« 医療事故調、ついに臨時国会へ | トップページ | 医学教育が大いに変わる? »

2013年4月24日 (水)

社会保障会議が役立たずだと評判に?

4月22日に第10回の社会保障制度改革国民会議が開催されましたが、かねて医療報道に強いと自負しているという読売新聞からこんな社説が出ています。

【社説】社会保障会議 「節度ある医療」へ議論深めよ(2013年4月23日読売新聞)

 超高齢社会を迎える中で、急増する医療・介護費用の伸びを抑え、信頼される社会保障制度を築くことが急務である。
 その方策を議論している政府の社会保障制度改革国民会議が、医療・介護について改革の論点をまとめた。
 限りある医療の設備や人材について「国民の財産」と位置付け、適正利用の重要性を強調した。持続可能な医療・介護制度を構築する上で適切な指摘である。

 ポイントは、国民会議が「必要な時に適切な医療を適切な場所で、最小の費用で受ける」医療への転換を打ち出したことだ。
 日本の医療は、患者側が費用の心配をせずに、いつでも、どの医療機関にもかかれる「フリーアクセス」を特徴としている。
 その結果、軽い風邪でも大学病院にかかるなど、無秩序とも言える受診を招いた。これが医師の過重労働にもつながっている。
 こうした状況の改善策として、国民会議では、紹介状を持たずに大病院を受診する場合、診察料に加え、1万円程度の保険外の負担を求めるとの案が示された。自己負担を大幅に引き上げるものだ。検討に値するのではないか。

 国民会議が示した論点のうち、実現を急ぐべきなのは、価格の安いジェネリック医薬品(後発品)の普及である。
 米国、イギリス、ドイツでは、処方薬のうち後発品が占める割合が6~7割に上る。これに対し、日本は4割にとどまる。
 後発品の品質は向上しているが、医師の間では、その効能を疑問視する風潮が根強いことも背景にあるだろう。後発品の価格は先発品の2~7割で、普及が進めば医療費の削減につながる
 現在は医療機関の裁量に任されている医薬品の処方について、厚生労働省は後発品の使用を原則とする仕組みを検討すべきだ。

 国民会議は、「病院で治す」医療から「地域全体で治し、支える」医療への転換をうたい、在宅医療・介護の充実も求めた。
 国民健康保険については、運営主体を現在の市町村から都道府県に広域化する方向で一致した。財政事情が悪化し、保険料が高騰している市町村もあることを踏まえた問題提起だ。
 ただ、こうした施策を実現するには様々な角度からの議論が必要だ。国民会議は、社会保障と税の一体改革関連法により、8月までに議論をまとめることになっている。優先順位を決め、実効性ある結論を得ることが肝要である。

この国民会議を巡っては現行の社会補償制度に危機感を抱える各方面から「存在感が薄すぎる!一体何をやっているのか!」と叱責の声が上がっているようですが、何しろ高齢者窓口負担の優遇措置是正も一向に進まないことにも見て取れるように、こうした問題は関係者各位が既得権益を主張してまとまるものもまとまる気配がないという状況が続いています。
特に今回は日医などが断固死守を表明してきたフリーアクセスの原則にも踏み込んできたということで、考えて見れば医療機関各々が診療内容やレベルに違いがあるということは当たり前の話なんですが、国民皆保険制度下で全国どこでも同一価格同一内容の医療を受けられますというタテマエになっている日本においては「風邪で大学病院を受診して何が悪いのか?」と言われれば答えに窮したのも事実です。
今まで病院側の自主的決定に委ねられていた選定療養費加算については5000円程度が多かったようで、時間外救急が2割程度減る一方で入院患者数はほとんど差が見られなかったと言いますから軽症者のコンビニ受診抑制効果はあったと見るべきですが、1万円という診察費と比べても割高な加算によってこの辺りの受診行動がどう変化するかです。
軽症者は医療機関そのものの知識が無く見た目に目立つ大病院に集まってくるケースも多いでしょうから、大病院では窓口以前に電話なりインターホンなりでまず相談を受付るところから始めて、場合によっては適切な施設を紹介するといった振り分け機能も発揮出来るようになれば、比較的悪意のないコンビニ受診者対策として一定の効果はあるんじゃないかという気もします。

