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2013年7月 1日 (月)

社会的関心を呼ぶ児童虐待 実は医療現場が主戦場?

ちょいとニュースを検索してみると判りますが、先日以来全国各地で児童虐待の相談件数が過去最大を更新したというニュースが相次いでいて、全国的にそこまで注目されているというのは何かしらの理由があることなのだろうなと思います。
その9割が実の親から受けた虐待であるといいますから心が痛みますが、医療現場においてはまた別の問題として虐待を発見し場合によっては通報する側となり得るということもある、むしろ医療現場でなければ虐待の痕跡が見つかり難いというケースもままあるという点で実は一番の当事者でもあるのですね。
ただ常に課題となるのがその線引きをどうするかということで、虐待が疑われれば容赦なく通報するアメリカなどと違って基本的に患者に性善説で接してきた日本の医療現場の弱点でもあるという気がします。

児童虐待医療現場も声を 「通告少なすぎる」危惧(2013年6月12日東京新聞)

◆前橋病院の溝口医師

 前橋市の済生会前橋病院の小児科医溝口史剛(ふみたけ)さん(38)は、今年相次いで出版された英米の児童虐待の医学専門書二冊の翻訳に携わった。年内には虐待医学の基本書の翻訳を出し、七月には医療関係者向けの虐待対応プログラムを発表する。「医療機関からの児童虐待の通告が少なすぎる」との危機感が溝口さんを駆り立てている。(伊藤弘喜)

 「世界的にも類書がない。虐待医学を志す医療者に最適の入り口だ」。溝口さんは三月に出た翻訳書「子ども虐待の身体所見」(明石書店)をそう評する。身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)から性虐待まで、あらゆる虐待類型を約一千枚のカラー写真と解説で紹介。目を背けたくなる写真ばかりで一般向けではないが、英国では児童虐待対応の公式研修に使われている

 米小児科学会による原著を訳した「子どもの性虐待に関する医学的評価」(診断と治療社)も一月に出た。同学会による基本書「子ども虐待医学」の翻訳は年内に出版される。

 溝口さんは「虐待を医学的に診断するノウハウの蓄積はまだ日本にはないので、米国から取り入れるのが早い」と翻訳の狙いを話す。

 日本では医療関係者が専門的な虐待対応を身に付ける機会が限られている。溝口さんらが二〇一〇年に行った調査では、全国八十大学の医学部のうち四十八大学が回答し、児童虐待の講義をしている大学は半数で平均講義時間は約二十分、一コマ以上を充てている大学はわずか六大学だった。

 医療機関が児童虐待対応に動くことも少ない。〇七~一一年度の厚生労働省の福祉行政報告例によると、児童虐待の疑いがあるとして児童相談所に寄せられた相談のうち、医療機関からの相談は全体の4%に留まっている。

 溝口さんは「虐待対応を健康問題の一部として当たり前のように地域に広めたい」との思いから、医療や福祉関係者を対象に専門性に応じた虐待対応を身に付けられる研修プログラム「BEAMS」を開発。七月二十日に東京都内で開かれる日本子ども虐待医学研究会学術集会で発表する。

◆県の児相受理過去最多 医療機関から4%

 県内三カ所の児童相談所で受理した二〇一二年度の児童虐待相談件数が六百五十八件と、前年度と比べ1・7%増え過去最多を更新した。県のまとめで明らかになった。このうち十五件は事件性があったという。県は「児童虐待の意識が浸透して通報が増え、発見しやすくなっているのではないか」と話す。

 虐待通告を含む全体の相談件数は前年度比3・5%減の八千九百七件だった。一方、市町村で受理した全体の相談件数は前年度の二千九百二十三件から二千九百九件と微減したが、虐待相談件数は四百二十七件から四百五十五件に増えた。

 県によると、虐待相談の内容は、言葉の脅しや無視の心理的な虐待が二百十七件(33%)で、前年度の百八十五件から増えたのが特徴。殴る、蹴る、やけどを負わせるといった身体的虐待が二百六十四件(40%)とトップで、食事を与えない、ひどく不潔にするといったネグレクトが百六十六件(25%)、性的行為の強要などが十一件(2%)だった。

 年齢では小学生が最多で二百五十四件(39%)、三歳~未就学児百四十件(21%)、〇~二歳児百十八件(18%)、中学生八十八件(13%)、高校生ほか五十八件(9%)。

