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2013年5月27日 (月)

奨学金とはそもそも返すべきものなのか?

国全体で学生の数が漸減していっている中で医学部定員は大幅増となっていることは知られていますけれども、この副作用として医学部生のレベル低下が深刻だと医学部教官などを中心に懸念されるようになりました。
もちろん昔とカリキュラムが異なっているのですから単純比較は出来ないですが、ついにその懸念が一般にも広まってきたかと思われるのがこちらの記事です。

偏差値60切る医学部出現 学生のレベル低く関係者は頭痛める(2013年5月22日NEWSポストセブン)

 高齢化社会を迎えた日本が抱える大きな問題の1つが医師不足である。現在、日本の医師の数は29万5079人(2010年末)。人口10万人に対して230人という割合は、欧米先進諸国と比べて最低レベルにある。しかし、これを解消しようとしてきた結果、今、新たな懸念が生じている。

『バカ学生を医者にするな!』(毎日新聞社刊)の著者で長浜バイオ大学の永田宏教授が、こう指摘する。

「医師不足の切り札として、2008年度入試から大学医学部の定員を大幅に増やした結果、医師になるハードルは年々下がっています

 2007年に7625人だった医学部定員は、2013年度に9041人にまで増加している。しかし、実は昔から、医師国家試験の合格率は90%前後で推移しており、ほぼ変わっていない。つまり、医学部さえ出ればほとんどが医師になれるのだ。

 18歳人口からみても、1960年には18歳の人口200万人に対し、医学部の定員は2840人。704人に1人しか医師になれなかった。しかし、2012年になると、132人に1人はなれるのである。

 さらに、医師不足の地域格差を解消するため、大学は、卒業後の一定期間は地元で医師をすることを条件に奨学金を出す「地域枠」を増やした。

事実上の推薦入試です。しかし、普通に入試で合格する優秀な学生は都会に出るので、定員割れを起こしている。必然的に入ってくる学生のレベルが低く、関係者が頭を痛めています」(永田氏)

 定員増とともに、医学部の偏差値も下がり始めているという。永田氏が続ける。

「AO入試や推薦で学生を確保して定員を埋めるので、見かけ上の偏差値は高いままです。しかし、実際には偏差値60を切る医学部というのはすでに出ています。熾烈な受験戦争を勝ち抜いた団塊ジュニア世代の学生と比べると、かなり“劣化”しているのは間違いない

 そうやって入ってきた学生の質の低下は、やはり問題視されているようだ。2011年、全国医学部長病院長会議の調査によれば、「学生の学力が低下している」と回答した医科大・大学医学部は93.8%にも上る。対策として、多くの大学が1年次に高校の生物などの補習を行なっているという。
(略)

最近ではセンター試験7割でも医学部に通る、などと言う風の噂は聞きますけれども、考えて見れば一昔前は私学などでは補習授業や早期からの国試対策が当たり前だったわけですから、それが国公立にまで広がってきたという考え方も出来るということなのでしょうか。
もちろん何をするにもいわゆる地頭がいいに越したことはないでしょうけれども、そもそも医師であることにどれほどの能力が必要であるかは議論のあるところですし、むしろ過去のマスコミ等による医師たたきの構図を見てみれば「世間の常識も知らないエリート共が…」式のものも多かったわけですから、偏差値50の平均的学生が医師になるということも別に悪い話ではないにかも知れません。
このあたりは国試合格率、合格者数の推移なども含めてもう少し経時的に見ていかないことには結論を出せない問題だと思っていますが、当座彼ら学生自身に大いに関係しそうな話としてこういう問題が勃発しているということは知っておいた方がよさそうですね。

日本学生支援機構が586人の奨学金取り消しを追加(2013年5月23日J-CASTニュース)

  大学生らに奨学金を貸す日本学生支援機構が2012年度に支給している学生を再調査し、「警告」を出していた学生の中から新たに586人の奨学金を取り消した

   支援機構は学生の学業が疎かだったり、留年するなどし、貸し出すことが不適格と判断した学生に対し、警告、停止、廃止の処分を大学側と協議の上で決定している。警告は、奨学金の交付を継続するが,学業成績が回復しない場合は,次回の適格認定時以後に奨学金の交付を停止するか奨学生の資格を失わせることがある措置。停止は休学したり病気などで大学に通えないものに対し一時的に支給をやめる措置。12年度は支給している全91万人余りの学生を調査し、1万846人を廃止にした。警告を出された奨学生は1万2329人いたが、支援機構はこのたび初めてこの警告を出した奨学生を再調査し、586人が廃止にあたるとの判断を下した。

奨学生600人貸与打ち切り 支援機構、大学の審査覆す(2013年5月23日朝日新聞)

