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2013年4月15日 (月)

新専門医制度 大枠決まる

昨今何かと話題になる新専門医制度では制度自体がどうなるのかということもさることながら、多くの医師にとっての現在の関心は従来の専門医資格がどう扱われるのかということに集中しているのではないかと思います。
その点について社団法人日本専門医制評価・認定機構理事長の池田康夫氏が先日以来各地で説明を行っていますけれども、まずはこちらの記事から紹介してみましょう。

新たな専門医制度めぐり、本音で議論-池田理事長と兵庫県医師会(2013年4月1日CBニュース)

 兵庫県医師会は、「専門医制度が近々、大幅に変わる」と題したセミナーを3月30日、神戸市内で開催した。日本専門医制評価・認定機構の池田康夫理事長と、兵庫県内の研修医、専攻医、指導医らが、厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」で方向性が固まった新たな専門医制度をめぐって本音で議論した。
 新たな専門医制度の枠組みは、厚労省検討会の議論の結果、まず専門医の資格認定を担う中立的第三者機関を設立、基本領域を取得してから、より専門性の高いサブスペシャルティ領域の研修に移るという2段階制とする方針が打ち出された。近く最終報告書として提出される。今年度中に第三者機関を設立し、その後、各学会と連携しながら、プログラム策定へとつなげ、2017年度にも新制度による専門医研修が始まる
 検討会の構成員である池田理事長は、制度改革の経緯や狙いについて解説。現在の専門医制度の問題点として、各学会が独自に制度を設けて認定しているため、専門医の質担保に懸念があり、国民にとって理解しにくい制度であることや、プログラムが必ずしも臨床能力本位、患者の視点に立ったものではないことなどを挙げ、新制度に移行する意義を強調した。
 講演後のディスカッションでは、▽現制度で資格を取得しようとしている「谷間世代」への対応▽現制度での取得者の今後の処遇▽新制度・現制度の両立による混乱への対処▽第三者機関がどこまで関与できるのか▽開業医が資格を失った場合、科を標榜していいかどうかーなどの具体的な質問が相次いだ。
 池田理事長は、現制度と新制度両立の考え方として、「安易に現制度を新制度に移行はしないが、新制度でも齟齬がないよう納得できる形で更新基準を設ければ、新制度で更新したことにより、新制度で認定された専門医として認めるというのも一つの考え方。また、これから取得する人に関しては、少なくとも、17のサブスペシャルティ領域の制度設計は既にOKが出ており、新制度とほぼ同じ内容であるため、谷間世代を不利益に扱うことはなくて済むだろう」と述べた。
 制度の両立による混乱について池田理事長は、「今までの人は今までの人、新しい制度の人は新しい制度の人といように厳密に区別することを主張する一部の先生方もいるが、実際の問題としては、ダブルスタンダードになる形は混乱の極みになるので、避けたいというのが私どもの考えで、恐らくそうなっていくだろう」と話した。
 さらに第三者機関については、大きな組織にするのではなく、今までの各学会を中心に考えた標準化作業を進めるための機関を想定していると説明。各学会から委員を派遣してもらい、各診療領域の専門医ボードを設置。グッチ アウトレットボードメンバーには、各学会からを8~9割、関連領域の他学会からを1、2割とすることで、他学会のプログラムの利点を取り入れるメリットもあるとした。
 また、現制度での取得者の診療科の標榜については、すぐに標榜をできなくすると大混乱になるので、慎重に対応しいていくと考えを示した。しかし、更新制度は、その領域で日常診療をしていることを条件にしなければならないと強調。学会に参加したから更新できるというような形ではなく、e-ラーニング講習を取り入れるなど、別のしくみを考えていく必要性を示唆した。

