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2013年2月25日 (月)

生保受給者のパチンコに密告を奨励!?

昨今では不正受給等の諸問題が一般マスコミにおいても非常に大きく取り上げられるようになったのが生活保護に関連する話題ですが、先日公になって大きな反響を呼んでいるのが兵庫県の一自治体が打ち出したこちらの条例案です。

生活保護費でパチンコはダメ 兵庫・小野市が独自条例案(2013年2月22日日本経済新聞)

 兵庫県小野市が、生活保護費や児童扶養手当を、パチンコなどで生活が維持できなくなるまで浪費することを禁止する条例案を27日から始まる市議会に提案する方針であることが22日、分かった。

 小野市によると、条例案は受給者の責務として「パチンコ、競輪、競馬などに費消し、生活が維持できなくなる事態を招いてはならない」と具体的に明記。市民が不正受給や浪費を見つけた場合、速やかな情報提供を求めている。不正は警察官OBが調査し、改善を目指すという。罰則はないが、改善されなければ最終的には支給を止める

 条例化の意図について同市の松野和彦市民福祉部長は「社会保障制度は国民全体で支えられていることを市民に知ってもらうため」と説明。厚生労働省は「生活保護などの適正受給を目指した条例は他に聞いたことがない」としている。

 小野市は人口約5万人。生活保護は約120世帯に約2億9千万円を支出し、増加傾向にあるという。

 厚労省によると、生活保護費の受給者は、車の所有や、保護費を借金の返済に充てることが制限されているが、ギャンブルなどの浪費について明確な規定はない。〔共同〕

この生活保護費で酒やギャンブル三昧という生活がよいことなのかどうかは様々な意見もあるようですが、小野市公式HPにも生活保護の趣旨として「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること」を目的とすると明記してあるように、最終的にそれが自立を助長することにつながるかどうかも判断基準になるかとも思います。
生保にいったんはまり込んでしまうと働くのが馬鹿らしい、働くことに何のメリットも見いだせないという心境に陥りがちだそうですから、やはり給付は現物支給を中心に金銭的支援は最低限に抑え、その代わりに例えば自治体の指定する軽作業等に従事すれば追加支給するなりすれば、地域のちょっとした雑用なども片付くし受給者にとっても働くということに対して身体を慣らす役にも立つように思いますね。
いずれにしてもこのパチンコ問題は以前から生保受給者の実態を知る人々には周知の事実であったことは確かで、例えば(控えめに表現すれば)比較的リベラルな立場での報道をしていることで知られるあの八重山毎日新聞にすらこんな過去には記事が掲載されていたということに少しばかり驚きを感じます。

何のための生活保護費か「パチンコ遊興」に批判広がる(2010年10月23日八重山毎日新聞)

抜き打ち調査でもっと増える?

 石垣市内で生活保護を受けている受給者の一部でパチンコ店に出入りしている実態が明らかになった。9月の支給日に受給者11人がパチンコ店で遊興していたことが、市福祉総務課の実態調査で発覚したもの。市民からは「何のための生活保護か」と不満の声が上がるなど波紋が広がっている。(比嘉盛友記者)

 同課は9月上旬、パチンコ店3店舗にケースワーカー7人が立ち入り調査を実施したところ、受給者11人を確認した。同課は誓約書を書かせるなど、支給停止も辞さない強い態度で指導した。
 報道後、パチンコ店に通う読者からは「受給日から数日間は受給者とみられる人が多くなる」との情報が寄せられた。市議会の委員会審査で今回の件をただした小底嗣洋市議は「抜き打ちに調査すれば、もっと出てくるのではないか」との見方を示す。

 生活保護は、生活に困窮する国民に対し健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を促すことを目的とした制度。国が4分の3、市町村が4分の1を負担しており、石垣市では本年度で約12億円の支給が見込まれている。
 生活保護法60条は受給者の義務として「常に能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない」とうたっている

