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2013年4月 1日 (月)

歯学部、法科大学院に続いて薬学部も過剰時代へ?

急激な増員によって過剰がにわかに危惧されるようになった弁護士に関して、先日こういう記事が出ていたのはご存知かと思います。

司法試験「合格3千人」目標撤廃=法科大学院の統廃合促す―法曹検討会議案(2013年3月26日時事通信)

 司法試験や法科大学院の在り方の見直しを進めている政府の「法曹養成制度検討会議」(座長・佐々木毅学習院大教授)は26日、司法試験合格者数の低迷などを受け、同試験の年間合格者を3000人まで増やすとした政府目標の撤廃を求める座長私案を公表した。教育成果の上がっていない法科大学院の統廃合なども打ち出した。
 同会議は国民からの意見募集を行った上で6月末にも改革案を取りまとめる予定。政府は8月をめどに関係閣僚会議で新たな法曹養成方針を決定する。法曹人口の大幅な拡大を目指した司法制度改革は軌道修正される。 

新司法試験になって一部法科大学院については全く合格者が出ず、定員割れは起こすわ学費詐欺だと言われるわで大変な騒ぎになってしまったのは周知の通りですけれども、これだけ大きく制度を改革したものを僅かな期間で抜本的見直しを強いられるということになれば、そもそも法曹人口大増員という制度の理念が正しかったのかという話にもなりかねませんね。
さて、大きく制度が変わったと言えば2006年から6年制に移行した薬学部も現在は制度移行の端境期もあって今でこそ超売り手市場だなどと言いますけれども、すでにかなりの私立薬学部が定員割れを起こし定員削減が求められているという状況で、その背景にはやはり国試合格率の低迷という現実があります。
制度移行を機に国試受験資格が無く薬学研究職などを目指す四年制薬学部が難関と言われる国公立に集中しているのに対して私立系は軒並み六年制に特化したわけですが、要するに私立六年制薬学部=国家試験予備校という位置づけだと考えると、そもそも肝腎の国家試験に通らない予備校に需要がなくなるのも当然というものですよね。

横浜薬科大に「不適合」評価…大学基準協会(2013年3月28日読売新聞)

 大学などの第三者評価を行う「大学基準協会」は28日、横浜薬科大が評価基準に「不適合」だったと発表した。

 同大は不服として同協会に異議を申し立てた。

 同協会は2012年度、国公私立30大などの評価を行った。横浜薬科大の認証結果では、評価した10項目のうち4項目で重大な問題があったとし、「入学者の能力判定を適切に行わず、通常では薬剤師になれない学力の学生も入学させている」と指摘。多数の留年者、退学者を出す状況を早急に是正するよう求めた。教員採用、昇格の透明性、公平性も高めるよう要望した。

 同大を巡っては、設置申請に不正があり、経営する学校法人に文部科学省は学部・学科の新設を5年間認めない処分を科している。
(略)

ちなみにこの横浜薬科大とはまさに制度改定の2006年に開学した6年制薬学部のみの単科大学だそうで、2006年入学の一期生の国試合格率は83.2%と必ずしも低くないのですが、入学時の学生数が310人に対して国試受験者がわずか95人だと言いますから、仮に臨床薬学科(定員160人)のみに受験生が絞られていたとしても国試受験率は決して高いものではありませんよね。
そもそも確実に国試に合格できる人間だけ入学させたのでは私学などは経営が成り立たないと言われれば身も蓋もないのですが、国試合格率云々を抜きにしても以前から大学のレジャーランド化などとも言われている日本では、入学は出来ても成績が悪ければどんどん留年、退学にした方が勉強に励んでいいんじゃないかと言う声もあって、その意味で国試不合格率よりもそうした生徒を卒業させたことの方が問題かも知れません。
実際に定員増著しい医学部でも昨今ではずいぶんとカリキュラムが厳しくなっているともっぱらの噂ですが、一方で学費を出す親からすれば入学させれば勝った気でいるのにいつまで経っても卒業も出来ないのでは学費詐欺だと言いたくもなるでしょうし、一応は将来大多数が特定専門資格を目指す学部という性質上入試にも一般教養的な学部とはまた異なった性質が求められるという考え方もあるでしょう。
そう考えると今回問題化した横浜薬科大ではいわゆる入試偏差値が低いということももちろんですが、特に偏差値39以下の学生でもほとんどが合格しているという状態では学生の質にばらつきもあり幾ら厳しく指導したところで限度はあるでしょうし、やはり最低限の知的水準を担保する意味でも例え定員割れであったとしても一応の入試水準は保たれるべきだったかという気はします。

