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2013年3月21日 (木)

OTC薬推進はいいとして

管理人はOTC薬推進派に近い立場ですが、先日日経メディカルの「記者の眼」というコーナーにこういう記事が出ていました。

「OTC薬を保険でカバー」はトンデモ理論か?(2013年3月19日日経メディカル)

 花粉の飛散が真っ盛り。毎年この時期になると、私はかかりつけの診療所に花粉症の薬をもらいに行く。しかし今年は、待望のスイッチ一般用医薬品(OTC薬)「アレグラFX」が登場したので、町中の薬局に花粉症対策の薬を買いに行くことにした。

 自宅近くの薬局で目当てのアレグラFXを見つけたが、店頭価格は28錠(14日分)で1980円(税込)。私は最低でも1カ月ほど服用するので、28日分であれば3960円になる。うーん、やっぱり高いなあ。診療所で医療用医薬品のアレグラを処方してもらった場合、院内処方であれば自己負担額は2300円、院外処方でも2600円くらい(3割負担)なので、診療所で処方してもらう方が安い(細かい計算は割愛、以下同)。
(略)

“保険外し”の議論ばっかりだけど
 常々言われているけど、OTC薬は高い。医師の診察が必要ないのだから安いはずだと思って薬局に行くと、いつも裏切られる。当然ながら、医療保険が使えるかどうかはとても大きい。「ロキソニンS」にしても、「タイレノールA」にしても、診療所で処方してもらった方が自己負担額は安くなるのである。最近、OTC薬化で一悶着あったエパデールも、診療所で先発品を処方してもらっても月々3000円くらいの負担で済ませられるが、OTC薬のエパデールは果たしてそんなに安くなるだろうか。

 OTC薬は、その価格の高さが普及の課題になっている。矢野経済研究所の調査や富士経済の調査を見れば、ここ数年OTC薬市場の規模はここ数年ほとんど変わっていない。医療費に占める薬剤費が伸びているのとは対照的だ(医療費に占める薬剤費の割合は、包括医療費分などがあるため正確には公表されていないが、大幅に増加しているとの見方が多い。例1、例2、例3[データ集の中の「卸医薬品販売額に占める医療用・一般用医薬品の割合の年次別推移」]、など)。

 こうした実態は当然ながら厚生労働省も把握しているのに、状況は変わらない。「患者が薬局でセルフメディケーションを」と、厚労省はOTC薬を推進する姿勢を見せるが、実際には単にポーズを取っているだけではないかと疑ってしまう。本気でセルフメディケーションを推進するのであれば、思い切った政策を導入する必要があると思う。

 もちろんそうした動きもないわけではない。2012年の診療報酬改定では、単なる栄養補給目的でのビタミン剤投与が保険の対象外となった。これは行政刷新会議が2009年11月に事業仕分けで、ビタミン剤など市販薬類似品について、「自己負担割合の引き上げを試行すべき」「一部医療保険の対象から外すことも検討する」などと提言したのを受けたものだ。軽微な疾患については、診察料はともかく薬剤料を保険外併用療養費にしてしまえば、患者は薬局でOTC薬などを買うようになるか何もしなくなり、見かけ上の医療費は減る。

 でも、このような“保険外し”は大局的に見て、患者の利便性を損なう方向じゃないかと思う。社会保障審議会医療保険部会でも、この提言に対して「患者に過度な負担を強いるべきではない」という意見が出された。また、上記の方針が広がればメーカーも医療用医薬品と同効薬のOTC薬を出してしまうと自分の首を締めることになるので、「新規成分の市販品の開発を躊躇する可能性がある」といった問題点も指摘されている。

OTCの薬剤説明も立派な医療行為
 であれば、いっそのことOTC薬にも医療保険を使えるようにしてしまうのはどうだろうか。薬剤師が販売しなければならないOTC薬の「第一類医薬品」に限ってでいいから。別に7割給付でなく5割給付でもいい。薬局でOTC薬を買った方が安いということになれば、患者も真剣にセルフメディケーションを考えるだろう。診療所を受診した方が自己負担額が安く済むというのは、どう考えても公正性に欠ける。

