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2013年3月 2日 (土)

テロ団体シーシェパード、米高裁により海賊と認定される

先日は目下逃走中のシーシェパード(SS)代表ワトソン容疑者について、米高裁の仮処分をことごとく無視して南極海で堂々とテロ行為に及んでいることが報道されていました。
同容疑者に関して前回は「給油活動を行い自由も効かないタンカーと捕鯨船の二隻が、それを上回る三隻のSS妨害船を追い回すということが物理的に可能なのか」と素朴な疑問を呈したところでしたが、ニュージーランドヘラルド紙によればまさにその通りのことを主張したらしく思わず笑ってしまいました。

Sea Shepherd ships clash with whalers(2013年2月26日ニュージーランドヘラルド)より抜粋

Sea Shepherd founder Paul Watson said it was "ludicrous" for the Japanese to say Sea Shepherd were the aggressors.
スティーブ・アーウィン号の船長、ポール・ワトソンは日本の主張に対し「馬鹿げている」と一蹴しています。
"The Nisshin Marym is 8000 tonnes and our vessels are 500 tonnes. We would cause absolutely no damage to them if we were to do that.
「そもそも日新丸(捕鯨船)は8000トンに対し、我々の船は500トンしかない。 ぶつかったとしたら損傷を受けるのはどちらか…考えるまでもなく明白だ。」
"What we were doing was holding our positions to prevent them from refuelling illegally and it was the Nisshin Marym that tried to move us out of those positions by hitting us."
「我々は抗議活動のために停船しており、移動していたのは日新丸の方なのです。」

ま、「地元紙」がSS側の根も葉もない主張を大々的に報道するのはいつものことなのですが、ニュージーランドヘラルド紙と言えば以前に例のベスーン船長による日本船侵入事件を取り上げた際に何故か当「ぐり研」の記事を引用なさったようで、あのときはこんなマイナーブログにも遠路はるばる訪問者の方々がいらっしゃったことを記憶しております。
今回も万一せっかく遠い日本までお越しいただくにしても手ぶらでお返ししては失礼極まるというものですから、ワトソン容疑者の主張するところの「停船したままのSSの船に巨大な日本の船が激突してきた瞬間」の動画を紹介させていただきましょう。

【参考】【動画】シーシェパードが調査捕鯨母船日新丸に体当たり Sea Shepherd Terrorism

もしかしたら日本船が器用にもバックしているように見えたり、停止したままのはずのSS船に派手な航跡のような何かが見えるかも知れませんが(苦笑)、500ヤード以内に近づくことすら禁止されている小型船が給油作業中で他船と並走している大型船に追い回されぶつけられるという、世にも不思議な珍現象が南極海ではたびたび観測されているらしいという事実を以てしても大自然の神秘を感じずにはいられませんね。
SS側の素晴らしい珍説奇説の数々はいずれワトソン容疑者逮捕の際に改めて拝聴するとして、健全な世間の常識からすると裁判所から禁止令が出ている中それをまるで無視するかのようにこうした振る舞いに及ぶばかりか、わざわざ全世界に向けて「俺は裁判所命令を無視してやったぜ!」と吹聴して回るワトソン容疑者の心理は図りかねるものがあるのは当然でしょう。
米高裁から仮処分命令が出された際に産経の佐々木記者が「SS崩壊のシナリオ」を提示していましたが、まさしく「仮処分命令に反して、ワトソン集団は捕鯨船への過激な妨害を強行」し続けるSSに対してさすがに堪忍袋の緒が切れたということでしょうか、今回ついにSSに対する海賊認定が下ったというのはむしろ遅すぎたほどだと思いますね。

「シー・シェパードの妨害は海賊行為」米高裁が認定(2013年2月27日産経ニュース)

 米サンフランシスコの連邦高裁は25日、反捕鯨団体「シー・シェパード」による日本の調査捕鯨の妨害を、国際法が禁じる「海賊行為」と認定する決定を下した。日本鯨類研究所(東京)が妨害の差し止めなどを求めた訴訟の過程で判断した。

 高裁はさらに同団体に対し、この訴訟でシアトルの連邦地裁が詳しく審理して判決を出すまで、妨害行為をやめるよう命じる仮処分決定を出した。また、日本側による妨害差し止めの仮処分申請を退けた同地裁の判事を、訴訟から外すことも決定した。

 日本側の主張を大筋で認め、同団体にとっては極めて厳しい判断

 高裁は、抗議船を捕鯨船に衝突させたり、捕鯨船のスクリューを壊したりする行為は明確に「暴力」だと認定。同団体によるこうした捕鯨妨害は、自らの目的のために暴力を行使する「海賊行為」だと指摘した。(共同)

シー・シェパードは「海賊」、米控訴裁が認定(2013年2月27日AFP)

【2月27日 AFP】米第9巡回控訴裁判所は25日、反捕鯨団体シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society)を「海賊」として認定し、日本の調査捕鯨従事者によるシー・シェパードの提訴への道を開く決定を下した。

