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2013年5月 9日 (木)

女性手帳導入に反対の声上がる

晩婚化だ、高年齢出産だと昨今お産を取り巻く話が世間の注目を浴びる機会も多くなっていますが、そんな中でこれらへの対策として政府が打ち出したごくささやかなアイデアがちょっとした話題になっています。

政府、10代から「女性手帳」導入 骨太の方針で調整 何歳で妊娠? 人生設計考えて(2013年5月5日産経新聞)

 政府が、女性を対象に10代から身体のメカニズムや将来設計について啓発する「女性手帳」(仮称)の導入を検討していることが4日、わかった。医学的に30代前半までの妊娠・出産が望ましいことなどを周知し「晩婚・晩産」に歯止めをかける狙いだ。6月に発表する「骨太の方針」に盛り込む方向で調整している。

 政府は少子化対策として産休や育休を取りやすくする制度改正、子育て世帯中心の施策を優先してきたが、晩婚・晩産化対策も少子化解消には必須と判断した。安倍晋三内閣はこれを重点政策に位置づけており、骨太の方針に反映させた上で、来年度予算に調査費などを計上したい考え。

 内閣府の「少子化危機突破タスクフォース」(議長・森雅子少子化担当相)は、妊娠判明時点で自治体が女性に配布する「母子健康手帳」よりも、早い段階からの「女性手帳」の導入が効果的とする見解を近く取りまとめる。子宮頸がん予防ワクチンを接種する10代前半時点や、20歳の子宮がん検診受診時点での一斉配布を想定している。

 医学的に妊娠・出産には適齢期(25~35歳前後)があるとされる。加齢に伴って卵子が老化し、30代後半からは妊娠しにくくなったり、不妊治療の効果が得られにくくなることも明らかになっているが、学校教育で取り上げられていない

 女性手帳では、30歳半ばまでの妊娠・出産を推奨し、結婚や出産を人生設計の中に組み込む重要性を指摘する。ただ、個人の選択もあるため、啓発レベルにとどめる。内閣府はまた、経済事情などを理由になかなか結婚に踏み切れない状況の改善にも取り組む方針で、新婚夫婦への大胆な財政支援に乗り出す。

 日本産科婦人科学会の生殖補助医療(高度不妊治療など)の年齢別結果(平成22年)によると、35歳前後で20%台前半だった妊娠率は40歳で15%を下回った。

何しろ未だ景気も必ずしも十分改善しているとは言えない中で、ただでさえワープア化だと言われ貯蓄も厳しい上に将来は年金もどうなるか判らないという時代にそうそう思い通りに人生設計などやっていられるか、という声も聞こえてきそうですけれども、以前から当「ぐり研」でも何度も取り上げて来ましたように社会的な意味での適齢期ということはともかく、医学的に見れば明らかに出産に適した年齢というものは存在すると言えます。
特に昨今著名人の高齢出産がやたらと話題になることとも絡んで、高齢出産の持つ本質的なリスクというものが大きく注目されるようになっていますけれども、自らの体験談を公開した野田聖子氏にしても「子供がある時点で産みにくくなるとは、誰も教えてはもらわなかった。 」と仕事に明け暮れ出産の時期を逸した過去を後悔しているというほどで、ともかく知らないが故に不適切な選択をしてしまうことだけは避けるべきでしょう。
特に40歳を過ぎると自然な妊娠はなかなか期待出来ないと言いますが、経済的観点から見ても不妊治療には過半数の女性が100万円以上の大金を支出している上に、数年間にも及ぶ治療期間に心身共に疲弊して一体どこまで治療を続けたらいいのかと悩んでいると言いますから、多少産むのが遅れてもまあ何とかなるだろうという軽い気持ちでいられるような問題ではないわけです。
そうした現実を踏まえれば女性手帳がどの程度効果があるかどうかはともかくとして、何もしないよりは何かやった方が良いというのは為政者として当然の判断なのだろうと思うのですが、どうもこういう話にも早速噛み付きたがる方々はいらっしゃるようです。

女性手帳:妊娠・出産指南 政府来年度から配布へ(2013年5月7日毎日新聞)

