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2013年2月 7日 (木)

怪しげな似非科学を毎日が助長?!

報じたメディアがメディアだけに今さら驚くというほどでもないかも知れませんが、先日毎日新聞の関連サイトでこんな記事が掲載されちょっとした話題になっています。
ちなみに話題になっている純銀イオン水についてはこちらのサイトに写真入りで紹介されていますので、ご参照いただければその永続的な効果が明確に確認いただけるかと思います。

毎日新聞のサイトが「純銀イオン水」や疑似科学「水からの伝言」紹介で炎上(2013年1月30日ガジェット通信)

毎日新聞社のグループ企業・毎日新聞デジタルが編集している美容・健康に関する情報サイト『毎日キレイ』で1月16日に「13年に注目したい水3種」と題して、海外で深刻な健康被害が報告されている純銀イオン水など3種類の水や疑似科学の代表例として知られる「水からの伝言」を肯定的に紹介していたことが問題になっています。

執筆者として「内山真季」の署名が入ったこの記事ではミネラル炭酸水・水素水・純銀イオン水の3種類を取り上げており、ミネラル炭酸水は「胃腸の調子をととのえ、ダイエット効果も期待できるほか、血行を促進するといわれています」、水素水は「活性水素を水に溶かしたものでエージングケア効果に着目されています。体内で活性酸素と結びつき体外へと排出するので、活性酸素が遠因となるさまざまな病気についても改善が認められるそう」、そして純銀イオン水は「食品添加物として認められている銀が微量に溶け出した水のこと。消臭・除菌効果があり、しかも飲んで安全」としていますが、いずれも然るべき研究機関や論文などの提示はありません。それどころか、最後に紹介した純銀イオン水に至っては銀沈着症により皮膚が青ざめた色へ変色する深刻な健康被害が報告されており、有効な治療法も確立されていないことを理由にアメリカ合衆国食品医薬局(FDA)が水やサプリメントへの銀や銀化合物の添加を禁止するなど、明らかに記事中で宣伝されているような美容・健康志向とは対極の存在です。

しかも、記事の締めくくりでは疑似科学の代表例としてゲーム脳やEM菌と並んで名前が挙がることの多い「水からの伝言」について、以下のように肯定的な形で紹介しています。

    書籍「水からの伝言」(江本勝著)やドキュメンタリー映画「WATER ウォーター」(ロシア)で話題になりましたが、最近の研究では「水は情報を伝え る」ことが明らかになっています。愛や感謝を伝えた水を瞬間冷凍すると、たいへん美しい結晶となるのです。ですから、水を飲むときに「ありがとう」と感謝 してみましょう。“体が喜ぶ水”を飲みながら、水資源に心から感謝する。これが13年の正しい水との“おつきあい”です。

問題の記事に対しては『Twitter』でツッコミが続出する炎上状態となり、また編集部に対してクレームが数多く寄せられたためか27日までにサイト内から記事が削除されましたが、どうしてこのような深刻な健康被害をもたらす危険性が高い疑似科学を肯定的に紹介する記事が掲載されたのかについては記事執筆時点の29日現在も『毎日キレイ』のサイト上で読者に対する説明は行われていません

