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2013年4月11日 (木)

出張レントゲン検診には医師同乗が必要と厚労省が解釈変更?

新卒社員の加入もあってこれから各地の職場などでは春の検診シーズンに入ってくる時期ですが、自治体検診も年度替わりからまた新たに始まってきますよね。
その自治体検診の中でも特に僻地を中心に大きな意味を持ってくるのが検診車による出張検診ですが、ここに来て突然その出張検診ができなくなるかも知れないという事態が勃発しているようです。

「全てに同乗無理」下関市中止、他の自治体も困惑(2013年4月4日読売新聞)

 がんの早期発見などを目的とした検診車でのX線撮影への対応について、県内の自治体が頭を抱えている。検診車では、ほとんど放射線技師が撮影しているが、医師が立ち会わない場合について、国が「違法」と判断したためだ。これを受けて下関市は1日から胸部検診車の運用を中止。医師不足に悩む他の自治体も情報収集に追われている。(古藤篤)

 違法の疑いは、昨年春に浮上した。検診車で巡回サービスを行っていた下関市に対し、市民が「(医師がいないのは)法律違反ではないか」と指摘。市が県を通じて国に問い合わせたところ、今年2月に厚生労働省から「現場に医師がいないのは違法」との回答があった

 診療放射線技師法は「技師は医師または歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に照射してはならない」と定めており、厚労省の見解はこれに則したものだ。

 一方、検診車については、1978年の衆院予算委員会で当時の厚生大臣が「(医師が)包括的な指導、あるいは監督(する)ということもある。集団検診などの実施に配慮していい」と答弁し、医師がいない運用の支えになっていた。

 下関市はX線撮影機を備えた肺がんと胃がんの検診車を各1台所有。毎年度、支所や公民館などで約160回の検診を行ってきた。2011年度も約7000人が利用したが、今回の「違法」判断を受け、肺がん検診車の運用を中止。運用委託している胃がんの検診車も委託先と対応を協議している。

 市は「医師である保健所長の指導を受けて実施していた。大臣答弁から法令上、問題はないと考えていた」とする。

 県によると、下関市以外の市町も県予防保健協会などに運用委託する形で巡回サービスを行っており、影響が広がっている。6月に集団検診を予定している周南市は「国や県の指示を待って協議したい」と対応を保留。岩国市も「国や県から指示がなく情報収集している段階」と困惑する。

 防府市は「全ての検診車に医師は同乗できない」などとして、検診車の運用について、県に指示を求めているという。医師を何とか確保して5日から検診を実施するという防府市は「指示がない状況が続けば、今後は中止も視野に入れなければならない」。山口市は「委託先と調整し、(医師配備のために)検診車の台数を減らすことも検討する」としている。

 下関市は「国や県には、市民サービスが低下しないように現実的な対応を考えてもらいたい」と求めている。

がん検診車法改正要望案提出へ(2013年4月9日読売新聞)

 医師が立ち会わないがん検診車でのX線撮影を厚生労働省が「違法」と判断し、下関市が検診車の運用を中止している問題について、中尾友昭市長は8日、国に診療放射線技師法の改正を求める議案を県市長会で提出する意向を明らかにした。

 中尾市長は定例記者会見で、「全国の自治体が同じ課題を抱えている。(医師が)同乗しないでも検診できる仕組みを残したい」と述べた。18日に山口市内で開かれる市長会の会合で提出する。議案では、県に対しても問題解決に向けた協力を求めるという。

 検診車を巡っては、放射線技師によるX線撮影がほとんどで実施されているが、厚労省は医師不在での撮影について、同法に違反するとの見解を示した。これを受けて、下関市は1日から胸部検診車の運用を中止している。

自治体の出張検診というのもなかなか大変なもので、街中などと違って田舎では医療機関そのものがない場合も多いのでレントゲン撮影ができる大きな検診車で出かけていくわけですが、もちろん非常に高価な特装車ですからそう何台も各地に配備してあるわけではなく、特に遠隔地の出張検診などではわずか数人のために延々何十キロも田舎道を往復するということもあり得るわけですね。
当然費用対効果という点も厳しいですし、そんな仕事に医師がついて行きたがらないのも当然というものなのですが、自治体検診に限らず全国の医療機関による出張検診で医師が立ち会わずにレントゲン撮影を行っている場合が過半数であると、先日行われた日本診療放射線技師会のアンケート調査でも明らかになっています。
ちなみに記事中にもある放射線技師法で該当するのが第26条だと言いますが、該当する部分を引用してみるとこんなことが書いてありますね。

(業務上の制限)
第26条 診療放射線技師は、医師又は歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に対して照射してはならない。
2 診療放射線技師は、病院又は診療所以外の場所においてその業務を行つてはならない。ただし、次に掲げる場合はこの限りでない。
1.医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、出張して100万電子ボルト未満のエネルギーを有するエックス線を照射する場合
2.多数の者の健康診断を一時に行う場合において、医師又は歯科医師の立会いの下に100万電子ボルト未満のエネルギーを有するエックス線を照射するとき。

