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2013年3月11日 (月)

東日本大震災に関連しての話題

本日の本題に入る前の余談ですが、ネットによって世界中がほぼリアルタイムでつながるようになった現代においては、日本人が今まで自覚もないまま行ってきた振る舞いが世界から注目されるようになっていて、一部ではこうした日本独自の風俗習慣を称して「only in Japan(日本でだけ)」などとも呼ばれているようです。
とりわけ震災によって日本に注がれる目線が増えた結果、国難と言うべき極限状態における日本人の節度と自制心に満ちた振るまいが多くの国々で称讚を受けることになったのは記憶に新しいところですし、テキサス親父などが「日本人の様に振る舞え」と繰り返して語っていたのも大変印象的でしたね。

【参考】字幕【テキサス親父】「日本人のように振る舞え!」が世界の常識になる

【参考】字幕【テキサス親父】日本が世界に教えた事「日本人の様に振る舞え」

個人的な範囲に限っても別に外国旅行に行くわけでもないのに近年外国人の友人、知人が増え、それぞれの国や民族独自の風俗とは面白いものだなと感じることもしばしばですが、こうした場において常々感じるのは何よりもまず自国の歴史や文化をきちんと理解していない人間には正しい異文化交流など無理だということです。
まだ外国が遠かった一昔前には一部進歩的メディアを中心にこれからは日本も国際化が必要だ、日本だけでしか通用しない島国根性は捨てろなんてことを盛んに言われた時代もありましたが、実際に国境線を越えて普通に交流ができる時代になってみると何のことはない、世界中で一番受け入れられたのはオンリーワンの存在としての日本というコンテンツだったということですね。
この二年間で世界中で多くの人々が日本を支援してくれましたし、直接手を届かせることが出来ない方々も日本のために励ましの声を送り続けてくれましたが、そんな世界中の人々に感謝の念を抱きながらこれからも我々自身が日本人らしくあり続けることが、彼らに対する一番の感謝の表れになるんじゃないかという気がします。

さて、本日3月11日は先の東日本大震災の被災地とも関連した話題を取り上げてみたいと思いますけれども、まずは先日風評被害払拭にも大きな意味を持つと思われる一つのデータが発表されたことを皆さんご記憶ではないかと思います。

子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果(2013年3月8日朝日新聞)

 【大岩ゆり】環境省は8日、福島県外の子ども約4400人を対象にした甲状腺検査で、6割に嚢胞(のうほう)やしこりが見つかったと発表した。東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)の影響をみるため、福島県が実施した検査では県内の4割の子どもに嚢胞やしこりが見つかっている。環境省は、福島と他県はほぼ同じ結果だったとしている。

 福島県は事故当時18歳以下の子ども約36万人を対象に、甲状腺の超音波検査をしている。1月までに約13万3千人が検査を受け、41・2%に2センチ以下の嚢胞や5ミリ以下のしこりが見つかった。専門家はこの大きさの嚢胞などは問題ないとしている。

 しかし、子どもの甲状腺を高性能の超音波機器で網羅的に調べた例がなく、4割という割合が大きいのか、被曝の影響があるのかを判断するのが難しい。このため、環境省は長崎市と甲府市、青森県弘前市の3~18歳の子ども4365人に、同じ性能の超音波機器、同じ判定基準で検査をして比べた。

 この結果、2センチ以下の嚢胞や5ミリ以下のしこりのあった子どもが56・6%、それ以上の大きさの嚢胞などがあった子は1%(福島は0・6%)いた。環境省の桐生康生放射線健康管理担当参事官は「福島の結果は他県とほぼ同様だったと考えている」と話す。

 嚢胞などのある子が福島よりも県外で多い理由について、検査を受けた年齢構成などを詳細に分析して月内に公表するという。

 長瀧重信・長崎大名誉教授は「超音波検査の性能が上がり、嚢胞などが見つかりやすくなった。福島が異常な状態ではないとわかった。ただし今回の調査だけでは、被曝の影響の有無は判断できない。福島で生涯、検査を続けることが必要だ。地域性もあるため、福島県で事故後に生まれた子への検査との比較も必要だ」と話す。

 福島県は事故の影響が出るか調べるため、県内の子どもを対象に生涯、検査を行う計画だ。

そもそもの騒動の発端となったのが福島県で大々的に行われている小児甲状腺健診によって思いがけず多数例の異常が見つかった、それを「今までこんな例は見たことがありません」という匿名医師のコメントを添えて「甲状腺癌の疑い?!」とセンセーショナルに取り上げた週刊誌記事にあったことは当「ぐり研」でも取り上げたところですが、この記事には当時から多くの批判が寄せられていました。
特に有志の検証でもともと行われた検査では異常の発見率には母子共に特に高かったという事実もなく、また精密検査の結果も全員良性のものばかりで何ら問題がないという結論だったにも関わらずこうした記事が出たということで、例によってマスコミお得意の出典不明な匿名コメントを寄せ集めてのねつ造か?!とも噂されたものでした。
各地の専門医なども記事に違和感を覚えつつも比較対象となるデータがはっきりしたものがなかったことからしっかりしたエヴィデンスに基づく反論を行いかねていたところでしたが、最終的にこうして対照群を設定して比較検討した結果別に異常でも何でもなかったという一つの結果が出たことは当事者の不安を拭う上でもよいことだったと思いますね。
もちろんあくまでも現時点での短期的な話であって長期的な影響は判らないじゃないかという意見ももっともなところですが、先日のWHOの発表でも原発の20km圏内で放射線に晒された小児の甲状腺癌罹患率は70%上昇するものの、残る福島県内各地区を含め全国他地域での癌発生リスクは上昇しないとされていて、幸い日本ではチェルノブイリのような大きな健康被害はなさそうだという予測が世界的にも主流を占めています。