 主な虐待者は母親が三百九十五件(60%)、父親百五十四件(23%)と、実の親が八割を超えた

 通報は近隣・知人百七十九件(27%)、学校などが百二十九件(20%)、家族七十七件(12%)、医療機関二十六件(4%)で、本人からは十二件(2%)。

 県は、通報を受けてからの子どもの安全確認を国指針の四十八時間以内よりも早めて原則二十四時間以内に実施。中央児童相談所に北部支所を開設したり、保健師や嘱託職員を増やすなどして取り組みを強化している。(池田一成)

アメリカなどでは通報が多いだけに誤通報も当然ながら多く、間違って通報されても運が悪かったねで笑い話で済むのでしょうが、日本の場合なまじハードルが高いだけに通報する側も「確実に証拠を掴んでからでないと…」と過度に慎重になる、そして通報される側もひとたび通報されれば名誉回復の機会もままならなくなりがちというのは刑事訴訟などと少し似たところがあるかと思います。
医療の場合もちろん守秘義務との絡みという表向きの理由も大きいのですが、守秘義務があるということはすなわち医療関係者でなければ知ることの出来ない情報がしばしば虐待の根拠となり得るということであって、近隣のおじちゃんおばちゃんが匿名で通報した場合と違って「あいつがチクったんだな」と当事者に丸わかりになるというのも腰が引ける大きな理由ですよね。
もちろんそうは言っても明らかに虐待に相当すると判断されるケースを黙って見過ごすということは許されることではないのですが、この辺りは通報を受ける児相側で「疑わしきは直接確認する」といった運用ルールなりを設けていただいて、医療機関側に公的な形で要請していただければ医者の側も「申し訳ないですがそういう決まりですので」と言いやすくなるんじゃないかと思います。
ただそれよりも難しいのが事実行為として不適切なことが行われているのは明白であっても、その行為そのものが果たして虐待と言っていいのかどうか判断しかねるというケースで、特に昨今では患者側の自己決定権との絡みで非常に判断に迷うケースが多いようです。

子の手術拒否で親権停止 医療ネグレクトに適用3件(2013年6月30日中国新聞)

 児童虐待の一つで、親が病気の子どもに治療を受けさせない「医療ネグレクト」に対し、昨年4月施行の改正民法に基づき家庭裁判所が親権停止を認めた事案が少なくとも3件あることが29日、全国の児童相談所を対象にした共同通信のアンケートで分かった。うち1件は子どもに必要な手術を親が拒否する深刻なケースだったが、親権停止後に手術が実施された

 子どもを入院させるため親権停止の申し立てを検討したが、最終的に親が入院に同意したため見送った事案も2件あった。

 改正民法で創設された親権停止制度は最長2年間の期限付きで、親による親権行使が子どもの利益を害するときに適用できる。命に関わる医療ネグレクトなど迅速な対応が求められる場合に、活用が広がりそうだ。

 アンケートは全国の207の児童相談所に調査票を郵送して実施。今年4月までに親権停止を申し立てた件数などを尋ね、7割超の160相談所が回答した。申し立て件数は計29件で、家裁の審判を経て21件に決定が出ていた。

やや判りにくい話かと思いますが、理解しやすいようにこうしたケースで過去たびたび話題になったエホバの輸血拒否の事例を考えてみますと、かつての「患者は黙って医者のやる最善最良の医療を受けていればいいのだ」式の時代ならばともかく、自己決定権の普及した今の時代に医療現場では医学的には決して妥当ではないと思える選択をする人も当たり前になっていますから、正直オトナに関しては気にしなくなってきています。
もちろん施設や医師個人のリスクマネージメント等々の観点から「当院では対応しかねますので」と他院を紹介するということはままありますけれども、それはポークカレーを売りにしているカレー屋にムスリムの方が来た場合に「申し訳ありませんが」とお断りせざるを得ないのと同じことであって、エホバ信者であり輸血を禁忌とする事自体を何ら否定するといったものではないわけですね。
そうしたわけで一人前の大人の方々に関してはどうぞご自由にと言うことで済むのですが、では子供はどうなのかとなると話がややこしくなってくるのであって、一般に未成年者の意思決定能力は限定的で保護者の判断が代用されるとして、しかし保護者の判断が世間一般のそれと明らかに差異あるものだと果たして子供とは言え本人意志を無視していいものだろうかと躊躇せざるを得ません。
実際に数年前に外科系の5学会が合同で15歳未満には親が拒否をしても救命のために輸血を行い、親が邪魔するなら児相に通報し親権停止も考慮するという指針をまとめたという話がありましたが、昭和60年に起きた有名な川崎事件(外傷を負った子供が生きたいと望んだにも関わらずエホバ信者の親が最後まで輸血を拒否し続け患児が死亡)のような事例がその大きな原動力となったことは想像に難くありません。