 「そんなことをすれば医療費がますます増加して本末転倒」という考えが頭をよぎったが、そうでもないかも。さっきのアレグラの例で計算してみると、OTC薬の自己負担割合を3割にすれば医療費の総額は3960円で自己負担額は1290円。診療所にかかれば医療費の総額は7600円で自己負担額は2280円。自己負担額は約1000円安くなり、医療費総額では約3600円も少なくなっている。給付の割合やOTCの価格などをきちんと調整すれば、医療費の増加も防げるような気がする。こういう単純なレセプトなら、国保連や支払基金などでの審査コストもそんなにかからないだろうし。

 一類医薬品で、というのには理由がある。薬局で一類医薬品を販売する際、薬剤師が文書を用いて口頭で説明するよう薬事法で定められているのは周知の通りだが(その遵守率が55.2%と低いことは置いといて)、これは健康保険法で保険の対象とされる「療養の給付」に該当しないのだろうかと、私は常々疑問に思っているからだ。医療者である薬剤師がそのスキルを発揮して患者に薬剤の説明を行うことは純然たる医療行為のはずで、その下で販売される薬が保険でカバーされないのは不思議にさえ思う。やってることは保険調剤の場合とどう違うのだろう。

 ついでに言えば、こうした薬剤師の説明業務に対して、「OTC薬情報提供料」のような調剤報酬が付いていない。保険外なので当然だけども、要するに薬剤師はタダ働きさせられているわけだ。実際、今回薬局で私は薬剤師からいろいろな抗アレルギー薬の情報を提供してもらった。しかし結局、薬は買わずじまいになったので、タダ働きをさせたことになる。あの時の薬剤師さん、ごめんなさい。

 でも、「薬剤師の説明はタダじゃない」という意識を持つ患者は少ないし、説明への対価がオモテに出ず、販売管理費と一緒になってOTC薬の差益に含まれている現状では、誰もそう思わないんじゃないか。
(略)

記者氏は診療所の打撃になることからOTC薬への部分的な保険適用は実現が難しいだろうとしながらも、薬剤師会はセルフメディケーション推進を掲げているのだから悪い話ではないだろう?と書いていますけれども、記者氏も危惧しているようにネット販売が拡大され薬剤師対面販売が有名無実化すればこのアイデアも立ち消えになる可能性はありますね。
一応記者氏のアイデアに沿って考えて見るならば、例えば実店舗店頭で薬剤師に対面で説明を受けた場合には管理料なりを算定すると共に一部なりとも保険が使えるようにする、これによってネット販売よりも安く買えるということになれば薬剤師会としても既存店舗に顔が立つということにならないでしょうか。
もちろん医師会としては地域の開業医の大きな収入源となっている風邪などちょっとしたcommon diseaseの患者を薬局に盗られる、もとい、取られることに抵抗感はあるでしょうが、基本的には医師は患者が多すぎて多忙で困っているというスタンスは医師会も認めているわけですから反対する理由としては(少なくとも表向きには)掲げにくいはずです。
もちろん保険給付をする以上は無制限な使い方は許容されるべきではなくて、きちんと各薬局や医療機関で通し検索で処方歴をチェックしていくためのシステムを構築して安全確保をするべきでしょうし、例えば併用禁忌などの場合は薬剤師の責任として売らないということにしておかなければ困ったことになるでしょうね。