 第9巡回控訴裁判所のアレックス・コジンスキー(Alex Kozinski)裁判長は、海賊になるために「義足や眼帯は不要」と述べ、日本の捕鯨従事者に不利な決定を下した下級審の判断を覆した。また同裁判長は捕鯨従事者を「調査員」と呼んだ。

「船で体当たりし、酸の入ったガラス瓶を投げつけ、金属で強化したロープを海に投げてスクリューや方向舵の損壊を試み、フック付きの発煙弾や閃光弾を撃ち、強力なレーザー光線をほかの船に向ける者がいれば、それは疑いようのない海賊だ」(コジンスキー裁判長)

 シー・シェパードは長年にわたり、南極海で行われる調査捕鯨を妨害してきた。日本鯨類研究所(Institute of Cetacean Research)などは、公海でのシー・シェパードの活動禁止を求める訴訟を米国で起こしていた。

 第9巡回控訴裁判所は今回の判決で、日本鯨類研究所によるシー・シェパードの提訴を認め、裁判を一審とは別の地方裁判所判事に差し戻すべきとの判断を下した。

単にSSに対して海賊認定をしただけに留まらず日本の調査捕鯨を国際法上認められた正当な権利と断言し、SS寄りの司法判断を示してきた地裁判事を更迭しているという点にも米国司法がいよいよ本腰を挙げて対決姿勢に転じたことを感じさせますけれども、そうした姿勢の変化をもたらしたのはドイツからの逃亡劇や先の禁止令無視と言ったワトソン容疑者が示してきた数々のルール無視の姿勢であったはずです。
しかしアレックス裁判長の“You don’t need a peg leg or an eye patch(あなたには義足や目のパッチは必要ありません)”というフレーズが受けたのか、 日頃はどちらかというと反捕鯨的なスタンスを取ることが多い欧米マスコミにもこの決定はかなり広範囲にわたって取り上げられているようで、これでワトソン容疑者は逃亡犯罪者に加えめでたく海賊船長の称号も手にしたことになりますね。
これに対してシーシェパード側は例によって「海賊と呼ぶにふさわしいのは日本の方」だの「米国政府や様々な国家機関がシーシェパードを妨害しようとしている」だのとまさに「意味不明のことを呟いており」状態ですが、彼ら自身も「米連邦裁判所は環境問題について憂慮している判事の一人を外すという暴挙に出ました」と言っているように、単なる一つの司法判断に留まらない影響を今後及ぼしてくると考えているのでしょう。
SS側では今回の司法判断も華麗にスルーする予定であるらしいということですが、ここでは産経の佐々木記者による判決文の解説と共に例によって「その後の進展」を期待する気満々というテキサス親父による動画とともにこの世界における海賊というものの定義、そして彼らが世界からどのように遇されるかを示す動画を紹介しておきましょう。

【参考】【SSは海賊】米高裁判決文を読み解く 「エキセントリック」ポール・ワトソン「海賊は見当違いだ」(2013年2月28日佐々木記者ブログ)

【参考】【動画】字幕【テキサス親父】米国の裁判所がシー・シェパードを「海賊」に認定

【参考】国際法上の海賊の定義 ― 「人類共通の敵」? | 東京大学 海洋アライアンス 知の羅針盤

【参考】【動画】 Combat Pirates Somaliens vs Russes

実際問題として海賊と認定されたことで何がどう変わるのかですが、ご存知のように船というものは一つの領土として扱われるものであって所属している国(旗国)の法によって裁かれるという「旗国主義」という原則がある、ところが海賊と認定されるとこの原則が外れどこの国の所属でもない、すなわち公海上ではどの国が取り締まってもいいという扱いになるわけですね。
ちなみに南極海がどこの国にも属さない公海であることは疑問の余地がないところだと思いますが、かねてオーストラリアやニュージーランドがSS問題に関連して日本側に南極海での活動を中止するよう主張しているのも元を正せば南極海への領土的野心が背景にあって、南極条約の手前表立ってそうとは主張出来ないが故に管轄権を主張することで実質的に両国支配下であると認めさせたいのだとも言われています。
こうした両国の潜在的願望をくみ取ってということでしょうか、SS側も何かと言えば両国艦艇に南極海への出動と事態への関与を促す声明を繰り返してきたことは周知の通りですが、さすがにこれは国際法上少なからぬ厄介事に結びつくことから両国とも慎重な対応を続けていることも報道されている通りですよね。
今回の高裁判断について産経の佐々木記者が世界各国での反応を取り上げていますが(同サイトの一連の記事は是非一読ください)、SSの過激さを増す活動について反対意見を表明する人がオーストラリア国内でもきちんと存在するということもさることながら、やはりこうした領有権問題に結びつけての議論も少なからずあるようですから、日本としては単にSS関連のみならぬ両国の微妙な心理にも配慮が必要かと思えますね。
いずれにしても米国船籍でもないSSの船に対して南極海の管轄権を持っていない米国司法が口を出すなというのがSS側の主張であった訳でしたが、ひとたび海賊と認定されたからには日本も堂々と自前の公権力によって取り締まれるはずだ…と考えてしまいそうなのですが、国内的に面倒なのは平成23年に出された「SSは海賊ではない」という政府見解の存在にあります。

