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2013年7月 2日 (火)

DPC導入で病院待ち時間が長くなる?

日本の医療制度は長年出来高算定でやってきたことから無駄な検査や治療が多い、患者の薬漬けだという批判があり、これに対して近年俗にDPCと呼ばれる定額払い制度が大規模病院を中心に取り入れられるようになってきていることがご存知かと思います。
DPCとは本来Diagnosis Procedure Combination(診断群分類)のことで、この病名に基づいて各疾患毎に一定額のお金を出しましょうというのが診断群分類包括評価の基本原則であり、その結果同じ病気を早く安上がりに治した方が病院の収益上お得ですよと言う理屈で医療費削減や平均在院日数短縮が進むということがDPC導入のメリットとされています。
支払われる金額は全国医療機関の平均的な治療コストを元に決まることから、儲けを増やそうと安上がりな治療をすればするほど報酬も切り下げられて自分の首を絞めることになるだとか、DPC病院に入院中の患者に対する他院からの処方禁止ルールだとか様々なトラブルはあるにせよ、薄利多売を宿命づけられてきた医療現場にとっては別なやり方も模索できるようになった恩恵はありますよね。
ただそれが顧客満足度向上に結びついているかというと微妙なところで、ある意味常にコストを計算しながら医療を行うようになったことが様々な「以前ならこうしてくれたのに…」という不満を産むことにもなっているし、昔ながらの課題解消にもさしたる効果を発揮出来ていないという批判はあり得るわけですね。

メディネットが、外来患者の「待ち時間」に関する不満についての調査結果発表。「3時間待ちの3分診療」は患者不満足に直結?!(2013年6月28日医療人材.net)

医療機関向けデジタルサイネージのパイオニア、メディネット(大阪府高槻市)は20日、クラウド型アンケートシステムにより実施した、外来患者の抱える「待ち時間」に関する不満についての調査結果を発表した。それによると、待ち時間に対する不満は外来患者の抱える不満の中で最も多く、待ち時間への不満が強まるほど、診療内容に対する不満も高まることがわかった。
(参照:医療機関でのデジタルサイネージ(映像表示)に様々な効果、メディアコンテンツファクトリーが調査結果を発表)

調査は13の医療機関において、平成24年11月~平成25年4月にかけ、アンケート用紙による無記名回答方式で行われたもの。有効回答者数は4,861名。

外来患者が抱える不満のトップは、「診察待ち時間」に対するもので22.2%。次いで「駐車場」17.2%、「会計待ち時間」16.7%と続く。診察待ち時間別の不満度をみると、待ち時間30分までは「駐車場」への不満が1位であるのに対し、30分を超えると「診察待ち時間」そのものへの不満が最も高くなる。さらに90分以上になると、不満のトップ3すべてが「時間」に関する項目となってくるという。

また、診察待ち時間への不満が上がるほど、「診療内容についてわかりやすい説明を受けた」「納得して治療を受けることができた」という2項目に対しての不満度も上がった。いわゆる「3時間待ちの3分診療」は患者不満足に直結するもので、待ち時間の「長さ」よりも「質」、待ち時間の後の診療内容の質が重要であることが浮き彫りになった。

病院での待ち時間は何分が限界? 医療機関の課題が見える(2013年6月20日ダイエットクラブ)

 梅雨や夏に発生しやすい食中毒や、気温の変化による夏バテなどを防ぐために、よりいっそう健康管理に気をつけたい今日。とはいえ、体調が悪くなったり、明らかに何らかの病気にかかってしまったときは、検査や治療を目的として医療機関を利用するだろう。

 意を決して会社を休んだり、仕事の合間をみつけて病院に到着するも、受付には長蛇の列。なんとか受診の手続きを終え、待合室の椅子に座ること数十分。いっこうに自分の番がまわってこない……。

 ようやく名前を呼ばれ、医師に症状を説明するも、数分で診察は終了。今度は処方箋を受け取って会計するために待つ。さらにその後は、調剤薬局で薬を購入するために、またしても待つ。という、「待つ」の連続でぐったりしたことがある人は多いのではないだろうか。

 このたび、医療機関向けのデジタルサイネージなどを企画・運営しているメディネットは、クラウド型アンケートシステムにより、13の医療機関で無記名アンケート方式で外来患者満足度調査を実施し、その結果を発表した。

 調査結果によると『外来者の不満』は、「診察待ち時間」が22.2%ともっとも多く、次いで「駐車場」が17.2%、「会計待ち時間」は16.7%と続く。また「診察・予約時間への配慮」もトップ10入りしていた。

 厚生労働省の「平成23年受療行動調査」における『外来患者の診察までの待ち時間』によると、「1時間未満」の待ち時間の割合が多いという結果に。「30分未満」が55%、「30分から1時間」が24%となっている。これは、今回実施されたメディネットの調査でもほぼ同様の結果だ。

