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2013年3月 4日 (月)

似非科学を国策で推進?! 前のめりに推進する前に

これだけネット上で何でもすぐ検索出来るようになりますと、何が本当で何が嘘かもはっきりしないまま情報が一人歩きしてしまう場合も多いですよね。
特にひと頃大騒ぎになったホメオパシーのように自ら進んでソースロンダリングによる捏造や身内同士による相互権威付けを行っているような確信犯の場合、うっかり斜め読みしているだけでは「海外でも認められている正当なものなんだ」と勘違いしても仕方ないところがあります。
先日こんな記事が出ていましたのもそうしたややこしい世相が問題になってきたが故だろうと思いますが、まずは記事から紹介してみましょう。

ネットに蔓延する疑似科学に騙されない思考法を専門家が指南(2013年2月25日マイナビニュース)

 ネットで繰り返し問題提起される「疑似科学」。なぜ人は欺されるのか、どう対処するればいいのか。2010年科学ジャーナリスト賞を受賞し、「ゼロリスク社会の罠」の著者でもある佐藤健太郎氏に聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
--疑似科学とは、どんなものを指すのでしょうか。

佐藤:はっきりした線引きは難しいのですが、もっともらしい用語をちりばめて科学を装いながら、科学的根拠がはっきりしないものを指します。多くは何らかの形でビジネスと結びついています

--たとえばどんなものがありますか。

佐藤:典型は「ホメオパシー」でしょうか。200年前にドイツの医師が提唱した“医療行為”なんですが、レメディという砂糖玉を舐めれば人間の自然治癒力が高まり、病気が治るとされました。これは原理的にも考えられませんし、治療効果もないことは厳密な試験で実証されています。砂糖玉を舐めているだけでは毒にも薬にもならないですが、それだけで病気が治ると思い込んで、他の医療行為を拒否するところが問題になるのです。
 疑似科学に共通するのは、「シンプルでわかりやすい」「博士やタレントなど広告塔になる権威付け有名人がいる」「意外性があって心に残る」といった点です。
 わかりやすさでいえば、たとえば「コラーゲンを食べてお肌がツルツルに」という広告をよく見ますが、科学的な根拠は何もありません。

--えっ、でも牛すじとか食べてツルツルになったとかよく言いますよね。

佐藤:コラーゲンは皮膚の重要成分ですが、胃の中に入ったらばらばらに分解されるので、肌にそのまま行くことはありません。それだったら頭髪の薄い人は髪の毛を食べればいいということになってしまう(笑)。しかし、一度「私には効いた」と思ってしまうと、自分で体験したことは理屈よりずっと強いですからね。

--なぜ疑似科学が蔓延するのでしようか。

佐藤:日本人の「ゼロリスク志向」と結びついていることはありそうです。誰しもリスクを避けたいのは当然ですが、そこに「自然」「副作用のない」といったキーワードで語られると、つい耳を傾けてしまう。ただ残念ながら、どんなにしてもリスクはゼロにはなりません。
 でも疑似科学が繰り返しいろんなものが登場するのは、メディアの責任もやはり大きい。EM菌やマイナスイオンなど、今でもメディアで肯定的に報じられたりします。おかしいなと思った人が指摘しようにも、手間はかかるし負担も大きく、何か自分の利益になるわけでもない。あえて否定するインセンティブがないんです。

--疑似科学に欺されないためにはどうすればいいのでしょうか。

佐藤:科学リテラシーを持てといっても簡単なことではないですが、SNSの活用はいいかもしれません。SNSはいかがわしい情報が拡散するのも速いですが、科学者や専門家がそれを打ち消す動きも速い。ちょっと変だなというものが現れたら、それに関するツイートを探してみるのもいいかもしれません。
 もうひとつ、「その情報が本当だとしたらどうなるか」をよく考えてみること。擬似科学とはちょっと違いますが、今回の原発事故以降、「鼻血が出た、下痢をする」と放射線被害の心配をしている人がかなり出ました。もしそんな症状が出るなら、福島の近くに行くほど鼻血や下痢を起こしている人が増えるはずですが、そうはなっていない。上空を飛ぶために200マイクロシーベルトの被爆をしている国際線のパイロットや乗客は、みんな毎回鼻血を出してなければおかしい。専門知識がなくとも、判別できることはいろいろあるはずです。

【プロフィール】
佐藤健太郎(さとう・けんたろう):1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職を経てサイエンスライターに転身。「医薬品クライシス」(新潮新書)で科学ジャーナリスト賞2010を受賞。著書に「『ゼロリスク社会』の罠」(光文社新書)、「化学物質はなぜ嫌われるか」(技術評論社)など。

