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2013年3月29日 (金)

四病協、医師の開業規制を主張

昨年8月に社会保障制度改革推進法が成立した結果始まった社会保障制度改革国民会議はこれまで6回の会合が開かれていますが、その第7回目の会合が先日3月27日に開かれたと言うことです。
過去には後発医薬品の利用促進などが議論されてきた場なのですが、今回の第7回では四病協からこんな話が飛び出したそうです。

医師の偏り是正「診療報酬では限界」 日本病院会など病院団体(2013年3月27日日本経済新聞)

 社会保障の将来像を議論する政府の社会保障制度改革国民会議は27日、医療・介護の関係団体と意見交換した。医師が特定の地域や診療科に偏っている問題について、日本病院会など四病院団体協議会は「診療報酬による経済的な誘導には限界がある」と主張。医師が診療科を自由に選び、全国どこでも開業できる自由開業制度の見直しにも言及した。

 地域ごとに基準病床数を決め、基準を超えた場合には原則新たな病院を設置できなくする「地域医療計画」では、病床を持たない個人クリニックなどは規制の対象外。国民会議の遠藤久夫会長代理(学習院大学経済学部教授)は会議後の会見で、「医療計画に診療所も入れる話など、踏み込んだ議論ができた」と評価した。

自由開業・標榜規制を政府などに要望へ-四病協(2013年3月27日CBニュース)

 四病院団体協議会(四病協)は27日の総合部会で、勤務医不足の背景の一つには、医師が自由に開業できる「自由開業制」と、同じく自由に診療科目を選べる「自由標榜制」があるとして、規制するよう要望していくことで一致した。今後、政府などへの働き掛けを強化する方針だ。

 同日の総合部会後の記者会見で、日本精神科病院協会(日精協)の山崎學会長は、「地域と診療科の偏在がクローズアップされるが、実は勤務医と開業医の偏在があり、自由開業制を見直すべきとの議論は前からある。病院には地域医療計画で規制があるが、同じことを診療所にも適用したらどうかと考えている」との見解を示した。

 山崎会長は開業の規制策として、保険医療機関に指定しない方法も挙げ、「地域に必要な一定の数以上は、保険医として登録せず、開業できないようにすればいい」と述べた。また診療科の標榜に関連して、「駅前にクリニックがあっても、その医師の素性が分からないことがある。患者が分かるように、新規に開業する医師には必ず、専門医として研修した期間や施設などをホームページに示すよう義務付けてもいいのではないか」との考えを示した。【君塚靖】

ちなみにこの3月27日の会議なんですが、見ていておもしろいなと思ったのは関係団体として四病協の他に歯科医師会、薬剤師会、看護協会と主要医療系団体がそろい踏みしている一方で日医は呼ばれていないようで、確かにこういう議論が出てくる場に日医など呼んでいた日にはまとまるものもまとまらなかったでしょうね(苦笑)。
四病協という組織は社団法人日本医療法人協会、社団法人日本精神科病院協会、社団法人日本病院会、社団法人全日本病院協会の四つの病院系団体から構成されていて、民間病院を中心とした病院団体の協議会という位置づけなのですが、当然ながらその目線は医療の中でも病院経営ということに重きを置く形となっています。
近年では過酷な病院勤務の現場から医師達が逃散して楽な診療科に行ったり開業して行ってしまう、その結果病院での診療が立ちゆかなくなり経営そのものが破綻するという事例も相次いでいますから、民間病院の団体が勝手に診療科を名乗ったり開業するなどまかりならん、国が強権を発動して嫌がる医師を業務に縛り付けるよう束縛すべきだと主張するのは理に適った話ではありますよね。
国にしても例の新専門医認定制度の絡みで医師への統制を強めようと画策しているところですからこれは願ったり適ったりで、「医療系の専門団体からこのような意見が出ました。つきましては前向きに検討を」と話を持って行きやすいでしょうし、同じように経営者目線ではあっても相対的に開業医寄りの立場に立つ日医がこの場に呼ばれてすらいないということが政府のスタンスを示しているとも思います。

管理人は病院勤務が嫌なら開業すればいいとか開業医最強などと主張するつもりはまったくありませんが、開業医が経営的に成立する背景には必ず一定数の需要があるわけですから現実的に顧客が求めているものを過剰だと規制するというのはおかしな話で、それこそ歯科や弁護士のように過剰な参入で開業が立ちゆかなくなっている医科の現状では時期尚早な話かなと言う気はします。
特に開業医の場合はその医師の評判が医療機関としての経営に直結するわけですから、大勢の医師を抱えた病院のようにどうしようもない駄目医者でも病院の評判によって生きながらえてしまうという弊害がむしろ減るとも言え、それこそ国民の求めるところの医療の質担保のためにもこうした淘汰の圧力がそれなりに有用であるという考え方もあるでしょうね。
実際に昨今では診療報酬上も開業のハードルがどんどん上がってきていて、親からの継承やよほどの軽装開業でなければ黒字化は難しいとまで言われている状況にある中で、今敢えて強力な開業規制をかける意義も意味もなければ、それが過酷な現場から逃散する勤務医不足対策につながるというものでもないように思います。
同様に資格として数が限られているものとしては相撲の世界では年寄り名跡が高値で取引されていることが知られているし、宗教の世界では宗教法人格の売買が問題化していることも周知の事実で、開業医であることが利権化するような方向での政策誘導は老医の開業資格が高値で取引される危険性をはらむなど、むしろ状況をいびつなものにしてしまう可能性があるんじゃないかと言う気がしますけれどもね。

