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2013年6月 3日 (月)

国策によるジェネリック推進 「安いから」だけでいいんですか?

後発医薬品(ジェネリックあるいはゾロ)の使用促進が言われてすでに久しいところですが、実際のところどのくらいの費用削減効果があるのかと疑問を呈した記事が出はじめているようです。

【社説】GE薬の医療費削減効果検証を(2013年5月31日薬事新報)

 4月5日に厚生労働省が公表した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」。この冒頭で、使用促進の必要性として、患者負担の軽減や医療保険の改善、さらには医療費資源の有効活用を図ることで、国民医療を守ることを挙げている

 昨年度末までの目標値だったジェネリック薬(GE薬)「数量シェア30%」は全ての医療用医薬品を分母としていたのに対し、今回のロードマップでは長期収載品とGE薬を含めたGE薬に置き換え可能な医薬品を分母とし、2018年3月末までの数値目標として60%達成を掲げていることが新たな特徴でもある。これは5年間で約1・5倍増を目指すことになるため、現在の普及状況を踏まえても高い目標値となる。

 併せて、業界団体に対してもGE薬供給ガイドラインの策定や、全てのGEメーカーに対する「安定供給マニュアル」の作成を課した。具体的には安定供給では品切れ状況の把握のため医療機関や保険薬局にモニタリング調査を行い公表する。GEメーカーに対しては、原薬調達や供給能力に関する計画作成を求めるほか、15年度中の品切れ品目ゼロを掲げる。GEメーカー側に対し、従来以上に、「安定供給」「品質に対する信頼性の確保」「情報提供」などの拡充を求めている格好だ。

 ただ、こうした国を挙げてGE薬使用促進策を打ち出すという方針とは別に、考慮すべき点がある。07年10月に策定し、昨年度末までの目標値を設定して取り組んできた「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」の検証だ。数量シェア30%という数値目標の未達の要因、さらには過去5年間の使用促進による対医療費削減効果については明確な検証結果は報告されていない

 この5年間、診療報酬上の様々なインセンティブを付与することで、医療関係者によるGE薬使用は進んできた。また、多くの薬学関連学会などでは、医療機関や薬局におけるGE薬の導入に伴う薬剤費削減効果なるものは報告されている。ただ、あくまで個々の施設における現状の話にしか過ぎない

 これまでのところ、国はもちろん都道府県レベルでも、GE薬数量シェアの進捗状況は大きくクローズアップされ公表されているが、GE薬使用が、医療保険財源の抑制効果にどの程度寄与したのかといった具体的な金額は示されていない

 GE薬市場に限って言えば、大手と呼ばれるGE専業メーカー各社は、これまでの使用促進が負い風となり、ここ数年間は、ほぼ増収基調で推移。今期には連結売上高1000億円を達成する企業も登場しそうな勢いにあるなど順調に拡大しているといえる。

 17年度末までの数量シェア60%を目標値として掲げ、その附帯の取り組みとしてGE薬の製配販をより盤石なものとする意味では意義あることだ。と同時に今後は、GE薬使用に伴う対医療保険財源軽減効果の現状報告が待たれるところだ。

しかし医師の処方変更が進まない原因のひとつである「ゾロはいつ供給が止まるか判らない」という不安に対して安定供給を推進させるなど、一通りの対策を講じてはいることからもジェネリック使用率はそれなりに上がってきているようですが、国が求めるような欧米諸国並みという水準に至らない理由としては幾つかが挙げられると思います。
一番の理由としてはジェネリックを出したとしてその処方を出した医師には何らのメリットもないということで、もちろん診療報酬上の手当はいくらか行われていますけれどもそれは勤務医などにとっては勤務先の儲けであって自分の儲けではなく、思いがけない副作用出現や薬効変化といった処方変更に伴うデメリットに比べてメリットが特にないわけですよね。
勤務先の病院側にしても最近では薬価引き下げと院外処方化でかつてのような薬価差で儲ける時代ではなくなっていますが、そうはいっても患者側も保険者からジェネリックへの変更を求められる事も多く、もちろん支払いも多少なりとも安くなりますからどうでもいい薬に関して処方変更を求められて断る医師も少ないとは思いますが、わざわざ進んで処方変更をさせるにはもう一押しが必要ではないかという気がします。
それ以前に本当に国が「同じ成分同じ効果」と考えているのであれば公定価格の保険診療においてメーカーによって値段が違っているということがそもそもおかしな話なのであって、特許切れした時点で先発品も後発品も全て妥当な新薬価を設定するなりして統一価格にすれば別に面倒くさいことなど何もないはずなのですが、そうしないのは本音の部分ではまた違うということなのでしょうか?

