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2013年6月14日 (金)

生保対策はまたも大阪から

近年の年中行事のようなものでしょうか、毎年この時期になると「今年も生活保護受給者が過去最多を更新!」なんてニュースが流れますけれども、ちなみに今年は3月時点で216万人と11ヶ月連続で過去最多を更新中なんだそうです。
もっとも高齢者世帯が約半数、けがや病気による疾病者世帯が約2割と言いますからこちらは仕方がないとして、景気も回復基調にあると言う中で残る2割の働ける生保受給者をどうするかということは雇用政策とも絡む重要な課題でしょうね。
厚労省もようやく生保受給前の人々への支援策を盛り込んだ「生活困窮者自立支援法案」を国会に提出したと言いますが、ともかく「働いたら負け」という風潮が蔓延するのは非常に危機的な状況であって、現行の生保というシステムがそれを助長しているのだとすれば早急に改めていく必要があるでしょう。
一方で昨今では国民所得減少傾向と共にその手厚い保護ぶりが知られるようになったせいか、すっかり「生保=勝ち組」という考え方が広がってきた感がありますが、こちらアメリカでも似たような状況にあるようで生保問題が本格的に議論されようとしているということです。

「することはセックスだけ。そうすれば大金が手に入る」米国よお前もか…生活保護を食い荒らす低所得者層の実態(2013年6月8日産経ニュース)

 米フロリダ州が今年4月、低所得者に対して発行する生活保護費の支給のための「デビットカード」の使用制限を条例化した。来年2月から実施され、禁止されるのはカジノやストリップ、酒屋での使用。もちろん、生活保護者がそれらを利用していい理由は一切ない。公的扶助が少ないと思われがちな米国だが、生活保護を“食い物”にしたり、まるで自身が稼いだ金のように遊興費にあてる不届き者は少なくない。それは米国だけでなく、日本に共通する問題でもある。

何でも使える“食料支援カード”

 「EBTを使用するのは自由だ
 「あなたがすることはセックスをすることだけ。そうすれば9カ月後に大金が手に入れられる
 これは、2011年夏にインターネット上で全米で話題となったビデオクリップ「Its Free Swipe Yo EBT」の歌詞だ。歌っているのは、チャプターという黒人女性歌手。EBTと呼ばれる生活保護費が振り込まれるデビットカードのありようとともに、子供を産めば働けないため低所得者として“保護”される米国の現状を揶揄(やゆ)してもいる。
 内容は過激だ。ビールを片手に、他の母親たちとタバコを吸ったり、ハンバーガーなどの高カロリーで栄養価の低いジャンクフードを買いにいく場面があったり…。「税金の行き着く先はここです」などといった指摘さえある。

 自助努力の国、低福祉国家と思われがちな米国だが、実はそうでもない。食料や住宅、医療などで支援制度は少なくない。
 そのうち食料支援は、低所得者向けの食料品購入補助制度「フードスタンプ」と呼ばれる。正式名称は「補助的栄養支援プログラム」(SNAP)。州によって基準は異なるが、目安は4人家族で月収入2500ドル(約24万円)とされ、月100ドルが支給されるという。
 この生活保護費が振り込まれるのがEBTカードだ。複数の米メディアによると、フロリダ州議会が条例で禁じたのは、ストリップやカジノなどの遊興費、ビールなどのアルコール類、タバコなどの購入にこのカードを使うことだ。
 同州議会は昨年、同様の形で、カードによるケーキやクッキーなどのお菓子類の購入を禁ずる案を提案している。いずれも栄養確保に悩む低所得者というよりは、過度な栄養摂取であったり、栄養とは全く関係のない、むしろ不健康になるための不正使用だ。

増える受給者と生活保護詐欺

 これはフロリダだけでなく、米国内で全体の問題でもある。EBTをめぐっては、食料購入時に名前や住所の提示が必要ではなく、カード転売をはかる不届き者も多いとされる。
 例えば、今年4月、フロリダ州で、客からEBTカードを購入し、商品に変えていたコンビニエンスストアのオーナーと息子が詐欺容疑で逮捕された。覆面捜査官を使った捜査では、210ドルのEBTカードを安く買い、2人はそれを使ってビールやタバコなどを購入。2人は同様のやり方で8万8千ドル(約880万円)を詐取していたとされる。
 また、今年3月にはニュージャージー州の安売り店の店主が2年半もの間、EBTでは買えないような商品を客に購入させたとして詐欺容疑で取り調べを受けた。その額は520万ドルにも及ぶという。

