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2013年4月27日 (土)

国際的にネット規制派が伸張中だそうですが

まあそういうものなんだろうなと想像はしていたところでしょうが、先日は中国における監視社会の実態というものについてこんな記事が出ていました。

中国の執拗な盗聴・ネット監視 携帯が突然、音をたて始め…(2013年4月22日産経新聞)

 30年ぶりの北京駐在も2年近くになるが、執拗(しつよう)な電話盗聴やパソコンの監視には神経をすり減らされる。

 昔も盗聴は日常茶飯事だった。しかし電話がつながると装置が稼働する音が聞こえ、自分の声が山びこのように返ってきたり、相手の声にエコー(残響)がかかったりするのですぐ分かった。盗聴者を意識し、共産党政権や監視当局への皮肉を言って、電話を切られることもあった。

 今は、当局の装備や手口が格段に進化したため、先方の思うままに操られる。携帯電話で海外と話しているのに実によく聞こえるので、話し込んでしまい、手痛い打撃を受けることもある。

 昨秋の反日暴動直前、地方の同僚と情報交換している最中に、携帯が突然「ブーン!」と音を立てて震動し始めたのには驚かされた。

 ネット監視も執拗だ。当局が遮断している海外ネットにアクセスを繰り返していると、その都度パソコンを使えなくされる。修理して繰り返しトライしていると、幽霊屋敷のようなおどろおどろしい画面が現れ、「捜索!」という2文字が浮き上がってきたのにはあぜんとした。

 中国では数万人規模のネット監視団が、自国民や外国人のネットを日夜見張っているとされる。(山本勲)

しかしさすがに十数億の人口を抱える巨大国家であるが故にというべきなのでしょうか、こうした不毛な人海戦術に万単位の監視団を貼り付けるということが出来るマンパワーには驚くしかありませんね。
おもしろいのはこのネット監視団、どうもアルバイトの人間も大勢いて一定のルールに従って監視活動をしているそうなんですが、一度これを経験すると当局が何を隠蔽しようとしているのかが丸わかりであるため、一度で政府不審になったと言う人も少なからずいるらしいという話ですね。
いずれにしてもまともな文明社会でこうした盗聴、規制と言った行為が許容されるべきではないのは言うまでもありませんが、何故か他ならぬこの日本においても近頃一部でネットを規制すべきだと主張する方々がいらっしゃるようで、様々な手段を通じてネットは諸悪の根源だ、さっさと規制しなければ大変な事になるぞと主張を続けているようです。
国際的な場においても中国を初めとして強力な規制を主張する国々が少なからずいますけれども、問題なのはネットというものには国境線はありませんから、こうした強硬派の勢力が伸張するにつれて日本も決して他人事ではなくなってくるということですよね。

ネット規制は是か非か、正念場は来年訪れる 仲矢徹・情報通信政策研究所長に聞く(2013年4月11日日経ビジネス)より抜粋

(略)
昨年12月にドバイで開かれた国際電気通信連合(ITU)の会合で、インターネットへの国家規制を巡る日米欧と途上国の対立が決定的となりました。

仲矢:そもそもの経緯からお話しします。ドバイで話し合われたのは国連の機関であるITUが定める国際電気通信規則を改正するかどうかということでした。この規則は1988年に制定されましたが、対象としているのは国際的な電話サービスです。当時、インターネットはそれほど普及していませんから、国際通信と言えば電話の時代です。その後、ネット技術を使った通信が急速に普及し、途上国からネットも対象に加えるべきだという議論が起こってきたのです。

 規則を改正する会議を2012年に開くことが決まったのは2006年のことです。当時はネットがこれほど大きな議論になるとは思われていませんでしたが、その後、「アラブの春」で政権を倒す原動力になったこともあって、ネットの力が世界で強く認識されました。同時にサイバー攻撃の問題も出てきましたから、規則の中でネットを全く扱わないわけにはいかないだろうという議論が巻き起こってきたのです。

 実は先進国の間でも様々な議論があり、必ずしも固まって1つの方向を目指していたわけではありませんでした。EU(欧州連合)は規則に迷惑メール(スパム)防止を書き込もうと主張しましたが、日本はさらなる規制につながりかねないとして反対しました。そうしているうちに、もっと中身のことを書こうという国が出てきて、結局、EUも途中から防戦に回ったわけです。

 どこまで強い表現で書くか先進国の足並みがそろわないまま、問題意識を持った途上国が議論を主導するようになりました。先進国も表現ぶりを弱めようとかなりいい線まで持っていったのですが、最後の段階でアフリカグループから出された「通信に関する国の権利」を追加する改正案が多数決で採択されてしまったのです。
(略)
仲矢:重要になるのがASEAN(東南アジア諸国連合)各国との連携です。アジアの中にもネットを自由に放置しておいていいはずがないという意見はあります。中国の議論に乗ってしまう可能性もあるわけですが、日本の役割は何かをしなくてはならないとしても、政府が直接手を下すことがいいのかを問うことです。

