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2013年4月 4日 (木)

がん登録義務化迫る やや不安も残す制度設計?

昨日はダルビッシュ投手が惜しいところで完全試合を逃したと話題になっていましたが、こちらは「完全」を目指すという記事が出ていました。

がん登録怠った病院に罰金も-超党派議連作業チーム(2013年4月2日CBニュース)

 超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」(代表世話人=尾辻秀久・自民党参院議員)は2日に作業チームの会合を開き、がん登録法制化に向けて、これまで積み残してきた課題についての議論を続けた。病院はがんを初回に診断した場合に、所在地の都道府県に情報を届け出なくてはならないが、それを拒んだり、怠ったりした場合には、罰金を科すことを決めた。

 病院の届け出義務違反の罰則は、直罰ではなく、都道府県が改めて報告を求める仕組みにして、それにも応じなければ20万円以下の罰金とする。罰則の程度を決めるに当たり、医療法の同種の規定を参考にした。また、がん登録の業務に従事する都道府県職員などが知り得た秘密を漏らした時には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金とする。

 集積されたがん登録情報は、国の統計作成やがん対策の立案などに利用できるようにし、がん検診の実施主体である市区町村が活用することも想定している。一方、がん医療の質向上のための調査・研究などに登録情報を提供するかどうかは、国や都道府県が委員会を設置して判断することにした。判断する上で、情報の提供を受ける研究機関の管理体制などが審査される。

 がん患者の生存を確認するために行う登録情報と死亡情報を突合する作業で、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を利用する案も検討されてきたが、見送られる見通しだ。また、登録情報について本人から開示請求があった場合、原則的に非開示にする方向だが、行政機関個人情報保護法の解釈と再度照らし合わせて、次回会合で最終決定する。【君塚靖】

ちなみに「国会がん患者と家族の会」などと言いますからどこぞの市民団体でも加わっているのかと考えてしまいますが、会員は国会議員ないしは秘書で「本人または家族・縁者が、がん患者である者、がん患者であった者」あるいは「日本のがん医療の水準向上を願う者」が参加している団体なんだそうです。
昨年6月にがん対策推進基本計画が閣議決定されるのと歩調を合わせて全国都道府県で地域がん登録が進んでいるところですが、当初厚労省の官僚側から提出された基本計画案ではがん登録について「5年以内に精度を向上させる」と何とも緊張感に欠ける目標が記載されていたと言います。
これに対して政治側が主導して同時期にまとめられていた「医療イノベーション5カ年計画」に急遽「13年度までにがん登録法制化を目指す」という目標が追加され、ようやく具体的な道筋についての議論が進むようになったと言いますけれども、基本的にはがん登録をきちんと行っていくことは医学的にも意義があることですし、実際都道府県単位ではすでに行われていることです。

利用法を見て見ますと個別の症例について掘り下げるというのではなくあくまで統計的データとして用いるつもりであるようですが、その点から患者側からの請求に対して非開示にするというのは筋が通っていると言えばその通りなのですが、実際にこれを行うと患者側の不満が高まりそうですね。
そもそも患者側からすれば自分にとっては明らかなメリットもないまま強制的に個人情報が登録されてしまうのですから不平不満は出そうな制度なんですが、一方でいちいち登録に同意を得るともなればまた大変な手間ですし登録漏れも増えそうですから、全例登録制ならクレームがついたときに誰が対応するのかも含めて検討しておいていただきたいですね。
ただそれ以上に今回見ていて気になったのは「病院はがんを初回に診断した場合に、所在地の都道府県に情報を届け出なくてはならないが、それを拒んだり、怠ったりした場合には、罰金を科すことを決めた」という一文なのですが、少し判りにくいところがあると思いますので以前の会合の内容も併せて紹介してみましょう。

がん登録、医療機関の負担軽減で折衷案も- 超党派議連作業チーム(2013年2月13日CBニュース)

 超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」(代表世話人=尾辻秀久・自民党参院議員)は13日に作業チームの会合を開き、がん登録法制化に向けた議論を続けた。前回会合での情報提供する医療機関の範囲についての議論を踏まえ、診療所を除外する案も出たが、登録情報の悉皆性を担保するために、診療所でも「治療」した場合には情報提供を義務付ける折衷案も浮上している。

 この日の会合では、がん登録法制化は、全国のがん患者の罹患情報と死亡情報を悉皆的に収集することを前提とし、法制化の目的として、がん治療データを集め、がん対策への取り組みを推進するためと法案に盛り込むことを確認。その上で、個別課題の詰めの議論に入った。

 個別課題では、情報提供を義務付ける医療機関の範囲について、継続して議論している。前回会合で、新たな制度については、がん診療連携拠点病院など専門医療機関は初回に「診断」した時点で情報提供し、それ以外の医療機関は治療方針を決定した場合に情報提供義務を負う仕組みを検討したが、初回かどうかの判断が困難なケースがあることや、「治療方針の決定」の概念が不明確だと指摘されていた。

 これらの議論を通じ、専門医療機関の場合、現行の地域がん登録制度と同様に「診断」した時点で情報提供し、それ以外の医療機関の場合、情報提供するかどうかの基準を「経過観察を含む治療」に定めて、既に専門医療機関で「診断」されたことが明らかな場合には情報提供しなくて済む案と、医療機関を病院と診療所に分けて、病院だけに情報提供義務を課し、診療所には免除するという2案を基に議論した。

 両案とも、メリットとデメリットを整理したが、その中で、登録された情報の悉皆性が重要な論点になり、医療機関の負担を軽減するために、診療所で「診断」した場合には、情報提供を求めないものの、「治療」した診療所には情報提供させる折衷案も出た。このほか、すべての医療機関に情報提供を義務付けるのではなく、「協力要請」程度の緩やかな縛りにしてはどうかとの意見も出ている。
(略)

