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2013年5月 2日 (木)

癌治療 変わりゆくのはレジメだけではなく

家庭内の事情を仕事に持ち込むのは望ましくないことだという文化的背景のせいか産休も未だ十分に滲透していない感もある日本において、先日はこういう休職制度を設けた会社があるという興味深いニュースが出ていました。

家族が余命宣告受けたら、最長1年休職の会社(2013年4月30日読売新聞)

 製薬大手のアステラス製薬は、社員の家族や近親者ががんなどで余命宣告を受けた際に、最長1年間休職できる「寄り添い休業制度」を4月から導入した。
家族との残された時間を一緒に過ごせるようにして、社員の精神的苦痛などに配慮する。同社はがん対策の新薬開発が主な事業の一つだ。

 余命が6か月以内と宣告された配偶者や父母、子どもなどがいる社員が対象で、休職期間は1週間~6か月間。最長で6か月間延長できる。国内に勤務するグループの社員約8100人が対象で、期間中は無給となるため、どこまで利用者が広がるか不透明な部分もある。

 昨年、末期がんで余命宣告を受けた母親を持つ社員が会社に相談したことが制度を導入するきっかけとなった。その社員は、有給休暇で対応せざるを得なかったといい、「国内企業では珍しいが、製薬企業として家族や社員の支援を優先した」(広報)という。

ご存知のようにこのところ相次いで製薬会社と医師との付き合いが規制強化されていてMRなども過剰人員となっているのでしょうか、こういう話が出てくるというのもそうした背景を反映してのことなのかも知れませんが、無休とは言え地位を確保したままで1年間の休職を認めるということになればいざという時にも安心という声もあるでしょうね。
医療関係の会社だからこそ始められた制度であって、医療に対する理解のない一般企業では難しいという面もあるのでしょうが、癌治療も集学的治療の進歩で次第に長期戦が増えてきている上にひとたび退職をしてしまうと再就職も難しいという時代だけに、こうした制度の必要性は以前よりもずっと高まってきているのではないでしょうか。
とかく医療側としては癌治療の成績向上には熱心ではあったものの、控えめに言っても本人の通院の手間だとか家族の看病の都合などには必ずしも十分な目が行き届いていたとは言えず、癌そのものもさることながら癌治療によって社会性や日常生活が破壊されてしまうことが患者と家族にとっては大きな苦痛であるという側面があったことは否定出来ません。
その意味で内服中心での抗癌剤治療など日常生活をそのまま営みながら長く続けられる癌治療の意義も認識されるようになってきているのは良い傾向だと思いますが、国の方からも先日こういう話が出てきたということが報じられていました。

がん医療 患者の評価を国が初めて調査へ(2013年4月28日NHK)

がん患者の視点から診療や退院後の対応を評価し、国のがん対策に反映しようという初めての調査が、5月にも始まることになりました。

日本人の2人に1人がかかるとされるがんについて、国は、拠点病院を指定するなど医療態勢の整備を進めてきましたが、患者が納得する医療を受けているかどうか評価する取り組みは、ほとんど行われてきませんでした
このため、医療政策の専門家などでつくる厚生労働省の研究班は、がん患者の視点から、診断や治療、それに退院後の病院の対応を評価する初めての調査を、来月にも始めることになりました。

調査は、全国の拠点病院の患者1万人以上を対象に、▽治療方針の決定に自分の意見が考慮されたかどうか、▽手術の結果について納得できる説明があったかどうか、また、▽不安や心配ごとへの配慮や支援があったかどうかなど、50項目をアンケート型式で尋ねる計画です。そして、患者の納得につながっている点や改善すべき点などを分析し、それぞれの病院の改善策や国のがん対策に反映することにしています。
調査を行う東京大学の宮田裕章准教授は「患者がどのような思いや経験をしているのか明らかにすることで、日本のがん医療全体のレベルアップにつなげたい」と話しています。

調査の趣旨から少し外れることですが、医学的に見れば平均半年しか生きられない治療よりも1年生きられる治療の方が優れていると判断されるわけですが、では半年のうち5ヶ月間は普通に自宅で日常生活をそのまま営めるという治療と、1年のうち10ヶ月は病院にこもりっぱなしできつい副作用に耐えていなければならない治療と言われれば、これは少なくとも患者視点で考えればにわかにどちらがいいかとも判断しかねて当然ですよね。
もちろん何らかの理由があってどんな苦しい副作用があろうがどうしても1年先まで生きていたいといった人もいるわけですから、ただ苦しむ期間を長く引き延ばすだけの治療などいらないと簡単に断じてしまうことも出来ないわけですが、そうであるからこそやはり治療法の良い、悪いという判断には最終的に顧客満足度というファクターも含まれるべきなんじゃないかと言う気がします。
同時に患者側にもきちんと情報に精通しておくべき義務があると考えるべきで、例えば末期癌なのに大病院にも見放されたなんて話を聞くとどんな酷い医者だと思いがちですけれども、病気の進行状況や本人家族の人生観をも加味して遠くの拠点病院よりも近くのかかりつけ医でベストさポーティブケアを行う方が望ましいと判断したのだとすれば、何もおかしな話ではないわけです。
そのためにも他のあらゆる病気と同様に癌に関しても患者、家族が医師ともっと率直に話し合って情報を得、治療方針を主体的に決めていけるようになるのが理想的なのでしょうが、癌と判ればまず家族を呼んで本人に告知して良いかを決めるところから始まる古典的な日本式癌治療のあり方は、患者自己決定権の尊重という観点からはいささか時代遅れになってきているかも知れませんね。

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コメント

>MRなども過剰人員となっている

なってるんでしょうね。
でも休職がちだとか言ってすぐ首を切られないだけまだ良心的なのかも知れませんけど。
お金も余裕もある企業はこういうことでアピールもできるってことですね。

投稿: ぽん太 | 2013年5月 2日 (木) 09時18分

基本的には一人二人休んでいても職場が回るくらいの人員は雇用して、その分一人当たりの取り分は減らしてもワークシェアするべきということなのでしょう。
医療業界などはまさに典型的ですが、いくら仕事を増やしてもなんとかこなしてしまう日本人の習性が悪い方に作用している気はします。
外資系製薬のこういう状況を見るにつけ、TPPで医療にも外資が進出してくるとどうなるのかと思ってしまいますね。

投稿: 管理人nobu | 2013年5月 2日 (木) 12時39分

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