ジェネリックに関しては国が本気で同じ成分で同じ効果だと主張する気なのだとすれば、例えばジェネリックが出た時点で先発品も後発品も全部同じ価格に統一すれば「後発品は効かない」という医師にも、「後発品使用で医療費削減を」という財務省にも、そして「何か知らないけれども高い方が効きそうだ」と漠然と盲信している一部患者にもいずれも損のない話ですが、そういう話は出てきません。
ひとたび決めた薬価を引き下げることは沽券に関わるとでも考えているのかも知れませんが、長年同じ薬剤を作ってきた先発品メーカーであれば新規に製造を開始する後発品メーカーよりも低コストで製造できるだろうと考えられるわけですから、価格差を認めているということは公に薬効なりその他の部分で両者に違いがあると認めていることにも等しいんじゃないかという気がします。
先発品のメリットの一つに儲からないからといきなり製造をやめて撤退するということがないといった話もありますが、本当に先発品が高いことが問題であるなら承認後の年数に応じて徐々に薬価を切り下げていくことで対応すべきで、儲かるほど数が出るかどうかも判らない後発品をどんどん承認して経営的に不安定な製薬会社を増やすことが本当に良いことなのか疑問に感じます。

在宅医療推進に関しては先日の中医協でも改めて確認された「国策」ですが、実際には多くの家庭で希望してはいても実際には在宅での看取りは無理だと答えるなど、核家族化どころか生涯独身化に加えて既婚者も共働きが当たり前になっている現代の家庭の実情と全く合致していない斜め上方向への妄想と言うべきでしょうね。
各種在宅サービスの充実ばかりでこうした社会構造の変化には一向に目を向けていないように見えることが気がかりなのですが、子供夫婦のうち一人が働き一人が介護というスタイルが経済的に成立しない状況なのですからサービスなどいくら充実されても利用できるはずもなく、本気でやる気であれば在宅推進で減った国の負担を介護当事者にきちんと還元し手当を支給するなり遺産相続で優遇するなり、ともかく「親を看取れば見返りがある」という担保が必要でしょう。
そもそも経済効率を求めるのであれば素人が各家庭バラバラに見よう見まねで介護をするよりも、一カ所に大勢集めてプロが交代勤務でやった方がはるかに効率も質も高くなるというもので、ましてや産業化することが経済活性化にもつながるのですから昨今話題の中高年リストラや生保受給者の増加への対策と併せて、介護業界にどう人を呼び込むかを議論するのが本筋だと思います。
激務で安月給だから人が集まらないというのであれば、真っ先に安月給を解消して人が集まるようになれば自然激務も解消されていくというもので、医療介護領域を儲けも期待出来ない安い公定価格でやらせている国にはそうした部分を是正していく責任もまたあるだろうことは言うまでもありませんよね。

|

« 医療事故調、ついに臨時国会へ | トップページ | 医学教育が大いに変わる? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

ところで介護の給料ってちゃんと上がったんですかね?中高年向きの仕事でちゃんと食っていける給料だせればすごく将来性あるのに。

投稿: あまてらす | 2013年4月24日 (水) 09時07分

この手の会議って現場を知らない人たちが好き勝手なこと言ってるだけって偏見あるんですけど。
いまさら自宅で介護しろってどんな罰ゲームかって思いますよ。
入院させれば安いし手間はかからないし働けて給料ももらえるのに…

投稿: ぽん太 | 2013年4月24日 (水) 09時53分

>ところで介護の給料ってちゃんと上がったんですかね?

統計の取り方で多少の差はあるようですが、こちらの記事を見ても少なくとも上がったとはとても言えない状況で、非常に残念と言うしかないですね。
http://nensyu-labo.com/syokugyou_kaigoin.html
平成22年の福祉施設介護員の平均月収は21万円、年間ボーナス等は47万円で、そこから推定される平均年収(ボーナス込)は304万円、平均時給は1,262円でした。

平成13年から平成22年までの過去10年間の看護助手の年収推移を見ますと、平成13年から15年までは横ばい傾向にありましたが、平成16年から減少し、現在は年収300万円あたりを横ばいに推移しています。月収、時給及び男女別データでもほぼ同様の推移を見せています。

なお会議の様子についてはこちらの記事の方が詳しいようです。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201304/530151.html

これを見ると単に在宅介護というだけに留まらず、地域開業医による往診も含めて病院への入院そのものを減らそうと言う意図にも感じられます。
ただ厚労省では医療の方向性を誘導するのに長年診療報酬という金銭によってコントロールしてきたわけで、それなら今回もきちんと出すべきところに金を出していくべきでしょう。
まさか今以上に開業医への報酬を切り下げて「在宅をやるか廃業するか?」の二者択一を迫ればいい、なんてことを考えていないことを祈ります。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月24日 (水) 10時57分

介護疲れで家族もバタバタ共倒れしていく未来絵図が目に浮かぶw
老親をかかえて無理心中する家族が増えそうだなwww

投稿: aaa | 2013年4月24日 (水) 13時59分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/57231350

この記事へのトラックバック一覧です: 社会保障会議が役立たずだと評判に?:

« 医療事故調、ついに臨時国会へ | トップページ | 医学教育が大いに変わる? »