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2013年5月 1日 (水)

医者も患者をみている

本日の本題に入る前に、こちら例によって例の如くという先日出ましたニュースから紹介しておきましょう。

岸部診療所長が辞職へ、上小阿仁村 五城目の内科医、非常勤に(2013年4月26日さきがけweb)

 上小阿仁村国保診療所の岸部陞(すすむ)所長(76)=前北秋田市長=が今月末で辞職する。北秋田市社会福祉協議会が運営する介護老人保健施設「ケアタウンたかのす」の常勤医に転じるため。

 岸部所長は平日の週5日、1人で内科診療に当たっており、辞職後は当面、村と非常勤契約を結んだ五城目町の内科医が金曜日のみ診療する。

 岸部所長によると、今年2月に市社福協から打診され、3月上旬に中田吉穂村長に辞意を伝えた。同施設の常勤医は体調を崩しているといい、岸部所長は「市長時代、ケアタウンの運営にはできる限り協力すると約束していた。小学校時代を過ごした村で診療を終えるのは心残りだ」と話した。

上小阿仁診療所長 退職へ(2013年4月26日読売新聞)

 上小阿仁村で唯一の医療機関「村立上小阿仁国保診療所」で所長を務める岸部陞(すすむ)医師(76)が、今月30日付で退職することが25日、わかった。村は後任の医師を公募中だが、応募はない。このため、5月から診療時間を大幅に縮小せざるを得ず、村民の健康への影響が懸念されている。

 元北秋田市長でもある岸部医師は昨年11月、当時所長を務めていた医師が健康上の問題を理由に退職したため、後任が見つかるまでの臨時で所長に就任。内科と外科を担当してきた。

 村によると、岸部医師は3月下旬、村長に直接辞意を伝えた。北秋田市の介護福祉施設で施設長に就任するためで、所長就任前から打診されていたという。

 加賀谷敏明・副村長は読売新聞の取材に対し、「多方面から引き合いがあるなか、村の窮状を理解して来ていただいたので、退職はやむを得ない」と話した。

 後任が決まるまで、月曜だけ診察している泌尿器科の佐々木秀平医師(70)が、臨時で所長を務める。だが、内科と外科の専門医がいないため、5月以降、毎週火曜~木曜は休診となる。金曜日は外部から医師を招き、2時間だけ内科と外科の診察をする。村民への影響を懸念し、村は希望者を北秋田市内の医療機関まで無料で送迎するバスを運行する。

 加賀谷副村長は「せめて1日おきに外部から医師が来る態勢が整うまで、送迎を続ける。できる限り柔軟に対応し、村民の健康に影響が出ないようにしたい」と話した。

 同村は人口2697人(3月末時点)で、高齢化率は県内最高の45・3%。同診療所を巡っては、2011年5月、所長の女性医師が一部村民からの中傷を受けて辞めるなど、公募で任命された所長医師4人が08年12月~12年11月、連続して自ら退職した。岸部医師は公募ではないが、4年4か月で所長医師5人が辞めることになる。

記事から読む限りでは別に喧嘩別れというわけでもない円満退職といった感じなのですが、同村に赴任する以前から関わりのあった施設で以前から就任を打診されていたというくらいですから、早晩そちらに行ってしまうことが判りきっている先生にとりあえず一時しのぎでの所長就任をお願いしていたものが結局後任が来ず時間切れという形でしょうか。
後任医師の当てはないということで当面は無料バスによる近隣医療機関への送迎でしのぐようですが、そもそも隣接する北秋田市に立派な総合病院もありそちらに通えば済む話ではないか、多額の経費を投じてまで村立診療所を運営する意味があるのかと以前から言われていたところですから、一部の村民にとってもむしろこの状況は渡りに船ではないかと思います。
コストにしろ診療体制にしろ毎日バスを走らせた方が診療所を運営するよりも断然安上がりに済むということに理解が得られれば、後任医師が一向に見つからないことをこれ幸いと診療所閉鎖に持っていくというスケジュールをすでに思い描いているのかも知れず、長年聖地としてあがめられてきた同村も最後に地元出身の先生にも立ち去られたことでいよいよ最終的な決断への踏ん切りがつくことになるのでしょうか。