 保護費をパチンコなどの遊興に使うことについて厚生労働省社会援護局保護課保護係は「程度の問題はあるが、制度の趣旨から考えるとギャンブルに消費することは適切ではない」との見解だ。小底市議も「言語道断だ。何のための保護費か。今回の件は(使い道の)範囲を超えている」と指摘する。
 今回の不適切な消費は一部かもしれないが、不正受給という印象を与えかねず、受給者全体のイメージを損ねてしまうおそれがある。

 美崎町で飲食店を営む女性(60)は「私は昼も夜も働いているが、生活はギリギリ。パチンコをやっている人が本当に(保護費が)必要なのか」と不信感を募らせ、「もらえるのだったら、私だってもらいたいよ」と怒り心頭だ。
 中山義隆市長は「ごく一部かもしれないが、その他の受給者にとっては迷惑な話。制度自体に疑念を抱かせることにつながる」と懸念を示し、「担当課では年内にはもう一度、調査することにしている」と説明。
 小底市議は「市民の血税が使われており、市民に申し訳がたたない。市は支給している以上、抜き打ちで巡回するなど、責任をもって厳しく調査、指導すべきだ」と訴えている。

ところでこうした話が出てきますと必ず出てくるのが、生活保護費を受給した場合に受給者の自己決定権がどの程度あるのかということですが、過去にも生活保護費を切り詰め幾らかの貯蓄をしたところその一部が収入認定され保護費が減額された「加藤事件」では、「かつ一般国民の感情からして違和感を覚える程度の高額でない限りは、これを収入認定せず、保有させることが相当」という司法判断が示されています。
あるいは保護費の一部を高校進学のため積み立てていた学資保険の満期金が収入認定された「中嶋事件」では最高裁まで争われましたが、ほとんどの者が高校に進学している状況なども挙げて学資保険は収入認定の対象となる資産に当たらないと最終的な判断が下されています。
これらからするとまずもって大多数の人々が行っている行為、所有している物品などで明らかな贅沢品でないということであれば受給者の自己決定権の範囲であり使途は原則自由であるという解釈になるようですが、元々国民の一部のみが利用するものである上に近年急速に参加人口が減少しているパチンコという明らかなギャンブルがその範疇に含まれるかどうかは非常に微妙なところだと思いますね。
いずれにしても受給者の自立に結びつくものなのかどうかという観点で考えて見れば、世の中にパチプロとして食っていけている人とパチンコで大きな借金を背負い込む羽目になった人の比率がどの程度であるかということが一つの目安になるのかなという気がします。

一方で近年相変わらず取り上げられているのが生保受給の申請自体を受け付けないという「門前払い」の問題ですが、先日もこの門前払いを行っていたとして埼玉県の自治体に賠償命令が出たように公式にはやってはならないことだと認識されているにも関わらず、相変わらず現場でそれが続いている背景には生保受給認定のシステムの問題もあるようです。
一体に窓口では申請を受けてからでは記載内容を確認する程度のことしか出来ないことになっていて、要するにひとたび書類に必要事項が全て記入されて提出されてしまうと嘘でも書いてない限り却下することが難しいということなんですが、一方でその内容を確認するだけの手段や人員には事欠くというのですから受給者の増加を抑制するためには仕方なかった側面もあったのでしょう。
その点で以前にも紹介したように「まず食料品の現物支給で当座の生活を保証し、金銭支給は厳密な調査の後で」という和歌山県は上冨田町の方式などは保護率が周辺自治体の半分で済んでいることでも判る通り、不正受給を防ぎ全体の公的支出を減らす上でも非常に有効かつ現実的なやり方なのですから是非全国各地に広がってもらいたいやり方だと思いますね。
ともかく今までの生保という制度が様々な問題を抱えているという点ではどんな立場に立つ人々も共通認識を持っているようですから、各地の自治体で試験的に行われている各種制度をきちんと評価した上で、有効と認められた方法があればより大々的に取り入れていくというステップバイステップのやり方がいいんじゃないかと言う気がします。

