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2013年7月16日 (火)

バルサルタン臨床研究疑惑の小さからざる波紋

ノバルティス社の超メジャーな降圧薬「バルサルタン(商品名ディオバン)に関する大規模臨床研究に、直接的な利害関係者である同社社員が身分を隠して関与していたとされる問題でつい先日も各方面が大騒ぎになったばかりですが、同社の上司もこれを承知の上で支援していたと言いますから会社ぐるみでの関与と認識されても仕方のないところではありました。
それでも身分を隠すということは論外としても、製薬会社社員が自社薬の研究に関与していた事まではまだギリギリ許容範囲で済んでいたかも知れませんが、今度はこの研究を行っていた京都府立医大の方で論文の元データそのものが捏造されていたというのですから上を下への大騒ぎになるのは当然ですよね。

降圧剤の臨床データ、人為操作を確認 京都府立医大が謝罪 製薬会社に有利な結果(2013年7月12日産経ニュース)

 高血圧治療薬「バルサルタン」(商品名・ディオバン)を使って京都府立医大の松原弘明元教授(56)らが行った臨床研究について、データに問題がなかったか検証している府立医大は11日、論文に使われた解析データが人為的に操作され、バルサルタンに有利な結果が出ていたとの調査結果を発表した。

 調査では、臨床研究で対象にした約3千件の症例のうち223件のカルテを確認。論文のもとになったデータと比較したところ、カルテに記載がなかった病気が論文データでは存在するなどの不一致が34件あった。バルサルタンを使った場合、他の降圧剤に比べ脳疾患や心臓病のリスクが減ると結論付けられていたが、正しいデータを使った検証ではこうした結果は得られなかったという。

 会見した府立医大の吉川敏一学長は「ご迷惑とご心配をおかけし、おわびする」と謝罪した。

 松原元教授は今年2月、辞職。販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」(本社・スイス)の日本法人社員(当時)が肩書を明示せず、研究に関与していたが、府立医大は「誰がデータを操作したのか、意図的だったかどうかは分からない」としている。

 この研究では、国内外の学術誌が論文6本を「データに問題がある」などとして掲載を撤回。府立医大のほか4大学でも同様の研究が行われ、同じ元社員が関わっていたことが判明しており、各大学が調査している。

バルサルタンめぐる臨床研究「結論に誤り」-京都府立医大が調査報告(2013年7月11日CBニュース)

 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」の臨床研究に、同社の社員(当時)が関与していた利益相反問題について、同研究で中心となった松原弘明教授(同)が所属していた京都府立医科大は11日、「本臨床研究で提示された結論には誤りがあった可能性が高い」と結論付ける調査報告を公表した。松原元教授の論文の基となる臨床データの解析を担当した元社員のほか、複数の研究員がデータ操作に関与した疑いも浮上したが、元社員に対する聞き取り調査が行えなかったとして、「推測」との表現にとどまった。

 2008年8月から12年9月までに、松原元教授らの研究グループが発表した7本の論文では、バルサルタンについて、通常の降圧効果に加えて、脳卒中や狭心症などの心血管疾患の発生率を下げる効果があると結論付けている。

 だが、京都府立医科大が外部機関に委託したデータ検証の結果では、同大附属病院に登録された310症例のうち、カルテの閲覧が可能だった223症例について、解析データとカルテの数値を照合した結果、心血管疾患の発生の有無が一致しなかった症例が34症例あった。

 また、223症例で心疾患の発生率に関する解析を行ったところ、解析データでは発生が抑制されたが、カルテでは有意差は見られなかった。さらに、同研究に登録された医療施設の全3031症例について、医療機関の医師が入力したデータと解析データの数値を比較したところ、こちらも同様の結果だった。

 カルテの閲覧が可能だった223症例の解析データについて、同データとカルテの数値を入れ替えた上で、全3031症例を解析しても、有意差は変わらなかったことから、調査報告では、「京都府立医科大以外の登録施設での症例に関しても何らかのデータ操作が行われていた可能性が示唆される」とした。

 一方、元職員の聞き取り調査を行うため、同大がノバルティスファーマに協力を要請したところ、退職していることを理由に断られたとし、「聴取のめどは立っていない」としている。

 京都府立医科大では今後、患者からの問い合わせに対応する専用窓口を設置。吉川敏一学長らの給与を返納するほか、研究に関与した同大の研究員に対しては、厳正な処分を行うとした。【敦賀陽平】

バルサルタン:臨床試験疑惑 降圧剤不正「意図的操作」明言避け 大学側会見、元社員は聴取拒む(2013年07月12日毎日新聞)

 日本で最も売れている医療用医薬品である降圧剤「バルサルタン」を巡る臨床試験疑惑は11日、京都府立医大が初めて不正を認めたことで新たな局面に入った。データ操作は、誰が何のために行ったのか。販売元のノバルティスファーマ(東京)の社員(既に退職)はどう関与したのか。当の元社員は大学の聴取を拒んでおり、疑惑は深まるばかりだ。

 「今回の事態を招いたことを極めて重く受け止め、心からおわびします。関与した者の厳正な処分を行いたい」。この日、京都市内の京都府立医大で行われた記者会見で、吉川敏一学長は深々と頭を下げて陳謝した。

 報告書では、統計解析を担当した元社員や、研究を主導した松原弘明元教授(56)を含む複数の人物がデータ操作に関わることが可能だったとした。しかし、調査委員長の伏木信次副学長は「意図的な操作かどうかも含めて特定することはできなかった」と、明言を避け続けた。

