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2013年4月30日 (火)

待ったなしの高齢者医療制度改革 麻生節炸裂は実を結ぶのか?

マスコミが「読者の声」と称して特に自らの主張に都合の良い意見を優先して採り上げることは別に珍しいことではありませんが(その逆であったならおもしろそうですけどね)、先日の産経新聞に取り上げられた読者の声にこんなものがありました。

読者から 医療費、不適切に安いのでは(2013年4月25日産経新聞)

横浜市 年金生活者(66)

 65歳以上の人口が3000万人を超えたとの報道がありました。友人のご主人は75歳。10年前から人工透析で、いたって元気です。透析患者の医療費は地域にもよりますが、ほぼ無料。検査も頻繁です。先頃、初期の腎臓がんが見つかり、手術。結局、3週間入院しました。

 「いくらかかったと思う?」と友人から電話が来ました。かかった医療費は340万円超、75歳だし、健康保険で1割負担と思いきや、払ったお金は1万4000円!だそうです。3週間も入院し、食事代も含めてだから、家にいるより安上がりだと。覚悟していた友人は驚き、「こんなじゃ、国民皆保険制度も崩壊するわねえ」と。

 別の友人は72歳のご主人が心臓近くの血管が詰まり、9時間に及ぶ大手術を受けました。費用がやはり300万円超で、友人は1割負担分の貯金を下ろすつもりでした。でも、高額医療費で4万4000円でした。

 親戚の85歳になるおばあさんは200円だからと毎日、整骨院でマッサージをしています。200円なんて電車にもバスにも乗れない金額ではありませんか。

 若い頃から保険料を納めていない人や、病気を治す気のない人が、無料で医療を受けられたり、薬局へ行くより安かったりするような仕組みはおかしいと思います。負担をしている若い人のことをもっと考えてほしいと思います。

 自民党の小泉進次郎議員が国会でも発言したように、70~74歳の医療費1割負担は早急に2割に。高齢化の進行は統計上、はっきりしているのだから手を打たないとけません。

さすがに昨今では透析病院は黙っていても大儲け、というほどには儲からないようですけれども、それでもほとんど無料でこれだけの医療費を使い放題ということになれば昨今その破綻が懸念されている医療財政上どれだけの負担になるか、ということはどうしても気になってきますよね。
かつて高齢者医療制度改革と言えば姥捨て山だ、老人切り捨てだと総バッシングを受けた記憶が生々しいのでしょうか、それともこれだけ高齢化社会が進展し3000万の票の行方が気になると言うことなのかも知れませんが、いずれにしても政治家の側からは未だに高齢者の医療費問題はどこかタブー視されているような気配があります。
ただ昨今流れが変わってきたのはやはり財政上の問題があまりに大きなものとなったため、かつての高度成長時代に行われた過剰とも言える弱者保護的社会保障政策をそのまま持続していくことは実際問題として不可能になっているという現実が否応なしに存在しているという点で、一部マスコミからも行政側の「弱腰」を批判する論調が出てきているというのは時代の変化を感じます。

年金・医療に切り込み財政規律を取り戻せ(2013年4月24日日本経済新聞)

 安倍政権が主導した異次元の金融緩和策と世界経済の改善が寄与し、日本経済の先行きに対する企業経営者と消費者の心理は好転した。この流れをさらに太くするのに不可欠なのは、成長を促す規制改革と国の財政に規律を取り戻すための歳出改革である。

 成長戦略は6月の成案作成へ向け、産業競争力会議などが詰めの議論に入った。気になるのは、歳出改革への動きが鈍い点だ。高齢者数がさらに増えるなかで年金や医療の持続性を確かにするためにも、社会保障給付の膨張を抑える制度改革は避けて通れない

 政府・与党が7月の参院選を意識して高齢層に厳しい政策を示すのを先送りしようと考えているとすれば、問題は大きい。選挙戦を通じて財政と社会保障を立て直す道筋を野党と競うべきである。

 安倍政権が編成した2012年度の補正予算によって国の財政赤字は大幅に拡大した。ある年度の政策経費を借金以外でどの程度まかなっているかを示す基礎収支は、地方自治体の分を含めて13年度に国内総生産比で6.9%の赤字に悪化する見通しだ。

 菅政権の時代、日本はこの赤字幅を15年度に3.2%に縮め、20年度に黒字転換させると国際公約し、安倍政権はこれを引き継いだ。しかし消費税率を14年4月に8%へ、15年10月に10%へ引き上げても公約達成はおぼつかない

 消費税増税は年13兆5千億円の増収をもたらすと、財務省は試算する。その使い道をみると11兆円弱は赤字国債でまかなっている既存の社会保障費に充て、残る3兆円弱を育児支援や医療の充実などに使ってしまう計画だ。財政規律の回復に程遠いのが実態である。

