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2013年7月19日 (金)

凋落する日医が全医師強制加入化の野望を加速

日本医師会(日医)の影響力低下が言われて久しいですが、現在終盤戦の参院選に絡めて先日こんな記事が出ていました。

農協、医師会…組織票は何票ある?(2013年7月7日ソーシャルニュースネットワーク)

いよいよ参議院選挙が幕を開ける。その選挙戦のゆくえを大きく左右する存在が「組織票」だ。なかには数百万規模の“票田”を抱える組織もあり、各候補者たちは虎視眈々と取り込みを狙う。

そもそも、組織票は国の政策によって大きな影響を受ける業界・団体が背景にある。たとえば農業や建設業、医師会などが代表例だ。 “TPPへの加入”“公共事業費の増大”といった争点について、各業界の意向を代弁する候補者を当選させようとするのが行動原理だ。

では、組織票はどれほどの影響力を持っているのか。いくつか例をご紹介しよう。たとえば、「農協」。正組合員と準組合員を合わせた会員数はなんと約1000万にものぼる。同様に、労働組合の全国中央組織である「連合」は約680万人の会員数を誇り、「建設業協会」は、企業数だけで約2万社。「日本医師会」は約17万人、「日本薬剤師会」は約10万人の会員を擁している。もちろん、団体の構成員すべてが組織の求めに応じて投票するとは限らないが、当落に大きな影響を与えていることは間違いない。

…なんていうと、利益誘導型の圧力団体のような印象を持つ人もいるかもしれないが、彼らは何もズルをしているわけではない。利害の一致する有権者同士が団結し、投票先を集約することは、国会に自分たちの主張を届けるための基本的な方法だからだ。

問題は、全体の投票率、特に浮動票の多い若者の投票率が低すぎるため、選挙結果に対する組織票の影響力が大きすぎることにある。実際、30代以下の投票率は非常に低く、前回参院選では43%にとどまった。しかし20~30代の有権者は約3000万人にのぼり、どんな組織票よりも大きいのだ。

世代間格差が気になるのであれば、“若者”という組織票を生かさない手はない。その第一歩は、あなた自身が投票に行くことなのだ。

2013参院選:揺らぐ・組織票の今/上 有力業界団体 「自民回帰」しこり残し(2013年07月18日毎日新聞)

 ◇日医連、TPPに疑心暗鬼

 「参院選で候補を出さなければ組織は存在意義を失ってしまう。集票力がすなわち政治力だ」。9日、参院選比例代表に日本医師連盟(日医連)が擁立した自民党候補の決起集会が名古屋市で開かれ、愛知県医師連盟の柵木(ませき)充明委員長は約100人の医師らを前に声を張り上げた。

 日医連は日本医師会(日医)の政治団体。長年、自民党の支持組織だったが、2009年の民主党政権発足を受けて親民主のトップが就任。10年比例では民主候補を推薦する一方、自民とみんなの党の候補も支援する「またさき」に陥り、3人とも落選した。民主政権の弱体化が進んだ12年春の会長選では、自民党に近い横倉義武氏が勝利し、今回の参院選で再び自民支持へ一本化した。

 09年衆院選で政権から転落した自民党からいったん距離を置きながら、同党の政権復帰で再び「元のさや」に収まった有力組織は日医連だけではない。10年参院選で民主党から組織候補を立てて当選させた日本歯科医師連盟(日歯連)は、自民所属の現職が改選を迎えたこともあり、自民支持へと舞い戻った。
(略)
 だが、政権交代で右往左往した各団体と、団体が離反する野党の悲哀を経験した自民党の間はぎくしゃくしたままだ。日医連は、安倍晋三首相が参加を表明した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の国民皆保険制度への影響を警戒。日医連候補は「上位当選し、できるだけ大きな声で政府に意見を述べたい」と早くもけん制する

 日歯連は民主党内に組織代表の参院議員が残り、地方幹部は今後の組織運営を「神のみぞ知る」と漏らす。全特も「自民復帰にわだかまりを持つ一部の会員が他党支援に回った」(郵政関係者)との指摘が絶えない。全国農政連と自民党の間でもTPPを巡ってあつれきが生じる。「自民回帰」が起きても、かつての自民と業界団体の強固な結束は過去の話だ。

