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2013年7月30日 (火)

医療機器供給元の多様化を推進すべきでは

医師同様に看護師も不足が言われていますけれども、先日久しぶりに喜ばしいというニュースが出ていました。

就業中の看護師、100万人を突破-厚労省・准看は1万人減の約36万人(2013年7月25日CBニュース)

 厚生労働省がこのほど公表した衛生行政報告例によると、昨年末現在、就業していた看護師は101万5744人で、同省が2年に一度の集計を始めた1982年以降、初めて100万人の大台を超えた。前回の2010年分と比べ6万3021人増えた。一方、就業中の准看護師は、前回比1万371人減の35万7777人だった。

 就業看護師は、この集計を始めてから毎回増加。昨年末現在の人数を年代別に見ると、35-39歳が16万2961人(16.0%)で最も多く、以下は30-34歳が15万282人(14.8%)、40-44歳が14万4616人(14.2%)、25-29歳が14万1931人(14.0%)などと続いた。前回と比べると、35歳以上の各年代で増加した一方、30-34歳(4784人減)と25-29歳(3626人減)、25歳未満(3565人減)では減った

 これに対し、准看護師の就業人数は、02年の39万3413人をピークに減少が続いている。年代別では、60歳以上の5万8830人(16.4%)が最多。以下は、50-54歳が5万8115人(16.2%)、45-49歳が5万2835人(14.8%)、55-59歳が4万7213人(13.2%)などと続き、45歳以上が6割を占めた。前回からは多くの年代で減少したが、50-54歳と60歳以上では、それぞれ2000人と1万1354人増加した。
(略)

医師数もこのところ増える一方であるのは周知の通りで、いずれこの調子でいけば人員不足も解消されるという皮算用もしたくなりますけれども、よくよく注意してみますと35歳以上の中堅・ベテランでは増えている一方でそれ以下の若手世代ではむしろ減っているという、あまり好ましからざる傾向も見え隠れしているようです。
看護師の場合実は看護師資格所持者はそれなりにいるにも関わらず離職中で看護師として働いていない者が多いということが言われていますが、若年世代にとって看護業界が決して働きやすい職場とは認識されていないのだとすれば、将来的な看護師の人材安定供給にも困難が予想されますよね。
子供が手を離れたベテランが折からの看護師不足とその結果としての待遇改善を耳にして職場復帰をしてきているのかも知れませんが、今現在全国どこの病院でも電子カルテシステムだ、個人用端末導入だと院内業務のIT化がようやく進んでいて、ぶっちゃけこうしたものに生まれついて以来慣れ親しんだ方々でないと頭数の割に一向に業務が進まないという悩みもあるようです。
本来であれば業務を効率化し仕事を助けてくれるはずの電子デバイスがその真逆の有害な働きをしているのであれば何の意味があるのかですが、この点で先日非常に興味深いニュースが出ていましたので紹介しておきましょう。

看護師の残業を6割減らした医薬品識別装置-おんが病院、電子機器メーカーと共同開発(2013年7月25日CBニュース)

 おんが病院(福岡県遠賀町)とオオクマ電子(熊本市)は、手術で使われた医薬品の種類を判別し、保険請求の書類を作成するまでの作業をすべて自動で行う装置の開発に成功した。手術後の医薬品の種類判別や書類の作成は、看護師にとって大きな負担となっているが、同病院は、この装置の導入によって看護師の残業時間を6割削減できた上、手術室の回転率も3割向上することに成功したとしている。

 手術後、使用された医薬品の種類や量は看護師が手作業で記録しているが、「生体肝移植なら1件の手術で1600個余りの薬を使う。それ以外の外科手術でも数十から数百種類の医薬品が必要」(杉町圭蔵・おんが病院統括院長)とされる。それだけに、手術後の看護師の業務負担は大きく、誤った記録が作成されることも少なくないという。

 こうした状況を解消するため、おんが病院ではオオクマ電子と共同で、医薬品を自動識別する装置「スペーサー」を開発した。この装置に医薬品の入った容器の形などの情報を事前登録しておけば、使用後の医薬品の容器を機械に投入するだけで、保険請求が可能な医薬品をまとめた一覧表を自動作成できる。さらに、手術中に関係者が使ったメスやピンセットなどの識別・記録も可能という。

■手術室の回転率も3割向上

 同病院では昨年3月から試作機を導入しているが、導入前と比較すると、看護師の月平均残業時間は140時間から56時間まで減少した。また、記録ミスも確認されていないという。さらに、在庫管理も容易となり、作業時間が短縮化されたため、手術室の回転率は3割向上した。

 装置は高さ約1.8メートル、幅と奥行きは1メートル。価格は約2800万円。既に栃木県の病院が導入しているほか、約20か所の病院が導入を検討している。さらに、米国やデンマークなどからも試験導入の依頼が来ているという。【ただ正芳】

