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2013年5月24日 (金)

僻地医師不足問題 そもそも本当に医師が必要なのか?

長年医師集めに関して殿様商売を続けてきた地方の自治体病院が、医局による医師配給システムの崩壊に伴って医師不足にあえいでいることは今さらの話なのですが、昨今ではこうした状況を「医療の貧困」と呼ぶようになったようです。

救急や産科、へき地の「医療の貧困」打破を-全自病が厚労省などに要望書(2013年5月17日CBニュース)

 全国自治体病院協議会(全自病)と全国自治体病院開設者協議会は17日までに、病院の勤務医・看護師確保や、ドクターヘリの運用緩和などを求める要望書を厚生労働省や総務省などに提出した。地域医療の“最後の砦”の自治体病院が抱える問題点の改善を求めたもので、良質な医療の提供を行うために欠かせない16項目の重点施策を据えた。

 要望書では、病院勤務医の絶対的な不足や、診療科・地域偏在といった「医療の貧困」が、日々悪化してきていると指摘。こうした状況を打破するため、へき地医療や救急、産科などの病院勤務医の負担軽減が不可欠とした。具体的な事例として、夜間救急への「コンビニ受診」を挙げ、「かかりつけ医療機関への受診などによる救急医療の確保や勤務医の負担軽減について、新聞・テレビなどの媒体を活用した国民への周知を継続的、強力に行う」との抑制策の導入を求めた。

 さらに、病院内で深刻化している麻酔科医不足の“対症療法”も明示。麻酔科医が足りない病院に対してドクターヘリを使って派遣することを可能にするため、ドクターヘリの使用法を限定している関連法の改正を行う必要があるとした。
(略)
 また、小児科や産科、外科、精神科などの勤務医の不足が原因で、分娩の取り扱い中止や、病床の一部休止などを余儀なくされている実態を踏まえ、勤務医の養成や支援を行う「地域医療支援センター」の全国的な展開を要望。看護師の確保対策では、休職中の看護師の職場復帰や雇用調整を行うシステムの構築などを求めた。【新井哉】

しかし「病院勤務医の負担軽減が不可欠」という理解に達しているのでしたら、今までその勤務医の負担軽減に全く意欲を示さず「医者など毎年いくらでも送られてくるもの」と言う考えで使い潰してきたからこそ田舎自治体病院など誰も行きたがらなくなったという現実にも思いを致し、自主的に改善できる数多の問題点を何とかしてみられてはどうでしょうか?
だいたいが勤務医の不足と言いますが片田舎にあっても次から次へと医師が集まってくる病院もあれば、都市圏のまっただ中にあってもまともな医師からは相手にされない病院もあるわけですから、自治体病院は全国医師達から嫌われているという現状を正しく認識し、管理職以外の医師達の給料の安さをどう解消するのかといった医師集めのための方策を自ら講じることこそ第一ではないかと思います。
とは言え全自病としては「いや私共も悪うございました」と頭を下げ悔い改める気にもならないのでしょう、近年やたらと国に働きかけて医師強制配置を実現しようと画策していますけれども、せっかく自治体が設立した病院なのですから条例で「平日営業時間内の受診は割引、夜間は割増」くらいの大胆なコンビニ受診対策でも検討してみられてはどうなのでしょうかね?

いささか前置きが長くなりましたが、そもそも僻地での勤務ということについて当事者である医師達はどのように考えているのか、表立ってではない場では様々なぶっちゃけ話も出ていますけれども、きちんとした調査になれば「条件が合い機会があればやってみたいと思います」式の模範回答でお茶を濁す場合が多いのではないかと思います。
そうした模範解答の存在を念頭に置いた上で、先日医療関係者向けのサイトを開いている会社が医師に対して僻地診療に関する意識調査をしているのですが、それを報じる記事がそれぞれ微妙にニュアンスが異なっているのが興味深いですね。

へき地医療、待遇次第で従事する医師3割強-若年層ほど検討する傾向(2013年5月22日CBニュース)

 へき地医療に携わっていない医師のうち、3割強は、勤務日数や給与次第でへき地医療に従事してもいいと考えていることが、医師・医療従事者向けサイトを運営するケアネット(東京都千代田区)の調査で分かった。若年層ほど、前向きに従事を検討する傾向が見られた。