実際のところ日医が独自候補を当選させられなくなって久しい訳ですが、そもそも医師であるというだけで思想信条も政治的スタンスも全く異なる会員達が、選挙という場になれば特定の立場に固まって行動するようになるということがおかしい訳で、事実先年の政権交代騒動では医師会内部でも支持先が分かれ大いに混乱したのは記憶に新しいところですよね。
ちなみに今回の参院選に立候補した医師免許所持者(=医師、とは必ずしも言えないわけですが)は8人だそうですが、維新の会の3人を筆頭に見事に主要各党に分散されていて医師だから特定の政治的スタンスに立つなどという発想が幻想に過ぎないことは明らかですし、むしろ日医副会長なども比例区で立候補していることから日医の政治的スタンスも問われるということでもあるわけです。
特に今のようにSNS等で政治家と国民が直結出来るようになると、医師に限らずこうした大規模集団が特定個人に意見を集約するくらいなら、各人が各人の考えに一致する候補を支持した方がよほど話が早いのは当然で、業界団体の影響力低下が云々されるというのは単純に日本にも民主主義が定着してきたことの表れとも言えそうですね。
いずれにしてもこうまで政治的野心を燃やしている日医のことですから、その社会的影響力をいかに増大させ世俗的権力を握るかということに強い関心を持っていることは明らかなのですが、先日これまた以前からささやかれている噂を当事者が認めたという格好のニュースが出てきたことが注目されます。

日医入会、「強制力持った方策も検討」-横倉会長(2013年7月16日CBニュース)

 日本医師会(日医)の横倉義武会長は13日、大阪市内で講演し、現在は任意となっている医師の日医への加入について、「ある程度の強制力を持った方策も、一つの可能性としての検討が必要だ」と述べ、日医の組織力を強化するため、強制的な入会を含めた加入率向上の方策を検討していることを明らかにした。

 この日、大阪府医師会・勤務医部会の設立40周年を祝う記念行事に出席した横倉会長は、「加入していないと不便な状態に、徐々に上げていくための医師会活動というものが求められてくるだろう」と指摘。その上で、医師が積極的に日医を活用する任意度の高い状態から、加入を医師法に規定する法的根拠を伴うレベルまで、「最終的にどの段階で組織体制を強めていくかということが、非常に重要になると思う」と述べた。

 日医の会員数は約16万5000人(昨年12月時点)で、医師全体のおよそ56%が加入しており、このうち開業医が約8万4000人と過半数を占める。医師会にはこのほか、郡市区医師会や都道府県医師会などがあるが、日医に入会するためには、これらの医師会に加入する必要がある。【敦賀陽平】

ネット上で世間的な評価をざっと見た感じでは最大公約数的に「冗談はよし子さん」といったところだと見たのですが、まずは現状の日医という組織を考えて見ると一般勤務医の加入率は極めて低く、病院管理者や開業医など経営者にとっての利権団体であって労働者たる勤務医にとってのそれではないということは明らかですよね。
日医の運営の問題点として会長等の選挙システムが会員の医師を全く反映しない、極めて非民主的な制度によって成り立っているという点がまず挙げられますが、要するに勤務医にとって何ら自らの意志は反映されず「こんなに大勢の医師が加入しています」という数字合わせに使われるだけの日医という組織には魅力がない以上、わざわざお金を払ってまで加入する気になれないのは当然でしょう。
しかしすでに開業医などの多数が加入している以上さらなる加入率向上とはすなわち勤務医をどうやって強制的に日医に取り込むかということに他ならないわけで、この点ではかねて例の新専門医制度に日医が公的に関与させろなどとあり得ない主張をしてきたこと等も考え合わせれば、彼らの狙うところは日医という組織を単なる業界団体から準公的組織へ格上げさせようということなのでしょう。

医師の組織化、団体化というもの自体は別に全否定されるべきものでもなく、例えば地域内の各種医療業務について地区医師会などが窓口になっているというのは、そうした医療業務が法律で実施を求められている以上、どこに依頼したらいいのか判らないのでは困るのですから当然ありだと思います。
しかし問題としてはそうした地道な医療活動を行っている地区医師会からも日医という組織に対する不平不満が高まっているということで、そもそも日医という組織の存在意義は何なのかということを会員に対してすらきちんと示すことも出来ないのであれば、単に上納金を集めて権力ごっこをしているだけではないかと言われても仕方がないところでしょうね。
政治的に見ても日医という組織の影響力低下は明らかですが、一方で日医さえ丸め込んでおけば「医師団体から同意を取り付けた」という格好はつくというメリットはあって、この辺りは日医に比肩し得る組織を今まで確立出来ないまま来てしまった医師という業界そのものの持つ課題なのかなとも思います。

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コメント

新専門医制度に絡んでドイツみたいに日医に強制加入&医師の強制配置&診療科選択制の廃止をすべきと
東大の高久先生も言ってますね。
http://www.recruit-dc.co.jp/daiyosoku/005.html
正に老害と呼ぶのにふさわしいですw
実現するんでしょうかね?

