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2013年3月22日 (金)

国策としての再生医療 まずは規制から開始?

前政権時代から医療を経済成長の原動力にという方針が示されていて、現政権でも基本的にその方針を継承する方向で進んでいるようなのですが、実際問題として日本の医療がどれだけ国外で勝負出来るかということが気になりますよね。
世界中の内視鏡史上で圧倒的なシェアを握ってきたオリンパスが先年あのような事態に陥ったことが記憶に新しいところですが、例えば市場拡大が続く製薬業界においても日本の製薬会社は世界的レベルで巨大化・寡占化が進む中で乗り遅れているような有様で、実に圧倒的な輸入超過が続いていることが知られています。
そんな中で久しぶりに光明が差す思いがしたのが先のiPS細胞研究のノーベル賞受賞などにも象徴される再生医療ブームで、このところ連日のようにあちらの領域、こちらの領域と再生医療による斬新かつ画期的なアイデアが報道されない日はないほどですが、そういう報道を眺めているだけでも「そんな使い道があったか!」と驚くようなものも多く、近い将来の医療が激変している可能性がありますよね。
患者側からしても自分の病気が再生医療ですっきり治ってしまうと胸躍る思いで待っているはずですが、日本の場合まずは規制のためのルール作りから話が始まるというのはお約束というもので、現在厚労省内では再生医療実施の具体的ルールを定める法案の議論が進んでいるそうです。

再生医療行う医療機関に損保加入求める案も-厚労省専門委で委員(2013年3月19日CBニュース)

 厚生労働省は19日、「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」に、iPS細胞などの細胞を用いた「再生医療・細胞治療」を臨床研究や自由診療として行う医療機関に対し、こうした医療の持つリスクに対する無過失補償を求めるべきかどうかについて、議論を求めた。委員からは、補償を不要とする意見はなく、制度を国がつくるよう求める声や、制度が整備されるまでは民間の損害保険への加入を求めるべきとの案が出た。

 厚労省は、安全な「再生医療・細胞治療」を推進するため、こうした医療を行う医療機関に届け出などを求める法案を今国会に提出する方針。専門委では、この仕組みについて議論している。
 同省は会合で、こうした医療に特有のリスクに対する無過失補償を考慮する必要があると指摘した。これに対し、今村定臣委員(日本医師会常任理事)は、「こういう医療は、国策として進めようということが前提」と述べ、国による補償制度を主張。大和雅之委員(東京女子医科大教授)は賛同した上で、制度ができるまでには時間がかかるとして、それまでの間は、臨床研究の実施施設の多くが現在行っているように、民間保険による補償制度を利用する案を示した。

 このほか厚労省は、安全性確保のための施策として、「再生医療」をうたって客観的に効果を証明できない治療を自由診療で行う医療機関などを、医療法に基づいて是正する考えを示した。

 同省が示している法整備の枠組みの案では、「再生医療・細胞治療」で投与する細胞の加工段階などで生じるリスクと、それを用いた医療の新規性などによるリスクから、厚生科学審議会などが総合的なリスクを分類。それに応じた3パターンの手続きを、医療機関に求める
 人体への投与実績がないなど「高リスク」の場合は、全国の地域ブロックごとなどに設置する「地域倫理審査委員会」と厚労相の了承・承認を求め、「中リスク」の場合には、地域倫理審査委員会の了承を得た上で厚労相に届け出を要請する。「低リスク」の場合でも、施設内に外部の委員を含む倫理審査委員会を設置し、その了承を得た上で厚労相に届け出させる。

 また、すべてのリスク分類で、実施後に定期的な報告や重大な有害事象の報告を義務付け、その内容や届け出ている医療機関のリスト、薬事承認を受けたもの、治験中のもの、先進医療などの評価療養の対象になったものなどを公表し、「再生医療・細胞治療」の安全性・有効性のデータを収集しつつ、国民への周知を図る。【佐藤貴彦】

