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2013年3月25日 (月)

大人気の医学部受験 学生気質も変化してきた?

国家試験があったり入学試験があったりとこの時期試験続きで嫌になっている方々も多いかと思いますが、先日日経メディカルにこんな記事が掲載されていました。

ついに「東大文Iより私立大医学部」の時代が来たか?(2013年3月22日日経メディカル)

(略)
私立大医学部の人気は学費値下げも一因か

 今回、首都圏や大都市の国公立医学部は例年並みの競争率でしたが、地方の国公立医学部や私立医学部の受験倍率が高まったことに私は注目しています。さらに東大文I、京大法学部の受験倍率が下がり、東大文Iでは例年行われていたセンター試験の足切りが13年ぶりに必要なくなったことを重く見ようと思います。
 東大文Iを目指していたようなトップクラスの秀才たちが、志望先を医学部に変え、それも難関を極める首都圏、大都市の国公立医学部を避けて、地方国公立医学部もしくは私立医学部を選択したのではないか、という気がしてならないのです。東大文Iを目指していたような秀才なら、数IIICなどはやり終えているでしょうし、私立医学部の物理・化学などは、予備校の直前講習会でプロの講師から手際よく指南されれば、たちどころに及第点まで持っていけるでしょう。
 また、これも推測ですが、今年は私立医学部が軒並み学費を下げてきて、やや富裕な一般家庭でも手が届く域になったことも、受験倍率が高まった一因かもしれません。昔から《子どもを東大に行かせる親の年収は、慶應に行かせる親の年収を上回る》《子どもの頃から教育費を惜しみなくつぎ込めるほどの富裕層でなければ、東大や京大には行けない》と言われてきました。そういう家庭の子どもが、超高額で知られる私立医学部の学費値下げ措置に対し、「とにかく医者になれば、高い名誉と地位、収入が保証される」と考えたとしても、何ら不思議はないのではないでしょうか。
 このことは、東大文Iを出て官僚や弁護士になるという進路が、必ずしも高い名誉と収入を約束される時代ではなくなったことと無縁ではないように思います。拙著『年収600万、子どもの偏差値40以上なら、医学部に入れなさい』(講談社、2009年)で予言したように、「東大文Iよりも私立大医学部」という時代が来たのかな、と感じた次第です。
(略)

ちなみに記事によると今年の医学部入試では私立上位校は問題がさらに難しくなる一方、地方の国公立医学部では非常に問題が簡単になっているそうで、この辺りは大学間の格差の拡大と共に定員増や地域枠制度などとも相まって地方を中心とする一部医学部学生のレベル低下傾向が影響しているのかなという気もします。
ともかく医学部と言えば近年では入試の狙い目になっているのだそうで、とりあえず医学部に入ってさえおけば後は何とか食っていけるということから不景気な時代に最適な商売ということなのでしょう、予備校など受験さん業界では「うちの子は商売やビジネスの才覚がないどころか、取り得がなにもないと思ったら、医者にさせるのが一番良い」などと受験熱を煽っているようです。
そういう話を聞けば医学部に入ってくるのはノンポリでただ将来金を稼ぐことしか頭にない人たちばかりなのか?と考えがちですけれども、実は早くも10代の頃からそんな風に明確な将来の人生設計を考えている人々であるだけに、なかなか考えることも具体性があっておもしろいようなんですね。

医療界に新風が吹くか/杉山博幸(2013年3月23日朝日新聞)

医療界に黒船?

学生が主催する「医療ビジネスコンテスト」なるものに参加してきた。
学生たちはグループに分かれ、2泊3日で医療に関するビジネスプランを作り、最終日に発表したものを表彰するという。優勝賞金は30万円。
(略)
横断幕には「Perry2013 医療界に黒船を来航させよ!
(熱い! 少しモード切り替えなければ)と、心の中に言葉が響いた!
日曜日の午後のモードで気軽に参加したので、会場とかなり温度差があったかもしれない。私の役割は、その事業プランを学生たちが作る際にちょっとしたアドバイスをすることだ。雰囲気に圧倒されながら、3組のグループのアドバイスをさせて頂きました。

「ニーズ、実現可能性、収益性、新規性、共感性」

3組の中で、最も長い時間話し込んだのが、「在宅で家族を介護する孤独な介護者を繋げるコミュニティを創りたい」という4人組(写真)。
突然、家族が介護状態になるだけでなく、自分も介護をしなければいけない介護者の肉体的精神的疲労と孤独は、経験した者でなければわからないところがある。だが、様々な拘束で同じ境遇の人とつながる機会に参加することはなかなか難しい
それであれば、インターネット等を使ってより手軽に繋がる場を作ってしまおう、というコンセプトだ。震災を上げるまでもなくコミュニティは貴重でネットでもそれができるはずだという仮説である。
しかし、これはビジネスコンテンストである。評価軸は事前に提示されている。「ニーズ、実現可能性、収益性、新規性、共感性」である。
この介護者を繋げるネットコミュニティ事業は、ニーズや共感性は高い。そして、NPOで同様の試みを行なっているところもあるが、まだまだ新規性も高い。そして、現在のクラウドやインターネットサービスを使えば、以前のようなサーバーを立てて、一からプログラムを開発して、ということは必ずしも必要なくなってきたので、実現可能性についても高いといえるだろう。

