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2013年4月26日 (金)

いささか季節外れなインフルエンザワクチンの話ですが

中国では鳥インフルエンザ騒動が大変なことになっているようですが、幸いインフルエンザのシーズンが終わりつつあることから本格的な大騒ぎは今冬以降に持ち越しということになりそうですね。
日本でも当然慎重な対策が求められるのは当然なんですが、インフルエンザの予防ということに関して季節性のインフルエンザについてのことですが、やはり予防接種はやった方がやらないよりも罹患率は下がるという調査結果が出たそうです。

ワクチン接種の病院職員、非接種者に比べ罹患率は有意に低く(2013年4月8日日経メディカル)

 インフルエンザワクチンを接種した病院職員と接種しなかった職員を比べたところ、接種者でインフルエンザの罹患率が有意に低かったことが示された。聖マリアンナ医科大学病院感染制御部の三田由美子氏らが、第28回日本環境感染学会総会(3月1~2日、開催地:横浜市)で報告した。

 聖マリアンナ医科大学病院では、毎年10~11月に全職員を対象にインフルエンザワクチン接種を行っている。また、例年、インフルエンザ流行時期の終了時に、全職員を対象にアンケート調査を実施。接種時期、接種場所、未接種の場合の理由、インフルエンザ罹患の有無などを把握している。

 2011年度のアンケート結果によると、2252人が調査に回答。接種したと回答したのは1941人で、接種率は89.3%だった。接種率の推移をみると、2006年度以降、75.8%、82.8%、90.2%と連続で上昇し、新型インフルエンザが発生した2009年度は94.5%に達した。翌2010年度は86.3%に低下、今回報告の2011年度は上昇に転じた。

 接種率を職種別にみると、医師が72.5%、事務部が81.7%と低かった。一方、薬剤師が96.9%で最も高く、リハビリテーション部が96.2%、臨床工学士が95.5%、臨床検査技師が94.4%、看護師が91.8%で続いた。

 ワクチンを接種した場所は、同病院が83%と高く、他施設が11%だった。医師の場合は、外勤先などでの接種も多く、同病院での接種率は50.9%と低かった。

 調査では接種しなかった理由も明らかにしているが、「罹患したことがない・罹患しない」が15件(20.5%)、「体調が悪かった」も15件(20.5%)と多かった。「時間がとれない」も12件(16.4%)と目立っていた。

 インフルエンザの罹患率は、全体で6.5%だった。前年度は4.9%であり、2011年度は上昇していた。

 ワクチン接種の有無とインフルエンザ罹患率を検討したところ、接種者の罹患率は5.9%、非接種者の罹患率は11.2%で、接種者のほうが有意に低いという結果だった(P=0.00271)。

 演者らは職種間で接種率に差があったことから、今後は接種率の低かった職種・部署における対策を強化する必要があると指摘した。

ワクチンと言えばかねてマスコミなどからは「予防接種による副作用渦!悲惨な人災をこれ以上許すな!」などと散々にバッシングされた結果日本は世界に冠たる予防接種後進国となってしまった現状があって、例えば「はしか輸出大国」として日本からの旅行者が入国禁止にされたりといった事例もあるわけですが、そろそろ冷静に損得勘定を行っていくべき時期なのだと思いますね。
今回の調査では医療機関職員を対象にするということで、平素からの予防意識や患者との接触頻度によって罹患率も差が出るんじゃないかと思いますし、そもそも医療専門職でありながら「罹患したことがない」からと予防接種を受けないような人はどうなのか、あるいは非接種者が高いと言っても罹患率はせいぜい1割じゃないかとか、様々にバイアス等も含まれていそうなニュースではあります。
ただ仮に鳥インフルエンザの大流行が発生した場合に医療機関は患者の殺到でパニックになると予想されますから、その時スタッフの5%が休んでいるのと10%が休んでいるのでは大変さも違うだろうと言うもので、少なくとも医療職従事者においては職業的義務を果たすという上でもインフルエンザに限らず予防できるものは予防しておくことが望ましいのではないかと思います。

マスコミの攻撃によってすっかり衰退してしまった学童の集団接種なども欠席率や学級閉鎖を減らすのに有効であったという報告が以前に出ていましたが、インフルエンザなどは副作用もそうそうひどいことはないし効果が期待出来るのであれば打っておこうかと考える人も少なくないとは思うのですが、そうなるとやはり気になってくるのは注射の痛さ(苦笑)と共に価格ですよね。
予防接種は保険診療に含まれていない関係で自費での診療になるということで、この価格が各施設でてんでバラバラになっていることから誰しも「同じ薬なのに何故こんなに値段が違うんだ?」と思ったことはあると思いますが、基本的には安くしている施設は客寄せ効果を狙って、高くしている施設は出来れば他所で受けて欲しいという気持ちがあると考えていいんじゃないかと思います。
デフレ時代にあって薄利多売でもとにかく売り上げを伸ばさなければと躍起になっている他業界の人にすれば何それ?というものでしょうが、特に大きな基幹病院などはそうでなくとも重症患者多数が集中してどこもオーバーワークですから、予防注射などどこででも受けられる簡単なことであればご近所のクリニックに行ってくださいと言うことですよね。
ただそうした顧客誘導もあくまで自由な需給バランスによって価格を主体的に決められるという前提があって成り立つ話であって、これがどこかの誰かがありもしないはずの「公定価格」を決めていたということになれば話が違ってくるのは当然です。