上小阿仁村の件はそれとして本日の本題ですが、医師にとって患者は全て平等かと言えば全くそんなことはなく、人間である以上それぞれの医師の持つ内部基準によるランキング、序列化がなされているのは当然と言えば当然でしょう。
ただ医療業界の中でもとりわけ医師の場合、例えば「高い商品をぽんぽん買ってくれる」といった判りやすい基準で内部序列化が図られているかと言えば必ずしもそういうわけではなくて、世間的には鼻つまみ者のアウトロー的立場にある方々でも患者としては優良顧客と言うこともあり得るし、人格その他個人情報は全く無視でその医師の興味ある疾患の持ち主かどうかといった観点でのみ見られている場合もあるわけですね。
ただ最大公約数的にこれは医師から好かれ親身になって診てもらいやすいだろうなというキャラクターの患者もいればその逆も当然あるわけですが、先日出ていましたこちらの「多くの医師に嫌われやすい患者」像は一見して意外なようでいてなるほど、それはそうかも知れないと感じさせる妙な説得力がありそうにも思えます。

太った患者には医師は冷ややかに対応する傾向があると判明:アメリカ(2013年4月25日IRORIO)

医師たちは体型がスリムな患者に対しては優しく、肥満患者には素っ気ない態度となると判明した。

これは米ジョンホプキンス医科大学の研究者たちが明らかにしたもの。調査では39人の医師が、208人の患者たちとどのような関係を築いているのか見るため、会話を録音した。高血圧の治療のため訪れた患者に対し、医師として下す診断や治療、薬のアドバイスや診察時間などは患者の体型に左右されることはなかった。ただし会話においては、太り過ぎの患者に対しては言葉がずっと素っ気なくなり、健康全般に対しての気遣いにも、普通の体型の人に対するよりも配慮が欠けていた

それはなぜか。研究者たちは、医師が健康に従事するものとして、太り過ぎの患者は自分を助けるためにもっとやるべきことがあると感じてしまい、尊敬の念を持ちにくいからと考えている。一方で医師と良好な関係が結べない患者は、専門的なアドバイスがあまり響かず、医療効果が割り引かれてしまう可能性があるという。

研究を率いたKimberly Gudzune教授は、「医師と患者の絆と共感は、両者の関係にとって必要不可欠なもの」だと語る。「医師が肥満患者に共感を示せば、患者は医学的な進言に忠実になりやすい。カウンセリングに応じて生活態度を改めることが、肥満患者の体重減少と健康の向上に結びつく」とも述べている。

医師との何気ない会話が治療の鍵となる可能性を示唆したこの調査結果。医師は自らとの関係性を最も必要とし、それが治療に効果的に結びつく相手を間違ってはいけないということなのだろう。

世界に冠たる肥満大国アメリカでこんなことを言ってしまうと診る患者もいないんじゃないかと思ってしまいますが、日本でも名の知られているようなアメリカ人には案外病的肥満者を見かけないことからも判るように、やはり彼の地でも肥満者に対しては健康に関心もなくインテリジェンスも低い人、自己管理能力に欠け大事な仕事は任せられない人という予断や偏見が入ってしまいがちではあるようです。
特に今回の場合は高血圧という生活習慣病の治療目的でやってきた患者が対象ということですから、「どうせこいつに難しい生活管理の話などしても仕方がないんだろうな…」と言う意識が態度に出てしまいやすいのかも知れませんし、洋の東西を問わず肥満者は心理的外圧に鈍感でこたえないという偏見も素っ気なく配慮に欠ける言動を助長したのかも知れませんね。
日本でも例えば糖尿病患者を対象に同様の調査をすればもっとあからさまな結果が出るかも知れませんけれども、やはり医師としても治療なりアドバイスなりをした結果確実に患者がよくなったという達成感が欲しいでしょうから、最初からどうもこの人はうまく行きそうにないぞと思えてしまう患者には情熱を注ぎがたいのは仕方ないところでしょう。

