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2013年2月22日 (金)

弁護士の巨額横領事件 業界にも大きな影響が?

先日も弁護士業界のモラルハザードという問題を取り上げたところですが、被害の額があまりに巨大だとして昨今大いに話題になっているのがこちらの事件です。

7億3200万円を着服=横領罪で弁護士を追起訴—岡山地検 (2013年2月8日ウォールストリートジャーナル)

 民事訴訟の損害賠償金など計約7億3200万円を着服したとして、岡山地検は8日、業務上横領罪で岡山弁護士会所属の弁護士福川律美容疑者=同罪などで起訴=を追起訴した。地検によると、容疑を認めているという。

 起訴状によると、福川容疑者は交通事故訴訟や医療過誤訴訟などの代理人として、2003年1月から12年11月までの間に支払われた計16件の損害賠償金など計約7億3200万円を依頼人に渡さず、着服したとされる。

 福川容疑者は既に、別の交通事故訴訟の損害賠償金計約1億3200万円を着服したとして、業務上横領罪で起訴されており、横領総額は8億円を超えた。 [時事通信社]

着手金受け取り提訴せず放置 岡山・横領事件の弁護士(2013年2月19日山陽新聞)

 民事訴訟をめぐる巨額横領事件で、岡山弁護士会の弁護士福川律美被告(65)=岡山市東区西大寺松崎、業務上横領罪などで起訴=が交通事故の訴訟を被害者に持ち掛けながら、着手金を受け取ったまま長年放置していたことが18日、関係者への取材で分かった。

 岡山弁護士会には、「福川被告に訴訟の着手金を払ったが、いつまでも裁判が始まらない」といった相談が数件あった。岡山地検も同様被害を把握しており、交通事故・医療過誤訴訟の賠償金や、刑事事件の保釈金とは別の着服手口が明らかになったことで、被害はさらに拡大しそうだ。

 関係者によると、岡山市の男性は2009年10月、交通事故でけがをした母親が加害者に5千万円の損害賠償を求める訴訟を起こすよう福川被告に促され、着手金の内金20万円を支払った。10年12月にも正式な着手金として250万円、11年秋にも切手・印紙代として20万円を渡した。

 男性は、早く提訴するよう再三申し入れたが、福川被告は「書類を精査している」「12年1月に始める」と引き延ばし、3年たっても始まらなかった。一方で11年、加害者側の保険会社から、母親の後遺障害補償金200万円を福川被告の銀行口座に振り込ませ着服したという。

単に賠償金を横領したといったケースであれば後日補いがつく可能性がありますが、訴訟を依頼し着手金も払ったのにいつまで経っても訴訟が始まらないのでは、場合によっては時効等で回復しようのない不利益を被ることになる可能性もありますよね。
ただこれだけですと規模は大きいとは言えよくある専門職の不祥事の一つに過ぎないとも言え、いずれにせよ今後の裁判なりの行方を待ってきちんと責任を取っていただくしかないかなという話なのですが、あまりに被害が巨大かつ広範囲に及ぶということから被害者の会が設立されたというところから少し話の風向きが変わってきます。
今後は民事訴訟等を通じて横領されたお金を取り返していくことになるはずですが、当然これだけのお金を取り込んでいるような人がそうそう全額を賠償できるほど金満なはずもなく、そうなりますと民事訴訟の大原則に従って「取りやすいところから取る」ということになりますよね。

弁護士横領で被害者の会設立へ 岡山弁護士会の提訴も検討(2013年2月21日山陽新聞)

 岡山弁護士会の弁護士福川律美被告(65)=業務上横領罪などで起訴=による巨額横領事件で、賠償金などが未払いのままになっている依頼人らが「被害者の会」の設立を予定している。3月6日に岡山市内で開く初会合で被害の実態を把握。今後、岡山弁護士会の責任追及についても検討する。

 昨年12月の事件発覚後、弁護士による横領事件などの被害者を支援する「日本弁護士被害者連絡会」(京都市、市井信彦会長)に複数の依頼人が連絡。「被害者数や被害額がまれに見る多さで、救済のための組織的な活動が必要」(市井会長)と判断したという。

 岡山弁護士会によると、福川被告に関しては「訴訟の相手からの賠償金が支払われない」「着手金を払っても訴訟が始まらない」といった相談がこの10年で68件寄せられている。会合では被害者数や未払い金の額などを整理するほか、苦情を把握していた岡山弁護士会の対応も検証。被害弁済の道筋が見えないことから、弁護士会に対する損害賠償請求訴訟が可能かも検討する。

 初会合は岡山県内外の依頼人7組が参加予定。市井会長は「事情を聴いた上で、今後の方針を考えたい」と話している。

この件に関して岡山弁護士会の会見の様子なども見ていますと、今のところは福川弁護士個人の問題であって弁護士会としては関知しないという考えであるようなんですが、実際に弁護士会に対しても責任が問われるような事態になってくるようですと裁判の行方が非常に注目されることになるでしょうね。
例えば日常診療に従事している医師が患者との間に何かしらトラブルが発生した際に「医師会に訴えてやるからな!」なんてことを言われた経験は少なからずあると思いますが、これに対しては医師会という組織は単なる任意加入団体であり何ら強制力もない、特に勤務医ともなれば多くはそもそも医師会に加入すらしていないこともあって「は?それが何か?」で終わる程度の話ですよね。
ところが弁護士会という組織は弁護士法に基づき日本の法制度の中にがっちり組み込まれている公的組織であって、弁護士活動を行うためには全員加入していなければならない強制加入団体でもありますから、単なる業界利権団体の域を出ず近頃は行政からもスルーされがちな医師会などとは全く性質を異にするものだと言えます。
特に日本の場合は弁護士自治という考え方に基づいて弁護士会が各弁護士の懲戒権限を握っているということが特徴となっていて、裏を返せば何か会員が問題を起こしても裁判あるいは行政処分が出るまでは何とも…などと言葉を濁していられる医師会などと違って、自ら判断し主体的に行動する社会的責任を負っているということでもありますよね。

