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2013年6月 4日 (火)

高齢者急増 様々な面で医療も介護も待ったなし

どこの業界でも顧客のモンスター化が叫ばれているのは今さらの話ではありませんが、本来社会的弱者として扱われてきたはずがいつの間にかモンスターに育っていた、などという話が聞こえてくるのがこちら介護業界のトラブルの話題です。

暴走化・トンデモ化する介護トラブル(2013年5月25日日経メディカル)

 医療トラブルのように深刻なケースは比較的少ないものの、介護トラブルもまた、トンデモ化や暴走化が進んでいるようです。

 『日経ヘルスケア』では今年3月、全国のケアマネジャーを対象に、介護保険サービスの利用者やその家族からのクレームや迷惑行為の実態についてアンケートを実施。「利用者や家族からクレームや迷惑行為を受けたことがある」との回答は4割に上りました(Q1)。

 クレームの代表例は、「スタッフの接遇・態度」(70.5%)、「サービス内容や質(転倒、誤嚥などを含む)」(50%)に関するもの。一方、迷惑行為として最も多かったのは、「過剰な(非現実的な)サービスの要求」(31.8%)。「お金を払っているのだから要求に応えるのは当然だと言い、特別扱いを迫られる」といったコメントも多数寄せられ、保険サービスへの利用者・家族の無理解に苦しめられる現場の姿が、浮かび上がる結果となりました(Q2)。

 では、アンケートや取材で明らかになった、事業者を悩ます介護トラブルの一端をご紹介しましょう。

長女と次女・三女の対立に巻き込まれ…

 介護保険外のサービスを求めてくる利用者やその家族は、決して少数ではありません。

「今日は帰りが遅くなりそうだから、私たちの食事も作っておいて
「飼っている猫の爪を切ってほしい

 訪問ヘルパーは家政婦ではないのですが…。利用者宅で1人でサービスに従事するため、不適切なサービスの強要に抗しにくい面もあるようです。

 また、利用者・家族からの迷惑行為も様々です。

他の利用者をやめさせろ」といった無茶な要求を次々出してくる。
職員の名前が気に入らない」と言い、担当ケアマネを変更させた。
訪問日にはなぜかいつも利用者の息子がいて、手伝うふりして体に触ってくる

 このほか、家族トラブルに巻き込まれるケースも結構あるようで、高齢者住宅に入居した男性の長女から「次女・三女は面会禁止にして」と言われ、次女・三女からは「父親に会わせないとは何様のつもり?」と激昂され、板挟みになって苦慮したエピソードも寄せられました。

 このほかで多いのが、物品破損や金銭紛失に関するトラブル。

「ヘルパーが来るたびに大金がなくなる
「雑な扱いで掃除機を壊された

 こうしたクレームが典型例です。責任の所在がはっきりとせず、介護スタッフ側の非が明らかでなくとも、面倒になるのを避けるために補償してしまうケースは珍しくないようです。特に、利用者側に認知症の兆候がある場合は、対応に難しさが伴います。

208万円の損害賠償を認めた判例も

 より深刻度の高い介護事故に関しては、事業者側にとって厳しい判決が多いのが最近の傾向です。リスク対策に注力していても、事故の事実があれば「結果責任」を問われ、「安全配慮義務違反」に基づく「債務不履行」を認める判決が増えているのです。2012年3月には東京地裁で、介護老人保健施設での転倒事故に関し、施設側に転倒回避義務違反による債務不履行を認め、約208万円の支払いを命じた判決が下りました。

 また、介護事故にまでは至らなくとも、利用者の病状や要介護度の進行が、加齢に伴う自然なものであっても、トラブルの火種になってしまうケースも少なくありません。

無防備な介護事業者 「対策を講じていない」が6割

 今回の調査で、「クレームや迷惑行為が増えている」との回答は3割に上りました。また、その特徴として、要求度が高く、かつ、収束が難しいと感じている事業者は少なくありません。その背景として指摘されるのが、(1)利用者やその家族の権利意識の高まり、(2)事業者数の増加、(3)自立支援へのシフト―です。

 事業者数の増加により、利用者や家族の立場は以前に比べて強くなっています。今、利用者の子世代に当たり、消費者意識が強い団塊の世代が主たるサービス利用者になるころには、「評価の眼はますます厳しくなる」との声も聞かれます。