いささか脱線しましたけれども、記事中にもありますようにジェネリックのシェアが向上していることで医療費抑制にどの程度貢献しているのかを考える上で実際にどの程度薬剤費がかかっているのかが問題になるはずですが、どうも国はジェネリックの比率ばかりを気にして実際に薬剤費が安くなったのはどの程度かということはあまり気にしていないようなんですね。
医療費支出中に占める薬剤費の割合がおおむね20%強だと言いますけれどもこれは包括払い(薬剤費も含めて全部まるめ)の分を含まない数字で、実際にはそれよりもやや多く25%~27%くらいだと言う試算があるようで、金額にすると医療費36兆円の中の9兆円程度が薬剤費ということになりますが、実際にはこれに薬局での調剤に支払う技術料が1.7兆円ほど加わることになります。
ジェネリックの値段が先発品の30~70%くらいと言いますから単純に半額として計算すると、国の言うように全体の3割をジェネリックに置き換えると約1.4兆円程度が節約出来るということになりますけれども、実際にはジェネリック加算などで薬局への技術料分が増えているはずですから実質的には1兆円強くらいになるのでしょうか。
もちろん1兆円と言えば小さくない金額なのは事実ですが、日本の場合飲みきれないほどの薬をもらって捨てられる薬剤もかなり多いという事情を考えると出す薬そのものを減らして薬剤費を圧縮する方向へ持っていた方がより効率的かつ医学的にも有意義なのかも知れず、実際に担当地区内の住民数によって報酬が決まっているイギリスの家庭医システムでは薬剤費そのものが極めて低く抑えられ、国民の医療満足度も非常に高いことが知られていますよね。
別にイギリス式の医療が素晴らしいなどと日本の大多数の医師は考えもしていないでしょうけれども、医師側としては別に多く出す分には損はないのだし万一に備えてと過剰に処方する傾向がある中で、財政のみならず医学的妥当性の面からももう少し違うアプローチはないのか、ジェネリック推進は単なる医療費削減だけに使って終わりなのかと考えて見るとこんな記事も気になってきます。

◆トレンドビュー◎高齢者に優しい後発医薬品 製剤の工夫で差別化図る後発品が次々登場(2013年5月31日日経メディカル)より抜粋

 小さな錠剤に商品名を印字する、口腔内崩壊(OD)錠化や小型化で飲みやすくする──。昨今、後発医薬品(以下、後発品)の使用増加に伴って、患者や医療従事者が扱いやすい製剤が増えてきたことを、ご存じだろうか。

 10年ほど前から後発品の調査や使用推進に携わっている横浜市立大病院薬剤部担当係長の小池博文氏は、「価格が安いだけではなく、利便性を向上させた後発品が増えてきた」と指摘する。

 最近は、後発品メーカーの間だけでなく、先発医薬品(以下、先発品)メーカーと後発品メーカーの間でも、良い意味での競争が起きているという。小池氏は、「以前なら、新薬の発売後に製剤が改良されることは少なかったが、今は後発品というライバルの出現で、先発品でも製剤の改良が進んでいる」と話す。
(略)
 一方、後発品メーカーが、既存の薬剤にない規格を発売することもある。例えば、プレドハン錠2.5mg(ニプロファーマ)は、プレドニン錠5mgの半量規格として2003年に発売された。

 横浜市大病院薬剤部医療安全管理室担当の後藤洋仁氏は、「2.5mg錠が登場する前は、プレドニン錠5mgが半量処方されると、固い錠剤を潰し、半量を測って調剤していた。手間と時間が掛かる上、製剤のロスが生じるのが難点だった」と話す。初めから半量の製剤があれば、このような問題は回避することができる。

 北村氏は、「後発品の開発は、低価格を維持するため投資コストを抑えながら、先発品との生物学的同等性などを維持しつつ、いかに製剤改良を加えるかが醍醐味」と話す。ただ、そうした工夫を施した後発品があっても、医師には情報がなかなか行き渡っていないのが現状だ。沢井製薬戦略企画部広報グループの長澤彰子氏は、「後発品メーカーはMRが少ないのがネックだが、これからはMR、自社ホームページなどを使って、医師にも積極的に後発品の情報を提供していきたい」と話している。