この法規制の範囲をどこまでにするかもまた議論が続いているところで、今年年頭の同委員会ではiPS細胞などに限らず脂肪幹細胞を用いた豊胸手術なども厚労省案として名前を挙げられている一方で、細胞を使わないレーシックなどは(機能的な)臓器再生であっても対象外にしようという話が出ているようですが、再生医療の議論としては妥当でも医療安全としてはまた別問題かも知れませんね。
ただ一般論として医療に限らず科学技術というものは今までにないというアイデアの新規性を尊ぶものですから、「これとこれは規制の対象」と挙げていったところでいずれ必ずその範囲からはみ出したケースが出てきて、さてどうしたものかと判断に迷うということが起こりがちで、例えば細胞を用いた体外式の人工臓器などは透析などと同じことで再生医療に当たるのかどうかといった話にもなりますよね。
また自由診療に関しては保険診療と言う制約から自由であることから再生医療に限らず元々どうやって規制を行っていくべきかは難しいところがあって、例えばイギリスでレメディーなどという砂糖玉を高値で売りつけるホメオパシーなる似非医療を保険診療に取り込んだのも、人の命に関わるような病気にホメオパスが関与することを規制するためという側面があったようです。
ともかく規制ということに関して言えばなかなか難しい側面がある、しかし一方で再生医療は患者側の要求度が極めて高いことからも国策推進の上からも積極的に推し進めていかなければならないものだとなれば、安全性が必ずしも担保出来ないかも知れないという前提で保険を用意しておけとはそれなりに正しい考え方だと思いますね。

ただ実際に保険を用意すると言えば誰がそれを用意するかという点が問題で、例えば先日金融庁が検討中という話が出た不妊治療に対する民間保険をという話にしても、そもそもこういう保険に加入する人は不妊治療を望んでいるはずなのだから保険として成立するはずがないというもっともな指摘があったわけです。
さすがに委員会においてもその点は問題になったようで、最終的には国がきちんと保険システムを用意するべきだというもっともな話が出たようですが、今でさえTPPとの絡みで金持ちだけがどんどんいい医療を受けられる時代になると一部の方々から盛んに喧伝されている中で、国が(すなわち全国民が負担して)一部の人々のために贅沢な医療の補助をする必要があるのかという声も出るかも知れませんね。
日本の場合は基本的に皆保険制度で安く医療を受けられることもあって、海外で一般的に行われているように治療費免除と引き替えに治験に参加してもらうというやり方が非常に不活発ですけれども、この際特に「高リスク」治療などは原則大部分を公費でまかなうようにする、そのかわり患者選定に際しては移植コーディネーターなどと同様公平に状態に応じて決めるといった方法が望ましいのかも知れません。
いずれにしても何しろ今後の医療を徹底的に変えてしまう可能性があるほどの巨大な改革のチャンスなのですから、いつものように国内では規制規制で何も出来なくなっているうちに海外がどんどん先に行ってしまい発祥国のくせに技術の逆輸入をせざるを得なくなるような目に遭わないようにしてもらいたいし、そのためには何か問題は起こるのは判っているという前提の元で話を進めていくしかないかと思いますね。

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コメント

>同省は会合で、こうした医療に特有のリスクに対する無過失補償を考慮する必要があると指摘した。

再生医療に限らずいっそすべての医療行為に保険を義務づけるくらいでもいいと思いますが。
この厚労省の言い方じゃ再生医療特有のリスク以外はどうでもいいように聞こえちゃいますよ。

投稿: ぽん太 | 2013年3月22日 (金) 09時29分

再生医療の無過失補償に関しては、民間保険で十分成立すると思います。
国による補償制度を作る必要などないはずです。
ただ国内の保険会社にリスクをきちんと計算する能力や意欲があるかどうかは はなはだ疑問ですので、国による音頭取りも必要なのでしょう。
TPPの発効まで手を拱ねいていたら外資の保険会社がどっと参入してきますよ、たぶん。

投稿: JSJ | 2013年3月22日 (金) 10時04分

再生医療まがいの詐欺商売が流行る悪寒ww

投稿: aaa | 2013年3月22日 (金) 10時23分

一般に保険診療では予防投薬は認められていませんが、リスクある処置に際して予防的な投薬を行わない医師はまずいないと思います。
ところがリスクがあると判りきっているのに、予防的に保険をかけておかないというのでは整合性がとれないと思いますね。
国であれ民間であれ保険の主体はどこでもいいのですが、例えば国主導の補償体制が成立していないからという理由で医療行為そのものを認めないというのは勘弁してもらいたいです。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月22日 (金) 11時21分

再生医療に関しても日本人は技術・根気・努力に関しては世界トップレベルだと思いますが、ビジネスマネージメントや交渉になると世界最低レベルなので、おそらく日本が開発した技術も米国、中国などの企業に易々と乗っ取られてしまうんでしょうね。
厚労省を初めとした今の日本で行われている保険医療は規制が多すぎて、世界的にみれば時代遅れも甚だしい。
治療の選択肢が殆どないうえに、皆保険をムダ使いして有益性の乏しい無駄な高齢者の延命治療ばかりしている
市場開放によってこういう世界的に非常識極まりない部分が大幅に改善される事を期待したいですが。

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月22日 (金) 12時18分

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