投稿: | 2013年7月19日 (金) 07時58分

専門医の職能に全く無関係な日医が専門医制度に関与する意味がわからないです。
というより専門性を担保するために制度を一新するんじゃなかったんですか?

投稿: ぽん太 | 2013年7月19日 (金) 09時23分

医師会が関わる正当性?が認められるのは総合医のみ。
医師会会員は全員総合医試験受けるべき。

投稿: 鎌田 | 2013年7月19日 (金) 09時40分

弁護士会のごとく強制加入にしてしまうと、国の管理が行われますので、逆に団体としての政治活動を制限されますが(弁護士会は一切政治活動ができない)、それでもいいのかなぁ。
強制全加入で、しかも政治活動もしたいってのはすさまじく虫のいい話のようで・・・

勤務医が医師会に加入するメリットの一つに、医賠責はありますよね。
民間保険に比べて保険費用が安いのと、専門の弁護士およびスタッフが充実してるので、訴訟中でも仕事への影響が最小限ですみ、しかも民間保険に比べて圧倒的に勝訴率が高い。
これをもっと喧伝して売り込めばいいのに

投稿: | 2013年7月19日 (金) 10時28分

開業医の先生にしても医師会加入でメリットよりデメリットが多いと加入しない方もいらっしゃるわけで、業界団体というものは本来利益があるから加わるという性質のものだと思います。
現段階で日医に加入したところで日医執行部の政治的発言力が増す(かも知れない?)程度で、それによってさらに斜め上の提言ばかり増やされるかも知れないですしね。
現実的に強制加入を目指すとすれば法的裏付けが必要になるでしょうが、そのあたりをどう丸め込むつもりなのか聞いてみたいですね。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月19日 (金) 10時53分

客観的にみて、開業医の中堅〜ベテランの先生って、「総合医」と呼ぶにはほど遠いレベルも少なくないですね。
特に内科系以外の出身の先生に多いような。最もケアしなければならない感染症に対する知識が根本的にないので、感染性胃腸炎に止痢剤を処方してしまうとか、若年者の急性上気道炎に抗生剤を出すとか、非常識な対応が多いですね。「総合医」を堂々と名乗って診療するのであれば、もう一度一から感染症やプライマリケアの教育を受けてくださいと言いたいですね。薬の副作用とか根本的に何もわかっていない医師が多すぎるので。
医師会の活動とかする以前に肝腎の医療のスキルアップが求められます。

投稿: 逃散前科者 | 2013年7月19日 (金) 13時02分

>弁護士会のごとく強制加入にしてしまうと、国の管理が行われますので、逆に団体としての政治活動を制限されますが
政治的影響力を行使したいが為に勤務医を強制加入させたいのにそれだと本末転倒ですね。
何考えてだろ?
新専門医制度は日医の生涯教育を使うとかなんだとか

投稿: | 2013年7月19日 (金) 13時47分

生涯教育の価値を否定するものではないが、あれは専門医教育というよりはプライマリー向けの啓蒙ではないかな?
そもそも日医が専門医制度を仕切りたがっていることを各学会はどう考えているのだろうか?

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年7月19日 (金) 14時26分

日医と全国大学医師会連絡協議会との懇談会
医療界が直面する課題について活発に議論
http://www.med.or.jp/nichinews/n250720g.html
水澤連絡協議会長が,医師会のない大学に対する働き掛けとともに,医師会員の加入促進に向けた活動を活発化させる考えを表明.これに対しては,今村副会長が,医師会を知ってもらうために『ドクタラーゼ』の活用を求めた他,三上常任理事も,「日医としても,医師賠償責任保険やホテル宿泊割引制度など,日医が行っているさまざまなサービスを知ってもらえるよう,広報していきたい」と述べた.

え、日医加入のメリットってそれだけなの……


投稿: | 2013年7月19日 (金) 14時31分

みなさん大切なこと忘れちゃいませんか?
強制加入の弁護士会じゃ会費が高すぎて払えないって会員が悲鳴上げてんですよ?
みなさんから巻き上げたクソバカ高い会費を好き勝手に浪費させていいんですか?

投稿: アマテラス | 2013年7月19日 (金) 14時34分

本気で医師会が全医師強制加入を目指すのであれば厚労省の協力が不可欠です。
医師会が法改正なりで加入の強制化を取り、その見返りにどんな条件をのむつもりなのか?
おそらく現場の医師からは裏切り者と言われかねない条件になるのでしょうね。

投稿: ももんが | 2013年7月19日 (金) 19時23分

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