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2013年6月 6日 (木)

医薬品ネット通販 ほぼ全面解禁

すでにマスコミ等で大々的に報道されていますけれども、先の違憲判決を受けて一気にネット販売規制解除へ動き始めていた一般用医薬品販売の件が、いよいよ「ほぼ」全面解禁で決まったということです。

<薬のネット販売>市販薬99%超解禁 政府方針(2013年6月3日毎日新聞)

 ◇1類の一部のみ除外

 政府は2日、一般用医薬品のインターネット販売に関し、現在禁じている抗アレルギー剤や一部胃腸薬などの第1類と一部解熱鎮痛薬などの第2類のうち、副作用リスクが最も高いとされる第1類の一部を除く薬について認める方向で最終調整に入った。全面解禁は見送るものの、市販の一般用医薬品約1万1400品目の99%超に当たる。安倍晋三首相が5日に東京都内で成長戦略に関して行う講演で表明することを目指し、近く田村憲久厚生労働相や稲田朋美行政改革担当相ら関係4閣僚が協議する。

 市販薬は副作用リスクの高い順に▽第1類(約100品目)▽第2類(約8300品目)▽ビタミン剤などの第3類(約3000品目)--に分類されている。厚労省は1、2類について「薬剤師などによる対面販売が不可欠」としてネット販売を認めてこなかったが、規制を違法とした1月の最高裁判決や、政府の規制改革会議などの要請を受け、政府・与党で見直しを検討。最も品目が多い第2類は全て解禁し、第1類についても、かつては医師の判断でしか使用できなかった市販薬(スイッチOTC薬)をリスクごとに分類、特に危険度の高いものを除き、解禁する方向だ。

 医薬品のネット販売を巡っては、慎重派と解禁派の対立が解けず、厚労省の有識者会議は5月31日、両論併記の報告書をまとめている。自民党内では7月に参院選を控え、慎重派の日本薬剤師連盟や日本医師連盟の反発を押し切ることには慎重な意見が強い一方、規制改革を担当する稲田氏らは全面解禁に積極的。こうした情勢を踏まえ、高リスクの第1類の一部はネット販売の規制を続ける半面、大半の市販薬については認める方向となった。【佐藤丈一】

ちょうど先日所用でとある薬局チェーン店に行った折に一類医薬品を買う機会があったのですが、こちらでは対面販売と言っても本店の薬剤師とタブレットの画面を通じて話をするだけで、こういうシステムであれば別にネット販売と何ら変わるところがないなと改めて感じました。
規制緩和の重要性が言われているのは今に始まったことではありませんが、そもそも何故ネット販売を禁止するのかについてこの文明開化の時代に店頭に出向かなければならない積極的な理由が見当たらなかった、少なくとも司法も納得出来る説得力がある見解を打ち出せなかった以上はいずれこうなることは予想されていたところで、実際にはどのようにしてネット販売の安全性を担保するかが今後問われてくると思います。
すでに大手業者などではきちんと問診等を充実させていますし、場合によっては業界自主規制等に留まらずネット販売を行う業者に対する新たなルールを整備するということも考えられますが、少なくともネット販売は危険で対面販売なら安全という根拠も示せないまま既得権益的にネット販売全面禁止を続けるというのは無理があったと言うことですね。

規制維持派の中には「対面で始めて判ることがある。ネットではいくらでも嘘がつけるじゃないか」という声もあるようですが、それでは百歩譲って対面販売でなら薬剤師は顧客の嘘を見抜ける自信があるとして、見抜いた時に「あなた嘘をついてますね。それじゃこの薬はお売りできません」と面と向かって言える薬剤師がどれほどいるのかということも考えなければならないということでしょう。
もちろんネット販売は大手に有利なシステムで、長年地域のドラッグストアを運営してきた零細個人業者にとってはますます経営環境が悪化する要因ともなり得るはずですが、10年前の常識なども時に有害無益にしかならないほど日進月歩の医療業界に連なる以上、時代についていけないということはそもそも医療に携わる資格がないというのと同じことだと深刻に受け止めてもらわなければならないでしょうね。
日々新薬も出る、病気の治療法も変わると言った情報のアップデートをきちんと行えるという前提が成立しているからこそ正しい患者指導も出来るのは当然で、その大変さに比べればシステム的な変更などいくらでも対応出来て当たり前の範疇だというくらいの気持ちでやっていかなければ、今時どんな商売でも経営がうまくいくはずがないということです。

いささか話が脱線しましたけれども、今回の大筋合意で少し気になるのが全面解禁という表現をとっているメディアもある一方で、「ほぼ」全面解禁だとか「99%」解禁だとか微妙な表現をしているメディアもあるということです。
特定方面からあれだけ根強い反対意見が続いていた問題だけに様々な議論があったのでしょうが、どうも話としてはまず全面解禁にすべきだという筋論があった、それに対して裏技的な対応で実質全面解禁という形に落とし込んだということであったようですね。

<薬ネット販売>「全面解禁」せめぎ合い 新ルール検討(2013年6月5日毎日新聞)

 政府は4日、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を、副作用のリスクが高い一部を除いて解禁する方針を固めた。市販薬約1万1400品目のうち99%超のネット販売が認められることになる。医師の診断と処方が求められる医療用医薬品から市販薬に転用して間もない鼻炎用薬、解熱鎮痛薬などリスクが高いとされる25品目を中心に、解禁の例外として専門家が安全性を審査し直すなど新たなルールを検討する。

 安倍晋三首相が5日、成長戦略第3弾に関する演説で表明し、政府が14日に閣議決定する成長戦略に盛り込む。

 菅義偉官房長官、田村憲久厚生労働相、甘利明経済再生担当相、稲田朋美行政改革担当相が4日、首相官邸で協議し大筋合意した。

 これに関連し、首相は4日の参院経済産業委員会で「ネット販売を広く認めることで、店頭で購入できない消費者の利便性を高める」と強調。「安全性を確保できる新たなルールを早急に策定するよう尽力する」と理解を求めた。

