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2013年4月19日 (金)

モンスター対策は適切に行うことが重要です

本日の本題に入る前の余談として、司法による判断が社会常識というものとは少しばかり乖離しているのかなと感じることは少なくありませんが、先日出てネット上で大いに話題になっていたこの判決もあるいはそうした例の一つになってくるのでしょうか。

道路くぼみで車故障 神戸市に53万円支払い命令(2013年3月28日神戸新聞)

 所有するドイツの高級車「ベンツ」が故障したのは道路のくぼみが原因として、神戸市北区の産廃業者が道路管理者である市に対し、車の修理期間中の代車料金など約135万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、神戸地裁であり、長井浩一裁判官は「くぼみは軽微なものといえず、管理上の瑕疵がある」として市に約53万円を支払うよう命じた

 判決によると、2009年9月、同社社長が会社のベンツ車で同市中央区元町通4の市道を走行中、深さ約3センチのくぼみにはまり、車のホイールやサスペンションなどが故障した。

 長井裁判官は「くぼみによって車の損傷が生じた」と因果関係を認めたが、同社がBMWの最高級車をレンタルしたのは「原告の見えや体面もあるが、代車が事故車両と同格である必要はない」とし、「国内最高級車であるトヨタの『レクサス』が相当」として請求全額は認めなかった。

 同市建設庶務課は「判決文を見てから対応を検討する」としている。

しかしさすが神戸と言うべきなのか高級外車に縁のない身としてはこの代車費用にはびっくりするしかありませんが、そもそも車検の最低地上高を満たす車が3センチの窪みでサスペンションまで壊れるかどうかと多くの人が疑問に感じたようで、ネット上でも「ドイツ製高級外車はこんなにも壊れやすいと日本の司法が認定!」と大騒ぎですけれども、こういう場合費用を管理者なりに請求する事自体は別におかしな話ではないとは思います。
一方で代車費用というものに少し興味を持って調べて見たのですが、以前に岐阜地裁で土建業者の乗る高級外車が絡んだ事故の件で民事訴訟になった際に高級外車の高額な代車費用の認定がこれまた問題になり、業務活動との関連が乏しく代車が高級外車である必然性が乏しいことから代車費用は認められないと判断されたケースがあるようです。
この場合は保険金詐欺の疑いが濃厚であるとして厳しい判断が降った側面もあるにせよ、代車費用をどこまで認めるかは本件でも争点になったようで、それに対してとかく医療訴訟などにおいても公立病院のやる気のない訴訟態度を見るにつけ、本件においても市側がどこまで本気で裁判に臨んだものなのかと疑問に感じないでもありません。

神戸の件はともかくとしても、昨今どこの業界でも何かと謝罪と賠償を要求される機会が増えてきている印象がありますが、どこまでが正当な要求でどこからが不当なものなのかと判断に迷うケースは少なくありませんよね。
先日は学校帰りの子供が転んで怪我をしたのは学校のせいだと執拗に謝罪要求を繰り返していた男が逮捕され、その要求内容が「いくら何でも…」と話題になっていましたが、興味深いのはこの場合も司法的には問題ないという解釈になるらしいということです。

強要未遂容疑:娘の小学校に謝罪文要求 父親を逮捕 東京(2013年03月23日毎日新聞)

 東京都葛飾区の小学校に通う長女がけがをしたのは担任の責任だと言いがかりをつけ、学校側に謝罪文を書かせようとしたとして警視庁葛飾署は23日、葛飾区、職業不詳、亀山順一容疑者(35)を強要未遂容疑で逮捕した。葛飾署によると、亀山容疑者は「電話はしたが強要はしていない」と容疑を否認しているという。

 逮捕容疑は2月20日昼ごろ、50代の女性副校長に「校長、副校長、学年主任、張本人(担任)のフルネームと実印を押して原本をよこしてくれ」「どんだけこっちが我慢しているんだ」などと言い、謝罪文を書くよう強要したとしている。

 葛飾署によると、亀山容疑者の長女は昨年12月下旬、帰宅途中に転倒して左手小指を骨折。亀山容疑者は翌日から学校に「担任が荷物をいっぱい持たせて帰宅させたのが原因」と主張し、謝罪を要求し続けていたという。知人ら数人で学校に押しかけることもあり、学校側が2月下旬に被害届を出していた。【浅野翔太郎】

内縁妻の子が通う小学校を脅迫容疑、35歳逮捕(2013年3月23日読売新聞)

 内縁の妻の長女が通う小学校を脅したなどとして、警視庁葛飾署は23日、東京都葛飾区鎌倉、職業不詳亀山順一容疑者(35)を強要未遂などの疑いで逮捕した。

 発表によると、亀山容疑者は先月20日、小学校に電話をかけ、「長女は、担任教諭の指導で学校に置いてあった荷物を持ち帰る際に転倒し指を骨折した」と抗議したうえで、学校側に骨折の責任があると記した書類の提出を求めるなどした疑い。

