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2013年6月 7日 (金)

今度は医療特区だ、外国人医師導入だと医療改革のアイデアは盛りだくさん

本日の本題に入る前に一瞬「ネタか?!」と思うようなニュースでもあるのですが、先日非常におもしろいことを言い出したなという話がありましたので紹介しておきましょう。

日本中のニートが集まり全員が取締役に就任する「NEET株式会社」 面白法人カヤックの柳澤社長をゲストに説明会イベントを開催(2013年5月30日産経ビズ)

 中小企業経営者によるNPO組織「中小企業共和国」は、ビジネス誌出版大手の株式会社 プレジデント社とタイアップし、日本中のニートが集まり希望者全員が新しくつくる会社の取締役に就任する実験的なプロジェクト「NEET株式会社(仮称)プロジェクト」を発足し、6月11日に説明会イベントを開催します。

WEBサイト: http://neet.be/
(略)

■なぜニートが取締役なのか?
 成熟し閉塞した日本の社会を切り拓いていくためには、これからの新しいビジネススタイルやワークスタイルを自由かつ遊戯的に模索・提案できる人が必要だと考えています。そしてそれは、現状に違和感を抱き、既存の企業組織や雇用・就労の枠組みにおさまらない「進化するマイノリティ」の若者に他ならないはずです。これまでの調査活動を通じて、「ニート」と呼ばれる若者の中には、社会環境や時代の変化を敏感に感じとり、あえてそのような立場から様々な試行錯誤を重ねている人たちがたくさんいると分かりました。中小企業経営者が可能な範囲で経営資源を提供しながら、一緒に悩み、新しい組織のあり方やビジネスアイディアなどを模索していくのがプロジェクトの狙いです。
(略)
(プロジェクトを企画・運営する中小企業共和国は、MTG・ワークショップのプログラムや会場等を準備し会社設立に必要な費用は負担しますが、原則として出資は行わず、その後の報酬を保証するわけではありません。ただし、会員である中小企業経営者が可能な範囲でリソースを提供し、業務の受注やビジネスモデルの構築などをお手伝いしていきます。)
(略)

商売として直ちにうまくいくかどうかは判りませんけれども、今の時代では多くの場合NEETと言っても何らの場にも参加していないというわけでもなく、ネット等で外部とつながっていたりするわけですから、案外各人各様の得意分野を持ち合わせることで思わぬ大きな仕事が出来るようになるかも知れませんね。
旧来の日本社会を特徴付けていた新卒一括採用、終身雇用という労働形態が破綻していることは今や誰の目にも明らかになっていますが、その一方でそれに変わる自由な雇用形態の必要性が言われながら今ひとつこれぞという解が示されてはいない中で、とりあえず新しいことをやってみようという試みには無条件に賛同したくなります。
一方で新しいことをやるにあたって各方面の規制にがんじがらめになってしまいやりたくても出来ないということもままある訳ですが、昨今では特定地域内でだけ特殊ルールに従って運用される特区という制度があるわけですから、全国各地で地域の実情やアイデアに応じて様々な特区をもっと活用していくことが重要な社会実験にもなるはずですよね。
医療の世界などはもともと規制が厳しいことから小回りがきかない面があり、震災被害のあった東北地区などでは地域の実情にそった運営が出来るよう各種特区が模索されているところですが、そんな中で先日東京都知事が東京にも医療特区をと言い出しているようです。

[規制改革] 外国人医師が診療行える「特区」を東京に  猪瀬都知事(2013年5月22日メディカル情報サービス)

政府は5月22日に、産業競争力会議を開催した。この日は、菅内閣官房長官から「健康・医療戦略」に関する報告を受けたほか、成長戦略とりまとめ(6月予定)に向けた論点を整理している。

菅官房長官は、「健康・医療分野は、各省にまたがる問題であり、関係府省が一体となった戦略的な取組みが必要である」点を強調し、大きく(1)新技術の創出(研究開発、実用化)(2)新サービスの創出(健康寿命伸張産業の創出)(3)新技術・サービスの基盤整備(4)国際医療協力の推進―という4つの柱で、健康・医療関連市場を拡大していくことを報告している(p4~p5参照)。

(1)では、医学・医療を含めた科学技術研究の指令塔となる「日本版NIH(National Institutes of Health)」創設などを、(3)では、医療のICT化推進などを、具体的内容としてあげている。
(略)
さらに、この日は、東京都の猪瀬知事から、「国家戦略特区(仮称)」に関する提案も行われた。その1例として、「外国人医師(日本の医師免許なし)による医療行為」を認める特区などがあげられている(p68参照)。ちなみに、日本の医師免許を持たない外国人医師は、「臨床修練制度」により指導医の監督の下で医療行為を行うことが可能だ。
(略)