記者氏のアイデアはそれとして、今回の記事を見ていて違和感を抱いたのはOTC薬が割高につくという問題意識はそれとして、その理由として花粉症というある程度長期的に治療が必要な慢性(に準じる)疾患に対して各種OTC薬を併用しなければならないからだと言っていることです。
個人的な考え方としてOTC薬は何らかの事情で病院にかかれないような人たちの当座の利便性のために売られているというのがまず基本であって、長期に使わなければならないほど症状が続く(すなわち、OTC薬が効かない)ような場合には素直に病院に行ってきちんと診断してもらいなさいという位置づけだと思っていますから、漫然と長期間使っていればOTC薬は高くつくことは安全弁として一定の意味を持っていると思っています。
もちろん毎年起こって診断もまず間違いないだろう鼻炎症状に対しても今やOTC薬が登場したくらいですから必ずしもこうした原則が正しいということでもないでしょうが、OTC薬の一番あってはならない問題として漫然と痛み止めを飲み続けた、あるいは胃薬を飲み続けた結果思いがけず重大な疾患が見逃されてしまったということが挙げられているのですから、単純に患者利便性を錦の御旗にするわけにもいきませんよね。
仮に保険適用を検討するのであればまず長期使用しても問題がないような薬に限定するか、あるいは期間を限るといった何らかの安全弁を設けておかなければ医師会のみならず臨床医からも反対意見が出るでしょうし、下手をすると何も考えずに薬を売るだけだったと後日薬剤師が患者や家族から訴えられると言う可能性も出てくると思います。

そうしたリスクは承知の上でそれでもOTC薬は原則推進していくべきだと考える理由としては、やはりOTC薬が用いられるような症状が極めてありふれていて全員が病院に押しかけられるとさすがに厳しくなっている、そして実際のところ大部分は大きな病気の前駆症状というわけでもなく薬で症状を抑えていれば済む程度の方々であるということがあります。
このあたりはリスクと利益をどうバランスさせていくか難しいところですが、医師会に限らず近年の日本社会はどんな小さなリスクも許容してはならないし、それをスルーすることで後日非常にレアな問題が起こった場合には「何と言う怠惰!二度とこのような悲劇を繰り返さないようにしなければ!」とばかりに過剰反応してしまう「ゼロリスク症候群」の気があるようです。
今時自動車事故が起こるからといって自動車は完全に禁止すべきだと主張する人はいませんが、それでも年々自動車の物理的安全性は改良を続けられ死傷者数は減っている、そして万一不幸な事故が起こっても公平な基準によってまずまず妥当な補償を受け取れるという現状を多くの日本人が自然と受け入れているように、何かが一定確立で起こることを前提としたシステムが必ずしも我々に合わないものでもないはずですよね。
医療事故の賠償金などが自動車事故などと比べて割高だったり、算定基準が不明確であるといった指摘が以前からありましたけれども、そろそろ医療の世界も「絶対に事故は起こってはならない」という不毛な建前論から一歩進んで、いずれどこかで何かは起きるということを前提にした方向へ制度と意識を早急に改革していくべきじゃないかと思いますね。

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コメント

勤務医にとっては外来患者が減るのと余計なトラブルで患者が担ぎ込まれてくるのとどっちがいいかってことでしょう。
セルフのガソリンスタンドも慣れてしまえば定着したみたいなものでOTCも自然と落ち着くところに落ち着くんじゃないですか。

ところで医師が処方した薬で副作用が起こっても「なんか風邪のときもらった白い薬」なんて記憶しかない患者さん多いですからこっちも対処に困るんですね。
自分で買って失敗した市販薬だとたいてい薬の名前も覚えてるからやりやすいって印象があります。
患者さんも長年飲んでる薬の名前と何の薬かくらいは覚えてて欲しいです。

投稿: ぽん太 | 2013年3月21日 (木) 08時42分

ドラッグストアの薬高いですよね!湿布なんて病院でもらったらタダ同然なのにぼったくりすぎ!なにがデフレだよって感じです!

