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2013年7月 5日 (金)

医療の勝ちパターンは一つに限られたものではない

多くの臨床家が「あ~あるある」と言ってしまいそうな記事が先日出ていましたので紹介しておきましょう。

「在宅復帰できる患者だけ送って」って言われても(2013年7月4日日経メディカル)

 医療財政の逼迫やマンパワー不足の問題もあり、機能分化の推進が大命題となっている病院経営。急性期、亜急性期、回復期、長期療養といった「棲み分け」を進めながら患者に効率的な医療を提供するための、病院相互の円滑な連携が重要な課題となっています。
 経営的な視点からも、連携は重要なキーワードです。急性期病院では急性期治療が終了した患者を適切に転院させられないと、患者の受け入れや平均在院日数、入院単価の面でマイナスの影響が出ます。亜急性期や回復期を担う病院においても、これは同様です。また、近年、連携関連の診療報酬は拡充される方向にあります。
 とはいえ、スムーズな連携を実現するにはさまざまな困難が伴います。『日経ヘルスケア』6月号では、急性期、亜急性期、回復期、長期療養を担う4病院で連携業務を担当するメディカルソーシャルワーカー(MSW)に集まっていただき、円滑な連携を実現する上での課題と、連携体制を充実させるためのポイントを語り合ってもらったのですが、様々な苦労話が披露されました。

「胃ろうを造設してから送ってください」

 参加していただいたMSWの方から、問題点として指摘されたのは以下のようなことです。

「退院理由をきちんと説明せずに、流れ作業的に転院を進めてしまったため、受け入れ先からクレームが届くことがある。退院宣告は医師がきちんとすべき」
「医療必要度が低い患者さんの受け入れ先がなかなか見つからない」
「転院先で提供される医療に関して十分な説明をしてくれていないので、受け入れた患者さんが気落ちして治療が難しくなる例がある」
「受け入れ先からは、『在宅に帰れる患者さんだけ送って』とリクエストされることが多い」
「『あの病院に移れば治してもらえるから』などと言って無責任に送り出してくる
「『末梢点滴だけで最期を迎えたい』と望む患者の受け入れを打診すると、『死にに来るための患者は受け入れられない。中心静脈栄養か胃ろうを造設してから送ってください』と返事が来る」
「連携関連の診療報酬の算定漏れが多い」

「報告制度」がやって来る

 日本の医療提供体制は、今、再編に向けた過渡期の真っただ中にあります。
 厚生労働省の検討会では現在、「病床機能情報の報告制度」の議論が進んでいます。これは、各病院・有床診療所が持っている病床の機能の現状と今後の方向性を「病棟」単位で都道府県に自己申告するものです。
 医療機関からの申告を受けた都道府県は、それぞれ地域の医療需要の将来推計と照らし合わせながら、医療機能の分化と連携を推進するための「地域医療のビジョン」を策定します。また、ビジョンの中では、地域ごとの機能別の必要病床数を算出する方向です。つまり、報告制度を通じて各医療機関が申告した機能別病床数の合計値と比較すれば、機能別の需給ギャップが明らかになるのです。
 これを通じて、自主的な機能分化を促進したいというのが、厚労省の基本的な考え方です。この報告制度は、早ければ来年度から始まる予定です。

現場力が問われる連携促進

 さて、機能分化を進めるには、円滑な連携が不可欠となります。その実現のためには、診療報酬面を含め、厚労省がどのような環境整備を行うかが大きな鍵となるのは間違いありません。
 ただ、今回の座談会での話から、連携の意義や必要性に関する「患者教育」「職員教育」、さらには、急性期から亜急性期・回復期、慢性期、在宅といった各機能での医療内容に対する「相互理解の促進」など、現場での主体的な取り組みが、厚労行政の施策以上の重要性を持つと感じました。
 紹介元が、転院の意義と、移った先の医療機関で行われる医療についてきちんと説明できなければ患者が不安になるのも当然です。また、転院先の医療機関が、紹介患者のその後に関する情報を紹介元に適宜提供していなければ、紹介元の病院も患者に対して転院先に関する適切な説明はできません。さらに、相互理解が乏しければ、お互いの機能にマッチした患者の紹介も難しくなり、信頼関係も築きにくくなります
(略)

記事の末尾にも書いてありますけれども、特に基幹病院においては平均在院日数短縮が声高に叫ばれ病床の管理も厳しさを増している昨今、ともすれば地域連携部門任せでただ単に患者を受けてくれるということだけを最優先で転院の手配を進めているという傾向がありますが、受ける側にもそれぞれ病院としての特色や医療に対する考え方があるのは当然ですよね。
特に昨今では慢性期であっても期限なしに幾らでもいてくださって結構、などという施設はまず考えられないもので、それだけにどのような状況になったら退院できるかという中長期的な治療戦略もなしに放り出されても困るという受け手の先生方も多いでしょうけれども、未だに「こちらでやることは終わりましたので後よろしく」的な送りつけ方をしている先生も少なからずいるのでは?と思います。
もちろん地域内で病診病病連携に対する理解が進み、施設間の分業体制がきちんと整っている地域では阿吽の呼吸で話が進むのでしょうが、見ず知らずの施設からろくに情報提供もなく送りつけられてきたのでは送られる方も一言なしではいられないもので、最悪の場合「今後あそこの病院からは受けるな」なんてことにもなりかねませんよね。