 だからこそ歳出の絞り込みが欠かせない。本丸は社会保障だ。

 年金制度は実質給付額を毎年、小刻みに切り下げる仕組みを早急に発動すべきだ。医療は重複検査・投薬を解消するために、診療報酬明細の電子化をさらに徹底させてほしい。大学病院などの外来受診を適正にするために、家庭医制度を普及させるのも課題だ。財政対策では、豊かな高齢者の窓口負担を引き上げるべきである。

 改革案を審議中の社会保障制度改革国民会議(会長・清家篤慶応義塾長)の責任は重いが、痛みの伴う給付抑制や負担増に踏み込もうとしているようには見えない。政治的な思惑に左右されずに思い切った制度改革を打ち出す時だ。

もちろん若年人口減少と出生率減少対策もさらに推し進めないことには根本的な収入減少に歯止めがかからないでしょうが、ただ人口構成が以前のそれとは全く別物となってきた現代日本において、昔ながらの制度をそのまま続けていくのでは社会補償制度の永続性など到底担保出来ないことは明らかなのですから、少なくとも過度に優遇されている部分はさっさと是正しないことには仕方がないでしょうね。
先日の社会保障制度改革国民会議を受けて読売新聞では「節度ある医療へ議論を深めよ」と主張ていましたが、その改革の方向性として「「病院で治す」医療から「地域全体で治し、支える」医療への転換」云々が正解なのかどうかはともかくとして、お金のことは気にせず最善最良の医療を提供し、提供されて当然だという考え方が通用する時代ではなくなったということでしょう。
その意味で注目されるのが先日以来麻生副総理が繰り返している「健康なら保険料が還元されるような制度を導入すべき」論ですが、何しろ政界の実力者であるという以上に財務省として医療財政の首根っこを握っている同氏が時を変え場所を変えこうした発言を繰り返しているということの背景には、それなりの財政上の根拠があると言うことであるようです。

仰天麻生提案で医療費3兆円削減!? 似た制度導入の市は全国平均より2割低い数値(2013年4月26日zakzak)

 麻生太郎副総理兼財務相(72)がブチ上げた、高齢者医療費の抑制案が波紋を広げている。「70歳以上で、年に1回も通院しなかった人には10万円あげる」という仰天プランだが、専門家によると、うまく機能すれば、なんと3兆2000億円も抑制できる可能性があるという。

 厚労省によると、2010年度の70歳以上の医療費は計約16兆円。1人あたりでは、70~74歳が年間約62万円、75歳以上が同約87万円だった。自己負担1割、税金約3割、残りの大部分を若年層が支払った健康保険料から賄っている。医療費が増えるほど、税金や現役世代の保険料負担も増える仕組みだ。

 麻生氏は24日の会合で、増大する医療費負担に関して、「『10万円あげる』と言ったら、ちょっと病院に行こうかな、という人が行かなくなって医療費が下がる」と秘策を披露したが、実際の医療現場はどうなのか。

 新渡戸文化短期大学の学長で医学博士の中原英臣氏は「肌感覚では、医療費のうち1~2割は減らせる余地があると思う」と話す。16兆円の2割は3兆2000億円になる。

 「高齢者が病院をサロンにしていることが社会問題になっている。『今日は○○さんが来ていないけど、病気かしら?』というジョークもある。病院が混雑して受診に時間がかかる原因にもなっている。麻生案は興味深い。ほかにも、薬を2週間分ではなく1カ月分渡したり、自治体が高齢者が集まるサロンを作っても効果があるだろう」

 過去に似たような制度として、長野県佐久市が1979年度から2007年度まで、1年で1度も通院しなかった70歳以上の人を表彰していた。同市国保医療課によると、07年度では70歳以上の1万4207人のうち、2・8%にあたる397人が表彰を受けた。

 制度と関連性があるかは不明だが、同市の高齢者1人あたりの医療費は、全国平均よりも2割ほど低い傾向が続いている。

 担当者は「表彰制度があったころは、風邪などの軽い症状では『賞状をもらうために頑張る』と、病院に行かないお年寄りも多かったと聞いています」と話した。

 麻生氏は10万円作戦について、「最もカネがかからない方法だ」と胸を張ったが、費用はどのくらいになりそうか。

 政府が発表している4月1日時点での70歳以上の人口は2291万人。通院しない人が07年度の佐久市と同じ2・8%として計算すると、64万1480人となり、計約641億円が必要になる。確かに、うまくいくなら費用対効果は高い。