 大学の問題点として「研究室には統計解析に通じた人材がおらず、製薬企業従業員の力を期待した点に問題があった」と指摘した。再発防止策として、統計の専門家を学内に配置するほか、製薬企業からの研究費の寄付や研究者の講演料の受け取り状況についてもホームページで公開するとした。薬を日常的に利用する患者などからの問い合わせに応じるため、近く大学病院内に専用相談窓口を設ける。

 厚生労働省研究開発振興課は「極めて遺憾な事態だ。具体的な責任は誰にあるのか、大学には引き続き調査を求める」(一瀬篤課長)とし、文部科学省と再発防止対策を協議する方針を示した。

 日本医学会の利益相反委員長、曽根三郎氏は「操作によって効果があったというのは捏造と言われても仕方がない操作された結果を基に販売促進に利用したことは極めて悪質であり、再発防止のためにも企業は大学の調査に協力し、説明責任を果たすべきだ」と指摘する。【八田浩輔、野田武、五十嵐和大】

ちなみにバルサルタンを含む俗にARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれる降圧薬は使いにくい大きな副作用などが少ないことに加えて、血圧を下げる以外にも様々な有意義な臓器保護作用があるとされ最近では末端臨床家もファーストチョイスとして選択する機会が増えていますけれども、基本的には大変に有用な薬剤です。
ただしこれだけ数が出るようになっている、そして昔ながらの枯れた降圧剤に比べるとまだまだ薬価も高いですから製薬会社にとっては儲けが大きい主力商品のようで、似たようなARB同士でも「当社の○○は他者の△△に比べこのように有用で」と売り込みも大変なものですよね。
当然ながら社員一同としても上司から「他社のものより優れているというデータを出してこい」と発破をかけられていることは想像に難くありませんが、その結果今回同社社員が関与していたことが判明した他大学の研究も同様の疑惑の目を向けられるなど大変な騒ぎになっていて、これでは昨年同薬を1100億円も売ったという同社の業績にも大きな影響が出そうにも思えます。
京都府立医大では同社社員の関与が発覚した段階で同社との取引を中止(!)するなど「トカゲの尻尾切り」とも受け取れる対応を取っていますが、府立医大の(恐らくは一方的な)今回の発表に対してノバルティス社側では「データの恣意的操作は確認出来なかった」と異なる見解を公表していて、操作があったかどうかと共に誰がそれを行ったのかという点も今後多いに対立が発生しそうですね。

何しろARB同士の有用性比較といった試験は幾らでもあるものですから、一体どこまで遡って検証すべきなのかと考えると気の遠くなるような作業が待っていそうなのですが、恐らくは多くの臨床家が経験的に感じているように「どこの会社のARBでもそう大差はない」というところが正解に最も近いのだろうし、不正や疑惑がささやかれる製品だからと言って患者さんにとって別に有害無益というわけでもないのだと思います。
ただ今回の不正が大学関係者がやったにせよ会社側がやったにせよ、こうした形での不正を実際に行っているということがはっきり明るみに出てしまったと言うことは世の真面目な臨床研究医の皆さんには大迷惑で、すでに田村厚労相直々に同種問題の対策を行っていく直轄の委員会を立ち上げるという話になっているようですね。
最近では学会などでも企業との利害関係がどうのこうのとやたらに面倒な話が増えていますが、今後研究や発表のあらゆる場面でこうした操作があり得ることを前提とした厳重なチェック体制が当たり前に求められるようになってくるのだとすれば、最近何かと国際的な地位低下が懸念されている日本の研究活動がさらに不活発になってしまうということにもなりかねません。

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コメント

恐怖医なら仕方ないって思った人手を上げて!

投稿: あまちゃん | 2013年7月16日 (火) 08時49分

ディ○○ンの効能もどうせ製薬会社の宣伝だと思って話半分に聞いてたんですがやっぱりって感じですね。
それにしてもノ社のこのやる気のなさってどうなんだろう…
普通こういうとこの研究員って守秘義務なんかの契約しっかりしてるもんじゃないんですか?
これじゃかばい立てしてるって言われても仕方ないですよ。

投稿: ぽん太 | 2013年7月16日 (火) 09時01分

Jikei Heart Studyは大丈夫なの?

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年7月16日 (火) 10時54分

阪大の○室教授や森○教授も関与してるみたいな話もありますがどうなんでしょうね?
最近阪大の不祥事多いな。逆に京大はあまり聞かない

投稿: | 2013年7月16日 (火) 10時59分

とにかく多方面に影響なしとしないでしょうが、他大学や競合他社も今後同じ目線で検証にさらされることになるでしょうね。
大学にしろ製薬各社にしろ一部企業の一部社員が暴走したという形が一番よい落としどころでしょうが、当事者が今後どのように振る舞うかに要注目です。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月16日 (火) 11時54分

>当事者が今後どのように振る舞うかに要注目です。
行方不明になったりせずに語ってくれればいいんだがなw

投稿: aaa | 2013年7月16日 (火) 12時39分

うちにもドロッポ臭ただよう先生がいるけど、講演会に出るたびに感化されて(踊らされて)新薬に処方書き換えてるのが笑える。
プロパーさんとは仲良しこよしだけど、こういう先生が大勢いると薬屋の商売も楽なんだろうな。

投稿: まる | 2013年7月16日 (火) 14時59分

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