 市販薬は、副作用リスクの高い順に1~3類に分類されており、厚労省は1、2類のネット販売を認めていない。しかし最高裁は1月の判決で、この規制を違法と判断。ネット販売が事実上「解禁」された状態になった。首相官邸は、これを規制改革の「目玉」作りにつなげようと、厚労省を押し切った

 4日の4閣僚会合では、残る1%未満の薬の扱いをめぐる結論を持ち越したが、妥協策として、ネット販売にふさわしいかどうか、厚労省が専門家による会議を設け、決めてもらう案が浮上。「全面解禁」をアピールしたい官邸としては、ネット販売に適さないと判断された市販薬を、医療用医薬品に分類してしまえば「結果的に市販薬を100%解禁した形にできる」(首相周辺)というわけだ。

 一方、自民党内に目立った反発は出ていない。ある厚労族議員は「首相はネット業者の言い分を聞いた。ネット販売の99%解禁に踏み切れば、参院選で日本薬剤師連盟は自民党のために動いてくれないだろう」と語るが、最高裁判決に加え、7月の参院選に向けて政府・与党が「一枚岩」であることを演出する必要もあり、不満の声は大きくなっていない。

 実際、自民党を支持してきた薬剤師連盟は2007年参院選で組織内候補が落選。10年は当選したものの今回は独自候補の擁立を見送っている。同党を支持してきた団体の弱体化が総じて進むなか、首相サイドが改革姿勢のアピールを優先したとの見方も出ている。

 ただ、ネット販売解禁と成長戦略を結び付ける首相の姿勢には、自民党だけでなく政府内にも懐疑的な声がある。内閣府幹部は「これは政治銘柄だ。農業や解雇ルールなど『岩盤規制』の改革を参院選後に先送りしたため、一つは成果が必要だった」と解説してみせた。【佐藤丈一、横田愛】

具体的に例外扱いとする薬品名はまだ明らかになっていませんが、そもそもせっかく誰でも買えるようになったと大々的に売り出した薬なのですから現状維持とは言え利用者の意識の上では一歩後退したような感覚も受けるところで、この辺りは一時的な例外措置にとどめるべきだし、また市販後の期間などでなくあくまでも予想されるリスクの高低によって例外にする医薬品を選定するべきですね。
それよりも「安全性を確保出来る新たなルールを早急に策定する」ことの方がよほど現実的な必要性が高いのは言うまでもないことで、怪しい通販業者による健康被害の実例を見ても無制限にどこの誰にでも通販を認めるのがいいのか悪いのかで、店頭販売の義務付けなどよりもきちんとした商売を行う通販業者の選別の方がよほど国民の健康に重大な影響がありそうです。
その一方で既存店も全く無風とはしないところで、そもそも店頭販売とは言っても単に薬剤師がいます、一類医薬品も買えますでほとんど問診もなにもなく右から左へレジを通している販売店も現実存在している以上、店頭販売だから安全ではなくきちんと安全対策をしていることを担保する義務は実店舗側にも通販同様に存在しているはずなんですね。
近い将来通販が一般化すると否応なく店頭販売のスタイルも変化していくことになると思いますが、業界団体としても通販と店頭販売の危険性比較が可能なデータを集め公表するなど、今後はきちんとしたエヴィデンスに基づいた議論をしかけていくことが必要なんじゃないかという気がします。

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コメント

平たく言うと薬剤師涙目?

投稿: | 2013年6月 6日 (木) 08時27分

やっと6年制での供給が安定してきたというのにこれじゃ業界先細りだなw

投稿: aaa | 2013年6月 6日 (木) 10時01分

ネット上での仮想対面販売が主体になると、これまでの定時勤務から交代制での24時間勤務への移行もあり得るかも知れませんね。
いずれにしても薬剤師需要がどうなるかはもう少し様子を見るべきだと思います。

書き忘れましたが当然ながら市販薬の使用は自己責任になりますから、こういうエントリーも参照いただき慎重な使用を心がけていただければと思います。

市販薬=安全な薬ではない
http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-1427.html

投稿: 管理人nobu | 2013年6月 6日 (木) 10時46分

薬剤師一人の零細薬局はどのみち後継者難で廃業予定のところが多いですよね。
これも薬局統廃合のきっかけにはなるでしょうけど決定打じゃないでしょう。
郊外のドラッグストアも増えたから田舎の個人薬局がなくなってどの程度影響があるでしょうね?

投稿: ぽん太 | 2013年6月 6日 (木) 14時21分

薬は人体にとって異物ですから、基本的にクスリ=リスクだと認識すべきでしょうね。毒をもって毒を制する目的なわけですが。
ネット解禁になったと言う事は、薬を購入する側にも添付文書を読む、用法用量を守るなどの自己責任が問われるわけですから、
何かあっても文句を言える相手もなく、自己責任意識が高まっていいのではないでしょうか。
怪しい通販業者による悪事も増える温床にはなるでしょうが。
自分は古い人間なので、現物を確認せず人と交渉もせずに買い物するのはどうも気持ち悪いので、ネット通販では買い物しません。OTC薬もたぶん店頭で買いますね。同じような意識の人は特に高齢者世代には多いんじゃないでしょうか?

投稿: 逃散前科者 | 2013年6月 6日 (木) 16時22分

レジのおねえちゃんにエロ本差し出す気恥ずかしさ
通販は等しく国民の権利として認められるべき

投稿: 大王 | 2013年6月 6日 (木) 17時21分

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