 確かに、フードスタンプの受給者は増えている
 受給者は2013年3月時点で4767万人。総人口が約3億1400万人で、その約15%が受給者になる計算だ。09年の受給者は3300万人だったから、約4年で1300万人も増えている
 米農務省の統計によると、その経費は12年会計年度(11年10月~12年9月)が746億ドル(約7兆6100億円)。ほぼ毎年、過去最高を更新し、13年は2月までの5カ月間で318億ドルに達した。低所得者対策が、その時の政権の政策として扱われてきたため、受給者の条件が緩和されてきたという経緯もあるが、増え方は尋常ではない。
 また、低所得者の増加は、一部の富裕層と貧困層との“格差”が広がっているという現実が理由だとしても、使い方のルールまで緩めて、甘やかす必要はない。
(略)

明らかに犯罪行為が絡むということであればこれは論外ですけれども、そもそも食糧支援の目的で支給されたものをギャンブル等に使うというのもおかしな話で、やはり現金を持たせてはいけないという現物支給派の主張が一定の理があるということなのでしょうか。
先日も兵庫県小野市で俗に言う「パチンコ禁止条例」が市民の圧倒的多数の支持のもとで成立したという話がありましたが、アメリカでもやはり同様に目的外使用と考えざるを得ない生保保護費流用問題があって、その対策に頭を悩ませているということですよね。
アメリカよりも自助努力への尊重の念が薄い日本ではどうなのかということですが、和歌山県上富田町のように生保支給の前段階として緊急的な食料現物支給を行うと共に厳密な支給審査を行うようにしたところ劇的な効果があったというケースもあり、小野市の例とも併せて全国的に有効と確認された対策は共有し運用の改善を図るべきでしょう。
その一方で医療給付が非常に生保財政上大きな支出割合を占めていることは周知の事実ですが、かねてこの方面の先進地で対策を講じると言う流れが出てきていた大阪からはこんな話が出てきたようです。

生活保護者、薬局限定制度導入へ 東大阪市、医療扶助抑制で(2013年6月12日西日本新聞)

 大阪府東大阪市は12日、生活保護を受給する市民が医療扶助で薬を受け取る際、薬局をかかりつけの1カ所に限定する制度を導入する方針を明らかにした。市によると、前例のない取り組みだという。

 8月から、生活保護受給者にかかりつけ薬局を申告するよう呼び掛け、登録作業を始める。

 生活保護受給者は、医療扶助として医療費が全額公費負担になり、窓口での本人負担がない。東大阪市では生活保護費の約40%を医療扶助費が占めている。薬を二重に受け取るなど、過度な薬の処方を防ぎ、医療費を抑制するのが狙い

 東大阪市の担当者は「受給者の健康管理のためにも重要だ」としている。

【生活保護費抑制】東大阪「かかりつけ薬局制度」導入へ(2013年6月12日ABCニュース)

東大阪市は、生活保護の受給者が薬を受け取ることができる薬局を1ヵ所に限定する「かかりつけ薬局制度」を導入すると発表しました。過剰な薬の処方を防ぎ、医療扶助費を減らす狙いです。

「かかりつけ薬局制度」は、生活保護の受給者に薬を受け取る薬局を1ヵ所、市に登録するよう指導するもので、今年8月にもスタートさせる予定です。東大阪市は人口全体のうち、生活保護受給者が占める割合が府内で3番目に高い自治体。生活保護費は今年度380億円を超える見込みで、うち医療扶助費が全体の4割を占めます。原則公費で負担する受給者の医療費の増加は大きな問題となっています。市の担当者は、「飲み切れないぐらいの薬を持ってる人もいる。それがなぜかというと(薬が)無料なので、ひとつの薬局であれば、以前に出してる分を重複して出すことはないと考えているので、(重複して薬を渡す)そういったところを極力少なくしていきたい」と話しました。一方、市民は、「困るんじゃないですかね?ひとつの場所って」「分散するよりはいいんじゃないですかね?不正に薬を手に入れることができれば、それを転売であったりとか、そういうのは納得いかないですけど」「賛成です。(生活保護を)もらったらいけないんじゃなくて、もらうんだったらありがたく正当な使い方をしてほしい」と話しました。東大阪市は、制度を導入することで過剰な診療や薬の投与を減らし、医療扶助費を抑える狙いとしています。しかし、制度に強制力はなく罰則も設けない見通しで、その効果は不透明です。