 ◇「女性に押しつけ過ぎ」批判も

 政府は7日、少子化対策を議論する作業部会「少子化危機突破タスクフォース」(主宰・森雅子少子化担当相)の会合を開き、若い世代の女性向けに妊娠・出産に関する知識や情報を盛り込んだ「生命(いのち)と女性の手帳」を作製し、10代から配布する方針を決めた。晩婚化や晩産化が進む中、若い世代に妊娠・出産について関心を持ってもらうのが狙い。6月に発表する「骨太の方針」に反映させ、来年度からの配布を目指す。これに対し、女性団体などからは「妊娠・出産を女性だけの問題のように扱っている」など批判の声が上がっている。

 日本産科婦人科学会の調査では、2008年に不妊治療を受けた患者は30代後半が中心だが、妊娠数は35歳を境に減少。出産率は32歳から下がり始め、流産率は逆に上昇することが分かっている。

 こうした状況を受け、会合では早い時期に妊娠・出産について正しい知識を身につけてもらうことが、将来的に希望する家族の形成に効果的との認識で一致。森少子化担当相は同日、会見で「年をとってからの妊娠が非常に難しいことや、胎児と母体にリスクが高いことも知識として広まっていない。中高生くらいから知識を広め、女性が自分のライフステージを選択、設計できるようにすべきだ」と説明した。

 これに対し、昨年、交流サイトのフェイスブック上で“結党”した女性市民グループ「全日本おばちゃん党」(党員約2100人)は同日、「なんでもかんでも女性に押しつけすぎ」などとする声明を発表。同党代表代行の谷口真由美・大阪国際大准教授は「女性、男性、性的少数者を含めた全員ではなく女性だけが対象なのはおかしい。出産だけを女の価値とする価値観が透けている。成長戦略のための女性活用と言いながら『育休3年』など安倍政権の女性政策はことごとくチグハグで、女性を働けない方向に持っていくものばかり。安倍さんの頭の中の『女性』が現実とズレている」と指摘する。【山崎友記子、大迫麻記子、藤田祐子】

ちなみにこの「全日本おばちゃん党」なるものは別に政党でも何でもなく、「オッサンくさい政治はもう飽きた。おばちゃん党でも作ったろか」という代表のつぶやきに賛同したフェイスブック上のグループだということで、そもそもは多分にシャレ的な要素が強かったということなんですが、元々更年期や子育て問題が主要なテーマだったと言いますから今回のことにも関心が向いたと言うことなのでしょう。
別に全日本おばちゃん党が女性のみならず男性その他も含めて社会的啓蒙活動を十二分に果たしていただけるというのであればそれはそれでよろしいのですが、失礼ながら社会的影響力を考えると女性手帳ほどにも実効性はなさそうですから、現状では対案なき単なる批判のための批判に終わっていると言われても仕方のないところではありますね。
もちろん女性だけで子供を産むことが出来ないのは当然ですし、例えば年間20万人という少なくない数の人口妊娠中絶が行われているという現実を見れば女性だけの問題ではないというのは当然で、全日本おばちゃん党が主導して男性手帳なりを作成し全男性にも配るべきだと言うのであれば賛同したいと思いますけれども、ただ出産適齢期女性にとっての社会の現実というのはおばちゃん達とは少しばかり異なってもいるようです。
例えば先の内閣府調査でも20代女性を中心に専業主婦を希望する方々が激増し共働き希望を大きく上回ったことが報じられましたが、突然とも言える社会情勢の変化という現実にうまく対応出来ず古典的なフェミニズムを振りかざすことが人生の先輩として取るべき態度なのかどうかという疑問も持つべきで、まずは当事者たる若年女性達の意見も聞いてみてはどうでしょうか?