詳細(と言うほど詳しくはないですが)はリンク先のpdfを参照いただくとして、記事中にも出ている「臨床修練制度」に関しては以前にも何度か取り上げたことがありますが、段階的に拡大が図られているとは言え基本的に日本で新たに医療を学びたい医師向けに設定された制度と言え、期間も2年と限られることから活用されているのは各地の大学病院を中心でせいぜい年間数十人規模であるようです。
都知事の要望は外国人入国審査等の簡略化と同じ文脈で提出されたもので、もっと容易に外国人医師が日本の臨床現場で働けるようにしようと言う意図があるようですが、当然ながら日医(苦笑)は例によって断固反対し田村厚労相も「相当に難しいハードルがある」と難色を示しているということですから、そう簡単に実現するものかどうかは極めて微妙な情勢ですよね。
ただすでに前政権下の3年前に当時の仙谷戦略相も外国人医師の診療容認を検討云々と言及していて、こちらは日本が診療に招くようないわゆる世界的名医を念頭においた発言だと思われますけれども、近年の規制緩和の流れからすると今まで駄目だったからと無碍に否定すべきものではないようです。

こうした話題が出るたびに、よく「外国人に開放されても日本になんて来ないよ」という声があって、それは外国人看護師問題を見ても日本語というハードルも高く、また「日本人は時間を守らない」と言われてしまうほどの医療現場の粗悪な労働環境も問題ですけれども、その辺りは実のところ規制の日本流の医療システムに乗っかってしまえばという話でもあるわけですね。
現時点でも特定国の医師免許を持っていれば医師免許互換制度により極めて限定された診療なら行えるようになっていますが、東京のような大都市であれば母国語圏の患者を相手にするだけでもそれなりに商売になるはずですし、それこそ外国人相手を専門にするクリニックというのもありでしょう(もっとも診療自体は母国語でやれたとしても、いざという時の紹介先をどう確保するかが課題になりそうですが)。
日本では皆保険制度が前提で保険のルールを変更することで医療統制を行っていますが、逆に言えば保険診療でなければかなり自由が効くと言うことでもあって、自由診療クリニックでアメリカの保険会社の医療保険が使えるということになればそれは日本でいながら医療の自由化に他ならないし、場合によっては日本人からも「アメリカ式医療」を試してみたいと考える人が出てくるかも知れませんね。
2010年に日経ビジネスが行った外国人医師参入に対する調査がありますが、おもしろいことに医師は2/3がNOと答えたのに対して一般市民(患者)は7割超がYESと答えたと言い、あるいは日医などが混合診療解禁絶対反対!などと叫び続けていることに既得権益だと反感が高まりつつあるということなのか、患者の間では「黒い猫でも白い猫でも鼠を捕るのが良い猫だ」という考えが勢力を拡大しつつあるのかも知れません。

実のところ国民皆保険を軸とする医療制度の枠組み自体もどうなるか先行き不透明なところがあって、先の記事でも日本版NIHを創設しようなんて話が出ているように医療分野は徹底的に競争力をつけさせるよう改革を進めるべきだと言う考えも根強くあって、特に先のノーベル賞受章で一気に盛り上がりつつある再生医療に関しては現行制度のままでは日本はあっという間に世界に追い越されてしまうという危機感が強いようです。
総理がわざわざ先進医療の認定を早め、どんどん範囲も拡大していくべきだと言い出したこともこの文脈に沿って考えると非常に理解しやすい話なのですが、考えて見ますとこの先進医療というもの自体も混合診療の抜け道として日医などが医療特区や外国人医師と並んで反対の立場を示してきたもので、先日の医薬品通販解禁で薬剤師会を敵に回し、今度は日医も敵に回しでは総理も大変ですよね。
もっとも独自候補を通すことも出来ない業界団体の意向ばかり気にしていたところで政治の実は挙げられないという考え方もあるわけですし、総理も高支持率を背景に改めるべきところは毅然と改めていくという姿勢を取ることもまた、既得権益というものに人一倍敏感な現代の世相にあった政治のあり方なのかも知れません。

首相 先進医療速やかに認定し範囲拡大(2013年6月5日NHK)