インフル予防接種の価格協定で公取委が立ち入り検査(2013年4月24日日経メディカル)

 公正取引委員会は4月23日、インフルエンザの予防接種費用を医師会が決定し、会員にも従わせていた可能性があるとして、埼玉の吉川松伏医師会に立ち入り検査を行った。同医師会は、成人の接種費用を「4450円以上」、小児では「初回は3700円以上」と設定していた疑いが持たれている。公取委は「本来は自由に設定できる価格を強制することで、人為的に競争を妨げており、独占禁止法に抵触している可能性がある」と指摘する。

 吉川松伏医師会に近い関係者は、「接種費用は会員に通知していたが、あくまでも推奨価格という位置付けだった。強制はしておらず、それ以下の価格にしているという理由でペナルティを課したこともない」と説明する。また、「来シーズン以降どうするかは未定」(同)という。

 公取委は今後、調査により具体的な違反を認定した際には、詳細を報告するとともに、改善を求めるという。

 インフルエンザの予防接種の価格設定をめぐっては、四日市医師会が価格の下限を指定し、独禁法に違反したとして2004年に公取委から排除勧告を受けている。

接種料金ファクスで指示か 埼玉の医師会カルテル事件(2013年4月24日日本経済新聞)

 埼玉県吉川市の吉川松伏医師会によるインフルエンザ予防接種料金を巡るカルテル疑惑で、同医師会が接種料金を「4450円以上」などと明示した文書をファクスで会員に送っていたとみられることが23日、医師会関係者などへの取材で分かった。公正取引委員会は同日、医師会幹部が経営する病院を訪れてこの幹部から事情を聴いており、詳しい経緯を調べる。

 関係者によると、同医師会はインフルエンザの予防接種の料金を「4450円以上」、13歳未満の子供は「初回3700円以上」と決めて会員の医師に連絡。各医療機関に接種料金を守らせていたとみられる。

 65歳未満のインフルエンザ接種料金は医療機関が自由に設定できる。厚生労働省は2009年に新型インフルエンザの流行を受けて料金を全国一律で3600円に決めたことがあるが、10年9月に解除。同医師会はその後も会員に料金を指示し続けていたという。

 同医師会の会員だった吉川市内の産婦人科医院によると、11年と12年の9月中旬ごろ、医師会から接種料金を明記したファクスが届いたという。

 この医院は指示より低い「初回3000円」で料金を設定したところ、医師会側から「理事会で決めている」と是正を求められ、12年9月末に医師会を除名された。同医院の副院長は「吉川市内の料金が高いので、子供の予防接種のために周辺都市に出かける親もいる。受診者のためにも自由に料金を決めるべきだ」と話した。

 吉川松伏医師会の平井真実会長の話 「推奨価格」として会員にファクスを送ったことはあるが、強要はしていない。独占禁止法違反に当たるとの認識はなかった

10年前から価格決定か…予防接種カルテル疑惑(2013年4月24日読売新聞)

 インフルエンザの予防接種の料金を巡り、吉川松伏医師会(埼玉県吉川市、松伏町)が最低額を決めていたとされるカルテル疑惑で、最低額は、少なくとも約10年前から医師会幹部らが毎年決めていた疑いがあることが関係者の話で分かった。

 公取委が23日に独占禁止法違反(事業者団体による競争制限)の疑いで立ち入り検査に入った同医師会では、インフルエンザ予防接種の料金について、幹部らが医師会の会合などで最低額を決めた疑いがある。同日午後には、医師会幹部が所属する医療機関など数か所を審査官が訪れ、会員に送付した通知書などを提供するよう求めた。

 通知書を受け取っていたという医療関係者によると、文書は毎年、予防接種の時期に合わせて医師会名で各医療機関に送付された。

 約10年前、複数の医療機関が接種の料金を通知より安く設定したところ、医師会から最低額に戻すよう、すぐに連絡が入ったという。この関係者によると、最近も料金を守るよう厳しく言われていたという。別の関係者は「やってはいけないという認識はあったが、医師会は互助的な組織で、自分のところだけ勝手なことはできないと思った」と説明した。

