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2013年3月 8日 (金)

薬ネット販売は一気に全面解禁へ?!

先日もお伝えした一般用医薬品ネット販売規制への違憲判決を受けて国も動かざるを得なくなるのだろうなと思っていましたが、繰り返し違憲判決を受けながら相変わらず改善される様子のない国会議員選挙定数問題と違いこちらは驚くほどあっさりと全面解禁の方針が打ち出されたと言います。

薬ネット販売を全面解禁へ…規制改革会議が方針(2013年3月7日読売新聞)

 政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)が、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売の全面解禁を打ち出す方針を固めた。

 8日の会合で厚生労働省に対し、全面解禁を前提にした〈1〉販売履歴の管理や購入量の制限〈2〉副作用や薬の効果などを薬剤師にメールや電話で相談できる仕組み――の策定と、薬事法改正を求めることを決める見通しだ。同省はネット販売のあり方に関し、有識者会議で年内に結論を出すとしており、6月の成長戦略に全面解禁を盛り込むとしている規制改革会議との調整が焦点となる。

 ネット販売を巡っては、最高裁が1月に、副作用の強弱で3分類している市販薬のうち、特にリスクが高い「第1類」と比較的高い「第2類」を一律禁止した厚労省の省令を「違法で無効」とする判断を示している。

ただし今回の記事では規制改革会議という改革推進派の主導する場においては「全面解禁」となっていますけれども、一ヶ月前に提示された国側の原案では少しばかり違った話になっていたようですから、記事にもあるとおり最終的に結論を出すという有識者会議と規制改革会議との調整が焦点になりそうですね。
その上で最終的に同じ全面解禁でまとまるのか、それとも反対派にも配慮した内容に修正されていくのかは未だ確定したとも言い切れないところがありますが、いずれにしても第1類、第2類とも一律禁止だったこれまでよりは一歩踏み込んだ規制緩和を行わざるを得ないのは当然でしょう。

2類薬ネット販売解禁 薬事法改正案 育毛剤などは禁止(2013年2月4日産経ニュース)

 政府・与党が検討している一般用医薬品(市販薬)のネット販売に関する薬事法改正案の概要が3日、分かった。副作用の強弱で3分類されている市販薬のうち、リスクが比較的高いとされる「第2類」のネット販売を条件付きで解禁、特にリスクが高い「第1類」のネット販売は禁止を明記する。厚生労働省は、薬のネット販売の適否を議論する検討会にこうした内容を提示。今国会での同法改正を目指す。

 市販薬のネット販売については最高裁が1月、「第1類」「第2類」を一律禁止した省令を無効とする判断を下し、事実上、すべての種類の市販薬が解禁状態にある。政府・与党は薬事法を改正し、規制を明文化する必要があると判断、調整を続けていた。

 法改正でネット販売を禁止する市販薬の「第1類」(約100品目)は使用期間が短く、「安全性上、特に注意を要する」とされる薬。ネット販売に慎重な与党議員らの意向に配慮し解禁を見送る。「第2類」(約8300品目)は「まれに入院相当以上の健康被害が生じる」可能性があり、依存性が強かったり妊婦の使用に注意を要したりする成分も含まれる。法改正では購買者の安全確保のため、ネット販売業者に薬の成分表示や注意喚起を詳細にサイト上で告知させるなどの複数の義務規定を設け、条件付きで解禁する。低リスクの「第3類」は引き続き販売を許可する。

 14日からスタートする検討会では、改めて禁止が明文化される「第1類」と、解禁されるものの義務規定が設けられる「第2類」の扱いをめぐり、ネット販売業者など規制反対派と、対面販売にこだわる日本薬剤師会など規制賛成派の綱引きが激化しそうだ。田村憲久厚労相は、検討会について「一定の方向性に理解をいただき、最終的な報告をしてもらう」と述べ、改正案の取りまとめに意欲を示している。
(略)

それにしても以前から強固に反対論を展開してきた方々の論点が反対のための反対になってきているのでは?とも感じていましたが、むしろ調べて見れば実店舗での対面販売こそ不正販売の温床になっているという実態すら見え隠れしているのは大いに反省し改善すべき点で、考えて見れば目の前に患者が来ているのに「それはきまりで許されていません」で断固拒否できる店ばかりではないのは人間心理として当然ですよね。
身近に見聞する範囲でも薬局で第1類医薬品を買おうとすると「前に買ったことがありますかね?」と訊かれたのみであっさり売ってもらえた、しかもその時薬剤師は外出しており単なる店員しかいなかったという明らかなルール違反のケースもあるようですし、すでに指摘されている通り実店舗での対面販売なら安全安心だと薬剤師会が主張するほど対面販売がきっちりやっているという根拠はないわけです。
他方で利便性という面で言えば昨今増えた深夜営業のドラッグストアなどでは店は開いているのに第一類は売ってくれない時間帯があり、しかもそれが外から見て判らないといったあたりに実店舗側も幾らでも改善すべき点はありそうですし、当然ネット通販解禁イコールなんでも好き放題やっていいというわけではなく、より実効性ある安全対策を図っていくことが大前提となるのは当然ですね。
特に重要に思われるのが販売履歴の管理や購入量の制限の部分ですが、単に特定の通販業者のみならず全業者横断的に、さらに言えば実店舗も含めて総量チェックをかけなければ本当に意味のあるものにはならない理屈で、昨今何かと話題になる生保患者の重複受診・二重投薬問題などと同様に最終的には今議論されているマイナンバー制などとリンクしていくことも必要かも知れません。