似非科学にもその有害性に幾つかの理由がありますが、その一つには単なる砂糖玉に高い金を取るといったように多くの場合には詐欺まがいの商売になっていて、その利用による経済的損失が無視出来ないということもありますよね。
診療の現場で「先生、よく宣伝している○○を試してみようと思うのですが」などと患者から訊かれた経験は多くの臨床医がお持ちだと思いますが、多くの場合は「病院で出す薬なら保険が効くからずっと安いですよ」といった経済的側面からの指導で対応できるように思いますが、そうした損得勘定が出来ている間はまだしも重症化していないという言い方も出来るかも知れません。
その段階を過ぎて本当に似非科学にはまり込むと理屈も道理も無視して信仰と言うしかない境地に到達するようで、教祖様から「世の中に浸透する上で必ず通る道であり、必要なことでもあるのだ」とささやかれバッシング大歓迎とばかりに喜び勇んだりしていますから、こうなると幾ら周囲が理非を以て説得しようとしてもますます深みにはまるばかりです。
要するに似非科学なるものはひと頃から社会問題化しているカルトなどと同根であるということをよく承知しておかなければ、軽視していては大変なことにもなりかねないということなんですが、どうも昨今危ないなと感じているのが近年にわかに国政の場においても議論に登り始めた統合医療あるいは代替医療の問題です。

統合医療の推進を 統合医療に関するPTが提言取りまとめ(2013年2月21日自民党HP)

厚生労働部会の医療委員会の下に設置されている統合医療に関するプロジェクトチームは2月21日、統合医療の推進に向けた提言を取りまとめました。
統合医療は従来の西洋医学と漢方やマッサージ、エネルギー療法など各種療法を組み合わせ、患者一人ひとりに適した治療方法を提供するものです。
提言ではまず、「現代西洋医学と組み合わせることで、病気の治療にとどまらず、生活の質(QOL)を重視した医療が実現できる可能性がある」と推進の意義を強調。その上で短期的な目標として、関係省庁が連携してわが国に適した統合医療の概念を確立し、各種療法や健康法の安全性と有効性に関する情報を集約する「相補代替医療情報センター(仮称)」を設置することなどを盛り込みました。
また、中長期的な目標として、医科大学や医療系の教育機関のカリキュラムに取り入れることや関連産業の育成、統合医療の認定医、医療コーディネーターなど資格制度の整備を掲げました。
提言の取りまとめにあたって、PTでは昨年2月から精力的に有識者からのヒアリングを行ってきました。橋本聖子座長は「党内でも統合医療についての理解が深まってきた。提言を政府に申し入れるとともに、当面は短期目標の実現に向けて議論を進めていきたい」と述べました。

統合医療は玉石混淆、安全性・有効性確立を-厚労省検討会(2013年2月28日CBニュース)

 厚生労働省はこのほど、「統合医療」のあり方に関する検討会(座長=大島伸一・国立長寿医療研究センター総長)の「これまでの議論の整理」を公表した。統合医療の定義を明確にした上で、「多種多様であり、かつ玉石混淆とされており、現時点では十分な知見が得られているとは言えない」と指摘。統合医療を推進するには、まず安全性・有効性などを確立しなければならないとして、科学的知見を集めるよう求めている。

 議論の整理では、統合医療を「近代西洋医学を前提として、これに相補・代替療法や伝統医学などを組み合わせて、さらにQOL(生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの」と定義した。

 近代西洋医学と組み合わせる療法の範囲については、厚労科学研究で、▽食事療法▽断食療法▽ホメオパシー▽はり・きゅう▽温熱療法▽磁器療法▽接骨▽整体▽音楽療法▽温泉療法▽ヨガ▽アニマルセラピー▽漢方医学▽中国伝統医学―などが挙げられたことを紹介。一方、検討会では、「エビデンスの程度や有害性の如何にかかわらず、あらゆる療法をひとくくりにして議論することに対して疑問が呈されるなど、相当議論があった」ことを明らかにした。

 その上で、統合医療について「現時点では、全体として科学的な知見が十分に得られているとは言えず、患者・国民に十分浸透しているとは言い難い」と指摘。科学的な知見を収集し、必要な情報を広く発信していくことで、患者・国民、医師が療法を適切に選択できるようにすることが重要だと提言している。
 具体的な取り組みとしては、▽国内外の学術論文を収集する体制の整備▽国内の代表的な拠点で行われる臨床研究の支援▽科学的知見を基に情報提供する仕組みづくり―などを挙げている。【高崎慎也】

しかしこれでは統合医療というより代替医療と呼ぶべきだろうとか、玉石混淆と言うならどこかに玉があるのか?と思ってしまうのですが、そう主張するからにはまず玉があることの立証が先決だろうと誰しも考えるところで、日本医師会ですら(失礼)敢えてエヴィデンスが確立しておらずその定義すら明確化されていないものを診療に取り込もうとする動きに強く反対しているのは当然ですよね。
民主党政権発足時に統合医療を推進しようなどという話が出てきて驚いたことは記憶に新しいところですが、実は自民党政権に至っても同じ流れが続いていることは留意すべきことで、その背後には古来存在する「西洋医学(この言葉も定義が必要ですが)はもう限界」という根拠不明の迷信に加えて、医療経済学的な観点から推進を唱える意見もあるということです。
今時「西洋医学は単なる対象療法。我々は病気そのものの原因を治す」などという妄想はまともに相手にされるものでもありませんが、例えば英国などで行われているように病院にかかるでもないほどの風邪などのcommon diseaseを砂糖玉を舐めて我慢出来るなら医療費も節約出来るし、患者殺到で破綻しかかっている医療現場の負担軽減にもなるじゃないかという意見は根強くあるようですね。
こうした声に対してはだからといって高い金をとって砂糖玉を売りつけることの正当化には全くならないし、そうした目的にはOTC薬の販売拡大などで対処するのが筋ではないか?と思いますが、おもしろいことに日医にしても薬剤師会にしても通販などOTC薬の販路拡大には反対し妨害してきた立場ですから、今さら口を拭って言い出しにくいという事情もあるのでしょう。