 【大西史晃】大学生らに奨学金を貸している独立行政法人日本学生支援機構が昨年度、学生の所属大学などによる「適格認定」を覆し、約600人の奨学金の原則廃止を大学側に通知していたことがわかった。返還の滞納が社会問題になる中、異例の対応で奨学生の審査に厳しく臨む姿勢を示した。

 同機構から奨学金を借りている学生は毎年、新年度を迎える前に、返還義務の自覚や家計の状況を記入した「継続願」を提出する必要がある。所属する大学や専修学校が、学業への姿勢、成績などを基に貸与の継続にふさわしいかを審査。やむを得ない理由がないのに留年したり、ほとんど単位を取っていなかったりする場合は最も厳しい「廃止」と認定し、学生は借りる資格を失う。次いで、最長1年貸与を止める「停止」もある。

 昨年度の継続分についての審査は、91万人余りが対象となり、廃止は1万846人、停止1万2187人だった。一方、「このままの状況が続けば、次回の認定以後に廃止または停止する」という意味合いの「警告」となった奨学生が1万2329人いた。

まず話の前段として近年この奨学金返済が滞っている人が多いということが非常に大きな問題となっていて、この就職難の時代を反映してか10年倍の2倍にあたる実に33万人が奨学金返済不能だと言いますから制度自体が立ちゆかないと言う騒ぎになるのも当然なのですが、一方で奨学金など返す必要はないといって裏マニュアルめいたことを言い出す人も相当数いるようなのですね。
もちろん契約として返しますと約束して借りた以上はきちんと返すのが筋ですが、就職できず返せないにしろ確信犯的に返さないにしろ学生時代から講義には出ない、単位は全く取得出来ずといった人の方がよりそうした危険性は高いんじゃないだろうかと誰だって思いますよね。
考えて見れば奨学金などと言うものは勉強したいがお金がなくて断念するしかない人に学問の機会を与えるものであって、そもそもまじめに勉強する意志も能力もない人に貸し与えるというのがおかしい、受給にあたって資格審査をもっと厳しくしないと駄目じゃないかという考え方もあるはずですが、どうも今の時代そう簡単なことではないようです。

最近学生と話していても確かに奨学金を取っている人が多いとは感じていたのですが、今やなんと大学生の過半数が奨学金を利用しているというほど奨学金頼りの進学が当たり前になっている、そしてそれを嫌って高卒で就職すると言っても今度はバブル期に比べて実に9割減と言うほど求人が全く無いと、もはや「無理な金額を借りてでも進学するしか選択枝がない」という悲惨な状況にあるということなのですね。
そもそも昔は貧乏人は頑張って国公立に行け、などと言われるほど貧しくても勉強できる環境は存在していたのに、私学との格差是正などの理由で年々学費が上がりとても学業のの片手間のバイト代で払えるような金額ではなくなってしまったため親のすねかじりが出来ない人間は無理な借金を承知で奨学金に頼るしかなくなった、そしてそんな学生の足下を見るように有利子奨学金枠が近年急拡大しているのですから、これは貸す方にも社会にも問題なしとしません。
さらに言えば諸外国を見ても奨学金と言えば貸すのではなく与えられるものであって、後で返す必要があるものは学生ローンと言って奨学金とは区別されているにも関わらず、日本ではほぼ無審査で有利子の奨学金を貸し付ける、そして返せないから問題だと大騒ぎしているのですから、これは何かが少しおかしいんじゃないかという気がしますね。
一方で同じ日本でも外国人留学生には返済無用の給付型奨学金が非常に充実している、その上学費はそもそも免除で渡航のための旅費や生活費までも出してくれると言うのですからあまりに格差が激しすぎるというもので、諸外国とは全く真逆と言っていいほど自国の学生には厳しく外国人学生ばかりを優遇する方針もさすがに今の世相でどうなのかということですよね。

日本でもようやく有利子型奨学金(という名の学生ローン)から無利子型を経て給付型奨学金を拡大していこうという話が出ているようですが、まずはポストバブル世代が親となっていくこれからの時代にあわせて親の援助無しでも進学できる環境を整えることが必要で、ただ金を出すのは惜しいと思うなら例えば学生が登録した職種でのバイトをすれば国なりが割り増し料金を出すといった「努力すれば報われる」方式もありかと思います。
また時折進歩的な民間企業などが社員にお金を出して専門教育を受けさせるといった話もありますけれども、こうした制度は実のところ専門資格取得と就職とが表裏一体の関係にある医師や看護師といった職種にこそ適しているのは当然で、今まではあまり表だってやっていなかったこうした行為も同種行為が世間で美談だとされているのであれば医学教育の世界でも少なくとも「あり」であっていいはずですよね。
現実にこういうことが明るみに出るとまず間違いなく「現代の御礼奉公制度だ!」などとマスコミのバッシングを受けるのは確実という気もしますが、考えて見れば今話題の地域枠なども自治体が率先して御礼奉公システムを整備しているのも同じなのですから、別に地域枠の信奉者というわけでもありませんが官がやれば英断で民がやれば人権侵害というのも何かおかしな話だなという気もします。
いずれにしても医療系専門職の場合馬鹿だろうが一応きちんと卒業させ国試に合格させれば今のところ確実に一定の収入が得られる環境があり、当然ながら借金の返済率も高いことが期待されるのですから、まずはこのあたりのリターンが見込める領域で何かしら制度的改革を試みてみることは金を出す側にとっても悪くない話じゃないかと思うのですけれどね。

