暴れたり、とやりたい放題。事務員や看護師が注意しても、全く聞かないどころか、さらにエスカレートして怒鳴り散らす。最近では夜、泥酔状態でA病院に電話をかけてきて、意味不明なことを叫ぶようになったという。Xは2~3日に1回のペースで外来に来院しているが、飲酒を続けているせいもあるのか、治療効果は上がっていない。通院後3週間がたち、Xの迷惑行為によって看護師や職員の間に不安が広がっており、「この病院をもう辞めたい」と漏らすスタッフも出始めているそうだ。

 医療相談室に勤務するBさんはA病院のいわば「患者トラブル対応係」であり、Xの迷惑行為を看護師や事務員から聞き及び、Xの主治医に事情を尋ねてみた。すると、主治医からはこんな答えが返ってきた。

「患者はアルコール依存症なんだから、仕方ないよ。それに病院はどんな患者であっても拒否はできない。あと数週間で傷は治るだろうから、もう少し辛抱できないか

 Bさんは納得できず、Xのことを1人で少し調べた。Xは現在独り暮らしで生活保護を受けている。家族は近県に住んでいて、数年前まではそこで母親、妹と同居していた。Xにはそれなりの金額の借金があるようだが、連帯保証人となっていた妹が返済を肩代わりしているもようだ。さらに、アルコール依存症の治療のため、過去に精神科病院に入退院を繰り返していたことも分かった。Xの迷惑行為を何とかやめさせたいと思ったBさんは、悩んだ揚げ句、私のところに電話をかけてきた。これがトラブルの概要だ。

場合により施設により多少経緯は異なれどよくあるケースと言っていいと思いますが、この話を聞き「まあ仕方ないね。さっさと出て行ってくれるのを待つしか…」と考えるか、「今時これほど危機感の乏しい担当医もいるんだな」と感じるかが一つの分かれ目になるのでしょうか。
問題行動を起こす患者の中には明らかに知的理解力が劣っているがために指示に従えないだとか、今回のような単純粗暴犯タイプも含まれてはいますけれども、昨今社会問題化しているクレーマー、モンスターとも言われるタイプはどちらかと言うと知的活動能力には不自由しない方々の方が多いようです。
あれやこれやと対策を講じてもそれをかいくぐってくるからこそ余計に厄介だということなのですが、彼らも別に何の意味もなく問題行動に走っている訳ではなく、それによって何らかの利益が得られる、メリットがあると考えるからこそそうした行動を常態化させているわけで、それが得られない施設からはさっさと出て行く結果いわゆるドクターショッピングが常態化している場合が多い訳ですよね。
となると何が彼らを呼び寄せているのかということを考えなければいわゆる問題患者の巣窟となってしまい、施設の雰囲気はますます悪くなってスタッフも患者も逃げ出すと言うことになりかねませんけれども、今回のケースではスタッフの一人が「仕方ない」と放置プレーを続ける主治医を飛び越え積極的な行動を取ったことで問題が解決したということです。

【尾内流解決術】
職員を守れずして患者の健康は守れない

 Bさんの話を聞いて私は、患者Xの行為も許し難いが、A病院の経営体質にも根深い問題があると確信した。Bさんの話を聞き始めてすぐに「あのパターンやな」と思ったのは、病院関係者によくありがちな「誤解」をこの病院の医師もしていると感じたからだ。その誤解とは、2つある。

 1つ目は「医療機関は病気を治すところである。患者の迷惑行為は病気がさせているのであるから、医師も職員も我慢しなければならない」。2つ目は「医療機関には応召義務があり、診療拒否はできない」である。

 どんな事情があろうと、患者の迷惑行為や暴力は許されるものではない。職員やほかの患者が恐怖を感じる行為を放置しているようでは、後々、患者は減り、医師や看護師の定着率も下がっていくだろう。それよりも私が言いたいのは、「職員を守れない医療機関に患者を守れるはずがない」ということだ。患者の身勝手な言動に対して、医療機関が職員に我慢を強いるなど、とんでもない暴挙だ。やるべきことは正反対である。矢面に立っている職員を徹底的に守り、迷惑行為をやめない患者を跳ね返すことだ。