これまた日本では全くと言っていいほど大きく取り上げられることはありませんでしたが、昨年末に原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が提出した報告書においても福島の事故で健康に大きな影響はなく、特に自然放射線の範疇に収まる程度の低線量被爆に神経をとがらす必要はないとして、広範囲にばら撒かれている汚染対策を本当のホットスポット対策に集中すべきであるとも言っています。
ご存じのように日本では原子力アレルギーとも言える民意に従ってか、被災地周辺ではやり過ぎではないか?と思われるほどの多額のコストを湯水のように投入した結果、例の偽装除染問題などに顕在化したように原発事故の後始末自体が巨大なビジネスとなっているようですが、世界的にはそんな低線量のものまでお金をかけて除染するくらいなら避難してしばらく放っておけば?という考えが主流であるわけですね。
実際に被災地でも人里離れた山林の除染に巨額のお金を投じるくらいならそのお金で転居費用を賄いたいのに…という素朴な疑問も出ているようですが、放射線による健康リスクが実際にどの程度なのかというイメージをつかみながら作業をしていかないと、たばこを吸うよりもはるかに低い健康リスクのために際限なき除染コストを負担するようなおかしな話にもなりかねません。
健康被害については幾ら客観的データが揃ってきても「それでも不安があるのだ」と心身症的な健康被害を訴えることは可能でしょうが、そろそろ放射能利権ともとられかねない数多のしがらみから離れて冷静な議論を行っていかないことには、せっかく巨額のコストを投じても奇妙に歪んだ復興にしかなってこないんじゃないかということですね。

それでは正しい復興とはどのようなものかということも考えておかなければいけませんが、とにかく過去にもまれな大規模災害によって否応なしに気づかされたことは現代の日本ではこうした災害に対処するシステム自体が存在していないという現実であって、日医などの医療系諸団体が先日「大規模災害への対応にかかる提言及び要望書」を打ち出したのもそうした危機感の表れだと言えそうですよね。
特に被災地東北地方ではもともと医療崩壊が進んでいると見なされていた地域ですから医療インフラ崩壊の影響は倍増していて、管理人も各種医療特区を設けるべきだと主張してきましたし実際に各県で各種の特区が認定されつつあるようなのですが、今ひとつかゆいところに手が届きかねているのか先日もこんな記事が出ていました。

石巻の訪看1人開業「ニーズはある」(2013年3月7日CBニュース)

 民主党やみんなの党、公明党、日本維新の会など、超党派の国会議員らが参加した「被災地における『一人開業』訪問看護ステーション院内報告会」が7日、衆院第二議員会館で開かれた。報告会には、被災地への特例措置を利用して訪問看護の1人開業に取り組む宮城県石巻市の看護師らが参加。「(1人開業には)十分なニーズがある」と主張し、今月末で期限を迎える特例措置の延長などを求めた。

 通常の訪問看護事業所の場合、常勤換算で2.5人以上の看護師らの確保が不可欠だが、特例措置の対象になれば、看護師が1人でも特例居宅介護サービス費が給付される。対象地域は、被災地のうち、岩手、宮城、福島の3県。なお、この措置は3月末で期限を迎えることから、8日の社会保障審議会介護給付費分科会で延長の是非が議論される見通しだ。

 報告会には、今年2月6日から、石巻市で看護師1人のみの訪問看護事業所を運営している佐々木あかね氏が参加した。佐々木氏は、介護保険での訪問しか認められていない特例措置では、65歳以上で要介護認定を受けた人しか対象にできない点が大きな課題と指摘。実際、この2月だけでも、アルコール依存症の患者や糖尿病患者への訪問依頼を断らざるを得なかったことを紹介した上で、「体制が整っているのに制度の壁で、求めている人の元へ訪問できなかった。無念で仕方がない」と語った。

 さらに、事業所を開設してから1か月ほどしか経過していないにもかかわらず、3月には新たな利用者を2人受け入れる予定であることから、「実際に動くと、いろいろな所から依頼が来る。(被災地では、1人開業の)十分なニーズがある」と述べ、特例措置の延長を強く求めた。