衆議院議員馳浩君提出 シー・シェパードによる日本の調査捕鯨船への妨害行為に関する再質問 に対する答弁書 (2011年5月13日内閣答弁書)より抜粋

 シー・シェパードによる南極海鯨類捕獲調査へのこれまでの妨害行為は、海賊行為の処罰及び海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(平成21年法律第55号)第2条に規定する海賊行為に該当するとは考えていない

第3回 鯨類捕獲調査に関する検討委員会議事概要(2011年6月1日農林水産省)より抜粋

○筒井農林水産副大臣(略)海賊対処法については、今回のああいう妨害行為は海賊行為に入らないという決定を政府がしておりますが、それらの問題をどういうふうに考えていくか、あるいは、法改正が必要なのか、そういった検討も必要ではないかというふうにも思っております。ああいう行為が海賊行為の中に入るとすれば、海上保安庁が船を出すのに法的な根拠が非常に明確になるのではないかとも思っております。
(略)
○早川内閣官房参事官 (略)シーシェパードがこれまでとってきた行為については、海賊対処法という国内法が適用できないということは、先週も水産庁から説明があったとおり、閣議決定で明確に政府として答弁しておりますけれども、国際法の観点からもこれまでシーシェパードが行ってきた行為を海賊であるというふうに断定することは難しいと認識しております。実際に諸外国を見ましても、シーシェパードの行為を問題であると言っている国は多いけれども、それを海賊であると、すなわち旗国以外のあらゆる国が、普遍主義と申しますけれども、取り締まることを正当化できるというふうにはっきりと言っている国は残念ながらありません
 そういったことを踏まえまして、日本政府としては国連海洋法条約上の海賊として断定することは難しいということです。すなわち、日本政府が巡視船を派遣した場合何が起きるかということですけれども、旗国主義の原則の下にありますので、仮に巡視船を派遣した場合には、シーシェパードに近づいて一定の牽制をすることは物理的に可能です。ただし、直接向こうの船に乗り込んで制圧、拘束、逮捕するということは認められておりません。したがいまして、一定の牽制をすることはできますけれども、シーシェパードの妨害行為を継続して阻止するということは非常に難しいと考えております。

要するに当時諸外国でもSSを海賊だとは認定していなかった、だから日本も単独で連中を海賊と見なし海賊対処法の対象として扱うことは難しいというのが当時の政府見解であったわけですが、捕鯨問題に関してはどちらかと言えば反対派と見なされている(一方で捕鯨国でもありますが)アメリカの司法が今回海賊認定を行ったことで、当事国日本としても当然判断の見直しを迫られることになるはずです。
ちなみに海賊対処法においては原則海保が対応し、必要に応じて自衛隊が出動することも出来るということになっていますが、前述のように現地の近隣二カ国の微妙な思惑などを考えると軍事組織の出動となればまた面倒な事態を招きかねませんから、国内法においても海賊と認定した上で巡視船を出動させるというのが妥当な判断になるかと思います。
遠くアメリカで司法判断が下ったというのに当事者である日本がぐずぐずしていたのでは何の事やらというもので、遅くとも来シーズンまでには閣議決定見直しなどの下準備を全て整えておく必要があると思われますが、こうなりますとちょうど海保の誇る世界最大の巡視船「しきしま」の準同型船である「あきつしま」が今秋にも配備予定というのも何ともタイミングのいい話に聞こえてきますね。

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コメント

実はこれで一番困ってるのが安倍政権って気がしないでもない。
野党もこの問題でどう突っ込むか注目だね。

投稿: amiga | 2013年3月 2日 (土) 09時14分

でも妨害されて捕鯨失敗してんの相変わらずだよねwww

投稿: | 2013年3月 2日 (土) 09時46分

まったく妥当な判断をしてくれたようで連邦高裁GJです。
しかしここんところの急な動きをみてると、どうして最初からこうしなかったのかとも思ってしまいますね。
日本の側に米司法に訴えることに妙な遠慮があったのか、それとも日本の内部でも意見が統一できていなかったのか?
あれだけ好き勝手に暴れてきたんだから、世界中で損害賠償の訴えを起こせば資金も絶てるんじゃないかな?

投稿: 寺島 | 2013年3月 2日 (土) 15時44分

佐々木記者@産経曰く、オージーの連邦警察が帰港する海賊船を待ち構えているそうです。海賊船長は国際指名手配犯なのでどこに帰港しても逮捕される可能性があります。ただ型どおりの捜査で終わる可能性もありそうです。

投稿: | 2013年3月 6日 (水) 08時50分

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