がん登録法制化の法案骨子固まる- 超党派議連、「財政措置」盛り込む(2013年3月13日CBニュース)

 超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」(代表世話人=尾辻秀久・自民党参院議員)は13日に開いた作業チームの会合で、全国のがん患者の情報を一元管理するための制度の法案骨子を固めた。現場の登録作業の負担を軽減するために、財政上の手当てをすることも条文に盛り込む方針だ。同議連は今国会への法案提出を目指しており、作業チームは法案取りまとめに向けた最終段階に入った。

 がん登録を法制化する法案の骨子は、▽登録の義務化▽生存確認情報の収集・提供▽個人情報の保護▽情報の利用を通じた、がん医療の質の向上―の4本柱になる。「登録の義務化」には、病院に登録を義務付ける規定や、登録率・データ精度の向上に努めることを盛り込み、「個人情報の保護」では、秘密漏示の罰則と個人情報を保護するための体制整備を求めていくことになる。

 この日の会合では特に、登録情報のデータ精度を向上させるため、がん登録を行った医療機関に患者の生存確認情報をどのようにフィードバックするかや、それを実現するために、どのように条文に書き込むかを議論した。その結果、登録作業による現場の事務負担に配慮して、条文の中に「財政上の措置を講じることとする」などと明記することで、ほぼ合意した。【君塚靖】

仕事を押しつけるだけではなくきちんとコスト負担に関しても言及しているという点は感心なのですが、冒頭の記事でもわざわざ「病院は」登録の義務を負うと書いてあるように、診療所で見つかった場合には登録の義務を負わないという、全症例を網羅すると言っている割には何とも中途半端な例外規定を設けていることです。
恐らく多くの診療所は一人または少数の医師で運営していることに加え、癌の場合はまず健診等で近医で見いだされてから専門医のいる病院に送られるケースも多いでしょうから、文字通り初診を担当する医師に報告義務を負わせると言ってしまうと開業医の負担が大きなものになりすぎるという判断ではあるのでしょう。
もちろん一般的には癌と診断すれば病院に送るでしょうし、そちらで登録すればいいじゃないかと言う話なんですが、病院側からすればわざわざ癌として送られてくる以上はそちらで診断も登録もしているんだろう?と考えるでしょうから、これで登録漏れで罰金ですと言われてしまうと何とも釈然としないでしょうね。

もう一つ、いつどの時点をもって癌と診断したとするのかという問題もありますが、特に積極的な治療を行わない場合にはあまりたいした検査も行わない場合が多いですし、確定診断には至らないが臨床的に極めて疑わしいという段階で留まっている症例にも報告義務を求めるものなのか、そうした症例をどうやってチェックしていくつもりなのかと疑問は感じます。
近年はエコーなどもずいぶんと小型化が進んで在宅などを熱心にやっている開業の先生方が癌を見つける機会も増えてくるんじゃないかと思いますが、こう したケースで年齢状態的に積極的対応はせずBSCのみと決まった場合、がん登録はされていないのに死因は癌死というおかしなことにもなりかねません。
いっそ積極的治療を行わない場合は登録義務は免除すれば話は多少なりとも簡単なのですが、「経過観察を含む治療」も報告対象にすると言っている以上はBSCのみであれ報告義務があるということですから、何とも複雑な割に登録漏れがありそうな制度設計だなという気がします。
そして基本的に報告漏れに罰金とは言っても先に報告を求め拒否された場合に罰金ということですから謙抑的な運用になると思いますが、書式が違うなどと言い出して現行の地域がん登録と二重に求められても書類仕事が増えるばかりですので、事前の摺り合わせはきちんと行い是非とも確実に一度の登録で済むようにしていただきたいですね。

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コメント

例えば胃癌の場合は開業医で内視鏡を行って、癌を見つけて病院へ紹介というパターンが少なくないと思われますが、
現行のがん登録では、ステージ診断まで記載が求められます。
開業医がステージ診断まで行ってがん登録をするのは非現実的ですから、がん登録に求められる内容が現行類似であれば、
治療する医療機関でがん登録を行うのが無難でしょう。

投稿: aaa | 2013年4月 4日 (木) 09時38分

ステージは不明なら不明でよかったのでは?すくなくとも当県ではそのようになってましたよ。
登録してある症例なのかどうかが簡単に判ればこっちも対応のしようもあるんですが。
これからは県から言ってきたときに書くようにすれば間違いないってことですかね。

投稿: ぽん太 | 2013年4月 4日 (木) 09時43分

>これからは県から言ってきたときに書くようにすれば間違いないってことですかね。
納得。上に政策あれば下に対策ありwww

投稿: JSJ | 2013年4月 4日 (木) 10時18分

全例網羅のためには誰が申告するのかのルールが面倒くさいし、無治療放置は切り捨てるつもりなのかと思えば罰則まで用意していると、何か各方面に配慮してかちぐはぐな印象を持ちます。
最初に診断した医師が書くと言ってもスクリーニングで見つけてすぐ専門機関に送ったような場合、現場の感覚としてはやはりそちらで書いてもらえと言いたいでしょうし、実際より詳細で有益な情報は後医がもっているはずですしね。
実際の運用をするには微妙なところもありますが、最終的に治療方針を決めた医師が書くというのが情報としては一番有益なものになるのかなとも思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年4月 4日 (木) 10時55分

書類仕事の押し付け合いで紹介元と紹介先が不仲になったりw

投稿: aaa | 2013年4月 4日 (木) 11時23分

てかこれ、今までの登録票って各県勝手にやってたの?
まさか書式統一するから全部書き直せ、なんて言い出さないよね?(^-^;

投稿: まいんちゃん | 2013年4月 4日 (木) 12時47分

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