おばちゃん達の主張はともかくとして、実は出生率低下問題は別に日本だけの専売特許でも何でもなく、かつては人口爆発の筆頭のように言われ強力な一人っ子政策で強引に人口抑制を図ってきた中国なども今や合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの人数)がなんと1.18!だと言い、特に北京など大都市部では実に0.7まで低下していると言いますから一人っ子政策どころではないわけです。
人間富裕になるほど子供を持つことのメリットが減って育児コストのデメリットばかりが気になりがちですが、社会システムそのものは毎年一定数の新規加入者が安定的に供給されていくという前提で成り立っているものがほとんどなのですから、人口は国力、産めよ増やせよとは言わずとも最低限望まれる子供の数というものは確実にあるわけです。
先日は不妊医療への公費助成は39歳までという制限がなんだかんだと議論の末に撤回されましたが、失礼ながら極めて成功確率の乏しい高齢不妊治療を少なくない公費をつぎ込んでまで続けていくよりも、より若い世代に啓蒙を徹底して少しでも適切な時期に出産してもらうことの方がはるかに簡単かつ安上がりであるのみならず、医学的にも社会的にもより自然なあり方ではないでしょうか?
もちろん個人の主義主張として産まないという選択枝を否定することが許されないのは当然ですが、どちらでもいいという場合において何かしらの判断材料を提供されることでより健康的な人生を送ることが出来、さらには社会にとっても有益であるということであれば、予防医学として考えてもこれ以上効果的な施策はないように思いますね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

代案なき反対など屁の役にも立たんなw
フェミニンは学生にエロ本でも配ってみたらどうなんだw

投稿: aaa | 2013年5月 9日 (木) 09時47分

というか学校で男女ともにこういうことを教えればすむ話では?
人生設計できない人が手帳もらっても読まないでしょう?

投稿: ぽん太 | 2013年5月 9日 (木) 10時29分

おっしゃる通りで、もちろん手帳がベストなやり方というわけでなく、ここから議論を深めていくことが重要だと思います。
しかしこういう話も広い意味での性教育になるのでしょうかね?

投稿: 管理人nobu | 2013年5月 9日 (木) 11時27分

金の無駄以外の何者でもない
安倍がここまでバカだったとは

投稿: カレン | 2013年5月 9日 (木) 20時27分

 「少子化対策」「晩婚、晩産対策」の名の下でわざわざやるのが、これかよ?って反応でしょ。
 各種の社会調査で、経済問題、特に適齢期とされる20代の非正規労働者の増加による経済的不安定化、正社員であっても低賃金であることや、そのために二馬力でないと家計が成り立たない状況ってのが、最大の要因って分かってるんだから、手帳を配るほかにもっとやらなきゃいけないことあるでしょ、って思わないですかね?

 それに、学校での「性教育」に頑強に反対してきたのは、当の自民党ですし。

投稿: ?? | 2013年5月 9日 (木) 21時46分

> 女性の妊娠・出産には適齢期があることなどを国民に広く啓発するため、内閣府の「少子化危機突破タスクフォース」が導入を検討している「女性手帳」(仮称)をめぐり9日の参院内閣委員会で新旧の少子化担当相が火花を散らした。

> 質問に立った民主党の蓮舫元少子化担当相は「全女性が対象ならば非常に危険だ。例えば同性愛者は手帳をどう受け止めるのか。結婚や出産をいつするのか、しないのかは個人が決めることだ」と批判した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130510/plc13051007590004-n1.htm

基地外を炙り出す効果はそれなりに高かった模様w

投稿: | 2013年5月10日 (金) 09時13分

少子化の問題と不妊のリスクの知識は切り離すべき。知識は当然必要なのだから教育の場で男女共に行えばよい。
子を産む機械取扱説明書は必要ありません。いくら保守だとはいえ安倍政権はここまでバカとは残念でならない。

投稿: | 2013年5月10日 (金) 10時56分

なんで手帳なの?というそもそも論は措いても、女性だけに配ろうとするから異論を差し挟まれる隙ができるのです。
男女問わずに配れば、異論の過半は封じることができるんじゃないかと思います。
交渉術として、「誰に配るか」ということに議論を集中させ 手帳の中身のことには極力触れさせないようにしておいて、最後に「誰に配るか」で妥協してみせてサッと了承をもらう、ということを考えているのかも?なんてことを想像してみました。

なんで手帳なの?ということに関して言えば、たとえば授業内容を変えることに比べてはるかに手軽だからでしょうね。
学校教育に関しては心中期すところのあるらしい安倍氏としては、今はまだ手を付けたくないのじゃないかしらん。