 そこでBさんには次のようなアドバイスをした。迷惑行為を繰り返す患者を放置すれば今後、同じようなケースがどんどん増えていき、その結果、職員の退職、医療サービスの低下、病院の経営悪化という悪循環のサイクルに入る。すでに迷惑行為が始まって3週間たち、この悪循環の予兆が出ているので、一刻も早く院長や事務長など病院幹部に改善措置を強く訴えるようにと。

 2つ目の応召義務に関しても、すでにこの連載では何度も触れているが、多くの医療関係者が過剰に反応しすぎていると思う。患者の容体が重篤であれば話は別だが、今回のように極めて“元気”なら、保健所など関係機関への事前の相談、ほかの医療機関への紹介などを行えば、迷惑行為に対して診療拒否は可能だと私は考えている。そこで、保健所や保健センターに行って事情を話し、相談に乗ってもらってはどうかとBさんに伝えた。そうしておくと、診療拒否された患者やその家族などから後でクレームの電話があっても、保健所などが対応して大きな問題に発展しないことが多い。

 Bさんは、私のアドバイス通り、直ちに行動してくれた。まず、私が述べた内容をBさんなりの言葉ですぐに病院幹部に伝えたところ、おおむね納得してくれたという。

 並行して、Bさんは保健所に出向き、相談に乗ってもらったそうだ。図らずも保健所の担当者は事情をよく理解し、近くの設備の整った精神科病院にすぐ入院できるよう動いてくれた。非常にラッキーだったが、悩んでいるだけでは、こうしたキーマンに出会うこともなかっただろう。Bさんが熱意を持って正しい方向で行動したから、解決の糸口をたぐり寄せることができたのだと私は思う。

 その精神科病院はアルコール依存症の治療にも注力しており、少し紆余曲折はあったものの、結局Xはその病院に入院することになった。その知らせを聞いたBさんは、ひとまず胸をなでおろしたという。

当該施設としてはこれでよかった、安心したというところですが、そもそもの根本原因は患者の問題行動を把握していながらそれを放置し許容した形となった担当医や事務長らにあったと見るべきで、この事件を教訓に行動を改めないことにはいつまた同様のトラブルが発生するか判りませんよね。
筆者は患者には「普通に診療を受けに来る患者」と「身勝手な言動で職員やほかの患者に迷惑を及ぼす患者」とがいて、この二種類の患者に対しては「接し方を根本的に変えなければならない」と述べていますけれども、今どき「お客様は神様です」の誤用などは論外としても、全ての顧客は平等であるなどと勘違いして無事でいられるほど昨今の病院を取り巻く環境は甘いものではありません。
顧客が等しく平等「ではない」ことは「1%の顧客が10%のリソースを消費し0.1%の利益にしかならない」等々様々な警句によっても知られている通りですが、「医療に儲けなど考えてはいけない!」などと無茶なことを言う人はさすがに絶滅危惧種としても、医療と言う業界においてリソースは有限であり常に需要に対して供給過少気味であるということは現場スタッフも認識しておくべきですよね。
消費されるべきではないところで無駄にリソースが浪費された結果、本当に必要なところでリソース不足に陥るとどうなるかを考えて見れば、クレーマーを甘やかしつけあがらせている当事者一人一人が誰かの健康を害していると言っても過言ではないと思います。

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コメント

>「患者はアルコール依存症なんだから、仕方ないよ。それに病院はどんな患者であっても拒否はできない。あと数週間で傷は治るだろうから、もう少し辛抱できないか」

こういうこと言う奴が自分だけさっさと逃げ出したりするんだよね

投稿: こま | 2013年7月24日 (水) 08時43分

本物のアル中患者は深入りしてもほんといいことないです。
なるべく早く手を引くことを考えたほうがいいですね。
下手に主治医あつかいされると大変ですよ。

投稿: ぽん太 | 2013年7月24日 (水) 09時19分

犯罪者は警察に通報するんだからDQNモンペにも通報先をつくるべき

投稿: wanda | 2013年7月24日 (水) 10時50分

生保患者であれば市の担当者が引き受けることがあるようですが、一般の患者の場合はやはり保険者に通報すべきなのでしょうか。
ただ大多数の保険者がそうした面倒を引き受けるかどうかが問題で、何かしら公的な道を用意しておくのが筋なのかも知れません。
今回の場合きちんと専任担当者がいて実働してくれましたが、個々の現場スタッフ頼りではなかなかきちんとした対応は難しいでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月24日 (水) 12時15分

×自己退院
○脱走

投稿: aaa | 2013年7月24日 (水) 16時23分

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