 ケアネットは4月26日、インターネット調査で、同社サイトの会員医師1000人から回答を得た。それによると、へき地で働いている医師は、常勤(7.5%)とパートタイムなど(4.8%)を合わせて12.3%。一方、以前携わっていたのは23.9%、未経験は63.8%だった。
 現時点で従事していると答えた人以外に、へき地医療への考え方を聞いたところ、「将来的には考えたい」が7.9%、「勤務体制(期間/曜日限定、要請時のみなど)次第で考えたい」が12.1%、「待遇(報酬・休息時間など)次第で考えたい」が14.7%で、計34.7%だった。この割合を年齢層別に見ると、30歳代以下(48.9%)が最も多く、以下は40歳代(36.6%)、50歳代(31.5%)、60歳代以上(23.1%)の順だった。

■従事しない理由、「家族の事情」や「総合的な診療への不安」

 調査では、へき地医療に全く関心がないか、興味があっても携われないと答えた医師に、その理由を複数回答で尋ねた。最も多かったのは「子供の教育・親の介護などで現在の住まいを移せないため」の36.1%。以下は「多忙で他の業務に携わる余裕がないため」(32.8%)、「開業しており、自分の交代要員がいないため」(27.1%)、「診療科を問わず総合的な診療を行うことが不安なため」(21.8%)、「自分の専門科の必要性が薄いと思うため」(21.5%)などと続いた。【佐藤貴彦】

「僻地医療 関心はあるが困難」が明らかに(2013年5月18日QlifePro)

解消が急がれる僻地医療問題

株式会社社ケアネットは僻地医療についての意識調査の結果を、5月16日に発表した。この調査は4月26日に、同社の会員医師1,000人に対して行われている。

この調査の結果、僻地医療に対して関心を持っているものの実際に行動に移すとなると困難がある、と回答した医師が多数に上っていることが明らかにされた。

親の介護・子供の教育などが足かせに

この調査によると僻地医療に何らかの形で携わったことのある人は全体の26.2%で、その内訳は「以前携わっていた」が最も多い23.9%、「現在、常勤で携わっている」が7.5%、「常勤以外(パートタイム・巡回・ドクターヘリなど)で携わっている」が4.8%となっている。

考えについての質問に対する回答で最も多かったのが、「関心はあるが携われない」の48.7%で、「待遇次第で考えたい」が14.7%、「勤務体制次第で考えたい」が12.1%、「将来的には考えたい」が7.9%と続く。「全く関心がない」と回答したのは16.6%だった。

「関心はあるが携われない」と回答した医師を年代別に比較すると、30代以下では34.8%なのに対し、40代は44.1%。50代では52.6%、60代以上では64.3%となっている。理由には子供の教育や親の介護などが挙げられている。(小林 周)

基本的にいわゆる僻地に住む人口など全国全て併せてもごく限られた圧倒的少数派に過ぎないのですから、その少数派のために働いてもイイよと言っている医師が何と3割もいるというのは非常に贅沢な状況ではないかと思うのですが、この場合問題になるのがその前提条件として「待遇次第で」という文言が付いて来ていることでしょうね。
例えば同僚に各診療科専門医がそれぞれ複数いること、当直等の労働条件は労基法厳守といった僻地の小医療機関では絶対に実現不可能な「待遇」を求める人々もこの範疇に入ってくるのだとすれば、冷やかしではなく実際に「場合によっては行ってもいい」と考えている人はずっと少ないということになりますが、興味深いのは若年世代ほど僻地診療もありだと思っているということでしょうか。
僻地診療をやったことがある経験者がおよそ3割いるということですが、ローテート必修化によって若年世代では例え一ヶ月だけだとしても僻地経験者がそれなりにいるわけで、僻地診療の状況を知った上でそう言っている彼らをうまく取り込めば長期赴任は無理でも短期的にであれば、非常勤であればといった制限付きでもある程度の医師を確保出来る可能性はあるということでしょうかね。
また併せて注目したいのが中高年医師を中心になのでしょう、親の介護で無理だと言う回答が思いの外多かったことですが、先日出ましたように田舎に老人をどんどん送り込もうという話も出てきていることを考えると、これから医師招致を目指す自治体は今までの嫁・子供対策に加えて老親対策も考慮しておいた方がいいかも知れませんね。