財政的に見ると保険外診療で多くの患者が満足するなら当然医療費支出が減らせるというものですが、厚労省の議論を見ているとお判りいただけるように国の考えている統合医療推進策とはいざというときの責任逃れのためか「医師主導で行うもの」とされていて、そうなりますと診察料等の受診コストも発生するはずですし、何より今話題の混合診療との絡みが問題になってきます。
日医としてはむしろこちらが気になるというのが本音であるようで、「混合診療を解禁し、市場原理主義に立ち返ろうという狙いがあるのではないかとの疑念を抱かざるを得ない」などと持って回った反対論を展開していますけれども、難しいのは医師と言えどもホメオパシーを始め怪しげな代替医療の類に手を出す人間は一定数いるし、厚労省が彼らを中心に意見を聞くつもりであればあっさり話の流れがまとまりそうだと言うことです。
もちろん一見して怪しげなものであってもマゴットセラピーや瀉血(これは当初と違う形でですが)のように臨床の場で用いられ始めたものは幾らでもあるわけですから、実際に効果があるものであれば臨床応用すればいいでしょうが、そうした真面目な応用を目指す代替医療ほど他の新薬などと同じようにきちんとした科学的手法によって検証を受けた上で承認され用いられるべきでしょう。
その最も大切な立証の段階をすっ飛ばして「我々は数百年の歴史と伝統によってその効果は立証されているのだ」などと言って終わりにするからははん、さては正しい検証に耐えるだけの実も何もない偽物なんだなと痛くもない腹を探られてしまうのであって、国が率先してこれら代替医療の実態を正しく検証していくというスタンスであるなら初めて国策として行う意味が出てくるというものではないでしょうか?

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コメント

ただ今後は「国民皆保険とか無理、貧乏人と老人は医者にかかるな」が国策になるようですから、
ホメオパスや民間療法の需要は確実に増えるでしょうね。

投稿: 名無子 | 2013年3月 4日 (月) 07時56分

玉石混淆というのか全くの迷信とある程度効果が期待できそうなものを十把一絡げに論じているのは強い違和感がありますね。
はじめからなんでもありきで議論するのではなくまな板の上にのせる前に最低限の検証はいるんじゃないでしょうか。
ホメオパシーなんて書類審査の段階で切り捨ててしまってもまったく問題ないでしょう。

投稿: ぽん太 | 2013年3月 4日 (月) 08時56分

>SNSはいかがわしい情報が拡散するのも速いですが、科学者や専門家がそれを打ち消す動きも速い。ちょっと変だなというものが現れたら、それに関するツイートを探してみるのもいいかもしれません。

ダウトw半可通が深刻なデマを広げてることの方が多いんだがw

投稿: aaa | 2013年3月 4日 (月) 10時08分

例えば漢方なども非常にいい薬がありますが、機序の解明ということではもう一つすすんでいないのはもったいないと思いますね。
きちんと原理を解明していくことは単に偽物を除外するのに有用であるのみならず、体系としての科学の進歩のためにも必要だと思います。
統合医療を推進する側も積極的にその流れに加わっていただきたいですし、いたずらにそれを拒むというなら自ら信憑性に疑問を投げかけているのと同じことでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月 4日 (月) 11時03分

お医者さんから普通にもらってるんですが漢方薬も似非なんですか?

投稿: 唐川 | 2013年3月 4日 (月) 12時28分

漢方はなかなか難しいのです。
長年使われていて経験的に大きな副作用はないだろうってことで保険医療制度が始まった時にそのまま収載されてしまったんですね。
でも今の薬のように厳しい審査を受けてるわけじゃないのでたびたび効く、効かない論争が起こります(漢方に限らず昔ながらの薬はそういうことがあります)。
最近少しずつ薬理作用の解明が進んでやっぱりいい薬だと見直されつつあるものもありますけどね。

投稿: 藪 | 2013年3月 4日 (月) 15時07分

あれだけ大騒ぎになったホメオパシーを誰がこんな場で取り上げさせたのか?
国会議員や官僚の間でもそれだけホメオパシーが滲透しているということなのだろうか?

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年3月 4日 (月) 16時26分

まさかこれ税金保険料使ってやろうってこと?あり得んわ

投稿: | 2013年3月 4日 (月) 18時11分

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