 また、『診察待ち時間別の不満度』をみてみると、30分までは「駐車場」への不満がもっとも高く1位、30分を超えると「診察待ち時間」への不満がもっとも高かった。90分以上になるとトップ3すべてが「時間」に関する項目になっており、他の時間帯ではなかった「診療・予約時間へ配慮」への不満が2位に入った

 続いて『病院での診察待ち時間の限界』は、「50分から60分」が18.6%ともっとも多く、「20分から30分」、「30分から40分 」、「1時間から1時間半」で15%を超える。

 自由記載欄には、「30分から40分が理想」、「わたしの通っている病院は予約であっても2時間は待たされます。診察はていねいなので仕方ないかな」などのコメントがあった。

 こうした状況を踏まえ、各医療機関では患者サービスの一環として、予約システムや待ち状況のモニター表示、待ち時間を利用した情報提供モニターなどを導入するケースが増えてきているという。

 「待ち時間の見える化」や「退屈せずに待ち時間を過ごせる環境づくり」が進めば多少不満は解消されるかもしれない。高齢化社会となり、医療機関を利用する人が増加しているからこそ、医療機関を利用する人と働く人の双方にとって最良の環境を整えるための対策が望まれる。

待ち時間が長くなるほど顧客からのチェックの目線が厳しくなるというのは一般常識から考えてもそうなんだろうなと思うのですが、よく見て見ますと診察行為そのものへの待ち時間に対する不満のみならず、せっかく予約制を導入しているのにその時間が守られないだとか、待ち時間がどのくらいが判らないといった当たり前の問題が顧客満足度を大きく低下させているということですね。
逆にこの辺りのことをきっちりやっている施設は多少待ち時間が長くなってもそれなりに許容されるということなのでしょう、時折聞きますが飲食店並みに患者にポケベルを持たせたり携帯で呼び出したりしている病院が評判が良いということを考えると、この辺りの改善に多少のマンパワーを注ぐことで診療関連行為そのものを無理矢理時間短縮させずとも顧客満足度改善の余地がありそうです。
そんな仕事はパートタイムの事務員を雇ってやらせたところで幾らのコストもかからないことですし、医師や看護師にしても患者からねちねちと不満を言われ余計な手間がかかることが減るなら早くやれよと言うものですが、実はこの外来待ち時間の長期化にも先のDPCが大いに関わっている可能性があります。

DPCの場合入院時の診療報酬は疾患毎に決まっていて、要するに必要最低限のこと以外を何もしないほど儲けが大きくなるというシステムですが、逆に出来高払いであった一昔前までは何か大病がありそうだとなるととりあえず検査入院だ、経過観察入院だと称してそのまま入院させ、せっかく入院しているのだからと高価で手間暇もかかる検査をばんばん行うということが当たり前であったわけですね。
それがDPC導入によってありとあらゆることはそれが入院でやる必要がない限り外来でやるようになったというのは医療コスト面からは改善というべきなのでしょうが、患者にとっては何度も何度も外来に通わなければならないというのは入院のホテルコストを差し引いても必ずしも安上がりになっていない可能性もあります。
地域の中小医療機関で癌などが見つかった日には一昔前には地域の基幹病院にいつから入院してくださいねで済んでいたものが、今は外来でCTやらMRIやらの画像検査から心臓や肺、あるいは肝臓腎臓といった内臓諸機能の検査まで全部やって手術前日に入院ですから、交通費や手間暇のことはさておいてもそれは外来も一段と混雑しようと言うものですよね。

もちろん今の時代に医療費抑制ということは永続的な医療供給体制を維持する上でも非常に重要なことなのですが、先日も出ていましたが日本の医療費は医療費抑制政策が軽減された現状でもOECD平均以下で決して割高とはなっていないことを考えると、他の部分で過度の医療環境増悪を容認してまでわずかばかりの医療費削減を追求するのもどうなのかということです。
それも頻回の外来通院に要する交通費やら休業分のサラリーのことまでも考えると国民全体のプラスマイナスでは実のところさしてお得になっていないかも知れず、単に医療コストをその他のコストに転嫁しているだけということであればさして意味もない数字合わせで、そのおかげでただでさえ忙しい現場がますます多忙になり患者もスタッフもストレスを貯めるのではむしろマイナスでしょう。
DPCという制度は医療にコスト意識を植え付ける意味ではそれなりに意義があったと評価していますけれども、医学的に妥当な診療行為を追求し治療期間短縮を目指すという方向性での改善努力ならまだしも、単に在院日数短縮のテクニックのために知恵を絞るだけのことであればさして意味も意義もないというもので、ましてや一生懸命努力するほど後々診療報酬が削られていくのでは報われないにもほどがありますよね。
アメリカなどは出来高払いに対応した保険はむしろ極めて例外的で、その場合も保険会社が診療内容にうるさく口を出すほど定額払い中心の医療ですが周知の通り日本よりはるかに高額な医療費を要していて、一方で出来高払いの日本が医療側の自制によってか医療費がさして高騰していないと考えると、こと医療に理想手技的傾向の強い日本では単純にコスト抑制目的で定額払い化を推し進めすぎるのもむしろ弊害が大きいのかも知れません。