投稿: あらき | 2013年3月21日 (木) 09時25分

高いと言うよりむしろそちらが適正価格で、七割公費負担になる病院の薬が安すぎるんだと思います。
ただ日本の製薬業界の利益率が高すぎるという批判は昔からあって、その一方で世界的に見れば日本の製薬会社はいわば中小企業ばかりで体力が弱いとも言われていますから、どこまで保険で優遇?すべきか難しいところですね。
ただ先日ドラッグストアに行きますとご多分に漏れず安い品もずいぶんと入って来ているようですから、これまたいずれはありきたりな薬は外国製ばかりということになるのかも知れませんが。

投稿: 管理人nobu | 2013年3月21日 (木) 10時53分

前回も書きましたが、インターネットというインフラ上に構築されているネット販売のほうが、健康保険適用という点でも有利だと私は思います。
健康保険情報で処方歴の通し検索なんてお手の物でしょう。
あえて好意的に表現しても玉石混交としか言えない対面販売による情報提供などを保険適用の理由にする必要はないと思います。

今、思いついたのですが、トリインフルエンザのパンデミックに備える意味でも保険適用薬をネット販売するシステムを作っておいたらよいのではないかしらん。

投稿: JSJ | 2013年3月21日 (木) 11時16分

>トリインフルエンザのパンデミックに備える意味でも保険適用薬をネット販売するシステムを作っておいたらよいのではないかしらん。

たしかに…若い元気な患者さんなら病院来ないで家でおとなしく寝てろと言いたくなることも多いですからな。
ただ即応性という点で通販にはいささか難点がありますから、本気で行うなら各地域にストックを用意する等々のやり方が良いのやも知れず。
各社共通でストックを用意するなら在庫もそう気にはならんのじゃないかと思うのですが、まずは国がそこまで危機感を抱けるかどうかですな。

投稿: 藪 | 2013年3月21日 (木) 11時29分

そもそも日本の場合、大方の開業医がシーズンで感冒やら花粉症で患者を集めまくって、薬を出しまくって薄利多売で大きな収入を得ていて、またその恩恵を大手製薬会社が受けているという現実がありますね。
既得権益を死守するのは我が国では当然でしょう。それが「医療村」ですから。
今回OTCが発売された花粉症の薬も元の体力の強い欧州の外資系の会社とは違う国内会社からの発売ですので、常識的に考えて、医療機関の処方薬より安くなることは絶対にあり得ません。そんな事をしたら花粉症シーズンのかき入れ時に耳鼻科や内科の患者が激減してしまいますからね。そんな事を医師会や製薬会社が許すはずがないでしょうね。もし許してしまったら国際問題にも発展しかねない大騒ぎになるはずです。
そもそも風邪や花粉症でわざわざ医療機関を受診して、貴重な時間を無駄にする意味がどこにあるのか?と思います。QOLを低下させているだけではないかと。

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月21日 (木) 12時54分

だったらせめて勤務医は風邪くらいで病院来るなと主張してみたら?と思っちゃうんですが
だって開業医と違って患者が多いからって給料上がるってものでもないんでしょ?

投稿: take | 2013年3月21日 (木) 13時18分

今はそう公言してる勤務医もいますよ?ただ全国区で取り上げられることが少ないだけで

投稿: 鳥頭 | 2013年3月21日 (木) 15時02分

今の我が国で風邪や花粉症程度で受診するなと正直に公言してまえば、
日本では患者側からも医療側からも袋だたきで村八分必至です。なぜならそれで皆さん自己満足してるから。
誤解を恐れずに言えば、時間のムダ。医療側も患者側も自慰行為と何ら変わらない。
医療機関に行けば安心。そこで薬をもらえば安心。患者が来れば安心。それが日本の常識。
長年の慣習を覆すのは無医村にでもならないかぎり難しい。ただし医療機関で処方されようが、OTCを購入しようが、効果や副作用のリスクは全く変わらない。効率性を考えれば、OTCを利用する流れにすべきですし、薬価もせめて同等でなければおかしいでしょうね。薄利多売で多忙なほとんどの医療機関で効果と副作用について十分な説明ができているとも思えませんので。まああと10年もすれば引退開業医が続出すると思うので、流れが変わることを期待したいです。

投稿: 逃散前科者 | 2013年3月21日 (木) 17時06分

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