 国の方針に沿って、従来の「お世話型介護」から「自立支援」にケアの方針を転換する事業者が増えているのもリスク要因といえます。従来型のケアを望む利用者からはともすれば、「サービスが悪くなった」と受け止められかねず、また、過剰なケアを控えるとなれば、サービス提供中の転倒事故などのリスクも高まります。

 にもかかわらず、事業者側のトラブル対策は進んでいないのが現状です。今回のアンケートでも、トラブル対策は「未整備」との回答が6割にも上りました。

医療業界では近年かなり訴訟対策が進んできましたが、介護の場合システム的な対策の不備はもちろんのこと、離職率が高いこともあって具体的なノウハウが継承されていないという側面もあるのかも知れませんね。
基本的には介護も医療と同じく今のところまだ売り手市場のはずですから、サービスがお気に召さなければ他所に回っていただくということもありだと思いますが、一方で必ずしも利益率が高いわけでもなく新規参入も増えていることから、少々の無理であれば聞いてしまうという事情もあるのかも知れません。
もちろん「患者様は弱者である」と勘違いした認識がモンスターを育てた医療同様、利用者に対する過度の配慮が間違った顧客意識を育てたということもあるはずで、このあたりは医療と同様需要に対して何よりスタッフの供給が少ないということであれば、これも医療と同様介護業者間でのスタッフ確保競争の一環として業務内容も待遇改善を目的に整理されていくことになるのでしょうか。
ともかくも厚労省の調査でも65歳以上の高齢者のうち認知症患者は15%、462万人、その前段階の軽度認知障害も400万人に上るとも言われ、もちろん身体的疾患も含めれば病気を持っていない老人の方が稀であると言っていい状況ですから、今後医療・介護需要は当分増える一方であり、それに伴い国民皆保険制度を標榜する日本の医療支出はまだまだ増加傾向が続くことは確実視されています。

先日は健保組合の代表から厚労省に高齢者医療への公費投入を拡充するとともに、消費税造精分を医療費に使うようにという要望が出されたようですが、長年続く高齢者医療費自己負担の優遇是正などとも併せて早急に改めるべきは改めないと、今後団塊世代が高齢者として社会保障を消費する側に入ってくると大変なことになりますよね。
興味深いことに先日アメリカから高齢者向け医療保険(メディケア)の財政状況がやや改善し、基金が財源不足に陥るのが従来予測より2年ほど先伸ばされる見込みだというニュースがありましたが、この背景としてオバマ大統領による「オバマケア」下での支出抑制策が奏功したことが挙げられています。
ご存知のようにアメリカの医療費は日本と比べて非常に割高で、このまま皆保険制度を導入したのでは財政負担も保険料も大変なことになるのは明白ですから、当然ながら何かしらの支払い抑制策を講じなければならないのですが、そのひとつが地域医療機関による組織The accountable care organization (ACO)で、特に高齢者に対するかかりつけ医の機能を発揮することが期待されています。

日本でも昨今メタボだなんだとうるさいのと同様こちらも入院になるような重症化を防ぐというのももちろんですが、おもしろいのは医療の質向上などで医療費を抑制できればメディケアの運営組織CMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)から減らしたコストの一部を報酬として受け取れるということでしょうか。
今後は報酬支払いも日本のような出来高制から、イギリスの家庭医などと同じく地域内の住民数による定額性人頭払いに徐々に移行していく予定だと言うことでますます医療費抑制効果が期待されるわけですが、おもしろいのはアメリカの医師に聞いてみるとおよそ2/3ほどは「コスト削減は期待出来ない」「医療の質は向上しない」「医師の裁量権を縮小する」と否定的であるというのはまあ予想通りですよね。
その一方で半数の医師が「オバマケアで医療アクセスは改善される」と答えていて、無保険者も少なくなく治療内容の制限の厳しかった民間保険時代に比べると皆保険制度によるメリットも一定程度期待されていることが判りますが、逆にもともと皆保険制度もあり老人医療に手厚かった日本ではこうしたアクセスの改善は今さら期待出来るというものでもなさそうです。
日本の場合はすでに急性期病院を中心に定額払い方式で医療費抑制を図っていますが、逆に言えば町の開業医などは相変わらず出来高払いで無駄な医療をすればするほど患者受けもいいし儲かるというシステムになっているわけですから、恐らく次の一手としては身近な中小医療機関を「より妥当な医療を行う方向」に(より安上がりな方向に、とはさすがに言わないでしょう)誘導することになるのでしょうか。

