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2013年6月20日 (木)

手に職を持つ超売り手市場なのに進まない労働環境改善

先日は「それどんなブラック企業?」とも思ってしまうような妙な記事が出たトラック業界ですが、適正な運賃が支払われず利益が出ない体質が続いているということですからよほどに買い手市場なのかと思ってしまうのですが、その内情は全く逆であるというこんな記事が出ていました。

トラックドライバー不足で物流危機(2013年6月15日週間実話)

 60歳未満の大型免許保有者数は、今後急激に減少する−−。国土交通省が先ごろ調査発表した「物流2015年危機」は、私たちにとっても切実な問題である。ドライバー人口が減り、さらに高齢ドライバーが増えれば、世界に冠たる“即日配達社会”が崩壊することになるからだ。
 「物流コストの急上昇で、一部通販がやっている『午前中注文、当日お届け』が消えるでしょう。通販で地方の名産品を注文しようとしたら価格より送料の方が高かった、あるいは宅配がやっと届いたら高齢者がヘナヘナと立っていた。スーパーの棚は品薄気味で、建設現場では資材が遅配されるため工事が中断されたり…という、大震災後のようなことが日常的に起こるでしょう」(経済記者)

 若手のトラックドライバーが減っていく根底には少子高齢化があるが、原因はそれだけではない。
 「平均月間収入は全産業平均より低く、その割に仕事はハード。年間総労働時間も全産業平均に比べて長い。典型的な3K産業です。さらに、2007年6月に施行された改正道路交通法も激減理由の一つ。総重量5トン以上11トン未満、最大積載量3トン以上6.5トン未満の車両の運転には、中型自動車免許が必要になった。問題はこの免許の取得条件で、普通免許を取得して2年が経過していなければならず、高卒運転者は即戦力にならない。中小零細運送会社にとっては、経営コストが押し上げられるのです」(交通ジャーナリスト)

 人材不足を海外に頼ろうにも、運転免許の学科試験は日本語の読み書きができなければだめだし、女性ドライバー“姫トラ”も、基本は力仕事だけに補えるほどは増えない。トラック野郎ならぬ“トラック爺さん”にとって代わるのは、もはやロボットしかない?

いやまあしかし、世界に冠たるかどうかは知りませんがどうしてもその必要性があるものならいざしらず、現場スタッフの過労を押してまで即日配達を維持する必要性があるのかどうかと考えて見る必要はありますよね。
そもそも運送業に余計な負担を強いる荷主側の無茶な要求が現状を招いた根本原因だと考えれば、今時の若い連中が自ら好きこのんでそんなトンデモ慣習が横行する業界に飛び込んでいく気にならないのも当然なのですが、記事を読んでいてそんなに需要があって人手が足りないのならどうして料金値上げという話にならないの?と不思議に感じた人も多いのではないでしょうか?
その仕事をするに当たって専門の資格を必要とする、しかも供給が必要総需要に対して十分にはないということになれば一般に売値は高くなっていくのが自由主義経済の大原則だと思うのですが、トラック業界の場合下請け孫請けの複雑な構造の中で搾取されるという体質が長年続いていて、末端で実際に汗を流している当事者が全く報いられることがないというおかしな構図になっているそうですね。

この辺りは労働者個人がどれだけ権利意識に目覚めていくかという点と共に、直接の雇用主である各運送業者が労働者確保こそ将来的な経営安定化への一番の必要条件であるということをどれだけ認識出来るかだと思うのですが、同じような状況にあるにも関わらず一向に売値が高くならずむしろ安くする圧力ばかりが働いている不思議な業界に医療の世界があります。
こちらの場合は荷主ではなく国による薄利多売を強いられているという点で多少事情が異なるとは言え、雇用の安定と労働者の確保が経営の健全化につながるということは全く同じと言えそうですね。

「雇用の質」改善は3つの要素-厚労特別研究事業で報告書(2013年6月18日CBニュース)

 「雇用の質」改善のためには、「働き方・休み方」や「働きやすさ確保のための環境整備」だけでなく、「スタッフの健康支援」にも気配りを-。厚生労働省が取り組む「医療分野の『雇用の質』向上プロジェクト」の一環として行われていた院内マネジメントシステムに関する研究で、報告書がまとまった。雇用の質の改善は、画一的な方法を定めることが難しいとしつつ、共有すべき成功の要素が整理されている。

 労働科学研究所の酒井一博所長らのグループが、院内マネジメントシステムに関するガイドライン策定に生かすため、これまでの日本看護協会や日本医師会の取り組みなどを分析してまとめた。
 システムの対象として想定される領域は、▽働き方や休み方(労働時間管理、休暇の取得促進、勤務と勤務の間隔の確保など)▽働きやすさ確保のための環境整備(院内保育所の整備、子育て・介護中の者に対する残業免除、患者や関係者からの暴力対策など)▽医療スタッフの健康支援(メンタルヘルス対策、腰痛・感染対策、健康チェック実施など)-と整理した。

 具体的なプロセスは、「方針表明」に始まり、「推進体制の整備」「現状分析」「計画の策定」「改善の取り組みと運用」「評価」と続く。各項目で、文書による記録の重要性や、より効果的に進めるための推進メンバーの選び方などを記している。

 報告書では、2団体の取り組みの中で勤務改善に貢献した要素の詳細も掲載。看護職のワークライフバランス推進では、社会保険労務士や労働局担当者、地域の研究者など、外部に協力者を得る有効性を指摘した。また、勤務医に関する取り組みの分析では、院長や理事長などが、職場環境の改善を院内の方針とすることが成果につながるとした。