問題は、収益性。ここで最も多くの時間を討議に費やした。
グループホームや製薬企業から広告、販促費を取るモデル、Q&Aサービスにして直接介護者であるユーザーが費用を払うパターン。いろいろなモデルが検討された。私は4時間の制限時間でアドバイスを終了する段取りだったので、結局どのようなモデルに落ち着いたかは実は知らない。
いずれにしても、医療、健康、介護系の情報ビジネスはこの収益モデルの構築が最も大きな難関である。
なかなかユーザーが情報に対して対価を払わない中で、企業に負担させる方策を考えるが、企業はメリットがなければ負担を拒むし、企業のメリットがギラギラ臭ってくるとユーザーが離れていってしまい元来のコミュニティの価値を失わせてしまうからだ。

「黒船」=TPP??

いずれにしても、学生時代からこのような訓練をするというのは、素晴らしいことではないだろうか。自分が学生の頃は、研究室に泊まりこみでギターや酒を持ち込んで夜通し討論した。これはこれで古き良き昭和の思い出であるが、インターンをすること、ましてやベンチャーを創る等ということは全く選択肢に無かった。学生時代に選択肢が一つでも多いことは良いことである。
そして、数十人の学生と話しをしていて気づいたのは、ベンチャーを起業しようというタイプの学生の中でも医療を選ぶ学生は、どちらかというとお金儲けをしたい、というよりは、国や大企業とは違う新しい仕組みでしか、もうこの医療界は変わらないのではないかという閉塞感を同機として持っているように感じた。そこでのキーワードは、収益性やキャピタルゲインよりも「社会的課題の解決」だ。ソーシャルインパクトやソーシャルイノベーションという言葉が会場で時折聞かれる。
最初、「黒船」という刺激的な言葉に昨今のTPP談義もよぎり、一時は誤解したが、もっと純粋なモチベーションを全体から感じた
今回参加した学生は医学生もいれば、薬学生、看護学生もおり、工学系や経済学系の学生もいる。このような学生たちは元来、医療機関や公務員、或いは大企業を目指すことが王道である(だった?)時代に、興味が少しでも医療ベンチャーというコンセプトに向くのは、我が国にとって大きな救いなのだと感じた。
(略)

一昔前には就活なんてものもない医学生の生活などと言うものは浮世離れした学生の典型のようなもので、一般学部の同期があちらこちらの就職試験でかけずり回っているのを尻目に好き放題我が世の春を謳歌していたものでしたが、それもこれも受け入れる側の医療業界にも「しょせん学生の間に学べることなど知れている。本格的な教育は現場に出てから」という認識があったからかも知れません。
しかしこれだけ猫も杓子も医学部という時代になってくれば当然競争も激化するでしょうし、昔ながらのマイペースな学生生活では研修病院のマッチングも希望通りにいかない、まして類縁業種の歯学部などは昨今ワープア化著しく学生募集もままならないと言いますし、同じく難関をうたわれた弁護士ですら国が「いくら何でも増やしすぎだろJK」などと言い出すような時代ですから、学生にも危機感は出てくるでしょうね。
そういう時代の学生としておもしろいなと思うのは世間と広く交流するネット環境が当たり前の時代になったからでしょうか、昔ならせいぜいが自主的な勉強会だの他大学医学部との交流だので終わっていただろうところを、学部横断的にこんな企画を始める人々も出てきているということでしょうか。

興味深いのは一昔前であれば医学部に入って医療の制度そのものを変えると言う考えであれば、それこそ厚労省に入って医系技官になり地道に出世を目指すくらいしか道がなかったわけですが、今の学生達は良くも悪くも国というものの限界についてもシビアに見ているのでしょうか、民間で好き勝手に出来るのであれば何もそんな遠回りをする必要はないように感じているようです。
もちろん医療そのものは未だに非常に規制の強い領域ですが、ある意味でそれ以上に需要度が高まっている介護領域においては介護保険などで制度化された介護の本流から外れて境界線領域に属するサービス需要もかなり多そうだということは、先日紹介しました「二倍の値段でも売れる電気店」の裏サービスの充実ぶりなどからも伺えるところですよね。
もちろんそうした領域の需要をどう掘り出し、なおかつきちんと顧客が根付いて定常的な経営が行える状態にまで持っていくかということには大いに知恵を絞らなければなりませんが、今回の例でも挙げられているように今までなら何かと押し付け合いになりかねないような「負担」として捉えられがちだった介護領域ですら、一つのビジネスチャンスとして捉えようとしている医療系の学生がいるというのは非常に心強いことだと思います。
世間では医は仁術などとまるで医者が経営を考えることはケシカランかのように言ったり、一部の医療関係者にすらそれに同調するような風潮がありますけれども、彼らの大好きな赤ひげも金持ちから大金をふんだくって経営的安定を図っていたことにこそ着目すべきであって、聖職者さながらの献身によってしか成立しないシステムはどんなに素晴らしくても安定的供給は期待出来ないという現実を学生こそ真っ先に理解すべきなんでしょうね。