いささか脱線しますと近年盛んに総合診療ということが推奨されジェネラリストが非常に持ち上げられている、一方で新専門医制度下では基幹施設でバリバリやっている先生でなければ専門医資格は取れないし更新も出来ないと予想されていますから、恐らく近い将来非専門医を中心に総合診療へ移行していくことが期待されるようになるんじゃないかと言う気がします。
基本的には医師全てが何らかの専門性を持つべきだ、しかしいわゆる旧来の専門医的な資格は基幹病院にいる医者だけで十分となれば、そこらの大多数の町医者としては地道な日常診療でも維持出来る総合診療医資格でも取らないことには診療報酬の割り増しも受けられず経営が立ち行かない、ということになる可能性もあるかも知れませんね。
スペシャリストとジェネラリストは本来上下の関係ではなく対等な関係であるべきだと思うのですが、医師管理に都合が良いからと全員に何かしらの資格取得を義務づけるような形になってしまうと、かえってそこに新たな上下関係が出来上がってしまうような気がしないでもありません。

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コメント

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130604-OYT1T00062.htm

こういうニュースもあります。
最近は比較的施設に入所しやすくなっているように感じているのですが、地域差があるのでしょうか?

投稿: クマ | 2013年6月 4日 (火) 08時58分

元気な人がお金を出せばすぐにでも入れるんですよね。
でもお金がない人や介護度が高い人の待ち時間はまだまだ長いみたいですよ。
体が元気だけど認知症だけはげしい人なんて大変ですよね。

投稿: ぽん太 | 2013年6月 4日 (火) 09時16分

>トラブル対策は「未整備」との回答が6割にも上りました。

はいはい自業自得自業自得w

投稿: aaa | 2013年6月 4日 (火) 10時12分

病院での勤務経験がある介護スタッフでも医療訴訟の当事者になることはまずないですから、ましてや最初から近所のお爺ちゃんお婆ちゃんの世話をする延長で勤務している感覚のスタッフが訴訟慣れしないのは仕方ないです。
組織として利用者の要望とスタッフへの不利益との間のどこでバランスを取っていくのか、それによって介護サービス間でも次第に個性が出てくるんじゃないですかね。
「お金を出す利用者様は神様だ」でなんでも現場の負担を押しつけて済ませようとするような業者にはいつまでも優秀な人材は残らないと思いますよ。

投稿: 管理人nobu | 2013年6月 4日 (火) 10時53分

このうえ段階世代が乱入してきたらとんでもないことになるんじゃ…
どこの職場も近ごろじゃ団塊のクレームはんぱないらしいですよ。
介護の人たちはもっと危機感もったほうがいいんじゃないですか?

投稿: てんてん | 2013年6月 4日 (火) 19時16分

日本の医療機関は患者に甘すぎる
いつまでフリーアクセスで安価で高クオリティーの医療をなんて言ってるんでしょうか?
現場はそのせいで死にかけなんですが.........

投稿: | 2013年6月 4日 (火) 23時51分

まあ日本ほど患者に甘すぎる国って海外からすると信じられないでしょうね。
甘やかしてきた医療側も愚かだとは思いますが。「患者=弱者」だと権利意識を振りかざす輩どもはヤクザより質が悪い。
まずたいしたことない症状で誰でも彼でもいつでもどこでもスーパーフリーアクセスで軽々しく医療機関を受診しすぎでしょう。
つまらん事で医療機関を受診するなと言いたい。日本人の薬をもらわないと不安という薬剤依存症も深刻で馬鹿馬鹿しい。
高品質の医療を望むのであれば、医療を受ける側が高い費用を払うのが当然。そんな常識もわからないのかと。
ファストフード店でトップクラスのシェフの最高級食材の料理を出せとかいう馬鹿はさすがにいないですからね。

投稿: 逃散前科者 | 2013年6月 5日 (水) 14時37分

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