ともかくも国としてそうした方向で検討しているということであるならいずれそうなる可能性が出てきたということですが、今回その内容として具体的に「一定数以上は保険医療機関に指定しない」という開業規制策が挙げられてきていることに対して開業志望の医師達にどのような対策があり得るかです。
医師数の制限ではなく医療機関の制限であるということに着目するならば、例えば近頃では一つのビルに複数の開業医が入居する医療モールが割合に目立ってきていますが、集客効果の向上など開業リスクそのものの削減にも役立つだろうこういったものをさらに一歩進めて、名目的には一つのクリニックにしてしまうということは患者利便性からも十分あり得るんじゃないかと思いますね。
ただ国としては以前から掲げていた「まずはかかりつけのクリニックに、必要があれば病院に」という二段階方式を実質的に放棄して、大病院に医師を集め中小病院は淘汰するという方向で話を進めたがっている気配が濃厚なのですが、相対的に中小病院比率も高いだろう民間病院の団体である四病協にとってこうした国策は危険な兆候ですし、敢えて共闘できそうな日医と喧嘩をするようなメリットがあるのかという疑問もあります。
いずれにしても医療の大原則は高い医療スタッフのモラール(士気)がよりよい医療を生むことだと管理人は考えていますが、その点からもひたすら経営的視点のみを追い求めるかのような今回の提言が現場スタッフにどのように受け止められるものなのか、国も含めて一度考えて見る必要はあるように思いますね。

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コメント

経団連に対する連合のような組織が医師にはないのが敗因でしょ。金も権力もある連中に個人の力だけで対抗しようってんだから無理無理。

投稿: kappa | 2013年3月29日 (金) 08時35分

私は、将来的には、勤務医・開業医を網羅した地域毎・診療科毎の定員制は不可避と見ています。
そこまでの需給予測ができるか、システムが構築できるか、という技術的な問題があるだけでしょう。
医師側には、理をもって反対するのは難しいと思います。

投稿: JSJ | 2013年3月29日 (金) 09時12分

医師の開業よりも乱立している整体をなんとかしないとまずいでしょう。コンビニよりも多いんじゃないかと
思うくらい次々と開業していますね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年3月29日 (金) 09時39分

これって定員制になったらなったで過剰と認定された地域でまた一波乱ありそうです。
選挙の定員も一向に改まらないのにそれ以上に住民も反対しそうな医師数を客観的な指標で決めることが出来るのかどうか…

ところで定員を決めるにあたって診療科単位になるんでしょうけど特定の診療科を標榜してる専門医持ちの方が不利になることってあるんでしょうか?
なにも標榜してない何でも屋が有利になったら新専門医制度の意味がいきなり破綻しそうですけど。

投稿: ぽん太 | 2013年3月29日 (金) 10時31分

開業規制に限らず専門医制度なども含めて、そろそろ是非論争に留まらず条件闘争を本格化していくべき時期なんじゃないかとは感じます。
ただそれを誰がそういう立場でやるということが決まっていないせいで、思わぬ望まない結果を現場が押しつけられないかと気がかりではありますが。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月29日 (金) 11時32分

医師そのものが存在しなかった地方僻地にとって利益となるか不利益となるか制度設計が難しいところでは
全国どこでも各科最低一人は開業を許可するとなれば新規参入のチャンスにもなるだろうが

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年3月29日 (金) 14時26分

病院で診療科部長で60歳前まで働いているDrがけっこう新規開業してますね。また現在現役の開業医の6〜7割が60歳以上の高齢者ですね。あと10年もすれば彼ら、特に70歳以上のDrは年齢とともに衰退・廃業という流れになるはず
病院の外来は相変わらず患者が殺到しすぎてパニック状態の所も少なくないですからね。地域偏在はともかく新規開業自体を規制して抑制しようというのはOECD加盟国最低レベルの医師数の我が国の現状には非現実的。
しかし我が国の大半の開業医は日常的にほとんど風邪などを診て生計をたてている「風邪医者」ですから、「風邪や花粉症程度ならわざわざクリニックに行かずにOTC薬でも飲んで寝てろ」という国民に対する啓蒙も必要でしょうね。
「風邪くらいで医者にはいかない」という国民意識が浸透すれば、開業医の需要は大幅に減る可能性がありますが。

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月29日 (金) 15時10分

保険診療の一環として、保険対象外であるOTCの服用を指示できれば薬剤費を減らせるとは思うのですが・・・

投稿: クマ | 2013年3月30日 (土) 11時17分

自由開業規制、日医として同意できない-横倉会長「医師会と行政で話し合う」

医療介護CBニュース 4月1日(月)17時25分配信

 3月31日に日本医師会(日医)が開催した代議員会では、医師が自由に開業できる「自由開業制」の規制を政府などに要望していく病院団体の動きに対して、今後の日医の対応を問う声が上がった。これに対し横倉義武会長は、国による医師の強制配置には日医として同意できないことを強調した上で、「地域での開業医のあり方については、医師会と行政とがよく話し合いをして、適正な配置をどうするかを進めていかなくてはいけない」との考えを示した。

 自由開業制については3月27日に開かれた社会保障制度改革国民会議で、四病院団体協議会(四病協)の代表が、勤務医不足の一つの要因として、「自由開業制」を挙げ、一定の規制をすることが必要だと指摘していた。【君塚靖】

投稿: 日医は規制反対 | 2013年4月 2日 (火) 10時01分

日医が反対するところまでは予想通り
とはいえこの言い方では交渉次第では開業制限も認めると読めるのだがどうなのだろう

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年4月 2日 (火) 16時39分

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