実際に弁護士会にも以前から苦情が多数舞い込んでいたとのことで、被害の存在を知っていながら放置していたとなれば一般常識で考えても管理責任は問われることになるでしょうから、当事者による被害弁済が進まないようであればいずれ弁護士会がその肩代わりを求められることになるでしょう。
今回は金額があまりに巨大ということで被害者の会まで設立されましたが、例えばこのケースで弁護士会が最終責任を負うという判例が出れば今後同種の事件が起こった際にも同様に弁護士会が責任を問われることも増えるでしょうから、同会としては新たにこうした会員不祥事に対するリスクマネージメントを迫られることになりそうですね。
その場合例えば弁護士会から後日当該弁護士に改めて損害賠償請求を起こしたとしても勝ったところでお金が得られるとも思えず、最終的には普段から保険料的に訴訟向けの費用も上乗せして会員から徴収していく形になると思うのですが、今でさえあまりに高すぎて「金持ちしか弁護士になれない」などと言われる会費がさらに高騰することが業界にどのような影響を与えることになるのかと心配せざるを得ません。

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コメント

弁護士会やる気なさすぎだろjk・・・
http://mainichi.jp/area/okayama/news/20130221ddlk33040508000c.html
 2人は弁護士会に対し、「被害救済に動いてほしい」と要望する。医療裁判の男性は「弁護士会の対応センターに電話すれば、話は聞いてもらえるけれど、それだけ」と不満を漏らした。北区の男性も「トラブルの多い弁護士と知っていれば、依頼しなかった。弁護士会に相談や苦情が届いていたのになぜ、放置していたのか」と憤っている。

 岡山弁護士会は昨年12月、所属弁護士や有識者ら8人で構成する検証委員会を設けた。10年間で68件もの相談を受けながら発覚が遅れた点を重視し、引き継ぎが適切だったかなどを検証。再発防止のための仕組みを4月までに提言する。

 一方、被害について「弁護士会に法的な責任はない」という立場だ。岡山弁護士会の火矢悦治会長は「弁護士には弁護士自治が認められ、守秘義務もある。弁護士会には個々の業務に介入する権限はなく、監督責任も抽象的な意味にとどまる」と説明する。

投稿: | 2013年2月22日 (金) 09時37分

被害総額は大したものですがこんなすぐばれるようなお粗末で刹那的な犯罪は弁護士道不覚悟ですよねえw。弁護士たるもの、法の眼を掻い潜って悪辣に、しかし表向きはあくまでも合法的に大金を搾取し、なおかつ被害者は被害を自覚してない、くらいでないとファンは納得しませんw!

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年2月22日 (金) 09時48分

マスコミも医療叩きがネタバレして失敗するわ安倍さんの支持率も下がらないわで仕方ないから今度は弁護士叩きに方針転換したのでは?アメリカみたいに弁護士=悪ってことにしたいのかな?

投稿: たぬき | 2013年2月22日 (金) 10時20分

個人的には弁護士ジョークは結構好きなんですが、実際にこういう目で見られていたのでは彼の地の弁護士も仕事がやりにくくて仕方ないでしょうね(苦笑)。
http://yellow.ribbon.to/~joke/lawyer.html
興味深いのはあれだけ弁護士をあしざまに扱ったジョークがあふれているのにも関わらず、実際には国民の大部分は弁護士の仕事に満足しているということです。
では悪徳弁護士というイメージがどこから来たのかということなんですが、日本で未だに「白い巨塔」が医師のイメージの代名詞であるように、あちらでもテレビや映画を通じて弁護士のイメージが形作られたのでは?という指摘もあるようですね。
http://www.fps.chuo-u.ac.jp/~cyberian/lawyerjokes.html

投稿: 管理人nobu | 2013年2月22日 (金) 11時12分

患者がもし訴えるのであれば、地方の厚生局とか各種学会のほうが効果があるかもね。
そもそも医師会って何のメリットがあってあんな馬鹿高いカネ払って加入してるのかわからない。

投稿: 逃散前科者 | 2013年2月22日 (金) 14時05分

日本医師会長を目指すなら会費など高くもないはずw

投稿: aaa | 2013年2月22日 (金) 14時21分

まともに診療に従事してる開業医なら、地元の医師会の理事くらいならまだしも、大阪府医師会や日本医師会の幹部職なんてやってる暇がありません。
あーゆーのは、息子に仕事をとられて、政治ごっこをしたい暇爺医のやることかと。

まあ、日医の幹部はさらに「病院経営者」であり、人を雇って診療をさせている立場の人たちばかりですけどね。

投稿: | 2013年2月23日 (土) 12時27分

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