 調べに対し「電話はしたが強要はしていない」と容疑を否認しているという。亀山容疑者は昨年12月以降、担任らに電話や面会で「通院にかかった2万円の交通費を払えるのか。殴り込みにいくぞ」などと繰り返していたといい、学校側は先月下旬、同署に被害届を提出していた。

「謝罪文」を書かせようとした男を逮捕 「謝れ」と迫ったら犯罪になるのか?(2013年4月9日弁護士ドットコム)

「校長、副校長、学年主任、担任のフルネームと実印を押して原本をよこしてくれ」。小学校に通う子どもがケガをしたのは担任のせいだとクレームをつけ、学校側に「謝罪文」を書かせようとした男が3月下旬、強要未遂の疑いで逮捕された。
発端は、昨年12月。男の長女が帰宅途中に転倒して小指を骨折した。それを受けて、男は学校に「担任が荷物をたくさん持たせて帰宅させたのが原因」などとクレームをつけ、謝罪を要求し続けたのだという。男は「強要はしていない」と容疑を否認していると伝えられている。
今回のケースでは「謝罪文」まで要求しているが、何か迷惑を掛けられた際に、その相手に口頭や書面で謝罪を要求する行為はよくある話だろう。では、「謝れ」と迫っただけでも、犯罪になってしまうのだろうか。刑事事件に詳しい伊佐山芳郎弁護士に聞いた。

●「謝れ」と迫っただけでは、「犯罪」にはならない

謝罪を要求しただけでは、強要罪にはなりません
伊佐山弁護士はこう端的に指摘する。そのうえで強要罪について次のように説明する。
「強要罪については、刑法223条が定めています。強要罪が成立するためには、手段として『脅迫』または『暴行』がなされることが必要です。『脅迫』を手段とする場合、相手が恐怖心を生じなければ強要をしたこと(既遂)にはならない、と解されています。
そして、強要罪が成立するためには、『脅迫・暴行』の結果として、相手に義務のないことを行わせるか、または行うべき権利を妨害した、ということが必要です」
このように強要罪が成立するための要件を述べたうえで、伊佐山弁護士は「未遂罪」についても言及する。
「強要罪の手段としての『脅迫・暴行』はあったが、相手方に義務のないことを行わせ、または行うべき権利を妨害するまでに至らなかった場合には、強要罪の『未遂』となります(223条3項)。
一方、『脅迫』や『暴行』そのものが未遂に終わったケースであれば、未遂にもなりません。たとえば、強要の目的で脅迫状を郵送したが、相手方に到達しなかったような場合は、強要未遂罪は成立しないと解されます」

●脅迫・暴行を手段として、『謝罪を要求する』という事実と強要罪の成否について

では、謝罪文を要求し続けて逮捕された父親の事件では、強要罪は成立するのだろうか。
「長女の父親が、学校に対して、謝罪を要求したからといって、それだけでは強要罪にはなりません
学校側には謝罪すべき義務がない事案であるにもかかわらず、父親が『脅迫・暴行』を手段として、『謝罪を要求する』という事実があれば強要罪になります。
しかし、父親が謝罪を要求し続けたとしても、『脅迫・暴行』を手段としていないのであれば、父親の学校への謝罪要求は犯罪にはならないといわなければなりません」
このように述べたうえで、伊佐山弁護士は次のように指摘している。
「今回、報道されている『強要はしていない』という父親の言い分が、『脅迫・暴行を手段としていない』という意味で、それが事実とすれば、刑事上の問題は何ら生じず、逮捕は不当で冤罪ということになると考えます」
このように強要罪の成立する範囲は限定的になることが多そうだ。身近にあるようで、意外と知られていない犯罪と言えるのかもしれない。

集団で押しかけては不当な動機に基づいて謝罪要求を繰り返す、殴り込みに行くなどと脅すといった行為に学校側が恐怖を感じなかったかどうかは議論の分かれるところでしょうが、こと刑事事件として取り扱うとすれば微妙なラインであったということでしょうか、あるいは当事者もそのあたりを熟知した上で行っていたことであったのかも知れません。
ただ本件の場合このような判断の分かれるケースもきちんと警察に通報し逮捕にまで至っているということが重要なのであって、その上で今後もなおしつこく要求を続けるのであればまた話も変わってくるでしょうし、明らかに正常な業務を妨害しているというのであれば民事上の損害賠償請求を行うにあたっては何ら支障がなさそうに思えます。
要するに学校側がきちんと問題行為を問題行為と認めて本気で対応する気になればやれることは幾らでもあるということで、恐らく全国各地に程度の差こそあれ同様のトラブルに巻き込まれている施設は幾らでもあるはずですから、こうした事例をきちんと情報共有していくことが必要ではないかと思いますね。