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コメント

密告社会キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!ww

投稿: aaa | 2013年2月25日 (月) 09時24分

素朴な市民感情としてはあまりまえだとは思うんですが反対派の声も相当なものでしょうねこれは。
それにパチンコ禁止じゃなくパチンコで生活できなくなるほど浪費するのを禁止じゃ運用上判断が難しいのでは?
これじゃ警察OBの再雇用先確保のための条例だって言われかねないです。

投稿: ぽん太 | 2013年2月25日 (月) 09時51分

大阪だけじゃなく釧路も大変らしい。こうなるともうまともな財政には戻れないわな。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFC2100Z_S3A220C1L41000/
釧路市の生活保護費が急増し、2012年度は総額150億円に迫る見通しとなった。地域経済の疲弊を
背景に受給者が1万人を突破。12月補正でも予算が底を突き、リーマン・ショック時以来という2月補
正での積み増しを余儀なくされた。このままのペースが続けば13年度は150億円を超えるのは確実。増え続ける保護費が財政圧迫要因の一つとなりそうだ。

投稿: あかりさん | 2013年2月25日 (月) 10時13分

生保に限らず長年日本の社会保障は原理原則と言うのでしょうか、あまりに総論にこだわりすぎて各論が放置されてきた、その結果議論はすれどまとまらず結局総論もそのままで歪みが蓄積されている印象があります。
今後は個別にあれは駄目なことだからやめさせよう、これはいけないから禁止しようという地道な対策を行って、そこからボトムアップで全般的政策に反映させていくやり方もありだと思いますね。
まずは自治体レベルでお試しにやってみてくれると言うのですから、全国各地でどんどんアイデアを出して実行してみればいいと思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月25日 (月) 11時39分

2011年04月29日 記事No.19992鈴木謙介 34歳 男性 社会学者

生活保護についてはたぶん反発する人の方が多いし、その気持ちはとてもよく分かるのだけど、いちおう教科書的な反論をしておくと
生活保護っていうのは、働きもしない怠け者を食わせるためにあるのではなくて、そういう人たちを食えないままに放っておくと、強盗を働いたり、病気しても治療できないから伝染病が蔓延したり、そういう社会全体のデメリットになるから実施されているという面もあります。
なので、その人がどういう態度で生きているかと関係なく、収入のない人が申請してきたらもれなく払うという仕組みになっている。
まあ、実際には「クーラーなんて生活保護の身分でぜいたくだ、って言われてクーラーを外された生活保護の高齢者が熱中症で亡くなった」なんて話もあるので、もれなくというわけでもないのだけど。
でも、そうやって「つつましやかに、生活保護を受けていることを申し訳なく思う人には払ってやっても良い」みたいなテストをすることを、ミーンズテストというのだけど、こういうことをしだすと、「なまけもの」扱いされるような人から生活保護を外されることになる。
そういう人たちを世の中から閉め出して、たとえば軽犯罪でどんどん刑務所に入れる、とかしないかぎり、生活を保護したくもない人が、社会にあふれてくることになる。まあ、いまのアメリカの一部の刑務所とか、もう人が満員らしいんだけど。
一方でイギリスなんかだと、就職に向けてがんばってます、とか、そういう活動をしていることを条件に社会保障を支給する仕組みなんかもある。オニオンの場合だと、絵の学校に行くとか、個展を開くとかかなあ。

投稿: | 2013年2月25日 (月) 12時22分

>そういう人たちを食えないままに放っておくと、強盗を働いたり、病気しても治療できないから伝染病が蔓延したり、そういう社会全体のデメリットになるから実施されている

ナマポは過剰に保護されたまま生涯世間に迷惑を与え続けるが犯罪者なら刑務所に入れて公然と権利を抑制できるからね。
社会に対して害にしかならない少数をそれでも養わなきゃならないというなら犯罪者として隔離しとくべきだな。