昨今終末期医療問題に絡んで語られることの多い胃瘻など経管栄養の問題に関しても難しいところがあって、施設によっては「うちはそんなもの作れないんだから、そっちで作って面倒は全部片付けてから来て」というところもあるでしょうし、「急性期の施設が下手に経管栄養なんて始めるからややこしくなる。終末期医療のことはこっちが専門なんだから任せろ」と先方が勝手に話を進めることを嫌がる施設もあるでしょう。
その辺りのことも相互の医師同士がきちんと連絡を取り合って急性期から慢性期へと有機的に連携出来れば理想的なのですが、関連病院や顔見知りならばともかく見ず知らずの施設の先生とそこまで突っ込んだ話もなかなか出来がたいのは確かで、患者さんからすれば転院早々なぜ担当医が不機嫌なのか判らず困惑するということもあるかも知れません。
それでも治療やリハビリで回復し退院する見込みがあればまだしもですが、人生最後の終末期がそんな連絡の行き違いで混乱したものになっては報われないというものですから、患者側としてもまず何をどうしたいのか、最終的なゴールとしてどこを目指すのかということを早い段階からよく相談しておくことが大事なんだと思いますね。

終末期医療 話し合い大幅増加(2013年6月27日NHK)

病気の回復の見込みがなく、死が迫っている終末期の治療方針について、厚生労働省がアンケート調査を行った結果、医師や看護師それに介護職員のうち「患者や家族と十分に話し合いを行っている」と答えた人は、いずれも40%前後にのぼり、前回の5年前の調査より大幅に増えたことが分かりました。
これは27日行われた厚生労働省の専門家会議で報告されました。

終末期の医療について、厚生労働省は、5年に一度一般の人のほか、医師、看護師、介護職員を対象に意識調査を行っていて、今回は合わせて6902人から回答を得ました。
それによりますと、「治療方針について、患者や家族と十分に話し合いを行っている」と答えた人は、医師が43.1%、看護師が37.2%、介護職員で49.8%と、5年前の前回の調査と比べて、いずれも3倍から4倍に増えました
また、終末期に自分で判断できなくなった場合に備えて、受けたい治療や受けたくない治療などを記載した書面を、あらかじめ作っておくことについて、「賛成」と答えた一般の人は69.7%で、前回よりも7.8ポイント増えました。

会議の委員で定山渓病院の中川翼院長は「超高齢社会を迎え、これまでタブーとされてきた終末期についてオープンに語る雰囲気が出てきているためだと思う。介護現場では、看取りについてまだ不安も大きいので、医療との連携を進めたりすることが必要だ」と話しています。

事前に治療方針7割賛成 終末期医療で意識調査(2013年6月28日中国新聞)

 厚生労働省が一般国民を対象に実施した終末期医療に関する意識調査で、自分で治療方針を判断できなくなった場合に備え、どんな治療を受けたいか、受けたくないか記載した「事前指示書」を作成することに賛成との回答が7割に上ったことが27日、分かった。

 調査は5年ごとに実施しており、今回が5回目。今年3月に無作為に選んだ20歳以上の5千人に調査票を郵送し、2179人が回答した。

 事前指示書の作成に「賛成」とした人は69・7%で、「反対」は2・3%、「分からない」が27・0%。実際に作成している人は全体の2・2%だった。

 自分で判断できなくなった場合に、本人に代わって治療方針を決める人を事前に指定しておくことには62・8%が賛成した。

 「誰に治療方針を決めてもらいたいか」との設問には、「家族らが集まって話し合いをする」が44・6%で最も多く、「自分のことを一番よく分かっている人」34・0%、「担当する医師や医療・ケアチーム」10・4%と続いた。

 死期が迫った際の治療をどうするか、家族と話し合ったことが「ある」は42・2%で、「ない」の55・9%を下回った

 一般国民とは別に、病院や診療所の医師3300人を対象に実施し921人が回答した調査では、終末期の治療方針に関する患者や家族との話し合いを「十分に行っている」との回答が43・1%を占め、前回調査の11・7%から大幅に増えた

5年前に比べて3倍から4倍に増えたと言えば大変な増加ぶりだ、結構なことじゃないかと思うのですけれども、よくよく読んでみると過半数の医師ら病院スタッフが治療方針という自己決定権の根管を為すことについて、患者や家族とろくに話し合ってもいないというのはおかしな話じゃないか?とも受け取れますよね。
もちろんこの場合「十分に」話し合いを行っているという言葉の定義をどう受け取るかで、特に医師の場合自分と他人とを問わず厳しめの評価を下しておくことが症例検討会などで習慣づけられた先生方が多いでしょうし、記事からすると普段からそうした話し合いをしているかどうかのようですから、一般人と比べれば十二分に高いという評価が妥当なのかとも思います。
この種の調査ではしばしば自分自身の場合と家族の場合とで意見が大きく異なってくるということがありますが、それだけに医療側と患者側との摺り合わせだけでなく、患者と家族との摺り合わせも非常に重要であるはずで、何しろ終末期の方針を実際に決めることになるのはほとんどの場合本人ではなく家族なのですから、実のところまずは家族内で十分意思統一を行っておくことが極めて重要だと思いますね。