 厚労省の「雇用の質」プロジェクトはこれらの研究を基に、ガイドラインの策定や、モデル事業の実施、好事例の収集などに今年度中に取り組む。【大島迪子】

いやまあ、お説ごもっともではあるのですけれども諸悪の根源とも言えるお前が言うなと言うのでしょうか、いずれにせよ衣料の場合も本質的な問題点は雇用する側にスタッフの労働環境を改善しようとする意志がないこと、あるいは仮に意志があったとしても経営改善など他の要素よりも優先順位が低いということではないかという気がします。
全国公私病院連盟と日本病院会が行った先日の調査では黒字病院の割合が32.4%で2年連続の減少だと報じられていましたけれども、相変わらずマスコミの言うところの「3時間待ちの3分診療」という混雑ぶりで医師や看護師らスタッフが相次いで逃散していくほどの激務だと言うにも関わらず、妥当な経常利益が出るどころか多くの施設が赤字というのは普通に考えて何かがおかしいですよね。
現状では患者数を増やせば増やすほど収入が増えるようになっているわけですからどこの施設ももっと患者を増やせ増やせと需要を掘り尽くそうとする、その結果総医療費がさらに際限なくふくれあがり国は医療費を削減しようとさらに診療報酬を抑制し、結果としてスタッフは満足に働いた分も報われず逃散していく負の連鎖が続く構図とは、やはり恒久的安定的な医療供給体制の体を為していないと思います。

先日は腰痛防止のため介護職は人力による患者の抱え上げ(いわゆるお姫様だっこの状態ですね)をやめましょう、リフト等の機材を使用するかどうしてもやむを得ない場合は二人以上で抱えましょう、なんてことを厚労省が言い出していて、もちろん過酷な肉体労働を軽減するという目的の一環として腰痛防止も大変重要なことではあるのですけれども、何かしら環境改善ということの方向性がずれていますよね。
昨今では介護職用に腕力をサポートするロボットスーツなども登場していますが、それではリフトなりスーツなりの導入コストをどうやって調達するかと言えば医療・介護保険による定額報酬の中から他を削って捻出するしかないわけで、どこの施設もまともな儲けが出ない報酬体系を強いられている状況でこうしたことを言われても単なる画餅というものです。
ではどうするのか、もちろん施設側がスタッフの労働環境を地道に改善する意志を持つということももちろん必要不可欠ですけれども、個々のスタッフレベルで改善策を考えると結局は無理をしない、これ以上は出来ないと言うことをはっきり意志表示した上で、それでも改善の意志が見られないのであれば立ち去り型サポタージュが一番簡単確実な環境改善策であるとほぼ確立された感があります。
個々のスタッフがさながら聖職者さながらの献身で現場を支えている構図は確かに第三者から見れば美しいものではあるのでしょうけれども、それはいざという非常時のための一時的な措置にとどめるべきであって、日常業務とはあくまでも無理なく続けられる範囲にとどめておかなければ思わぬ事故のリスク上昇を招くだけですよね。

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コメント

何度でも繰り返し唱えよう
「嫌なら辞めろ」w

投稿: aaa | 2013年6月20日 (木) 09時10分

経営コストがあがっても料金に転嫁できるなら問題ないんですよね。
缶ジュースだってあれだけ便乗値上げと言われたのに今じゃ一本120円が当たり前なんだから。
値上げをどう納得させ受け入れさせるか経営者の手腕が問われますよ。

投稿: ぽん太 | 2013年6月20日 (木) 10時06分

医療崩壊が叫ばれ始めてから、長年横ばいだった医師の給与が上がったということがポイントだと思います。
もっとも現状ではすでに給与よりも労働環境の改善に注力すべきだし、その意味で環境が悪化し世間の注目と同情も集まっている今こそ格好の機会なのですけれどもね。
医師の個人発信力はかなり強いので、当事者としてまず何をどうして欲しいのかという要求を発信していくことが大事かなと思っています。

投稿: 管理人nobu | 2013年6月20日 (木) 11時06分

運送屋は即日配達をオプションにしておくべきでした。
過剰サービスを当たり前にしちゃ要求が際限なくなるだけです。

投稿: 柳 | 2013年6月20日 (木) 20時48分

  「365日24時間死ぬまで働け」――。ワタミグループの全社員に配布されている「理念集」
に、渡辺美樹会長のそんな言葉が書かれていたと週刊文春が報じ、物議を醸している。

■記事:東京産業新聞社 http://snn.getnews.jp/archives/

  参院選で自民党から立候補する渡辺美樹氏が会長を務める居酒屋チェーン「ワタミ」で
無法な長時間労働と低賃金が横行している問題が18日、明らかになりました。
“ブラック企業”の内実を日本共産党の田村智子参院議員が参院厚生労働委員会で取り上げたもの。

■記事:しんぶん赤旗 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-19/2013061901_02_1.html

  今夏の参院選に自民党公認で出馬する渡辺美樹・ワタミ会長が理事長を務める学校法人「郁文館夢学園」
で、生徒に反省文100枚を書かせるなどして、退学者が相次いでいることが週刊文春の取材でわかった。

■記事:文藝春秋 http://shukan.bunshun.jp/articles/-/2827

投稿: | 2013年6月21日 (金) 18時56分

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