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2013年5月 8日 (水)

高齢者医療・介護制度改革は未だ慎重な足取り

すでに各方面で報じられている通り、かねてその是正が言われながら一向に話が進んでこなかったというあの優遇措置が、今回もまた先送りになったということです。

医療費:2割負担先送り 70~74歳、来年度以降へ??政府方針(2013年5月6日毎日新聞)

 政府は、70~74歳の医療費の自己負担割合(原則2割)を1割に抑えている特例措置の廃止について、2014年度以降へ先送りする方針を決めた。「ばらまき」との批判に配慮して今年度中の廃止にも含みを持たせていたが、7月の参院選もにらみ、高齢者の反発を避けることを選んだ。

 70~74歳の医療費の自己負担割合は、08年度以降、1割から2割に引き上げることが医療制度改革関連法で決まっている。しかし、当時の自公政権が直前に方針を転換し、特例措置とした約2000億円の税金を投入して1割に据え置いた。民主党政権も踏襲した。

 一方、現政権は12年度補正予算で据え置きに必要な予算枠は確保しながら、13年度の途中で廃止する可能性もあるとしていた。しかし、システム改修に時間がかかるうえ、公明党は特例を廃止する場合には、引き換えに医療費の自己負担を一定額以下に抑えている高額療養費制度を拡充するよう求めている。【佐藤丈一】

70~74歳医療費「2割負担」予算編成で検討 田村厚労相(2013年5月7日産経新聞)

 田村憲久厚生労働相は7日の記者会見で、特例措置として現在1割に据え置いている70~74歳の医療費窓口負担を本来の2割に引き上げるかどうか、平成26年度予算の編成過程で検討する考えを示した。

 田村氏は「できる限り早く(2割に)戻したいが、低所得者対策も打たないといけない。26年度予算も含めて議論する」と述べた。

 2割に引き上げれば、負担増となる高齢者の反発を招くのは必至。政府、与党は参院選への影響も懸念して、25年度は窓口負担1割を継続するための経費を補正予算に盛り込んでいる。

毎回のように選挙が、高齢者の反発がと言っては先送りになってきたこの話、それでは実際に費用の多くを負担している現役世代の反発は気にしなくても良いのか?と思うところでしょうけれども、このあたりの仕事や子供のことも手が離れそれなりにまだ体の自由も効くという年代は、投票行動というものにもっとも熱心そうではありますよね。
ただ後期高齢者になればこうした優遇措置はなくなるわけですから高齢者の反発とひとくくりにされるのもおかしな話で、先の衆院予算委で田村厚労相も「早く2割に戻すべきだ。必ず戻す」と明言している以上、少なくとも今政権のうちに何とかしていただくべき課題ではないかと思います。
その田村厚労相ですが、今回の優遇是正先送りに関連して前述のように平成26年度予算編成過程で検討すると、要するに参院選後に考えますと改めて表明した形なのですが、気になるのは先の予算委での答弁と同様ここでも繰り返し低所得者対策云々と言うことを主張しているということです。
高齢者=離職して収入が少ない人々という捉え方で口にしているのでしょうが、70歳前後と言えば退職金などの蓄えもまだまだ十分あって最も多くの資産を抱え込んでいる世代でもあるのですから、単純に所得が低いのだからいくら資産があろうが優遇すべきだという考え方を大臣が持っているのだとすれば問題なしとしないように思います。
田村厚労相と言えば生保受給者の医療費問題に関してもずいぶんと抑制的な発言をしていたことが記憶にありますが、先日社会保障制度改革国民会議の提言を受けて厚労省の方から出てきた軽症者である要支援の人は介護保険の対象から外し自治体によるサービスに移行するという方針に対しても、同省トップでありながらこういった慎重な発言をしているようです。

厚労相、介護保険「軽度」見直しに慎重姿勢- 地域格差を懸念(2013年5月7日CBニュース)

 要介護認定で「要支援」と判定された軽度の高齢者に対するサービスを、介護保険給付から市町村事業へ移行させることが社会保障制度改革国民会議で提案されたことについて、田村憲久厚生労働相は7日の閣議後の記者会見で、「受け皿がないのに事業を移していくと、地域によって(サービスの質に)差が出てくる」と述べ、慎重な姿勢を示した

 その上で田村厚労相は、市町村事業に移行させるには、地域で受け皿が整うかどうかを見極めたり、サービスを受ける高齢者の意見を聞いたりする必要があるとの認識を表明。「いずれにしても介護報酬の改定に絡む話。(社会保障審議会などで)ご議論いただいた上で検討していく」と述べた。

 市町村事業への移行は、増加が続く介護保険給付費の抑制が狙い。国民会議が4月の論点整理で、「軽度の高齢者は、見守り・配食等の生活支援が中心であり、要支援者の介護給付範囲を適正化すべき」と提起している。
(略)

もちろん厚労省の方針自体も自治体からすれば勝手に負担を押しつけられる形ですから文句の一つもあってしかるべきだと思うのですが、地域で受け皿が整うのを見てから移行をするという話であれば、自治体としてはわざわざ自分達の首を絞めるような受け皿整備に励む気になるはずもありません。
そもそもの大前提として国として介護保険も財政負担増が今後ますます厳しくなるものと予想される中で、現状のシステムのままではいずれどうしようもなくなることが判っているというのであれば、例えば認定基準を厳しくして要介護認定を実質減らしていくような形になるくらいなら、まだしも要支援を別枠でという形の方が深刻な影響は少ないかも知れませんね。
厚労省の方針はともかくとして、田村厚労相の言うことも個別に見ていればもちろんそれなりに妥当な懸念という言い方も出来るのですが、厚労省が何かしら改革を言い出すたびに省庁のトップから「いやそれは社会的影響が…ごにょごにょ」と慎重な姿勢を示してばかりいるというようにも受け取られかねないというのは、スピード感ある改革が求められている昨今の状況に照らし合わせてもどうなのかです。
選挙への影響を考慮してとにかく無難に、現状維持で既得権益には手をつけないで行こうという判断なのかも知れませんが、改革に反対する民意も存在するならば改革を望む民意もまた存在するはずで、あまり何でも先送りばかりではかえって選挙にも悪影響が出てくるということにならないでしょうかね。

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コメント

>保守(ほしゅ、英: conservative)、あるいは保守主義(ほしゅしゅぎ、ラテン語: conservare、英: conservatism)とは、古くからの習慣・制度・考え方などを尊重し、急激な改革に反対すること。

田村さんは立派な保守政治家ですね。

投稿: かねちん | 2013年5月 8日 (水) 09時33分

政治の世界では総じて革新を名乗る側の方が保守的な気がいたします。

投稿: てんてん | 2013年5月 8日 (水) 10時08分

かなりしがらみの多い方のようですから、どうしてもあちらこちらへの配慮が必要になるんだと思いますけどね。
ただ選挙対策ということで考えるのであれば、今は守るべき時ではなく攻めるべき時のような気がします。

投稿: 管理人nobu | 2013年5月 8日 (水) 12時11分

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