産業界を通じたり、自主規制のための仕組みを作ったりして、政府が言論統制に手を突っ込む形にならないようにすべきだということを主張するのが1つの考え方です。ネットは民間主導で自由な世界だったからここまで発展したと説明するということもあるでしょうね。
(略)
仲矢:日本で生活している人たちには直接的な影響はないと思いますが、グローバルに展開している企業などは無関係ではないでしょうね。現に一部の国はネットを遮断するなどの動きをしていますから、こうした行動がほかの国にも広まってしまう恐れがあります。
(略)

要するに一部統制国家からすれば「アラブの春」に象徴されるようにネットによって国民のパワーが政府のコントロールを外れて「暴走」することは避けたいわけですが、注意すべきなのは日本を始め先進国でネット規制を云々している一派というものはもちろん存在するものの、彼らとて「政府に都合の悪い話がネット上に流れないよう監視する」式のネット規制を求めているわけではないだろうと言うことです。
むしろそうした草の根の議論に関してネットの力を認め、それが正しい民主主義の発展において非常に有力なツールになり得るという認識を共有しているのだとすれば、一見同じような言葉でくくられてしまいがちなネット規制ということに関しても所属する母体によって全く異なった文脈で用いられているんじゃないかということですよね。
そもそもどんな専政国家においても「お上の目の届かないところでお上の悪口を言う自由」は保証されていた、なんて話もあるくらいですが、電話からネットへと技術が進歩するにつれて各個人の日常により深く関わってきていることが明らかである以上、例えば将来的に各個人がウェアラブルコンピュータを装備するような社会にでもなればネット規制すなわち思想統制と同義になるとも言えるわけです(スマホの普及ですでに似たような状況になっていますが)。
「ネット上で他人の悪口を言ってる人がいます。いけないことですよね?」なんて言葉に乗せられてうっかり規制賛成派に与するようなことがあれば、気がつけば常時誰かに言動を監視され言いたいことも言えないどこかの国のようになってしまうかも知れないということでもありますよね。

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コメント

★余録:「米国大統領をめぐる偽情報」「金融市場の混乱」…

「米国大統領をめぐる偽情報」「金融市場の混乱」「AP通信配信記事の捏造(ねつぞう)」の三題噺(さんだいばなし)といえば、南北戦争の最中にもあった。
でっち上げられたリンカーン大統領の偽声明がAPの記事を装って配信され、金融市場の混乱を招いたのである
▲犯人はニューヨークの新聞の幹部らで、偽の大統領声明では40万人の追加徴兵をうたっていた。
彼らは金の高騰を狙って虚報を仕掛け、新聞各紙の締め切り間際に偽原稿を届ける手のこみようだった。
狙い通りに相場は動いたが、ほどなく悪事が露見して逮捕される
▲偽情報には激怒したリンカーンだったが、実はひそかに30万の追加徴兵を決めていた彼にとって騒ぎは渡りに船となった。
市場の混乱や国民の反応を見定めて本物の大統領声明が出されたのは約2カ月後だった(C・シファキス著「詐欺とペテンの大百科」青土社)
▲さて今回、三つのお題をつないだのはツイッターである。
ホワイトハウスでの爆発によりオバマ大統領が負傷したという偽情報がAP通信のツイッターから配信され、株式市場の一時急落をもたらしたのである。
何者かによってAPのアカウントが乗っ取られたのだ
▲その後「シリア電子軍」を名乗る犯行声明があった。
こちらは過去にも欧米やアラブ系の通信社やテレビ局のツイッターのハッキングを重ねてきた連中のようだ。
相場操作の意図のほどは分からないが、現在の市場のコンピューターによる自動売買が混乱を増幅した
▲悪意ある虚報には何とも脆弱(ぜいじゃく)なネット社会である。そのなかで信頼される情報を送り出すメディアの責任は重い。
改めてそれを痛感した当世の三題噺だ。

毎日新聞 2013年04月25日 00時36分
http://mainichi.jp/opinion/news/20130425k0000m070132000c.html

投稿: | 2013年4月27日 (土) 09時48分

以前からネット規制すべきと言ってきた日本のマスコミがどういう態度を取るかですね。
実際には彼らが考えているネット規制とはまったく別物になってしまう危険性があるのですから。

投稿: 蒲田 | 2013年4月27日 (土) 11時27分

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