投稿: JSJ | 2013年5月10日 (金) 10時58分

一次資料を探してみました。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/taskforce/
議事概要をざっと読んでみましたが、どこを目指しているのかは、いま一つよく分かりませんでした。
件の手帳は 手間暇かかることは後にして、とりあえず手軽なところから実績を上げていこう ということでしょうか。ちょっと唐突な印象を受けました。
こんな感じです。
『文部科学省から、これまではなかったけれども、学習指導 要領の改訂が行われ、平成26年から妊娠に関する教育を行うこととなっているとの説明 があった。これに関しては大事なことであるという各委員からの意見があった。
また、女性手帳について議論が活発に行われた。委員からは基本的には賛成という意見 が多く、母親、女性の健康に主眼を置き、例えば風疹の情報などを入れてほしい、女性の キャリア形成や就業に関することや夫の役割などを取り入れてほしいという話があった。 座長からは大きな柱になるので、サブチームでしっかり議論をしてほしいとの話があった。』

投稿: JSJ | 2013年5月10日 (金) 12時07分

これも手帳などと言えばおおげさだが、冊子だとかパンフレットと言っていれば問題なかったのかも知れない
このさいせっかくだから女性だけに限らず男性も含めてきちんと情報を伝えるよう改めてはどうだろうか?
情報を伝えることすら気に入らないという方々はどうせ何をやっても気に入らないのだろうし

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年5月10日 (金) 12時42分

>委員からは基本的には賛成という意見 が多く、母親、女性の健康に主眼を置き、例えば風疹の情報などを入れてほしい、女性の キャリア形成や就業に関することや夫の役割などを取り入れてほしいという話があった。

これみると今でてるようなクレームは最初のときから出てたってことですか。
それでも手直ししてやってみたらってことだから今さら蒸し返されてもな~って気分なんですかね?>文科省
でもやっぱりどうして単なる妊娠教育の充実じゃダメで手帳がいるのかってことはわかりませんけど。

投稿: ぽん太 | 2013年5月10日 (金) 14時09分

てか女に妊娠のなんたるかを説くよりも男に甲斐性のなんたるかを説いたほうがいんじゃね?って気がするんだけどね
いま話題のタガメ女だって子孫を産み育てるって視点に立ったら立派な親であるわけでそれが悪いのかってことになるよね

投稿: kame | 2013年5月10日 (金) 14時26分

まぁ不妊や死産は昔のほうが確率はたかかったわけだから
少子化対策としていまこれをやるのは順番おかしいね


>てか女に妊娠のなんたるかを説くよりも男に甲斐性のなんたるかを説いたほうがいんじゃね?って気がするんだけどね
それもちがうよ
必要以上に男は稼ぎまくって養わなきゃってスタートの時点で自意識過剰になってる
その状態で女性の社会進出やらいってもまったく意味がない

投稿:   | 2013年5月10日 (金) 20時48分

こんな話題で
どっちがわるい!なんていってるのは
ある意味マスコミに踊らされて本質見落としてるだけだよ
目を覚まそう

投稿: | 2013年5月10日 (金) 20時49分

>タガメ女

イクメンを蹴散らし子供を虐殺した挙句性行為を強要、産まれた子供は男に押し付けってとっとと次へって何それ怖いw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年5月11日 (土) 10時33分

野良妊婦対策を先にしっかりやってくれ

大阪、未受診出産が過去最多 昨年307人 3割「お金ない」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130510-00000126-san-hlth

投稿: | 2013年5月13日 (月) 12時24分

反対のための反対、とはいっても
おかしいものはおかしいと言わないとどうしようもないし
「何がどうおかしいのか」を言語化してくれる方々のパワーは有難いことです

今のご時勢、これだけ経済的自立の大切さが強調されているのに
それでも”出産希望の”女性が専業主婦を希望するというのは
社会進出や勤労という行為に夢を持てなくなったという由々しき事態なわけですし
(いやほんとに重大な事態だと思うのですが……物事って、伝わりにくいですね)

投稿: | 2013年5月16日 (木) 11時20分

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