何これすごいちょっとこれ貸してと言いたくなるような大変劇的な成果なのですが、この種の機械的な作業こそ本来IT化によってどんどん改善していっていただきたいところで、実際にこれだけの劇的な効果があると知れば我も我もと導入する病院も出てくるのではないでしょうか。
おもしろいのはこの開発を担当したオオクマ電子という会社、別に医療機器専門というわけでもなくむしろ何でもかんでも手当たり次第に手を出しているようにも見えることで、「問題点を解決するために必要な製品を作り出すのが設計の仕事。効率性と機能性を考え、ローコストでハイパフォーマン スの“only for one”のもの作り、第一歩を担います。」と言う通り手持ちの技術をいかに実社会に還元するかを考えている会社なのでしょうか。
医療機器と言えば有名な内視鏡のケースを見るまでもなく少数による寡占状態となっていることが多く、利点としては医師らがどこの病院に行っても機器の操作で戸惑うことがない、サポート体制も一元化出来るといったことが挙げられますけれども、考えて見れば判る通りコスト的には価格競争が生じるような環境ではありませんから割高になって当然ですよね。
別に多少高くつく程度であればサポート費用込みで許せるのでしょうが、多くの場合「ちょっと常識的に考えてその値付けはあんまりでは…?」と思えるようなケースが多いことが気になっている先生も多いはずで、ちょうど先日こんな記事が出ていました。

2012年某日、病院内で半導体技術者は驚いた(2013年7月29日Tech-On)

医療従事者:「この使い捨ての血圧計(「Aライン」と呼ばれる観血式血圧計)、患者にセットしようとする際に壊れることが時々あって、困ってるんです」
半導体技術者:「そうなんですか…」
医療従事者:「中に圧力センサが入っている程度の比較的単純な機器なんですけど、約5000円もするんですよ」
半導体技術者:「え、本当ですか?」
医療従事者:「自動車のように振動や温度の使用条件も厳しいわけではないですし、むしろ、自動車向けに利用されているような技術を使えば、もっと信頼性高く、かつ安くできるのではないかと思っているのですが…」
半導体技術者:「はい、そう思います。我々が試作しましょう」
医療従事者:「ぜひ、お願いします」─―。

 このやり取りは、2012年某日、関東地方のとある病院の手術室内で実際にあったやり取りの様子を、同病院の医療従事者への取材を基に再現したものです。2013年2月18日号の日経エレクトロニクスの特集記事「革命 医療機器開発」でも紹介しました。

 医療従事者が、ある医工連携セミナーで知り合った半導体メーカーの技術者を手術室に案内した際、かねて感じていた観血式血圧計の課題について話したそうです。すると、その事実(課題)に半導体技術者が驚いた、というシーンです。

 この「驚いた」という点には、二つの重要なポイントが含まれていると筆者は考えています。

 一つは、半導体技術者は、医療現場やそこで使われている機器の実情を知らない、という点です。知らないからこそ、事実を聞いて驚いたわけです。

 もう一つは、他の分野では当たり前に導入されている技術が、医療の現場(医療機器など)では使われていない、という点です。つまり、半導体技術が驚いたのは、自社が他の分野(自動車など)に向けて提供している技術を使えば、そのようなコスト・信頼性はあり得ないと思ったからでもあるのです。

 これは、この半導体技術者が不勉強なわけでもなく、観血式血圧計が特殊な機器の事例というわけでもありません。半導体をはじめ電子部品・部材関連の企業は、これまで医療の現場を知るすべがほとんどなかったのが実態でした。そして、医療機器が自動車や民生機器に比べて技術の導入に遅れがあるのも、すべてのケースでとは言い切れませんが総論としては間違いではないでしょう。

 逆に言えば、冒頭のやり取りのように、電子部品・部材関連の企業と医療従事者の連携(マッチング)がもっと進むようになれば、医療に新たな価値が生まれる可能性があります。前述の医療従事者は次のように言います。「例えば自動車向けに厳しい要求事項に対応しながら部品・部材を供給しているメーカーに、医療現場やそこで医療機器がどう使われているのかを見せたとする。その中に、自社のノウハウを活用できる余地がたくさんあることに気付くはずだ。我々も部品・部材メーカーと協力していけば、確実にイノベーションを起こせる」。
(略)