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コメント

奨学金って金儲けのためにやってることだったんですね。
学生相手の金貸しでもちゃんと審査くらいしなさいよ。

投稿: kou | 2013年5月27日 (月) 08時24分

このあいだは偏差値の高い学生が医学部にばかり集まるって言ってませんでした?
偏差値が高ければ文句を言い、低くっても文句を言い・・ どうせよと?

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年5月27日 (月) 08時51分

>偏差値の高い学生が医学部にばかり集まる

たぶんどっちも正しいのでしょう。
偏差値の高い方から5%が医学部に集まっていたのが10%まで集まったとしたら医学部集中とレベル低下が両立しますから。
でもこれだけ就職に有利なんだから寄るな集まるなっていうのも無理があるんじゃないかって気が。

投稿: ぽん太 | 2013年5月27日 (月) 09時29分

利子付きで金を貸してるものを奨学金っていうのは詐欺でしょ。
ちゃんと学生ローンって名前があるんだからそう呼ぶべきだ。
「学生がローン地獄で返済に苦しんでる」っていえばいいんだよ。

投稿: カネゴン | 2013年5月27日 (月) 10時26分

学力低下の問題に関してはむしろ医師たるもの尋常ならざる高能力の持ち主でなければならぬと言う風潮になる方が弊害があると考えているので、個人的にはそれがあったとしてもあまり問題視していません。
そもそも今騒いでいるのは変化が急激なので教える側に「今までならこれくらいは出来ていたのに」という戸惑いがあるということで、長期的には「まあこんなものか」と納得して落ち着くところに落ち着くと思いますね。

奨学金問題は奨学金というものがそこまで無審査で貸し付けられていて、それに頼らざるを得ない学生が過半数というのが問題だと思います。
だいいち奨学金を学生ローンと置き換えればとっくに大きな社会問題のはずですから、そう報じない側にも何か理由があるということなのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2013年5月27日 (月) 11時19分

奨学金も給付制にして学費も下げてほしいですね。
特に私立の医学部は高すぎるので下げてほしいです。
5000万もの学費は普通の家庭には無理です

投稿: | 2013年5月27日 (月) 12時58分

>5000万もの学費は普通の家庭には無理です

残念wそれバ○しかいかない霰粒次第の料金だからww

投稿: aaa | 2013年5月27日 (月) 13時07分

借金を返済出来る見込みも立ってない人に融資するのだから、普通の金融機関では余程の金利を付けないと貸せません

学業によって本人の収入が上がり、返済出来る見込みが高くなるから、利子付奨学金があることを忘れてはなりません

奨学金問題で忘れてはならないのは、学生が借金するのに見合う授業をして、生産性を上げているか?その学費は適性か?と言う問題です。
バカな学生の授業料の救済はバカ大学への補助金と変わりありません

理由なく留年したり勉強しない学生への融資を止めるのは、無駄な借金を増やさない意味でも、学生に対する正しい方針だと思います

投稿: Med_Law | 2013年5月27日 (月) 14時10分

私たちの学生時代と比較すると講義や実習には格段に力が入れられているように感じます。
ただそのせいで夜遅くまで学生が拘束されてしまい、アルバイトでの自活能力が損なわれているようです。
教官の先生はぜひ量だけでなく質も高めメリハリのある教育をしてやってほしいです。

投稿: 匿名希望 | 2013年5月27日 (月) 14時27分

>残念wそれバ○しかいかない霰粒次第の料金だからww
帝京なんかも一般人に門を開いてほしいです。
学費が安くなれば難易度も上がると思うんですよね。
逆に地方国立は下がりそうですが,,,,,,

投稿: | 2013年5月27日 (月) 14時55分

新設医大承認すればカスみたいな三流ばかりになりそうだから出来の悪い学生は増えるだろうね
それでも卒業して免許さえ取れたらちゃんと金は返してくれる優良学生だが

投稿: かっちゃん | 2013年5月27日 (月) 15時31分

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