 同医師会の平井真実会長は「(医師会の)会合で、価格について、推奨価格としてみてはどうかと話したことはあるが、この目安から上に設定するか、下に設定するかは会員が決めること。今どき強制は出来ない」と話している。

どこから読んでもさすが医師会ハンパねえという話なんですが、そもそも予防接種の価格などは薬剤原価(これはほぼ各施設大差ないはずです)に施設毎の人件費を加え、それに対して前述のような意図的価格調整を行った上で決められるべきものであって、ワクチンメーカーが「メーカー希望小売価格」を表示するくらいならともかく、全く価格決定の過程に無関係の医師会風情が口を出してくるべき問題ではないはずです。
しかも当該地域での元々の相場観がどれくらいであったのかが判りませんが、全国的な価格を考えれば非常に割高な価格設定ですから地域内でカルテルを結成して不当に価格をつり上げていると公取に判断されても仕方がないですし、そもそも医師会が口を出す筋合いのないもので除名処分までしておいて「強制はしていない」もなにもないものです。
敢えて好意的に想像するに接種希望者数が少ない零細施設にも配慮すると言った名目で、本来1管から2人分取れるワクチンを1人分だけ使っても元が取れるように(その日のうちに2人目がこなければ半分は破棄しなければならないのですから、接種者が少ないほど無駄な原価がかさむ理屈です)この値段を提示したのかとも思うのですが、よくも今時こんな話が10年も続いていたなと逆に感心しますね。
同医師会には粛々と罪を償っていただくしかないかなと思いますが、こういうことがある以上利用者の方々も予防接種の値段は各施設の判断で決められていて定価などないのだという事実を再認識していただくと同時に、敢えて値段を高く設定している施設を見れば「高いじゃないか!」と文句を言うよりも、なるほどここは大勢に来てもらいたくないのだな…と黙って察していただければ双方がより幸せになれるんじゃないかと思います。

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コメント

ボッタクリ価格でなきゃもう少し穏便に済んだかも知れないのにw
欲をかきすぎるとこうなるってことかww

投稿: aaa | 2013年4月26日 (金) 09時13分

露骨に儲けを狙った価格にくわえて直接違反?者に指導までしてたなら言い訳できないですね。
どうせあくどくやるなら文書では適正価格でよろしくくらいの表現にしておいて口頭で値段を伝えれば証拠が残らなかったのに。
ところでこれって強制じゃなくて強要になるんでしたっけ?「強制してない」と言えば嘘はついてないってことになるのかしら?

投稿: ぽん太 | 2013年4月26日 (金) 09時55分

flu予防について言えば、罹患の確率と罹患時の治療費を考えたら何もせず運を天に任せた方が一番安上がりじゃないですか?

投稿: 川内聡 | 2013年4月26日 (金) 10時49分

>罹患の確率と罹患時の治療費を考えたら
>何もせず運を天に任せた方が
>一番安上がりじゃないですか?
財布からクリニックに所替えするジェニの事だけなら
仰るとーりでしょうが、一面的に過ぎませんか?
子供なら
「心配した事による心理的損失」
「親が看病する事による経済的損失」
大人なら
「仕事を休む事による収入減」
「勤務先での人手減による生産性の低下」
そして何より、公衆衛生的な目で見れば
値打ちはプライスレスな所にこそ
大きく存在するように思うのですけども。

投稿: プライスレス | 2013年4月26日 (金) 12時16分

特殊な状況であれば「何もしない方が安上がり」という判断が成り立ってしまうからこそ集団接種は廃れ、明らかに接種が望まれる人も未接種で放置されるということが起こってしまうんでしょうね。
ただ特殊な状況はあくまでも特殊な状況でしかないので、例外を一般論のように取り上げてしまうことは過去の予防接種バッシングの二の舞になりかねないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月26日 (金) 12時48分

インフルエンザワクチンに限っては、するしないの判断は現時点では個々人の損得勘定でいいんじゃないかと、私は思ってます。

投稿: JSJ | 2013年4月26日 (金) 13時36分

本人は好きにしたらいいがうつされる周囲の身にもなってもらいたいとは思う
毎日ゴホゴホやってる患者が押しかけてくる環境でワクチンもしないならマスク必須だ

投稿: カネゴン | 2013年4月26日 (金) 14時34分

明らかに感染症の患者なのにマスクもさせず隔離もせず待合室に並ばせている受付には時に殺意を覚えますな

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年4月26日 (金) 15時22分

ところで日医が医師配置に関与したら独禁法違反ってほんと⁈

投稿: 亀 | 2013年4月26日 (金) 22時30分

こういう価格のことについては絶対に紙とかに残しちゃダメで申し合わせ事項くらいにしておきましょうって何かの研修会で聞いたけど、公式的に通知で出して指導までしちゃねぇ・・・言い訳し続けんのかな?

投稿: | 2013年5月 2日 (木) 17時03分

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