投稿: アキレス | 2013年2月25日 (月) 14時32分

>ナマポは過剰に保護されたまま生涯世間に迷惑を与え続けるが犯罪者なら刑務所に入れて公然と権利を抑制できるからね。
>社会に対して害にしかならない少数をそれでも養わなきゃならないというなら犯罪者として隔離しとくべきだな。
かえってコスト高くつきそうだし、善良な人間にとっても快適そうな社会ではありませんね。

投稿: JSJ | 2013年2月25日 (月) 16時12分

おもしろそうなので調べて見ましたが:

受刑者1人当たりの年間予算は約248万円
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1013443030

生活保護1人当たりの年間支給額は約174万円
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7#.E6.A6.82.E8.A6.81

それぞれ内訳も違うでしょうが平均なら生保の方が安上がり?


投稿: てんてん | 2013年2月25日 (月) 16時23分

実はこの社会学者がいちばん生保バカにしてる気がするけどこういうのが一般的な学説なの?

投稿: イワン | 2013年2月25日 (月) 19時29分

八重山毎日は偏向がひどすぎる八重山日報が百倍まとも

投稿: | 2013年2月25日 (月) 21時29分

小野市のことはこの記事に詳しいが必ずしも受給の厳格化ってことでもないらしいですな

http://www.j-cast.com/2013/02/25166876.html?p=all

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年2月25日 (月) 22時00分

>またこうした義務指針を公にすることで、『小野市の生活保護受給者は不正をするような人たちではない』と知らしめたかった

(皮肉じゃなく)このフレーズは使えますね。「いつもトイレを綺麗にご利用いただきありがとうございます」みたいな?

投稿: てんてん | 2013年2月26日 (火) 09時06分

こっちのほうが問題

中国人に詐取される日本の国民健康保険…モラルなんてメじゃない“やりたい放題”
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130224/dms1302242121008-n1.htm

投稿: | 2013年2月26日 (火) 11時26分

生活保護受給者って、パチンコをしたら99%以上の確率で収入申告しないといけないというのを理解されていないのでしょうか?
そういう生活保護のルールを生活保護受給者が皆守らないのであれば、パチンコ禁止にされてもしょうがないと思います。

投稿: クマ | 2013年2月26日 (火) 18時28分

その場合は勝った分を申告?
十万突っ込んで一万勝ったら十万の支出は単なる浪費で一万の収入分だけ支給減らされるの?

投稿: たま | 2013年2月26日 (火) 19時31分

たまさまへ
先日の競馬の脱税裁判と仕組みは同じです。
出た玉の数=売り上げ
セーフ穴などに入り、玉を出すのに役に立った玉=経費
役に立たなかった玉=浪費
で、売り上げから経費を引いたものが収入になります。
その収入が合法的なものかどうかは関係ありません。

裁判の結果、外れ馬券も経費と認められた場合は話が変わると思います。

投稿: クマ | 2013年2月26日 (火) 20時45分

どうもです
するとトータル大赤字でも玉さえ出てれば収入認定されちゃうのか
けっきょく儲かるのはパチ屋だけなんだな

投稿: たま | 2013年2月26日 (火) 21時56分

たまさまへ
現実としては、それをカウントするのが非常に困難なのでスルーされています。
先日の競馬の裁判は、その記録がすべて残っていたので税務署が動いたのですけれど、同じソフトを生活保護受給者が使っていた場合、調査されたら大変なことになると思います。

投稿: クマ | 2013年2月26日 (火) 22時32分

するとわざわざ条例をつくらなくてもきちんと収入認定をするだけでいいってことですね。て言うよりパチンコをする人は全員確定申告が必要になる??

投稿: ぽん太 | 2013年2月27日 (水) 09時07分

ちょっと疑問なんですがパチンコは競馬と違ってお金じゃなく景品出してるだけですよね
この場合は物品も収入に認定されるのかどうかで話が違うんじゃ?

投稿: かまってちゃん | 2013年2月27日 (水) 12時21分

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