お互い人間ですから「そんな偏見を持つとはケシカラン!」と憤慨するよりも、患者側としてはどうしたら医師の偏見を回避して同じ料金でより良い医療を受けるかを考えた方が効率的だと思いますが、病院にかかると思っていなかった発症直後の初診の段階では仕方ないにしても、慢性疾患で長く通院していたりした場合には患者としても指導されたもののうち何か一つでも実行するくらいの努力は見せたいですよね。
また病気ではないものの、毎年職場健診で問題点を指摘されるものの一向に改善がない、それどころか生活指導なども受けているにも関わらず年々ますます状態が悪化してついに要治療になってしまった、といったパターンは社会常識的に考えてもどうなのかというもので、その上「俺は全く健康なのに勝手にひっかけやがってコノヤロウ」などと不満たらたらな様子ではどうしたって快い対応は期待できそうにありません。
そこまで医者に媚びなければならないのかと言えば別に必須条件というわけではないのですが、医療の場合はやはり医師と患者との情報格差が大きくちょっと見ただけでは正しい治療を受けているかどうかも判りにくいところがありますから、やはり専門家が気持ちよく自分の能力を発揮出来る環境を整えていってやった方が余計な疑心暗鬼に駆られずに済むということですよね。
冒頭の上小阿仁村なども数々の医師が相次いで退職して今や押しも押されぬ聖地扱いですけれども、それでも逃散した代々の先生方からお金の支払いが渋かっただとか言う話も出ない程度にはちゃんと報いてはいたようですから、逆に言えばお金以外のちょっとした心がけで医師と気持ちよく出来ると言うことであれば老若男女誰でも自分の努力次第で良い医療を受けられるチャンスはあるということではないでしょうか。

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コメント

上小阿仁村が責任もってケアタウンの常勤医をさがしてやったら前市長がたま突きでもどってくるんじゃない?このさい条例でもなんでもつくってそういうことできるようにしたらいいのに

投稿: なのはな | 2013年5月 1日 (水) 07時42分

つか専従職員に一日中ハイエース走らせたらコストは1/10ではるかにいい医療が受けられるんだから診療所なんて誰得よ⁈

投稿: | 2013年5月 1日 (水) 09時04分

村民の理解が得られるなら、こういう場合は玉突き方式が確実なんでしょうけどね。
ただ自治体財政が真っ赤だそうですから、本音の部分では存続も痛し痒しでしょう。
今回は診療所廃止へ向けたいい予行演習になりそうです。

投稿: 管理人nobu | 2013年5月 1日 (水) 13時06分

::::::::        ┌─────────────── ┐
::::::::        | 岸部がやられたようだな…      │
:::::   ┌───└───────────v───┬┘
:::::   | フフフ…奴は僻地医療団の中でも最弱 …  |
┌──└────────v──┬───────┘
| でも上小阿仁村相手じゃ    |
| しかたないよね          │
└────v─────────┘
  |ミ,  /  `ヽ /!    ,.──、      
  |彡/二Oニニ|ノ    /三三三!,       |!
  `,' \、、_,|/-ャ    ト `=j r=レ     /ミ !彡      ●  
T 爪| / / ̄|/´__,ャ  |`三三‐/     |`=、|,='|    _(_
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 松沢          有沢       伊尻     西村

投稿: | 2013年5月 1日 (水) 13時21分

素人考えだと田舎暮らしがイヤだからお医者さんも集まらないように思うんですが。
それだったら都市部に住んでもらって通勤手当出したらいいんじゃないですか?
時間が来たら帰っちゃえば夜通し患者さんが来て眠れないってこともなくなりそうだし。

投稿: サラ | 2013年5月 1日 (水) 15時00分

>都市部に住んでもらって通勤手当出したらいい

おっしゃるように一泊二日の非常勤中心でまわしたりしているところもありますな
ただこういう土地では村の金を出している=俺の医者という感覚が強いものですから、へたすると給料泥棒とも言われかねんでしょう

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年5月 1日 (水) 17時03分

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