いずれにしても医療供給の密度に濃淡が存在することは人口や地理的条件が異なっている以上当然にあり得ることで、むしろそうした前提条件の格差を無視して「全国どこでも全く同じ医療を」という皆保険制度のワンプライス思想こそ異端ではないかと思うのですが、特に医療分布密度が下がって「あるか、ないか」のレベルになっている医療過疎地域においては「オラが村にも医者を」の願いは切実なのでしょう。
えてしてそうした地域では人口も年々減少を続け医療に限らず社会資本全般の減少傾向が続いているのですが、飲食店や娯楽産業等はおろか警察・消防といった社会生活に一定程度不可欠と思われるものですら「どこに住んでいようがお金があろうがなかろうが同じサービスを受けられるのが当然」などという幻想を抱いているわけではないだろうし、事実マスコミ等も「僻地の警官不足が深刻で」などと問題視はしませんよね。
むしろ医療の場合は近年医療の標準化というものが叫ばれるようになったことに加え加古川事件を始めとするJBMが滲透した結果、本当の急病となれば昔のようにそこらの便利屋的町医者が取りあえず診るということがなく右から左へ専門医に送るしかなくなってきているわけですから、田舎に医者を貼り付けることは単に住民の利便性のためでしかなく、それだったら自治体が隣町まで送迎バスでも走らせればすむことのはずです。
逆に総合診療に通じやる気もある僻地診療のプロとも言うべき医師からは「口では先生来てくれてありがとうと言ってたところで、お前ら本当の病気になったら隣町の総合病院に行くんだろう?」と見透かされている部分もありますが、現実的に僻地に必要性が高いのは医師一人の診療所よりもずっと安く上がる特定看護師と豊富な介護スタッフのセットじゃないかという気もしています。

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コメント

そもそも医介補で十分だろw
長年住んでる地元民ですら逃げ出す土地だぞw

投稿: aaa | 2013年5月24日 (金) 09時20分

どんな職種であれ、年を経るにしたがっていろんなしがらみができてくるので、職場を移りにくくなります。
若い時の方が、しがらみがない分動きやすいのは当たり前です。

まあ、24時間オンコールとか、完全フリーなしとか、行ってみたらそういうことになってた、なんてこともありますので、やってられない、というのが現実でしたね。

投稿: | 2013年5月24日 (金) 10時21分

>長年住んでる地元民ですら逃げ出す土地だぞw

けっきょくはここんとこに落ち着いちゃうんですよ。
不足がちなインフラをわざわざ人口減少地域にまわすってのが理解を得られるかどうかなんで。
それやるだけの説得力を僻地人はもってるのかってことですよ。
僻地よりはるかに交通の便が悪い何千の離島に一つ一つ医者送れって言う人いますか?

投稿: チルチルミチル | 2013年5月24日 (金) 10時24分

全国一律公定価格の皆保険制度の限界だと思います。
僻地の医療密度が低いなら本来医療費を割安にしてもいいはずですが、出来高制度で行う以上そうなると医療機関経営悪化に直結しますます医療密度を下げる圧力になります。
このジレンマを自治体独自の補助等々で解消できればいいのですけれども、どこかおもしろい特区でも作ってみませんかね。

投稿: 管理人nobu | 2013年5月24日 (金) 11時28分

何年も前に陸の孤島のようなド僻地から逃散した者です。都会から来た医者はみな同じように続々と辞めていきました。
僻地特有の偏った価値観、深刻な医療へのたかり体質、こういう愚民ばかりを相手にしてたら2年もちませんでした。
断言します。僻地に高度な医療機関やレベルの高い医者は不要です。もし配置されたとしてもソッコーで逃げ出すだけです。
逃げないように規制すれば、それは人権侵害になります。北朝鮮の体制と何ら変わりません。
高齢者でも、金がある人は都会で生活できて、金のない人は地方へ追いやられる。全然それでいいじゃないかと思います。
格差があってこその資本自由主義の社会だと思いますが。

投稿: 逃散前科者 | 2013年5月24日 (金) 14時39分

診療所をかまえて患者を待つよりも、巡回診療に力を入れた方がいいのではないかな。
要するに年寄りが身近で診てもらいたいと言うだけで質は問われていないのだから。
もっとも時間当たり診療単科は低くなるので補助金が必須だが。

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年5月24日 (金) 15時20分

在宅支援診療所の届出だして「在宅訪問診療」にすれば診療単価は高くなりますので、マンションの1室借りて聴診器1本で高齢者世帯や集合住宅で高齢者を1日50人巡回しまくったら、コスパも最高でボロ儲けでしょう。厚労省もそれを強く奨励していますし。
ただ24時間365日電話拘束されるので、実際は医師1人でやるときついかもしれません。

投稿: 逃散前科者 | 2013年5月25日 (土) 12時57分

いやあ、田舎で一日50人の往診は無理ですよ。。。
昔やったときは往診日に10人も回れば一日仕事でしたもん。
移動時間はかかるわ話は長いわで。。。
病院待合がお年寄りのサロンになってるって言いますけど、あれ単にお年寄りの普段の生態なんだなって思いましたよ。

投稿: もっちゃん | 2013年5月25日 (土) 14時03分

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