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コメント

DPC最大のメリットは細々とした保険病名つけなくていいことだと思う今日この頃

投稿: yama | 2013年7月 2日 (火) 09時07分

そういやDPC病院で研修してきた先生はレセプトチェックやったことないって言ってたっけ。
ところで出来高とDPCで実際のとこ医療費ってどれくらい違うものなんでしょうね?
病院の収入がさして減ってないんだから医療費も減ってないんじゃないかって気がするんですが。

投稿: ぽん太 | 2013年7月 2日 (火) 09時45分

>せっかく予約制を導入しているのにその時間が守られない

単にさばける能力以上の患者を予約枠に詰め込んでいる強欲病院と解釈できますが、違うんですかね?

投稿: hhh | 2013年7月 2日 (火) 12時13分

DPC病院ですが、レセプトチェック、病名チェックはやってますよ。少なくとも当地また周囲では昔どおりに病名要求されています。お上からの指示で・・・。

DPCなので本来は細々した病名付けはなしにして欲しいのですが、あいかわらず酸化マグネシウム→便秘などなどつける制度になってます。

yamaさんところは必要ないんですか??ポン太さんの話は研修医(昔は研修医もレセやってましたが)だからやらせてなかったのではと感じてますが。

投稿: 体がきしむ中年 | 2013年7月 2日 (火) 12時46分

純粋に予約枠だけで運用されている外来でも遅れることはもちろんあるのでしょうが、よほどとんでもなく手間取る患者ばかりでもなければ常習的に時間単位の遅れは出ないと思いますね。
予約制を導入したとある病院のケースですがこれまた予約が遅れるとクレーム殺到だったのですが、予約枠自体は担当医の方で設定できるので当初だいたい1時間あたり4人から6人という無理のない枠設定がされていたようです。
ところが飛び込みの患者を予約外来の間に勝手に入れる、それも予約患者も含めて受付順に診察室に呼び込むものだから大混乱が起こるのは当然で、シンプルに予約外来の意味が判っていなかったんじゃないかと思います。
ただ外来のキャパ以上に患者が殺到しているのに予約患者だけ時間通りに診てもらえるとなると一般患者の不満もたまるはずで、本来予約枠とはきちんと別料金を取って付加的サービスとして提供すべきものではないかなと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2013年7月 2日 (火) 13時03分

>研修医(昔は研修医もレセやってましたが)だからやらせてなかったのでは

なるほどそうかも知れないですね。
私など研修医のころから当たり前に駆り出されていたのでそういう可能性は考えてなかったです。
よく考えたらああいう仕事ってそれなりに知識と経験がないとよけいにあとの手間が増えるんですよね…
保険診療の真実に目覚めるいい勉強の機会でしたけど。

投稿: ぽん太 | 2013年7月 2日 (火) 14時30分

>シンプルに予約外来の意味が判っていなかったんじゃないかと思います

私もそう思いたいんですが、予約外来を始めて数年たつのに、一向に改まらないDPC病院が近隣にあるものでして、
というより、予約時間を守っている病院の話を聞いたことがありません。
いまだに予約外来の意味が分かってないのかなあ。

投稿: hhh | 2013年7月 2日 (火) 15時48分

>保険診療の真実に目覚めるいい勉強の機会でしたけど。

横レスですがちなみに保険診療の真実ってどんなものなのでしょう?

投稿: てんてん | 2013年7月 2日 (火) 15時51分

当時の上司の言葉によれば「医学においては診断に基づいて治療を行うが、保険診療においては治療に基づいて診断を行う(保険病名をつける)」んだと。
とにかくレセプトチェックなんて考えたら負けなので機械的に作業を進めるしかないってことですね。

投稿: ぽん太 | 2013年7月 2日 (火) 17時15分

なるほど、そういうものなんですね。
でもそんな仕組みなら最初からプログラムを組んで自動的にやったりって出来ないの?って思っちゃうんですが。
あんまり画一的だとあとでチェックされちゃうってことなんでしょうか。

投稿: てんてん | 2013年7月 2日 (火) 18時05分

>「1時間あたり4人から6人という無理のない枠設定」
=一人あたり10分から15分、記録時間含む。
=午前午後の8時間診療で48人しか診療できないですね。

「ようやく名前を呼ばれ、医師に症状を説明するも、数分で診察は終了。」
このスピードで数十分の待ち時間なら、一人あたり15分かけたら何時間待つことになるのやら。

本日の診療人数は終了しました って受付で断れればいいのに。

投稿: REX | 2013年7月 3日 (水) 23時43分

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