特に問題となりそうなのが資格の引き継ぎがあるのか、そして専門医資格が更新できなくなった医師、特に開業医は標榜診療科の看板を降ろさなければならなくなるのかといったあたりでしょうが、まずは旧資格からの引き継ぎについてはいわゆる移行措置については安易なものとして忌避する考え方が根強いようで、それなりに厳重なチェックが入ることになるのではないかと思います。
問題はこの点で新専門医制度下での更新で引き継ぎ審査を代用するという考え方があるようなんですが、この新専門医制度自体が実際にその分野の実臨床を担当し症例数を持っている先生でなければ更新できないということですから、こうなるとかつて専門医をとったまま延々と引き継いできた多くの先生方が資格を失うということにもなりかねませんね。
このあたりは後者の問題点とも関わってきますが、認定された施設(おそらくは地域の基幹病院など)で一定数の症例を持っていなければ認めないという現行の専門医試験のようなシステムが更新時にも採用されるとすれば、多くの医師達が人生のどこかの段階で専門医資格を失うことになりかねず、標榜診療科と新専門医資格を関連づけるということが認定施設以外では非常に難しくなってきそうです。
このあたりをどう考えているのかが多少なりとも推察できるのが、先日日経メディカルで掲載された池田氏のインタビューですが、「第三者機関が認めた専門医のみが広告できる、診療科目として標榜できる仕組みも検討したいと思っています」というくらいですからあるのとないのとでは収入にも大きく影響する制度になりそうです。

専門医制度で日本の医療は変わる、今年度中に第三者機関を/池田康夫(2013年4月12日日経メディカル)

 3月7日の厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」で報告書案が了承され、正式な報告書が4月に公表されます。質が担保された専門医を、学会から独立した中立的な第三者機関で認定する新たな仕組みづくりがその骨子です。
(略)
 第三者機関では、専門医育成のための研修プログラムと研修施設の評価・認定も行います。研修プログラムについてはカリキュラムにのっとって各学会がモデルプログラムを構築し、それを基に各研修施設が具体的なものを作成することを想定しています。こうした仕組みにより、それぞれの診療領域において患者から信頼される、標準的な医療を提供できる医師が育成されると考えています。

 専門医制度を確立することによって、日本の医療のあり方も変わっていくのではないでしょうか。例えば、わが国で社会問題にもなっている地域や診療科における医師不足や偏在の状況に、専門医制度が一石を投じることになればと思っています。

 現在、都市部の大病院に後期研修を受ける医師が集中しているわけですが、都市部とはいえ1施設で経験できる症例数は限られており、制度に沿った研修プログラムを作るとなれば、そこで研修できる人数も決まってきます。各基幹施設は研修プログラム設定に当たり定員を設け、地域の施設と病院群を構成していく必要も出てきます。研修プログラムによっては、一定期間の地域医療に関する研修も求められます

 一方、外科系の研修プログラムでは、一定以上の手術件数を確保する必要性から、地域では施設の集約化が進むことも予想されますし、場合によっては病院群での研修が必要となります。

 今後は専門医の取得にインセンティブを付けることも重要だと考えています。例えば、中立的な第三者機関が認めた専門医のみが広告できるようにしたり、診療科目として標榜できる仕組みも検討したいと思っています。第三者機関が認めた専門医が行う診療行為に新たなフィーを付けるといった仕組みも考えられます。
(略)

一定の症例数が必要ということになれば特に外科系では町医者が更新できるのかと気になるのですが、現在までの議論では外科系学会はすでに取得・更新時に一定数の症例などを課すようにしていることから、新制度に移行しても大きな変更は必要ないということのようで、今現在維持出来ている先生方にとっては新制度になっても維持出来そうだと言うことでしょうか。
逆に内科系はかなりの変更が予想されるということなんですが、特に二階建ての一階部分について気になるのが医師として必要な総合的能力を担保するために日医の生涯教育を使おう、などという声が一部にあるらしいことで、これは日医という組織を医師のキャリア形成上必要欠くべからざるものにするための布石ということでしょうか。
また池田氏自身が述べているように新専門医制度は医師偏在解消のための手段としても利用される予定であるということで、専門医資格というアメと地域医療への貢献という義務とをセットにするというやり方がどの程度受け入れられるかですが、案外ローテート研修当たり前というこれからの時代の医師には抵抗感がないのかも知れません。
最終的には診療報酬上の評価がどのようなものになるのかによって各医師の必死さ加減が決まってくるように思いますが、地域の中小医療機関においては専門医資格保持のためにも基幹病院との系列化を推し進める必要があるとなれば、厚労省のもくろむ医療リソースの集約化も狙い通り捗るということになってくるのでしょうか。

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コメント

専門医資格切れ続出で認定落とす施設が出そうな気が・・・
診療報酬にイロつけてもらっても医師報酬に反映されるかわからないし
けっきょくどれだけの数が新専門医に移行するんだろうって疑問ですよ

