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2013年6月24日 (月)

TPP参加で医療現場にも新たな落とし穴が発生?

本日の本題に入る前に、そろそろ参院選も近づいていますけれども、それに向けての各党の選挙公約がそろいつつある中で先日ちょっとびっくりするような文言を見かけました。

みんなの党が参院選公約 脱原発・農業改革…改憲も明記(2013年6月17日朝日新聞)

 みんなの党が17日、参院選の選挙公約「アジェンダ2013」を発表した。電力、農業、医療の3分野を「既得権三兄弟」と位置づけ、規制改革を前面に押し出す。憲法改正の手続きを定める96条については「手続きの簡略化を進め、決議要件を緩和」と明記する。

 渡辺喜美代表は記者会見で「しがらみのない政党なので、自民党の聖域にも切り込む」と語った。電力では「2020年代の原発ゼロを実現する」と掲げる。農業は減反政策を段階的に廃止。「株式会社の農業参入を原則自由化し、農地の所有も認める」と自由化を推し進める。

 医療は、混合診療を全面的に解禁し、「マイナンバー制度を活用した医療情報データベースの構築で、機動的な医療政策」を目指すとした。また、国会議員の定数を衆院300人、参院100人に削減し、給与3割、ボーナス5割を即時にカットする。

かなり大胆な規制緩和といいますか、「既得権三兄弟」とはなかなかに穏やかではない言葉ですが、これを見る限りではいわゆる小さな政府のもとで自由主義経済を目指すという大方針なのでしょう、いずれにしても「しがらみのない」泡沫政党だからこそ掲げられる政策とは言えるかも知れません。
当然ながら同党としてはTPPには積極参加して「攻めの開国」をと威勢がよいのですが、あるいは例によって朝日ソースだからと思って同党のHPを確認してみたところ医療関係の公約としてこんなことを書いていました。

B 「社会保障不信」の解消と「世代間格差」の是正によって、若年世代には希望を、高齢者には安心をもたらすセーフティネットを再構築する
1.世界最先端の医療と切れ目のない介護・障がい者施策ですべての人に「生涯安心」を

    医師数をOECD(経済協力開発機構)加盟国平均の人口千人当たり3人に増やす。医学部・メディカルスクールの新設を解禁。かかりつけ医と専門医の役割分担を明確化する。
    健康保険制度を段階的に一元化。官民で保険料率に格差がある現行制度の不公平を是正する。安定的な制度運営のため、運営規模は地域主権型道州制を想定したブロック単位とする。
    健康保険料の月収上限(月額121万円)を撤廃し、所得に応じた負担によって健康保険行政の安定を確保する。
    医療のIT化を推進。レセプトチェックによって医療費のムダ削減を徹底する。
    カルテと薬剤オーダリングのIT化を通じ、同一効能で価格の安い後発(ジェネリック)医薬品の採用を進め、薬剤費の削減を目指す。
    混合診療を解禁、ドラッグラグやデバイスラグを解消し、世界最先端の医療機器や医薬品が速やかに国内で使用できる体制を整える
    訪問看護ステーションの1人開業を認める等の規制緩和を推進。医師・歯科医・看護師・介護士等が医療従事者や地域と連携する地域医療・介護体制を構築し、同時に在宅医療体制も整備する。医療行為を認められた看護師(ナース・プラクティショナー)資格の導入を検討。看護師の処遇改善を進め、休眠看護師が再び復帰できるようにする。
    療養病床、特別養護老人ホーム、介護老人保険施設、在宅ケア、高齢者住宅等の役割を再検討。高齢者の視点に立つ、地域ごとのニーズに合った総合的な高齢者福祉政策を実現する。
    独立行政法人が管理する社会保険病院等を民間運営へと転換し、赤字体質の改善を図る。
    介護職員の待遇を継続的に改善。正規・非正規・派遣等の就労形態による格差を是正する。
    外国人介護士の受け入れは急務であり、受け入れ条件を根本的に見直す。
    がん登録を法制化し、在宅緩和ケアを推進する。難病対策では公平な救済に努める。腎疾患への総合的な対策を確立する。肝炎の検診、治療法研究を含む総合的対策を確立する。
    「 こころの健康基本法」を早期に制定する。精神医療における向精神薬への過度の依存を是正する。自殺予防対策で内閣府、厚労省、文科省の連携を強化。WHOの自殺報道のガイドラインを活用。
    労働安全衛生法で歯科検診を義務づける。
    医療事故調を早期に設置する。薬害防止のための第三者機関を厚労省から独立して設置する。
    障害者自立支援法違憲訴訟の基本趣旨に沿った障がい者施策を目指す。災害時に障がい者を孤立させないよう、地域NPO等と連携して体制を築く。