ところで今回に限らず調査を見ると案外異論が少ないというのでしょうか、実際にはその時になってみないと判らないという場合も多いのでしょうが大多数の国民が終末期医療というものに対してほぼ共通したイメージを持ってきていると言うことが言えると思いますが、現在の終末期医療の議論のポイントはその大部分が抱く「かくあるべし」をどうやって実現していくか、あるいは何故希望通りに行われていないのかという議論ですよね。
例えばよく言われる「延命治療を中止すると後で罪に問われるかも知れない。だから医者も家族も馬鹿馬鹿しいと思っていても続けざるを得ない」という問題については一昨年暮れから政府や学会などを中心に議論が進むようになり、各種ガイドラインなども整備されて臨床現場への滲透が図られていますけれども、手続き上の大変さなど運用上の制約もさることながらやはり現場意識はまだ追いついていないところがあります。
ただ療養型の施設などいわゆる看取りを専門にやっているところではすでに延命処置を行わないこと自体は普通に行われるようになってきていて、実際に「急変しました。治療お願いします」と急性期に逆紹介されるようなケースはずいぶんと減っていると思いますけれども、それもこれもきちんと患者や家族と担当医との間で明示的あるいは暗黙の意思統一が出来ているからこそという側面があります。

要するにこの状態であれば一般大多数はこうするだろうという無難な線であればさしたる問題もないのですが、患者なり家族なりが世間一般とは外れた要望を持っている場合に話がややこしくなりやすいもので、そうであるからこそ例外的な看取り方を希望される方々は先生お任せしますで放置するのではなく、家族側からも繰り返し担当医とよく相談して意思確認を徹底しておく必要があるんじゃないかと言うものですね。
医療の側としてはそうした「ちょっと普通じゃない方々」というのは正直あまり関わりたくないという気持ちもあるでしょうが、潜在的に係争化しやすいからこそ念入りに話し合いもしておく必要があるということは言うまでもないことで、何かひっかかりを感じればとにかく十分に意思確認をしておくことが後々の紛争化を防ぐ一番確実な方法なんじゃないでしょうか。
終末期医療の特徴として誰が何をやったところで結果にさして変わりはないという側面があると思いますが、それだけに純粋な医療面での努力よりもその他の部分での努力の方が顧客満足度に直結しやすいということもあって、患者さんが元気に玄関から出て行けば勝ちの急性期と違ってご家族が皆さんニコニコしながら裏口から去っていくのが理想なのだという感覚が必要なんだと思いますね。

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コメント

後期高齢者の延命医療は自己負担率を引き上げればよろしい

投稿: kankan | 2013年7月 5日 (金) 08時44分

>>後期高齢者の延命医療は自己負担率を引き上げればよろしい

少なくとも、現在の「入院費<<年金」が「入院費>>年金」になれば
御家族の無理な延命希望も少なくなって無駄な医療費の削減が出来ると
思います。

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年7月 5日 (金) 09時14分

経管栄養を高くして入院ではとてもやっていられない値段にすれば社会的入院は減りますかね?
ただどうしても自宅で対応できない場合にそなえて介護保険での受け皿がいるでしょうけど。

投稿: ぽん太 | 2013年7月 5日 (金) 09時17分

せっかく後期高齢者医療制度というものが出来たのですから、若年者と保険点数配分も変えておけばよかったと思いますね。
あと年金差益問題はそれで暮らしている人々も多いのが懸念材料なのですが、今後ニートの高齢化に伴い避けて通れない課題になってくると思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月 5日 (金) 11時59分

費用を高くすると困る人が出るので、入院期間を限定するようにしてはどうでしょう?
あるいは長く入院するほど自己負担率が高くなるとか。

投稿: てんてん | 2013年7月 5日 (金) 15時30分

老衰高齢者の急性期医療は2週間で終了。それ以後は全額保険外自己負担にすればよろし。
終末期医療も基本的にムダな医療費なので、全額保険外自己負担にすればよろし。
そうすれば、終末期の胃瘻や中心静脈栄養、人工呼吸、スパゲッティーなどのムダな医療は全滅するはず。
終末期医療の議論などムダです。終末期が来れば死があるのみ。借金まみれの日本に変な人権・倫理主義は不要。
早くしないと老衰高齢者のために医療費・保険医療が破綻するのは目に見えている。

投稿: 逃散前科者 | 2013年7月 5日 (金) 16時08分

年金+恩給持ちのご老人の社会的生命力をなめてはいけませんな
何があろうと簡単に死なせてなどもらえないのですよ

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年7月 5日 (金) 17時35分

自己負担増は、結局、未収金が増えて医療機関の倒産が大量発生、結果、総医療費削減で厚労省的には万々歳ですよねぇ。

投稿: Hekichin | 2013年7月 5日 (金) 21時26分

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