投稿: たまてる | 2013年4月15日 (月) 08時49分

内科系は、内科認定医で二階建て部分の専門医を持っている人は影響 大きそうですねぇ(わたしもそう)。

投稿: JSJ | 2013年4月15日 (月) 10時03分

書き方からすると二階部分では誰でも専門医という状況から少し絞るつもりなのかなという気がします。
最終的にサブスペ専門医は基幹病院にだけ残って希少価値を出すってことですかね。
逆にそうでもして絞らないと診療報酬増額に厚労省(財務省?)が首を縦に振らないのでは。

ただこれで学会の収入源は大幅に減りそうですけどいいんですかね?
年会費がバカ高くなるんだったらイヤですよね。

投稿: ぽん太 | 2013年4月15日 (月) 10時07分

「地域の施設と病院群を形成し」というのがどのような状態を指すのかですね。
複数施設を一つの研修施設として認定するとして、医師は各施設それぞれで勤務していればいいのか、それとも他施設に研修にいかなければならないのか。
この辺りの扱い方によって地方での施設認定がどうなるか、ひいては専門医がどれくらいの数残るのかが決まりそうに感じます。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月15日 (月) 10時40分

有象無象のクズ学会でお茶を濁してきた半端な専門医が一番悲劇的w

投稿: aaa | 2013年4月15日 (月) 12時00分

しかし現場の専門医からまったく声が聞こえてこないのがなんとも不思議にも思える
下手をすればごっそり資格を失いかねないのに、もはや専門医資格にあまりこだわっていないとでも?

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年4月15日 (月) 15時01分

周りにゃ専門医に拘泥してる人少ないですがねえ。
専門医資格は奴隷医のステータスシンボルになりませんかこれ?

投稿: 某泥っぽ | 2013年4月15日 (月) 19時10分

周回遅れですが。

日経メディカル・オンラインの記事から。
内科だけの部分。
認定内科医だけの医師と、総合専門内科医を持っている医師との間で、異なった状況になります。
総合内科専門医→全員が、そのまま新・内科専門医に移行。
認定内科医だけ→試験を受けて、新・内科専門医に移行。そうしないと、サブスペシャルティの部分の更新に支障がでる可能性あり。


日経メディカル2013年4月号「特集 動き出した専門医制度」転載 Vol.2(2013. 4. 11

専門医の認定・更新基準はどうなる
新制度移行に向け議論急ぐ学会、広告表示に黄信号の専門医も
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t197/201304/529916_2.html


 日本内科学会はこれまで、1階部分に相当する認定内科医と、2階部分に相当する総合内科専門医の2階建ての仕組みを設けていた。認定内科医は、いわば内科系専門医の共通基盤との位置付けで、総合内科専門医をはじめ循環器専門医、消化器病専門医、呼吸器専門医など13のサブスペシャリティー領域の申請条件として相互認証されてきた。

 しかし、新制度では1階部分である基本領域は実質的に専門医に統一されることになった。そこで、同学会は現行の認定内科医を「新・内科専門医」(仮称)とし、総合内科専門医を「新・内科指導医」(仮称)に組み替える方針を固めた(図4)。

図4 日本内科学会の新しい認定制度(案)と現行制度との関係
現在の認定内科医が新・内科専門医(仮称)への移行を希望する場合、受験が必要となる。総合内科専門医は、全員が新・内科専門医に移行でき、指導的立場にある場合には新・内科指導医(仮称)への移行も可能。認定内科医の申請は2016年まで受け付け、試験は18年まで行う予定。その後は認定内科医の新規認定は行われず、新・内科専門医に移行しない医師のみが認定内科医として残る。
(日本内科学会資料と取材を基に編集部作成)

 認定内科医が新・内科専門医への移行を希望する場合は試験に合格する必要があり、移行を希望しない医師のみが認定内科医として残る。認定内科医の申請は16年まで受け付け、試験は18年まで行う予定だ。総合内科専門医は廃止されるが、新・内科指導医にならない医師も全員が新・内科専門医に移行できる。


投稿: とある内科医 | 2013年8月 9日 (金) 21時17分

厚労省の天下り先でしょ。新研修医制度と同じく患者にはメリットなし。この2点は確実でしょ。

投稿: ひねくれもの | 2013年8月30日 (金) 00時24分

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