何かと議論になりそうな話がずらずらと並んでいて、もしも同党が政権運営に関与するようになればおもしろい議論が展開されそうだなとも思うのですが、特に医師数増と平行して「医学部・メディカルスクールの新設」を認めるのではなく解禁するというのはなかなかに大胆な政策で、おそらくは先日「供給過多で質が低下する」と大量養成政策が見直されることになった弁護士業界の後追いをすることになりそうですよね。
ただ同党の主張から推察する限りは「それで医師が過剰になったところで何なの?自由主義経済の原則通り適当に淘汰されるでしょ?」ということでしょうから、これに医療現場が反対するなら同党の「既得権三兄弟」説を裏付けるということになるのでしょうか。
ともかくこうした主張の政党もいるということはそれとして、これと相前後してTPPについてかねて噂にはいわれていながらどうなるのかと思っていた話題が、いよいよ本格的に表立って出てきたというこれまた気になるニュースが出ています。

新薬などの価格決定、米が手続き参加要求 TPP交渉(2013年6月21日日本経済新聞)

 環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る交渉で、米国が参加国に新薬を公的医療保険の対象に加える手続きを公開するよう求めていることがわかった。米新薬メーカーなどが各国の審査過程で意見を表明できるようにして、より高い価格で保険適用になることを狙う

 米国の要求は医療機器の手続きも含む。保険適用を決める各国政府の審議会に米製薬会社が参加できるようにしたり、審査手続きを公開したりすることを求めているもようだ。

新薬の薬価決定に関しては現状では類似品がすでにあればそれを参考に、全くの新規であればメーカーからの資料を基に原価や使用量予測、諸外国での価格なども参考に決めるということになっていますが、基本的に国が決めることであって製薬会社としては当然もっと高く売りたいのに…ということもあるでしょうから、こうした要求自体は当然に予測されたことです。
今のところ日経にしか記事が出ていないようなのでどの程度強硬な要求なのかということも判らず何とも言えないのですが、仮に日本側が拒否した場合に求めていた販売価格とかけ離れた薬価に決まるということもあり得るわけですから、「それでは保険収載は結構です」と言い出す可能性があるのかないのかです。
もともと皆保険制度の日本では保険収載されない薬=ほぼ国内で使えない薬という位置づけでしたが、昨今では先のみんなの党の公約などを見るまでもなく混合診療解禁を求める声が拡大してきていて、特にドラッグラグ、デバイスラグといった「海外で普通に使われている治療法が何故日本でだけ使えないのか」という疑問が高まっていますよね。
これに対して国も先進医療といった形で実質的に混合診療の範囲を拡大してきているわけですが、海外製薬会社とすれば高血圧や高脂血症のように日常的に長年用いるタイプの薬であればともかく、抗癌剤のように一生に何度もない生きるか死ぬかの場で用いられる薬にまで保険収載で安売りする意味はなくなってきたという言い方も出来るでしょう。