この文言を文字通りに解釈すればなるほど、医師の同行しない出張検診のように医師または歯科医師が立ち会いも事前の診察もせずにレントゲン撮影をすることは違法行為であるということになりそうなんですが、当然ながら放射線技師会ではこれに対して条文の変更を求めていくようです。
恐らく法律上の意図としてはレントゲン技師がミニ医師化して勝手にここを撮ろう、あそこも撮ろうと撮影をしてしまうようなことを禁じているのだと思いますが、そもそも検診のレントゲンは何をどう撮るかははっきり定められているものでもあり、今やナースプラクティショナーにレントゲンの指示も出させようと言う規制緩和の時代にあって、今回の厚労省の回答はいささか教条的すぎる解釈であるように思います。
当面の自衛策として例えば従来レントゲン等一通りの検査の後に医師の診察を行っていたのであれば、まずこれを先に行った上で医師の指示を受けて撮影したという形にするくらいなのかなと思うのですが、いずれにしてもこれから検診シーズン真っ盛りというこの時期にいきなり躓くような話が出たのでは、各地の検診スケジュールが大混乱を来すこと必死でしょうね。
もちろんレントゲン技師も別に余って暇をもてあましているというわけではないですから、何らかの対策が講じられるまで検診を先延ばしにするともなれば別などこかで後々技師不足という問題が顕在化してくる恐れもあって、唐突な厚労省の解釈変更?が全国の医療現場に大きな影響を及ぼすということにもなりかねません。

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コメント

健診希望者はお近くの医師にご相談くださいでFAでは?お近くの医師が50km離れててもいいじゃない年一回なんだしw

投稿: aaa | 2013年4月11日 (木) 09時23分

下関なら、相応の金を出せば健診のバイト医を見つけるのなんて簡単だと思うのだが。
「医師に払う報酬を予算に組んでません」てだけではあるまいか。

投稿: JSJ | 2013年4月11日 (木) 09時56分

研修医時代に日赤の献血車で田舎町にでかけたことがありますけどお尻がいたくなった記憶だけですね。

ところで検診車を出すんじゃなくて近隣の病院までバスで送迎すれば医師不要なんじゃないですか?
検診車も高いんだったらその方が総費用も安くなりそうだし。

投稿: ぽん太 | 2013年4月11日 (木) 09時59分

出張検診自体が相当持ち出しも多く、正直縮小したい事業だったのかも知れません。
地域の医療期間にとっても住民が検診に受診してくれた方が、事後のフォローアップも含めて経営的メリットはあると思います。
つまりは誰にとっても続けるメリットがない事だとなると、少しニュースの意味合いも変わってくるんでしょうね。
自治体の側でも厚労省の見解に渡りに船という気持ちがあるなら、今後は医師が確保できる範囲に縮小されるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月11日 (木) 11時17分

下関、山口、防府、周南、岩国。
名前が挙がっているところはどれも市内に高速道路のI.C.がある、防府以外は新幹線の駅もある、
と、山口県内でも他の地域よりは医療資源に恵まれているであろうし、県内外からのバイト医集めにも有利だろうところばかり、
というのは示唆的だと思います。

投稿: JSJ | 2013年4月11日 (木) 12時33分

あと、防府以外は平成の大合併で一挙に市域が拡大したことも影響しているかも。

投稿: JSJ | 2013年4月11日 (木) 12時43分

合併前の郡部の住民サービスをそのまま引き継いで苦労してる、とか…
地区の医師会はどう言ってるんでしょうね?

投稿: たま | 2013年4月11日 (木) 13時47分

こっちのNHKニュースも少し詳しいです。
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/03/0329.html
検診車がレントゲン検診に回るようになったのが昭和30年代以降だそうです。
それで問題の放射線技師法ができたのはなんと昭和26年なんですね。

馬車の時代にできた法律で自動車を規制してる感じ?

投稿: ぽん太 | 2013年4月11日 (木) 14時01分

バイト医を雇うことで健診のコストが上がるのを嫌っているのが本音で、それを医師不足にかこつけてるだけじゃないですかね。>NHKニュースに出てくる人達
こういう医師の「権限」に関わることは、「雑用」を減らすこととは話が別だと、私は思います。

投稿: JSJ | 2013年4月11日 (木) 16時00分

どうせ後で医師が読影すんだから誰が撮ったってかわりないだろにね。
空気読まないのが余計なクレームつけたせいで検診車来なくなって住民涙目だなこりゃ。

投稿: 吉井 | 2013年4月11日 (木) 16時58分

検診車はきちんと届出をしていれば、診療所(もしくは医療機関の一部)とみなすと解釈できる通知と通達があります。したがって、診療放射線技師法第26条第2項の「病院又は診療所以外」には該当しません。届出をしてないなどの理由で病院又は診療所以外とみなされる場合に違法であり、そうでない場合は、違法とは言い切れません。

投稿: | 2013年4月12日 (金) 18時53分

レントゲン技師がミニ医師化して‥レントゲン技師が余って暇もてあまして‥なんか失礼じゃないですか?レントゲン技師ではなく放射線技師ですよ。あなた何様ですか?

投稿: | 2014年6月23日 (月) 14時58分

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