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2013年3月23日 (土)

小野市の生保条例案 思わぬ方向に発展中?

先日取り上げた小野市の生活保護者に対する新たな条例案の件ですが、進歩的な方々を中心にして思いの外大きな反響を呼んでいるようです。
マスコミは条例案のネタ元である市長を捕まえて「小野市のヒトラー」だの「市長の目立ちたがり願望」だのと散々に批判しているようですが、実際の条例案は受給者にギャンブルを禁止しているとか、パチンコ店に受給者がいたら市民には通報の義務があるとか、一部メディアによって報道されたような内容「ではない」ということです。
正しくは「生活に影響しない範囲」なら受給者がギャンブルを楽しんでも一向に構わないし、「ギャンブルに保護費を使い果たす受給者がいたら」生活にも困っているはずだから市まで連絡をしてくれと言っているだけで、そうであるなら自己決定権の侵害云々という話とはいささか牽強付会な言いがかりと言うしかないでしょう。
小野市には条例案に対して市内外から史上空前規模の反響があったようで、その七割が賛成の声だったと言いますから世論は当たり前のことを今さらと言う気持ちでいるようにも思えますが、この条例案に対して思わぬ方向からクレームがついたようです。

生活保護費でパチンコするな 小野市長の決断は実を結ぶか(2013年3月21日週刊文春)

 生活保護受給者はパチンコ禁止――。兵庫県小野市の試みが注目されている。小野市の蓬莱務市長が説明する。

「数年前から気になっていたんです。月の初めは市役所に受給者の方が多く来られるのですが、朝、エレベーターの中で『おーい、今からどないすんの? パチスロ行こうや』なんて声が聞こえてくる。昨年、芸能人の親族による受給が問題になった時には、市民から『こんなことでいいのでしょうか』という手紙も届きました。パチンコ店では『今日は生活保護のお金が入ったんや』なんて会話も聞こえてくるそうです」

 2月、蓬莱市長は小野市福祉給付制度適正化条例案を市議会に提出。生活保護費を生活が維持できなくなるほど過度にギャンブル等に使ってはならないと定め、生活保護費の不正受給を見つけたり、過度にギャンブル等に浪費している受給者を見つけた場合は、市に情報提供することを「市民の責務」としている。

 この「市民の責務」に関して、生活困窮者を支援するNPOなどから、「行き過ぎた監視社会を招く」といった批判の声が上がった。

 蓬莱市長はこう反論する。

監視ではなく、見守りです。小野市は田園が中心の5万人都市。東京じゃないんです。近所はみんな顔見知りだし、誰がギャンブル好きかも知っている。小野市は独自に問題の適正化を目指すのであって、他の自治体でも条例を作りなさいとは言っていません」

 だが、反対の声は収まらない。県内の開業医、歯科医師ら約7000人が加盟する県保険医協会は、パチンコなどで保護費を浪費する受給者を「ギャンブル依存症と判断すべき」として抗議声明を出した

 それでも、蓬莱市長はあくまで強気だ。

「ギャンブル依存症だからと言って、生活保護費でパチンコをしていいのかと言えば、それは違うでしょう。生活保護受給者は医療費の自己負担がありませんので、パチンコをせずにタダで依存症を治療してもらえばいいんです。

 市に寄せられる条例案への賛成意見のほとんどは『当たり前やんか』といったシンプルなもの。この条例案は、当たり前の運用をしようというだけのことなんです」

 市長の決断は実を結ぶか。今月27日にも議会で条例案が採決される見通しだ。

生活保護費を浪費する受給者はギャンブル依存症だから、条例でギャンブルでの浪費を禁止するのはおかしい…などと抗議する保険医協会も保険医協会で、こういうことをするから医師の常識は世間の非常識などと揶揄されるのだと思いますけれども、考えて見るとこれには裏があるように思いますね。
一般に酒やギャンブルで保護費を使い果たした生保受給者がどうやって食っていくかと言えば、多くの場合近隣の医療機関にかかって次の支給日まで入院させてもらうということになりますから、確かにこうした受給者を上顧客にしている(あくまでも一部の、ですが)医師達にとっては生保受給者が清く正しい生活を送ることは自らの利益に反するとも言えそうです。
無論大多数のまともな医師は予防医学というものがこれほど大々的に騒がれているように、国民には少しでも自助努力で健康を維持してもらって少しでも患者の行列を短くしたいと考えているはずですが、なにやら「弁護士と会計士、医師が悪夢について語り合った。」と言う古典的なジョークを思い出してしまうような話ではありますね。
これに対して市長が「活保護受給者は医療費の自己負担がありませんので、パチンコをせずにタダで依存症を治療してもらえばいい」と切り返したのはお見事ですが、顧客の疾病について気に病むのであれば社会にとって有益な方向で気に病むべきで、ギャンブル依存症であれアルコール依存症であれそれを助長する方向に努力するというのはまともな医療人の考え方ではないと思います。