特にアメリカなどは製薬会社の知的財産権保護にも熱心で、特許権の延長等によって後発品の販売を阻止しようと交渉参加各国に要求していると言いますから安売り強要などまっぴら御免と言い出しかねないと思うのですが、ちょうど6月19日にロンドンで行われた安倍総理の講演で日本の経済成長戦略に関して医薬品等医療関連産業で市場規模を5割増にすると言っています。
ご存じのように製薬業界は国際的な競争が激化して合併などが日常的に繰り返されメーカー名が始終変わっていますけれども、日本が国家の後押しで製薬の世界で商売を拡大していくということになれば海外メーカーとしては危機感を抱くでしょうし、膨大な研究開発費の元を取るためにも不当な安売りを強要されるくらいなら顧客に多少の不利益があっても…という考えになってもおかしくはないでしょうね。
現行の制度でもこうした抜け道が出てきたということは当然現場医療従事者と患者の間でもトラブルに発展する恐れもあって、場合によっては一介の末端保険医であっても全世界で販売されている新薬や新治療法に精通し十分な情報提供を行わなければ「最善最良の治療を受けたい」という患者の期待権を損なった、などと言われることにいずれなるかも知れません。
日医の強硬な姿勢に関わらず特にTPP反対でも混合診療絶対阻止でもない立場に立つ医療関係者は決して少なくないと思いますが、各種の制度的制約でがんじがらめになっていると同時にある意味で楽であった保険診療のタガが外れてくるということは、今まで何気なくこなしていた日常診療においても思いがけない落とし穴が発生する可能性があるという認識は必要かも知れませんね。

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コメント

都議選みんなの党1議席から7議席に大躍進w

投稿: aaa | 2013年6月24日 (月) 08時52分

北海道医療枠 20人増55人に 札幌医大
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW1306230100001.html
これこそまさに既得権益では?

投稿: | 2013年6月24日 (月) 09時16分

>北海道医療枠 20人増55人に 札幌医大

半数が地域枠とは思い切ったことをしますね。
ただ北大もこんなことやりだしたら大騒ぎでしょうけど札医だからまだ…
ほんらい県立医大のたぐいはそういうのが目的でしょう?

投稿: ぽん太 | 2013年6月24日 (月) 10時10分

地域枠という実質推薦のような枠で入っても、結局一般枠と同じようになってしまっているのが現状ですからね。
それがいいのか悪いのかは後世の評価に委ねるしかないと思いますが、少なくとも今までより悪くはなっていないとも言えるわけですしね。
政治的に医療にも経済原則を云々するなら全国一律の公定価格を強要するのではなく、過不足に応じてきちんと報酬に格差をつけられる制度を用意しなければならないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年6月24日 (月) 11時39分

従軍慰安婦問題、竹島・尖閣などの領土問題、日本海呼称問題、日本文化起源捏造問題などを英語や仏蘭西語などの多言語の動画という形で日本の主張を世界に発信し日本の名誉回復を目指すWJFプロジェクトをご支援ください。

日本国民の生活と日本国の伝統文化を破壊するTPPの危険性を解説する動画もございます。沖縄の分離独立を促進し、中国併合への道筋を整え、日本の国家解体につながる道州制に反対します。

WJFプロジェクト
http://wondrousjapanforever.cocolog-nifty.com/blog/

投稿: WJFプロジェクトの支持者 | 2013年6月25日 (火) 10時53分

TPP 医療 保険 で 検索中です
軍事兵器のない 戦争のない世界に なってから TPPにしたいなぁ
若者は 輸入で オレンジ 牛肉が ~ 安くなるだけと 思っているのかなぁ
TPPとは どんな世の中になるのかなぁ?TPPについて 有権者は  あー勘違いもあるかなぁ
誰かの街頭演説の責任かなぁ。政治家や立候補者は わかっているんだよね
参議院選では 三つの岐路で 消費税は もう増税と決まりなのかなぁ?
もうすぐ 参院選ですね。選挙率は どうなるかなぁ
票割れ選挙かなぁ 参議院政権?を 握るのは どこかなぁ
政治研究会(名前検討中

投稿: 村石太ダー&ケンサク仮面 | 2013年7月 6日 (土) 15時42分

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