■「半年ごとの延長では仕事も安定しない」-キャンナス・菅原代表

 佐々木氏に先立ち、訪問看護師らでつくる「全国訪問ボランティアナースの会キャンナス」の菅原由美代表が、1人開業をめぐる国や地方自治体のこれまでの動きを説明。石巻市のほかにも福島県南相馬市などで1人開業が認可されたことなどを紹介した上で、今月末で期限を迎える特例措置について、「とにかく延長を」と訴えた。また、特例措置が昨年2月以降、ほぼ半年ごとに延長されてきた点について、「(期限付きでは)ケアマネジャーも安心して利用者を紹介できず、仕事も安定しない」と批判した。【ただ正芳】

ちなみにこの一人開業という制度は厚労省の省令として期間と地域を限定して出されていたものですが、当時この省令を出すことに対して「安定的サービス提供に有効なのか疑問(看護協会)」だの「24時間必ずサービスが提供できる担保がない(日医)」だのと関連諸団体の反対意見が続出し、結局対象地域や期間を「非常に限定した上で特例処置を認める」という結論になったことは記憶しておくべきだと思います。
もちろん彼ら「国民のための医療」(苦笑)を標榜する抵抗勢力の見識も問われる話ではありますが、失礼ながらこういう話を聞けば行政の怠惰と言うのでしょうか、せっかく医療特区というものをどんどん作れる状況にあるのですから各地のニーズに応じて好き放題治外法権化させてみればいいだろうにと思わざるを得ませんね。
被災地では相変わらず医師集めが大変だと大きな予算をつけてまで努力しているようですが、例えば保険診療1点10円にいくらかの色をつけて医療機関の経営安定化を図るだとか、それこそ営利企業が病院経営に参画することを認めるといった試みが行われてもいいと思います(無論、例によって某団体からは「皆保険制度の精神を骨抜きにする暴挙!」などと言われるでしょうが)。
管理人自身もいわゆるプロ弱者というものを嫌うことでは人後に落ちないつもりですが、本当に困っていて世間もそれを許すという状況にあるのに特権を正しく活用しないというのは、資産も身よりもない病弱な人が何らの社会保障も受けることなく孤独死するのと同様に愚かしくも悲しいことではないかと思いますね。

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コメント

故郷を失うのはかなしいですが再汚染の危険性と放射能の残る期間を考えると原発周囲地域は除染をしてインフラを再建してまで帰還する価値はないのでは。もとから数少ない若者たちにとっては再定住先が故郷になっていくでしょうから原発を受け入れた時点でそれは仕方なかったことだとご老人たちが納得できるかどうかです。

投稿: ぽん太 | 2013年3月11日 (月) 08時46分

処理に100年かかるといわれた震災がれきがあっというまに消えていってます
いったいどこに消えたんでしょうね

投稿: 不思議 | 2013年3月11日 (月) 09時50分

がれき処理が一見順調に進んで見えるのは、当初のがれき量見積もりが過大だったという側面もあるようですね。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130307/244677/?rank_n
ただ汚染の問題もある中で、被災地からの廃棄物を一律震災がれきと呼んでひとまとめに扱うのはおかしいと思っています。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月11日 (月) 11時00分

2年たってもやれることを全部やりつくしてるって気がしません。責任ある立場にある人たちはもっと知恵をしぼってもらいたいです。

投稿: akira | 2013年3月11日 (月) 12時33分

3月末で一人開業の特例が切れるのに延長ありきで2月に開業するってのもかなり違和感を感じる行動なのですが・・・
私なら怖くてとても出来ません。

投稿: クマ | 2013年3月11日 (月) 12時51分

>3月末で一人開業の特例が切れるのに延長ありきで2月に開業するってのもかなり違和感を感じる行動なのですが・・・

おっしゃるとおりですが期間限定と最初から言っていたことですから、からだ一つの軽装で開業できるような人々が参入していたのでは?
だいたいがほんとに訪看をまじめにやらせるつもりなら1年2年と期限を切るなんてありえんはずですが、これぞ玉虫色の政治的判断というものですかな

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年3月11日 (月) 14時55分

もともとが一年限定というのも無理ありますよね。準備もいるだろうにどういうつもりでこんな中途半端なことにしてたんですかね。

投稿: てんてん | 2013年3月11日 (月) 15時52分

もともと1人開業が1年限定なのは、特例で1人でも開業していいけど特例が切れるまでに看護師をあと2名確保してね(はあと)ってことかと私は解釈しましたが、どうなのでしょうね。
特区のように実験的にやってみます的なものであれば、延長とか公式に認めるとかあってもいいと思うのですが、今回のはあくまでも緊急的な措置でしょうし。

投稿: クマ | 2013年3月12日 (火) 10時10分

おそらくそうなのでしょうけど、疎開などで人口も減って人手も足りないから一人でやらせてくれってことだったんだろうに、そのうえ一年のうちに二人捜せって無理があるんじゃないかって気がしました。
全国で同じ制度じゃないと不公平だってことなんでしょうけど、もっと臨機応変にやってもいいんじゃないかな。だからそのための特区がいるってことなんでしょうね。

投稿: てんてん | 2013年3月12日 (火) 10時59分

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