すっかりエホバの方々ばかりを悪者にしてしまったようで申し訳ありませんが、世界中どこかの未開部族などでは今でも近代医療などとんでもない、先祖代々のやり方に従った呪術こそ正しいのだといった考え方が当たり前に残っているのかも知れず、もちろん自分なりの価値観が確立した成人がそうした価値観を肯定して自己決定を行うのは全く問題ないと思いますが、繰り返しになりますが子供の問題はまた別だということです。
これからは医療従事者もこうしたケースで児相に一言の相談もなしに済ませられなくなってきたんじゃないかと思いますけれども、当然ながら緊急性を要する場合が多いだろうこうした症例でそれだけの時間があるのかどうかで、試みに近隣の児相の営業時間?を調べて見ましたら当然ながら平日の朝から夕方までとなっていましたから、この辺りはまず相談しようにも制度的整備が追いついていない面もありそうですね。
エホバばかりではなく今話題の再生医療とも絡めて豚の体内で人間の臓器を育てて移植に用いようなんて話も当たり前にされる時代になってきましたけれども、当然ながらこれも医療現場で当たり前に行われるようになればムスリムの禁忌に触れるといった具合で、今の時代厳しい戒律で自らを律している方々には生きづらい世の中ではあるし、悪意もない場合どこまでを犯罪的行為として取るべきかの判断も難しいなと思います。
ただそれでも事実であれば確実にクロという単純粗暴型の児童虐待の方が実際には大多数なのでしょうし、医療従事者は他のあらゆる人々よりも秘められた虐待の痕跡を見つけ出す機会に恵まれている割に通報が少なすぎると言われればごもっともで、この問題もそろそろ業界全体に共通する課題のひとつとしてきちんと向き合っていかなければならないのは確かでしょうね。

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コメント

通告したときの児童相談所の動きが非常に悪いため、正直なところあまり積極的に通告したい気分ではありません。
一般人通報と違って確実に通報したのがわかるので、恨まれることもしばしばなのですが、それに対するフォローもありませんし・・・

投稿: クマ | 2013年7月 1日 (月) 07時43分

24時間以内なら迅速だとかそんなスピードじゃあまりありがたみないですねえ。
児童相談所にしたってこれだけ通報が増えて大忙しだから本音のところは余計な仕事増やしてほしくないんじゃ?
メリットのないわりにデメリットは確実にあるんだから誰もやりたがらないでしょう。

投稿: ぽん太 | 2013年7月 1日 (月) 08時50分

個人的には虐待親なんて関わりたくないんで恨まれたほうがいいです…
でも児相がちゃんとあと引き取ってくれるって保証があります?
ニュースみた感じじゃ絶対確実な証拠がないとかてきとうにごまかされそうでイヤだ…

投稿: やまさん | 2013年7月 1日 (月) 11時16分

これだけ相談件数も増えて児相も児相で忙しいそうですから、行政側からのサポートも必要になるでしょう。
子供関係なら予算も通りやすいですから、こういうところに新たな雇用が生まれるということもあるかも知れませんしね。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月 1日 (月) 12時53分

エ○バは児童の○虐待も多いらしいね
自動的に親権取り上げたほうがいいかも

投稿: | 2013年7月 1日 (月) 16時27分

虐待通報に限らず田舎じゃ地域内の人間関係に気を使うのは確かですな
病院も役場もみな顔見知りで個人情報などあっという間に拡散しますから
それでも平然とバイアグラ処方を希望してくる豪の者もいるにはいましたが( ̄ー ̄)

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年7月 1日 (月) 18時24分

>それでも平然とバイアグラ処方を希望してくる豪の者もいるにはいましたが( ̄ー ̄)

勤務先の近所のレンタル屋で堂々と女子校生レ○プモノやナースレイ○モノを借りまくってるオレ様最強w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年7月 2日 (火) 12時57分

「医者になっていちばん変わったのはそこらで気安くエロ本を買えなくなったことだ」といった後輩がいましたが・・・・

投稿: たまちゃん | 2013年7月 2日 (火) 13時32分

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