小児や高齢者などで錠剤が飲めないからと粉砕処方しようとすると「それでは薬効が変わってしまう」と薬局から待ったがかかるという経験をした先生も少なくないでしょうが、後発品が先発品と同じものであるという国の描いた絵空事から離れ、むしろ違うものだということを追求していくことによって単に安いだけというものではない独自の価値が出てきたということですね。
もちろん先発品メーカーも同じように改良を進めているのでしょうが、単に薬の剤形を変更しただけでも吸収や薬効が以前と同じであることを証明しなければならないのですから、どうせ同じような手間が必要なら最初から新しい形で出してくる後発品メーカーにバリエーション展開は任せて自分たちは変わらないことに重点をおいた方が効率的という考えもあるでしょう。
管理人自身は別に熱心なジェネリック否定論者でもありませんが、先発品もジェネリックも同じものであると国が主張するからこそ多くの医師から「いや違うだろ実際」とツッコミが入っているのは事実であって、その違うということ自体に積極的な意味が見いだせるのであれば先発品優先で処方している医師からも「それならこういう時にはジェネリックの方がいいね」と考える人も出てくるはずですよね。
そう考えるとジェネリック普及推進で本当に改めるべきなのは単に医師も医療経済学に目覚めよといった話ではなく、医学的根拠に乏しい医師の処方行動や利用者本位の薬剤開発といった部分であるべきなのでしょうが、残念ながら「同じ成分同じ薬」という国の宣伝こそが今やジェネリック普及にとって一番の逆風になっている気がしないでもありません。

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コメント

新薬を開発するほどの技術力はなくても飲み方を工夫できる知恵があれあ売れるんですね。
特許は取れないけど実用新案は取れるみたいなものでしょうけどいいんじゃないですか。
でもこういう工夫って日本人は得意そうなのに今まであまりなかったのは国の審査が厳しかったせいですかね?

投稿: ぽん太 | 2013年6月 3日 (月) 08時50分

>わざわざ進んで処方変更をさせるにはもう一押しが必要ではないかという気がします。

ジェネリックメーカーに限って接待を復活させようw(ゲス顔で提案)

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年6月 3日 (月) 09時43分

前から不思議なんですが、ときどきジェネリックできわだって安いのありますよね。
たとえばこの表みるとアムロジピン2.5mgが先発品薬価が30ちょい、ジェネリックがだいたい15~20くらいなのに10切ってるのがあります。
http://www.okusuri110.com/cgi-bin/dwm_yaka_list_se.cgi?2171022&%83A%83%80%83%8D%83W%83s%83%93%20%83x%83V%83%8B%8E_%89%96
こういうのって原価どうなってんでしょうね?

投稿: たまちゃん | 2013年6月 3日 (月) 10時15分

>>こういうのって原価どうなってんでしょうね?

先発品が開発費込みで値段が高すぎる。
ジェネリックでやっとボッタクリ価格が少し是正された。
そこからディスカウントして売るのは何もおかしなことじゃない。

投稿: 蒲田 | 2013年6月 3日 (月) 10時33分

ゾロがぞろぞろ出てくるということはそれだけ需要があるわけですから、開発費の回収は終わっているとみるべきでしょう。
製造コストだけならゾロの価格でもやっていけるのであれば、先発品も後発品並みの薬価にすれば国も患者も医師も喜ぶ結果になると思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年6月 3日 (月) 11時08分

薬価引き下げは製薬会社の抵抗があるんじゃないですか?
金はあるんだから献金もしてるだろうし。

投稿: | 2013年6月 3日 (月) 12時36分

ジェネリック以前に調剤薬局がどれだけ医療費節約に貢献したのか、是非とも検証していただきたいものです。

「医者は儲けるために薬をバンバン出す」などと言われて拡大した医薬分業ですからね。

投稿: hhh | 2013年6月 3日 (月) 15時31分

先発品メーカーにとって必ずしも薬価引き下げは損ではないと思われ。
厚労省の目標であるジェネリック比率60%超が達成されれば売り上げは1/3に急落する。
そして先発後発を問わず一度処方変更されると医師も患者もそのまま続けたがるもの。
それならばジェネリック並みに薬価を半額に引き下げられてもシェアを維持した方がいいのでは?

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年6月 3日 (月) 15時33分

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