医療器具と言えば何かものすごく専門性が高いようなイメージがあって、実際に内視鏡などは純機能的な面よりも操作性などもっぱら医師の主観による部分に改良の主眼が置かれてきたと言えますが、大多数の機材はそうしたこだわりもなく使われているわけですから、機能的に同じものであれば別にどこのメーカーでも構わない、アフターサポートさえしっかりしてもらえればいいという考え方も十分あり得るでしょう。
もちろん他業種参入によって医療現場の調達コストが下がるという点が切実に期待されるというのは、多くの医療主義が消耗品扱いの機材コストに診療報酬の大半を持って行かれて「汗をかいて働けども全く儲けにつながらない」という状況への不満も背景にあります(この辺りは全国一律定価での商売を強いられている医療の不利なところですよね)。
そしてそれ以上に期待されるのが少数の医療機器メーカーとは異なった他業界の視点による技術的のみならず発想的な飛躍で、言ってみれば「一方ロシア人は鉛筆を使った」といった類の全く別の視点からのアイデアをも期待したいわけですよね(もっともあのジョークの真相については異論も出されていますけれども)。
医療主導による経済成長戦略などと言われていますけれども、全国各地の腕に覚えのある企業の持つ技術や知識と、医療現場で今まで我慢されてきたちょっとした不便が結びつくと、案外大きな商売が出来上がってくるかも知れませんし、少々のスタッフを増やすよりもよほど医療労働環境の向上に結びつく可能性があると思いますね。

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コメント

高度な機械でなくても高すぎる消耗品もたくさんありますよね。
ディスポなのについつい再生したくなっちゃいますけど。

投稿: ぽん太 | 2013年7月30日 (火) 08時31分

検査料と機材コストがぴったり一致
こんな判りやすいボッタのケースは少ないよ

投稿: | 2013年7月30日 (火) 09時17分

内視鏡用の透明キャップなんて割高感を感じさせる最たるものかと。
こんな簡単なものがいくらすると思います?
http://www.olympus.co.jp/jp/common/images/medical_gastroenterology_ent_16.jpg

投稿: 某内科医 | 2013年7月30日 (火) 12時31分

値段のことはさておいても、やはり技術的にちょっと古いんじゃないかな…と思うようなものが未だに売られているということが気になります。
医療面でノウハウのある医療機器メーカーが主体的に関連業界と協力して改善を進められるならいいのでしょうが、それが出来ないのであれば医療現場から直接働きかけるしかないのでしょうね。
そうした新規参入業者の質的担保を行うためにも、さっさと日本版NIHなりと用意しろという話も出るのでしょうが。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月30日 (火) 12時59分

>>こんな簡単なものがいくらすると思います?
食道EMRC用のやつだったら5個で2万くらいでしたっけ
以前にうちでやったときは業者にサンプルもらって使ったけどw

投稿: 今野 | 2013年7月30日 (火) 13時22分

最近ですが、某社の医療機器が回収となりました。たった1個の部品が薬事承認を経ていないで使われていたことが判明したためです。
なにもメーカーがボッタクリしていることだけが医療機器高騰の原因ではなく、ボッタクリ価格を正当化できる薬事承認規制が存在します。
実際に薬事承認のためにどのくらい価格が他の民生品よりも割高になるのかユーザーにはわかりませんが、医療機器価格を下げるためには、
ペイしない医療機器はどんなに患者のためになろうとも使わないという、医療機関側の決心が一番重要です。

投稿: hhh | 2013年7月30日 (火) 16時00分

誰もこの技術者さんに、医療機器の薬事承認について説明してあげなかったんですね。

http://www.micjp.co.jp/j/modules/tinyd3/index.php?id=32

最新の技術なんか使ったら「これまでの実績を出せ」とか言われるし(ないから最新の技術なんですけど)
部品替えるだけでも大ごとになるようですが。

医薬品の管理は数年前からバーコードを使ったシステムがあったんですが、オオクマ電子のやつは
これに精密計量秤と画像処理を組み合わせたんでしょうね。医療機器以外ではすでにあるような技術
っぽいです。ついでにRF-IDでも使って、実際のモノに数量保存して随時更新するくらいしてくれ
てればいいんですが。

投稿: おる | 2013年7月31日 (水) 09時43分

まずはそういうところの規制緩和が先ということでしょうか。
でも患者の立場からしたら機械が安くなっても支払いは変わらないんですよね?
それだったら高いブランドものの方がいいかなって思っちゃいそうですけど。

投稿: てんてん | 2013年7月31日 (水) 11時11分

ナマポがゾロ嫌いなのと同じことだなw

投稿: aaa | 2013年7月31日 (水) 12時49分

材料費算定できる処置なら安い道具使っただけ安くなりますよ

投稿: | 2013年7月31日 (水) 16時12分

こういう規制はTPPで真っ先に潰されるね。

投稿: initialP | 2013年8月 1日 (木) 15時24分

歩行支えるロボットスーツ、欧州で医療機器の認証取得
http://www.asahi.com/tech_science/update/0805/TKY201308050298.html

投稿: | 2013年8月 6日 (火) 08時29分

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