ところでネット販売を規制する合理的な根拠としてネット販売だからこそ起こりえる固有の問題があるのか否かが問題になってきますが、例えば副作用問題などについては閉店時間(あるいは薬剤師不在時間)がある実店舗と比べ、24時間相談体制を取れる薬剤師を常駐させることも可能なネットの方がより安全対策を取りやすいという理屈も成立します(実際にそうなっているかどうかは別として)。
ただ今現在も議論が続いているTPP問題と絡んで、例えば海外業者に通販業務に参入させないのは非関税障壁だ!と言われる可能性は十二分にあるかと思いますが、そうでなくてもボーダーレスなネット環境においてたまたま海外業者が日本人にも薬を売ってしまった場合にどこまで国内規制を徹底し違反時の責任を追求出来るのか、また消費者にしてもクレームをきちんと対応してもらえるのかという疑問は残りますよね。
実はこうした問題は想像上に留まることではなく、やせるなどと称した怪しげな外国の薬を通販の個人輸入で買ったらとんでもない健康被害にあった、よく調べて見たら国内では認可されていないような添加物が含まれていたのに国内法の規制がかからず泣き寝入りするしかなかったという話は少なからずあるわけで、結局通販=自己責任という図式は本質的には不変なのかという気がします。
結局のところ問題なのはネット販売かどうかではなく、薬を選択する以前の診断の部分が正しいかどうかの問題だという医師もいますが、その意味ではあくまで自己診断に基づいて自分で薬を選択する市販薬は対面と通販とを問わず、最終的には全て自己責任であるという認識をしっかり持っておかなければならないのは当然ですね。

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コメント

「病院や診療所で診察を受けた人に対してのみ薬を販売する」では一般用医薬品を売る意味がないですね。<多田医師

副作用の説明、販売履歴の管理や購入量の制限、どれをとってもインターネットというインフラが整備されているネット販売のほうがむしろ有利だろうと、私は思っています。
問題は顧客の側に「自分の健康を守る」という意識のない場合ですが、そのリスクは対面販売であっても変わらない、というのが実態なわけで。

投稿: JSJ | 2013年3月 8日 (金) 08時40分

>政府・与党は薬事法を改正し、規制を明文化する必要があると判断、調整を続けていた。

「一律禁止は違法だが法律をつくって禁止すればいいんだ(きりっ)」
こうですかわかりません

投稿: たぬき | 2013年3月 8日 (金) 09時03分

>「病院や診療所で診察を受けた人に対してのみ薬を販売する」では一般用医薬品を売る意味がないですね。<多田医師
OTC薬を普及させる意味は医療費抑制策プラス医師不足対策でしょう。
この先生の論理をエスカレートさせれば夜間時間外でも即座に専門医の診察を求めるモンスター患者を肯定してしまいますね。
みんながある程度は自分で自分の責任をとるようにならないともうこれ以上医療はもたないですよ。

投稿: ぽん太 | 2013年3月 8日 (金) 09時43分

コンビニやDSに24時間体制で薬剤師を待期させておくくらいなら、OTCに関してはネット販売を拡大させたほうがいいでしょう。今や胃薬は勿論のこと頭痛薬、今年から花粉症の抗アレルギー薬までOTCになりましから、
町医者の売上への影響は小さくないですね。今後は高齢町医者が年々引退&弱体化してくることを考えれば、不要不急の受診はできるだけ抑えたほうがいいということでしょう。
ただ日本人に関しては自己責任意識が極めて希薄なようで、医療側に責任転嫁しようとする傾向が強いので、今後
薬を売る側は相当防衛的意識を高めないと、今の時代とんでも訴訟を続々とおこされる可能性も十分ありうる。
また用量・用法を守らずに薬を服用した患者が続出して、医療機関に来られるのは迷惑千万です。

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月 8日 (金) 10時22分

そもそも医療にゼロリスク症候群を持ち込む危険性を医師自身がもっと把握すべきだと思いますね。
OTC拡大についても万一副作用が出たらなどなどずいぶんと反対意見がありましたが、ただの水でも起こる時は起こるのが副作用と言うものです。
リスクを稀で起こりえないものに最小化しようとしすぎるからコストも労力も膨大になる、その上稀なリスクが実現してしまった際に医療ミスだ!訴えてやる!となる危険性も上がってくるわけで。
医師自身が医療に対する期待値を高めすぎてしまったことが今日の医療の歪みの根本原因だと思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月 8日 (金) 11時22分

うまくやれればネットの方が服薬管理はしやすいかも知れないけどルールをきちんと守られるかが心配
違法サイトがたくさん野放しになってるのに違法通販がまったくなくなるとも思えない
そういうとこは海外サーバーで手出しできなくなるんじゃない?

投稿: mika | 2013年3月 8日 (金) 12時14分

まさに管理人さまの仰る通りですが、私も医療に対する期待値を高めようというムーブメントには懐疑的です。
自分で自分のクビを絞めているかのようですね。
「病院・医療機関を受診にすれば解決する」とかいう幻想・妄想を抱かすようなプロパガンダには辟易します。
最近は「認知症」の薬を発売している製薬会社のTVーCMを見るたびに気分が悪くなりますね。
これらの薬を飲んでかえって副作用が出て具合が悪くなった人も少なくないようで(笑)

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月 8日 (金) 15時07分

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