東大阪市:生活保護受給者は「薬局1カ所」 過剰処方防止(2013年06月12日毎日新聞)

 東大阪市は12日、生活保護受給者が薬を受け取る薬局を原則1カ所とする「かかりつけ薬局」制度を導入する方針を明らかにした。早ければ8月から受給者に薬局の登録を促す。過剰な薬の処方を防ぎ、生活保護費の抑制が狙いという。全国でも珍しい取り組みとしているが、生活保護受給者の支援団体からは「受診抑制が目的で、受給者の差別につながる」と制度を疑問視する声も出ている。

 市によると、同市の2012年度の生活保護受給者は2万1173人、受給者の割合は市民の4.17%でいずれも大阪府内ワースト3。生活保護費は約385億円に上り、うち43.4%を医療扶助費が占める。

 市は受給者が複数の医療機関を受診し、同じ薬を二重に処方されるケースがあるとして、かかりつけの薬局で管理すれば生活保護費の抑制につながると判断した。今後、具体的な運用方法を薬剤師などの専門家と協議する。

 一方、生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士によると、生活保護受給者の8割は高齢者や障害者などで、複数の医療機関にかかっている人が多いという。小久保弁護士は「健康と命に関わる問題。薬局ごとに品ぞろえが異なり、必要な薬が1カ所で手に入らないこともあり得る。適切な医療行為を受ける権利の侵害につながりかねない」と話している。【近藤諭】

表向きの話はともかく、生保受給者の一部で睡眠薬等を不正に取得し転売しているといった問題が出ていることは今さらの話題ですし、ジェネリック使用率も一般患者より低いなど医療費抑制に対する意識が乏しいと指摘されるだけに、気楽にあちらこちらのドクターショッピングを繰り返しては過剰な診療投薬を受けているというケースは少なくないわけです。
いくらなんでもそれはおかしいということで先発品を希望するなら後発品との差額を自己負担させようとか、医療費の一部は生保受給者も負担すべきではないかといった案が出ては進歩的な方々の反対にあって先送りになることを繰り返してきた歴史がありますが、今回のかかりつけ薬局規制はそういう面で見ると非常にうまく出来ていると思いますね。
そもそも現在のように院外薬局が導入されてきた際の理屈付けとして「各病院が好き勝手に薬を出していては重複投薬など患者様の不利益になる」と言う主張がなされていたわけで、進歩的な生保支援団体の方々が今さらその根本理念を否定するような主張をしたところで薬剤師会の方々も黙ってはいないでしょう(苦笑)。
また「薬局ごとに置いている薬が違うじゃないか」という主張なども院外薬局導入当初から言われていた話で、これも薬剤師会の方々が「いやいや、そういう場合は当方で責任を持ってすぐに手配致します」と確約してくださっているわけですから、医学的にも生保受給者の利益になることが確実なこうした政策を何故今まで先延ばしにしていたのかと行政の怠惰が問われかねない話ですよね。

大阪と言えば先頃「大阪に医療特区を」と国に要望を出していたようで、こちらは残念ながら?臨床面に関するものではなく研究等の話が主体であるようですが、ともかく言葉は悪いですが「大阪は日本じゃない」などと揶揄されるほど独特な社会慣行が存在する、言い換えれば各種社会問題においても非常に先進的な経験を豊富に持つ地域であるという言い方が出来ると思います。
別にそのことが悪いというわけではなくて、生保問題にしても国内最先進地である大阪発で様々なアイデアを試してみることでエヴィデンスを蓄積していく、そこから全国の後進地域にその知恵と経験を共有していくということが出来れば他地域にとってもメリットの大きい話ですし、大阪都だ、道州制だといった形から入る制度論以上に実利的側面から大阪の独自性をアピールするチャンスでもあると思います。
大阪では先頃から橋下市長がアメリカに行くの行かないのと騒ぎになっていますけれども、どうせ行くならお仕着せで通り一遍の場所を見回って終わりにするよりもこうした足下の問題に即応用出来るよう、あちらでの生保行政の実態などをじっくり見てこられた方がよほど有益な視察になるんじゃないでしょうか?