ネット上でも当然ながら「医者が税金を医療費として吸い上げようとしてるのか」「ニコチン中毒患者には”吸いたくなくなるまでどんどん吸いましょう”と指導するのか」と非難囂々ですが、「パチンコ中毒だと言うならいっそ生活保護受給者には無料でパチンコをさせてはどうか?(当然ながら景品等の見返りも一切なしで)」というなかなか秀逸な意見もあるようですね。
ただ保険医協会などの言い分はともかくとして、今回の小野市の条例案にマスコミ各社がこうまで批判的な論陣を張っている理由として、それがまさにパチンコという特定業界をターゲットにしたように受け取られたからだという声はあって、例えば以前も石原前都知事が電力削減策に関する記者会見で語った内容からわざわざパチンコに関連する部分だけ綺麗にカットして放送するなど同業界への手厚い配慮が指摘されていました。
パチンコ業界が一日に消費する電力は約450万キロワットといい(ディズニーランド約10カ所分に相当)娯楽産業では最多だそうですから、あれだけ節電、節電と言われ必要と思われる電力まで削減が叫ばれた時期にあって行政側から何ら言及がないかのように報道されるのもかえって不自然ですよね(ちなみにテレビそのものも同様に聖域扱いされていたとは指摘されていたところですが)。
もちろんパチンコ業界も自主規制はしっかり行っていたのでしょうが、震災直後に経産相が出した各業界への自粛要請にもパチンコ業界は含まれていないことが一部で話題になっていたように以前からの傾向も併せて考えてみると、どうも特定領域に関わる事柄については一切触ってはいけないと言う「自主規制」でも存在しているということなのでしょうか?

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コメント

それが在○特権です

投稿: | 2013年3月23日 (土) 09時43分

弁護士会ならわかるんですがなぜ保険医協会がわざわざこんなクレームつけたんでしょう?
回り回って関係するとは言っても普通の人からみたらどうして医師が?と疑問符がつくんじゃないでしょうか。
サイトをみると協会側から地元議員に強く働きかけているようなのでどんな理由があるのか気になります。

http://www.hhk.jp/hyogo-hokeni-shinbun/backnumber/2013/0315/070200.php
 地元議員に対しても、TPP問題を中心に要請。大串正樹(自民党・6区)、井坂信彦(みんなの党・近畿比例)、中野洋昌(公明党・8区)各衆議院議員と室井邦彦参議院議員(民主党)と面談した。
 川西副理事長は、仮に皆保険が名目として残っても、形骸化させられる可能性が強いと指摘。歯科における差額徴収の歴史も紹介して、国民皆保険体制の維持を訴えた。
 また、小野市が市民に生活保護受給者を監視させようとする条例案についても紹介し、医療者として見過ごせないと条例案が可決されないよう尽力を求めた。

投稿: ぽん太 | 2013年3月23日 (土) 10時23分

 兵庫県高砂市立中学校の運動部の父母会役員が、文部科学省の要請で市教委が生徒に体罰の有無を尋ねた実態アンケートについて、
顧問教諭の体罰を報告しないように部員の保護者たちに求めていたことがわかった。体罰があったと答えた生徒の保護者に、
役員が内容の訂正も要求。市教委は、学校側しか知らないはずの回答内容が父母会側に漏れた経緯を調べている。

 市教委によると、この中学校は2月19~21日、2012年度中に発生した体罰の有無について、記名式のアンケートを実施。
生徒には自宅で回答を記入させ、封筒に入れて担任に提出させた。学校単位で集約するため、
校長と教頭が一度開封して確認後、厳重に保管していたという。

 複数の父母会役員はアンケートの実施期間中、運動部所属の生徒の保護者らに電話やメールで
「お世話になった顧問に迷惑がかかるといけないので、調査には『体罰なし』と回答するよう子どもに伝えてほしい」などと求めた。

朝日新聞デジタル 3月22日(金)12時12分配信

投稿: 兵庫ってこんな土地 | 2013年3月23日 (土) 11時04分

>パチンコ業界が一日に消費する電力は約450万キロワット
これについてはパチンコ業界側から訂正要求が来て、84万Kwに訂正されました。都知事はわざと大げさに言ったようですね。

石原都知事発言に都遊協が反論
http://blog.goo.ne.jp/tetorayade7511/e/c5b4b70fae56af40d6ae1af964080784

石原都知事が首都圏でのパチンコ、自販機規制の政令に並々ならぬ意欲
http://blog.goo.ne.jp/tetorayade7511/e/bcecda711db7c7ec7cfda291ce2805d1

投稿: kassy | 2013年3月23日 (土) 11時04分

ここの保険医協会は九条の会あたりとつるんでるような人たちですよ。これも思想的な理由で反対してるんでしょう。

投稿: 明石家いわし | 2013年3月23日 (土) 11時35分

この際 生保とはある種の病である、と考えるのもよいかもしれませんね。
お金を与えてほっておくだけで治る人はごく稀、と。

治療としては、良い生活習慣を学ぶとか、勤労体験とか、よいんじゃないでしょうか。

投稿: JSJ | 2013年3月23日 (土) 13時40分

ほんとにギャンブル依存症だったとしたらこういう温情的?な対応って正しいんですかね?
素人目には断酒会みたいにギャンブルからきちんと隔離しないでいいの?って思っちゃいますけど。

投稿: てんてん | 2013年3月23日 (土) 15時24分

7000人が加入する組織がそこまで思想的にまとまるものなのかという疑問があったのですが、どうも日医などと同様にトップが勝手にやっていることなんでしょうか。
組織としてこうまで主張する前に、まずは社会常識というものをもう少し考えてみるべきだったかなという気がします。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月23日 (土) 19時52分

断酒会の場合、断酒会自体が酒からきちんと隔離してくれるわけではないのですけど・・・それでも精神科医があれこれするよりよっぽど断酒がうまくいくのがすごいところで。
ギャンブル依存でも自助グループとかありますけど、最近有料、しかもやけに高い会費がかかるものがちらほらあるのが気になってます。

投稿: クマ | 2013年3月23日 (土) 22時33分

つか息子の疑惑で石原本人にもパチ屋との暗いつながりが暴露されそうな勢いなんだがw
http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/125300/

投稿: | 2013年3月24日 (日) 06時45分

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