医療の世界でも同様の問題はあって、例えば先日の調査で患者から院内暴力を受けた医師・看護師は約半数に上るというニュースがありましたけれども、おもしろいのはそのうち約半数は「説明不足」や「長い待ち時間」などによって「医療者側にも原因があった」と認識していることで、医療現場に「説明不足なら暴力を振るわれても仕方ない」といった発想があるのだとすればいささか世間の常識との乖離を疑われるところですよね。
常習的なモンスターペアレンツは半ばプロ化しているケースが多く、彼らは相手を見て対応を使い分けることでスタッフの中に味方を作り上げ自分の利益に結びつける場合がままありますが、特に困るのは院長など職員に対して責任を持つ立場にある者が「しかし当院が放り出せばこの患者には行く先がなくなるじゃないか」などと妙な仏心を発揮して、適切な対応を取らないままモンスターを増長させてしまう場合です。
その結果スタッフはストレスを貯め込み離職が相次ぎ医療サービス供給に支障を来したり、多くの一般患者に不利益がかかっていることに気がつかないのでは間違った医者魂の発露としか思えませんが、顧客は全てが平等だというわけではなく、度を超えた不良顧客には早期に適切な対応を取らなければ状況は悪化する一方だということを、今時の職場管理者ならばきちんと理解しておかなければならないでしょうね。

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コメント

やってることはじゅうぶん脅迫にあたると思えるのに、まさか伊佐山芳郎弁護士は本人の言い分だけ信じて罪はないって言い切っちゃった?
こういうことばかりやってるから弁護士に対する社会の信用がゆらぐことになるんじゃないのかな?

投稿: たまてる | 2013年4月19日 (金) 09時01分

>まさか伊佐山芳郎弁護士は本人の言い分だけ信じて罪はないって言い切っちゃった?

つ>>それが事実とすれば
つか、弁護士は「代理人」ですから、刑事訴訟においては被告人の言い分はどんなに荒唐無稽でも信じる、若しくは信じているフリをして法廷で主張するのが職務なワケで…。


投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年4月19日 (金) 09時43分

記事を読む限りでは親が具体的にどのような行為をやっていたのかが伝えられていなかった可能性がありますね。
だからこの記事の問題点は専門家にきちんと詳細な情報を与えないで欲しいコメントを引き出した記者の側にあったんじゃないですか。
それに気づかずに乗せられてしまった伊佐山弁護士も脇が甘かったとは思いますが。

投稿: ぽん太 | 2013年4月19日 (金) 10時22分

弁護士ドットコムって弁護士の人たちのサイトってわけじゃないんですか?

投稿: てんてん | 2013年4月19日 (金) 10時41分

>弁護士ドットコムって弁護士の人たちのサイトってわけじゃないんですか?

運営会社には弁護士も関わっていて、詳細は存じ上げませんが推測するに医師に対するm3のような位置づけなのかな?と思っています。
記事から受ける印象からすると医療訴訟における原告側弁護士みたいな感じのポリシーなんでしょうかね?

またまた書き方が悪かったかも知れませんが、伊佐山弁護士のコメントだけを抜き出して読んでみればまさにその通りと言うしかないことをきちんと言っているのですよね。
ただ記事全体を通して読むとあれれ?と素人には思えてしまう、そういう利用のされ方を想定せずコメントしているのだとしたら確かに今時の専門家としては甘かったかなという気はします。
いずれにしても上にも出ていますように、弁護士の仕事として最大限被告の権利を擁護するということには何ら矛盾はないわけですからこれはこれで当然のコメントではありますね。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月19日 (金) 11時35分

>内縁の妻の長女が通う小学校を脅したなどとして、警視庁葛飾署は23日、東京都葛飾区鎌倉、職業不詳亀山順一容疑者(35)を強要未遂などの疑いで逮捕した。

不詳ではなく公言できない御職業だったのではないかとw

投稿: aaa | 2013年4月19日 (金) 13時12分

プロのモンスターだとまず些細な事で大騒ぎして謝罪要求、次にトップ(院長など)を呼ぶように要求、従わなければ居座る。という感じでしょうか。ここまでやってもやり方次第では罪に問われないんですね。恐怖を感じたかどうかなんて曖昧ですからね。
医療関係者から見るともし放り出せば応召義務違反に問われるとでも思っているんでしょうね。
プロモンスターからすればこれ以上ないほどのいいカモですね。
モンスター対策するのなら最低でも現場を録画くらいして証拠を残しておくくらいでないと。

投稿: 逃散前科者 | 2013年4月19日 (金) 13時48分

>些細なことで大騒ぎして謝罪要求、次にトップを呼ぶように要求、従わなければ居座る。

私が以前勤務していた病院でまさにその通りの行動をとった患者さんがいました。
院長先生は慌てるなと言って夕方まで放置。それでも帰ろうとしなかったため、警察に通報し、不退去罪で連行、24条通報から措置入院となりました・・・
精神病床のある病院でごねるのは危険なので、くれぐれも無理な要求をなさいませんように。

投稿: クマ | 2013年4月19日 (金) 22時00分

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