 少子高齢化で、政府の社会保障費は毎年度1兆円超の自然増を続け、サラリーマンが納める健康保険料も右肩上がり。10万円作戦が、事態を打開する切り札となるのか。

まあしかし、医師としてのキャリアも何もない医療コメンテーター氏の肌感覚云々が根拠というのもなんとも頼りないものではありますけれども(苦笑)、効果が実際にそこまでになるかどうかはともかく、こういう制度を導入して大きな問題はなさそうだと言うよりも、むしろ高齢者医療の現場を正常化する期待も持てるかも知れませんね。
例えば高齢者による病院のサロン化云々はともかくとしても、それ以上に高齢者医療で問題になってくるのが始終病院に通い詰めてあそこが悪い、ここが痛いと訴えれば当然検査なども受けるでしょうけれども、その結果何かしらの病気が見つかってしまう確率が高齢者の場合非常に高いということです。
若年者の場合何かしら不調や不具合がありそれに対して検査と治療をする、その結果症状が良くなればいったん病院から縁が切れるというのが普通ですが、高齢者の場合大抵は隠れ基礎疾患が幾つもありますから調べれば調べるだけ病気は出てくる、そして見つかった以上は世に数あるガイドラインに従ってきちんと対応せざるを得ないというのはこのご時世、医療訴訟のリスクなども考えると仕方がないことではありますよね。
その結果ちょっと気になったから念のためと病院にかかっただけの高齢者が、気がつけば幾つもの病気を抱えて病院通いを強いられるということになりますけれども、例えば若年者に対しては意味がある慢性疾患の厳重な管理なども人生の先が見えている高齢者に対してどこまで意味があるのか、もちろん予防的効果はあるにしても費用対効果や生活の質の向上等々も考え合わせてどうかという問題はさらに検討が必要でしょう。

いささか話が脱線しましたけれども、世界的に見れば人生で使える医療費の総額が決まっていて、使い残した分は家族内で使い回せるといったやり方で無制限な医療費増大に歯止めをかけている国もあることを考えるとき、日本の医療制度は「タダ(同然)なのだから使わなければ損」という考えを招きやすい制度設計であり、また医療を提供する側も医療費を心配せずに済むだけコスト意識が弱かったのは事実だと思いますね。
もちろん「しかし病気が見つかれば治療しなければ仕方がないじゃないか。訴えられれば負けるのは医者だ」という話にもなってくるのですが、例えば「ところで先生、特になんともないですがドックを受けたら高いので、全身一通り調べてもらえませんか」なんてことを言い出す患者は制度設計に甘えているというしかないし、少なくともそうした人に保険病名をつけてまで安い医療を提供するのはおかしいということでしょう。
本当に必要な医療を省いてしまうようなことにならないよう気をつけることと無駄な医療をなるべく少なくすることとは表裏一体の関係にあるとも言えますが、麻生案に関して言えば比較的たちの悪い副作用も少なく安上がりに効果を期待出来る上に国民感情にも合致しやすい案に思えますから、揉めそうな高齢者の自己負担優遇措置是正などと比べれば案外早く実現に向けて動き出すかも知れませんね。

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コメント

メディアも真っ二つというところですが内閣支持率を見ると改革への期待のほうが大きそうです。
現状維持路線の改革反対派は情緒的な訴えばかりでは世論から支持されないでしょうね。
はたして彼ら麻生さんのアイデアにはどう反対するつもりなんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2013年4月30日 (火) 09時55分

★ヤンチャな兄を反面教師に 九州財界トップに上りつめた

  兄の“七光”ということか。麻生副首相の実弟で、麻生セメント社長の泰(ゆたか)氏(66)が九州財界のトップに就くことになった。九州経済連合会(九経連)の会長に内定。6月5日の総会で
正式決定する。
  九経連は、九州・山口に本社または活動拠点を持つ企業による業界団体で、地元で絶大な影響力を持っている。現会長で2期4年目の松尾新吾・九州電力相談役は「九州財界の天皇」と呼ばれていた。
(中略)
  政官財界が注目する泰氏は、一体どんな人物なのか。
 「麻生家は6人きょうだいの長男が太郎氏で、泰氏は4番目の三男。幼稚舎からの慶応育ちです。慶大法学部を卒業後にイギリスのオックスフォード大学ニューカレッジに留学したそうで、語学が堪能と
聞きます。商売に関しては、手堅く家業を守り、事業を拡大してきた堅実なタイプ。ヤンチャな兄さんを反面教師にしてきたところがあるのでしょう。服装も地味。ボルサリーノ帽? かぶった姿は見た
ことがありません」(地元政界関係者)
 “愚兄賢弟”というやつか。

 (日刊ゲンダイ2013年4月24日掲載)
http://news.infoseek.co.jp/article/27gendainet000186168

投稿: | 2013年4月30日 (火) 10時37分

麻生氏もさんざん嫌われた口ですから、氏の今後がどうあれ今さらマスコミも手のひらを返しにくいでしょう。
良識あるマスコミならではの健全な批判精神(苦笑)を発揮して、今後も末永く麻生叩きは続くと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月30日 (火) 12時22分

> “愚兄賢弟”というやつか。

ゲンダイに愚兄扱いされたんじゃ麻生も立つ瀬がなさすぎるwww

投稿: aaa | 2013年4月30日 (火) 14時39分

うちも町医者の部類だが毎日点滴に通ってくる高齢者はいるんだなあ。
希望時随時点滴可って指示だして放置プレー中の担当医が悪いんだが。

投稿: たもやん | 2013年5月 2日 (木) 12時12分

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