安倍総理大臣は経済の成長戦略に関する5日の演説で「先進医療」について速やかに認定を行い、範囲を拡大していく方針を打ち出しました。

日本の公的医療保険制度では、医療保険が適用される診療と適用されない診療を併せて行う、いわゆる「混合診療」は認められておらず、こうした診療が実施された場合、本来は保険が適用される診療分も含め、全体が自己負担となりますが、厚生労働大臣が個別に安全性や有効性を確認した「先進医療」については、例外的に「保険外併用療養」として、保険が適用される診療と組み合わせることが認められていて、去年までに、95の技術が認定されています。
5日の演説を受け、厚生労働省は、まずは、「先進医療」の認定への要望が多い、抗がん剤治療について、ことし秋をめどに、審査期間を短縮するための新たな仕組みを整備することにしています。
具体的には、専門の外部機関による評価機関を新たに設けるなどして、審査を効率化し、医療機関の申請から認定までの期間を、現在のおよそ半分のおおむね3か月程度を目指すなどとしています。
このほか、厚生労働省は再生医療や最新の医療機器についても、同じように審査を迅速化することを検討しています。

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コメント

今後新しい医療技術はまず先進医療からはじめて保険収載という流れになるんでしょうか。
お金持ちが安全性有効性の確認に協力してくれると考えたら貧乏人も納得してくれるのかな?
あとはリスクも承知で先進医療を受けたのだから何かあっても自己責任と割り切ってくれたらいいんですけど。

投稿: ぽん太 | 2013年6月 7日 (金) 08時47分

都知事さんの想像している外国人医師像と、実際に日本にやってくる外国人医師層に相当ギャップがあるんじゃないかな。
日本の安い保険診療で払える給料でも来日する外国人医師ってどこの国の医師なんでしょうね。
自由診療で費用を負担できる層なら、自分が外国に行けばいいので、医師を招く必要ないわけですし。
都知事さんはスーパードクターを思い描いているんでしょうが、実際にやって来るのは怪しげな療法を商売にする医師というのは想像に難くないですね。

投稿: hhh | 2013年6月 7日 (金) 09時51分

前知事と言い都知事とは思いつきでやれる仕事らしいw

投稿: aaa | 2013年6月 7日 (金) 11時10分

外国人医師の招聘ですか(苦笑)どんな物好きか情弱者が来るのか注目ですね。
患者をひたすら甘やかせてきたスーパーフリーアクセスの環境でドクターショッパーやモンスターだらけの理不尽な患者達に対応できるのか?たぶん無理でしょう。騙されて来日しても1年ともたずに帰国するでしょうね。
まあ貴重な体験として、日本の医者の奴隷労働の実態が世界に発信される契機になればと期待はしたいですが。

投稿: 逃散前科者 | 2013年6月 7日 (金) 11時46分

外国人医師は多寡が問題なのではなく、どのような労働をするかが問題なのだと思いますね。
おそらく日本人医師のポジションをそのまま引き継ぐのではなく、独自の仕事をすることになると思います。
もちろん日本人と同じ仕事をして本当にすぐ帰国してしまうようなことになれば、それはそれでよい問題提起になるでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2013年6月 7日 (金) 13時12分

>患者をひたすら甘やかせてきたスーパーフリーアクセスの環境でドクターショッパーやモンスターだらけの理不尽な患者達に対応できるのか?たぶん無理でしょう。騙されて来日しても1年ともたずに帰国するでしょうね。

強制連行と強制労働で謝罪と賠償w
*しかも今度は後者は事実ww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年6月 7日 (金) 14時53分

なるほどスーパードクターKとは韓流の意味だったか!

投稿: | 2013年6月 7日 (金) 15時38分

外国人医師ですか・・・私の代わりに精神科外来を1日60人(午前30人、午後30人)診療出来るレベルの方が来られるのなら喜んでお迎えしますが。
精神科領域、特に精神病院や総合病院精神科部門で外国人医師が活躍できるイメージがわきません。
外国の方が精神疾患の時は帰国を促すのが基本なので通院も入院もほとんどおられませんし。

投稿: クマ | 2013年6月 8日 (土) 07時30分

別に誰も来ないんだったら制度に反対してもしなくても変わりないことね?ほっときゃいいじゃん

投稿: | 2013年6月 8日 (土) 08時32分

医療現場を何も知らない政治家のアドバルーンやパフォーマンスは笑止です。ハコ(診療所)だけ作っても誰一人来ないで赤っ恥。

投稿: 逃散前科者 | 2013年6月 8日 (土) 15時11分

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