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コメント

地方国立ですが学生も二極化してきた感じですね。ほんとうに何しに来たのか?と思うような無気力草食系もいますよ。我々の頃はそういう連中も悪い遊び覚えて鍛えられていったものですが彼ら遊びも中途半端ですから。医者家業は肉食系でちょうどいいと思います。

投稿: GlobalHawk | 2013年3月25日 (月) 08時50分

ベンチャーがうまく軌道に乗りそうならさっそく国の規制がかかりそうな悪寒w

投稿: aaa | 2013年3月25日 (月) 09時28分

たしかに内部ではいろいろ言われていても堅調な仕事じゃありますよね。
でも法学部の不人気は医学部との競合よりも法科大学院の不調が影響大なんじゃないでしょうか?
法学部の中でも東大京大クラスを目指すような人が駅弁に進路替えするってちょっと考えにくいような。

投稿: ぽん太 | 2013年3月25日 (月) 10時49分

あまり具体名は出せませんが、東大含めた旧帝卒が学士入学として地方の医学部に再入学してくるというケースもあるようです。
当然それなりにしっかりした仕事についているのですが、それでも医師の方がいいのでしょうか。
彼らの医師としての適正はどうなのかはまだ判りませんが、昔よりも入学の経緯も卒後の進路でも間口は広がってきている気はします。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月25日 (月) 11時52分

でもセンター8割以下で医学部入られても嫌なんだけどね
定員増やしたんなら出来の悪いのはしっかり留年させて質を保ってほしいよ

投稿: teru | 2013年3月25日 (月) 14時01分

>横断幕には「Perry2013 医療界に黒船を来航させよ!」

なんつうか、おとなたちがTPPでやれ黒船だ黒船だと騒いでるのが馬鹿らしくなるね

投稿: | 2013年3月25日 (月) 16時38分

最近、K先生を初め、「医者を信用するな」「病院にかかれば無駄な検査と治療で早死にする」とかいう内容の本が大流行していますが、改めて、世間の医者に対する潜在意識が浮き彫りになった印象をうけます。
医療は、病気を恐れる人の心理につけ込んで、無意味な検査・治療をしてカネをふんだくるだけ。手術や投薬は大半の病気の予後改善に何ら貢献も寄与もしていない。というのは言い得て妙です。
「肉親に医者がいる」というのも、自慢どころかいずれ恥ずべき事で隠すべき事になるかもしれません。
「医学部に入っておけば後は何とか食っていける」「取り柄が何もないと思ったら医者にさせるのが一番よい」
まあずいぶんな言われようだことで(苦笑)。外来くらいなら誰でもできそうな仕事だと思われているのでしょうか?たしかにニセ医者が通用してしまうのですから、それが現実なんでしょうね。それだけ世間からは低レベルだと思われているのかと思うと非常に悲しいが、まあそう思われても仕方のないトンデモ医者が少なくない。
しかし今以上に志の低い医者ばかりが増えてしまうと崩壊に拍車がかかりそうな気がします。
受験勉強が人並み以上にできて、国家試験の問題がクリアできれば、誰でも医者にはなれちゃうのでしょうね。
特に医者として何がやりたいわけでもない。ただ給料がよくて食いっぱぐれがないから医者になるだけで。
ますます臨床現場では特別扱いを要求する患者側との意識解離が大きくなりそうで。
医者しか希望のある職業がないと思う人が多いのであれば、この国はもはや末期状態と言っていいでしょう。

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月26日 (火) 16時05分

>難関を極める首都圏、大都市の国公立医学部を避けて

避けないで(笑)、再受験で大都市の国立医に進みました。
ただし、文系ではなく早慶未満の私大理工系卒。
地方でも良かったんだけど、偏差値が上がったので受けたら受かった。
ずっと病院勤務の臨床医ですが、失業とかの生活の不安もなくやれてます。
仕事のやりがいというなら、国公立医卒の臨床医>私大理工系卒の理系職と今でも思ってます。

投稿: とある内科医 | 2013年3月26日 (火) 20時28分

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