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コメント

ヤンキーは露骨だな~
それとも日本の2chみたいなとこなのかな?

投稿: | 2013年6月14日 (金) 09時04分

薬局一カ所は反対しにくいにしてもどれくらいの効果があるものでしょうね。
無茶な投薬受けてるのがわかったとして薬局に何が出来るのか?って問題もありそうですが。

投稿: ぽん太 | 2013年6月14日 (金) 09時55分

>小久保弁護士は「健康と命に関わる問題。薬局ごとに品ぞろえが異なり、必要な薬が1カ所で手に入らないこともあり得る。適切な医療行為を受ける権利の侵害につながりかねない」と話している。

かかりつけ薬局の存在意義を全否定する発言乙w
生活保護問題対策全国会議ってこんな奴ばっかだなww

投稿: aaa | 2013年6月14日 (金) 10時47分

>薬局に何が出来るのか?

重複処方なのに、漫然と投薬したら、薬局が査定を食らいます。
処方元に問い合わせた結果、重複投薬を指示されたら、処方元が査定を食らいます。
その他の無茶な処方も同様。

投稿: hhh | 2013年6月14日 (金) 11時32分

制度的にはそれなりにルールもあるのですが、違法な薬物流用などをやっている人々が素直に従ってくれるかという懸念は当然ですね。
このあたりは薬局に管理責任を丸投げするのではなく、生保保護費を出す行政側もきちんと協力する姿勢を示すことが必要だと思います。
まあしかし、まずはやってみると案外おもしろい話が沢山出てくるかも知れないと期待していますけれどもね。
今後のためにもきちんと前後のデータを収集し検証にまわしていただきたいです。

投稿: 管理人nobu | 2013年6月14日 (金) 11時47分

精神科の場合はもともと自立支援医療制度のもとで病院も薬局も1カ所に限定されます。この制度を利用するしないは基本的には患者さんの判断となりますが、生活保護を受ける場合は「他法優先」の原則から医師にこの制度の対象外と判断された場合を除けば100%この制度を利用することになります。
内科で睡眠薬を処方することが不可能ではありませんが、私のいる自治体では内科医に「睡眠薬の処方は精神科に依頼してください」と指導がいきます。
このルールが出来てから、睡眠薬の大量服薬によるトラブルは減っていると感じています。

必要な薬が1カ所で手に入らないという状況が理解しにくいのですが、よくある話なのでしょうか?私の担当する患者さんからそのような苦情をいただいたことがありません。

投稿: クマ | 2013年6月15日 (土) 10時38分

>必要な薬が1カ所で手に入らないという状況が理解しにくいのですが、よくある話なのでしょうか?

医師の処方した通りの薬が薬局に置いていないということであればかなり頻繁にありますね。
ただ急性期の薬はほとんどが決まり切ったものなので類薬同効薬で間に合います。
慢性期の薬はふつう緊急性がないので取り寄せてもらえば問題ないです。
ですから多少お待ちいただけさえすれば実際のところなにも問題ないと思います。

ただ生保の中でもナマポと呼ばれる人々がおとなしく待ってくれるかどうかでして…

投稿: ぽん太 | 2013年6月15日 (土) 11時44分

ぽん太さまへ
初めて行った薬局で特定の薬が置いていないことがあっても、たいていは1日あれば取り寄せ出来るはずですからねえ。
薬局を変更するときは数日分薬が残っている状態で処方箋をもらえば回避できるトラブルだと思いますが・・・
精神科の場合、おとなしく待てない患者さんはそうとう少数派ですよ。むしろ患者さんの家族の方が(ry

投稿: クマ | 2013年6月15日 (土) 12時49分

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