ただ入試を難しくすれば国試合格率が高くなるという単純なものでもないようで、一般的に大多数が合格する薬剤師試験でも難関と言われる旧帝大などは合格率で底辺をさまよっているのはおもしろいと思いますし、医師国試などでも案外少し格落ちと見られるような大学の方が合格率ではトップ争いしている場合もありますから、やはり入学後の学習状況も極めて重要であるとは言えそうですね。
特に割り増し入学著しい私学などでは卒業試験などで劣等生を絞り上げて国試を受験させないことで見た目合格率を引き上げるということも行われているようですが、結局はそうした入学後の足切りがどこまで許容されるのか、それを行う以前にきちんと学力向上に有用な教育を行っていたのか、そしてそれを行っても合格できない学生が多すぎるならそもそも入試の段階で見抜けなかったかといった点が問題になりそうです。
その意味で入試がいささかアレだったのはもちろん、横浜薬科大の教育状況もまた称讚される状況にはなかったと判断されてしまうのは仕方がないところですが、何しろこれだけ学生のレベルにも格差がある状況でどのような教育を行っていくのが最も効果的だったのか、もしかすると教育専門家であっても迷うところなしとしない同情すべき状況ではあったかも知れません。
医学部なども教授を始め教える側の立場にある者がその地位を得るために教育能力を全く問われてこなかったことが時折問題視されることがありますが、教えるための技術もなければ教育の理念もなくただ医学的業績だけで選ばれた教官達が自分達の専門領域を好き勝手にしゃべって終わることを講義と称しているようであれば、「最近の学生は質が…」などと嘆く前に改めるべき点は多々あると言われそうですよね。

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コメント

別に大学の合格基準に達してるなら好きに入学させたらいいんじゃない?
どうしてもダメなバカふるい落とすために国試があるんだし、通りもしない試験合格目指して6年も棒に振るリスクを負ってるんだから。

投稿: カネゴン | 2013年4月 1日 (月) 09時23分

医薬分業で薬剤師が何カ所かにまとまったら効率化するのかと思ったら門前薬局が建ち並んだだけだったって言う…
ところで国試の成績は横浜薬科より悪いところもあるみたいですがここは不正があったから目をつけられてたってことですか?

投稿: ぽん太 | 2013年4月 1日 (月) 10時37分

某原子力ではないが、業界を規制する側と緩和する側が同じ文科省ってのが問題なのでは?
法科院の例を挙げるまでもなく、大義名分をかかげつつ余計な大学も許可しちゃう。

近年、日本も欧米の3週遅れぐらいでプロフェッショナルスクール(MBAとか会計とか教員とか。次はメディカルか?)を
整備し始めているけど、文科省の領土拡大のために半端な成果に終わりそうだ。

投稿: よし | 2013年4月 1日 (月) 10時40分

>業界を規制する側と緩和する側が同じ文科省ってのが問題なのでは?

医師も含めた国家資格系専門職養成において、その指摘は非常に重要だと思いますね。
ここに来てようやく将来の医師数養成は文科省と厚労省が緊密に協議して云々という流れになってきていますが、業界を仕切っている省庁とそこに人材を送り込む省庁とが連絡も取らず勝手にやっている方がおかしいと思います。
単省庁の関わる事案ですら検討を始め制度を改めるのにひどく手間暇がかかるのに、複数省庁の摺り合わせともなると果たして改めることが間に合うのかと心配になりますね。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月 1日 (月) 11時09分

文科省にとっては大学が多いほうが権限が増えるってことですね。
大人の事情で踊らされる学生がいちばんたいへんそうです。

投稿: てんてん | 2013年4月 1日 (月) 14時15分

医療費も医薬分離してくれるなら好きにしろって感じ

投稿: | 2013年4月 1日 (月) 19時34分

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