いわゆる代替医療を初めとして似非科学の問題は医療の世界にも決して影響無しとしないことは当ぐり研でもたびたび取り上げて来た通りで、以前にもホメオパシーに傾倒する助産師によってビタミンK製剤を投与されず新生児が亡くなったという不幸な事例がありましたけれども、ホメオパシー先進国?と目される英国を始めすでに文明世界ではこうしたものはまともな学術的対象としては扱われてはいません
ちなみに下村文科相が紹介したことでも知られるように同じ手法を応用して被災地福島で放射能除去を行うと主張している方がいらっしゃるということなんですが、どうもこの人物に関しては現地でも様々な噂が飛び交っているようで、やはりこうしたものは結局商売が絡んでくるものであるという共通項があるのでしょうか。
いずれにしても新聞、テレビといったマスコミがこうした似非科学と親和性が高いのは今に始まったことではなく、彼らに言わせると医師は守秘義務があって口が重いから使いにくいが、助産師などは顔出しで話もうまいので使いやすい、そして協力してもらう以上はあまり厳しいことも言いづらいという事情もあるようで、当然そうした偏ったソースに日常的に接している業界人も同じ考えに染まり更なる広報活動の連鎖が広がっていくわけです。
この結果「しかし先生!これはあのみ○も○たが言っていたことなんですよ?!」と主張する患者を説得するのに担当医が苦労したり、怪しげな健康法を真に受けて実践してみた結果思いも付かない健康被害を受けたといった症例が地方会ネタになっていたりするもので、今や似非科学そのものよりもマスコミの取り上げ方にこそ問題があるという言い方も出来るかも知れませんね。

医師限定アンケート 健康情報に関するテレビ番組の反響について(2013年1月25日産経ニュース)

医師専門サイトMedPeer(メドピア)に登録する医師(5.5万人以上)を対象に「健康情報に関するテレビ番組放送後の反響」について質問をしたところ、2,979件の回答が寄せられた。
反響が「少しある(過去に数件、思い当たる)」という回答は51.5%、「ある(日常的に感じる)」は37.6%で、約9割の医師が日常の診療の中で健康番組の影響を実感しているという結果となった。
健康情報番組の影響は大きく、テレビ番組で見聞きした情報を確認する質問や、過剰に反応する患者さんの対応に苦慮するという意見が多い。「翌日の外来では、この話題で持ちきり(40代、循環器内科)」「間違った認識もあり説明が大変です。(30代、産婦人科)」というコメントがみられた。「内容確認のため、自分自身でも見るようにしている(60代、神経内科)」という声もある。
特に反響が大きかった例として、生活習慣病、認知症、更年期、花粉症、健康食品などが挙げられた。健康情報番組以外に、有名人の症例や発言の影響力も無視できない。「正しい情報よりも「不必要な恐れ」「過度な期待」を惹起しているという印象を受ける(40代、精神科)」といったコメントも目立つ。
もちろんメディア情報による啓蒙というメリットも大きい。「『ためしてガッテン』で禁煙の特集があったあとは、禁煙外来に患者さんが増えました(30代、呼吸器内科)」という例もみられた。
(略)

リンク先の元記事には生のコメントが多数抜粋されていますけれども、無論真面目な医療情報で患者啓蒙の一助を担っているという肯定的評価もある一方で、「極めて稀なケースを取り上げて、あたかも全例に当てはまるかのように報道する」「一般的な症状から、非常にまれな重症疾患だけを連想させるような報道の仕方はどうか」といった否定的な意見も少なからずあることは否定出来ません。
怪しげな健康法や代替医療など似非科学的なものにひっかかるタイプの方々にほぼ共通する特性として、誰が言い出したことなのか知りませんが「西洋医学は症状を緩和するが、病気そのものは治せない」という妙な幻想を強固にお持ちの方が多いようで、それが転じて「この○○式健康法は症状を緩和するのではなく身体の性質を改善し病気の根本原因を絶つのです!」などという意味不明の説明に頷いてしまうのかなという印象を受けています。
そもそも全世界的に行われている応用化学の一分野としての現代医学をその誕生母地が西洋に多くを依存しているからと主張するのであれば、純然たる経験医学の一大体系である漢方などはともかくホメオパシーを初めとする似非医学大系の大部分もまた西洋似非医学と呼ばなければならないはずですが、ともかくも何故か西洋医学は対症療法であり代替医療こそ病気そのものを治すものだと言う発想は明らかな間違いです。
科学の一分野としての医学には解剖学や生理学、そして病理学や薬学と言った様々なジャンル分けがありますが、これこそまさに医学が身体の仕組みを解明し病気の成り立ちそのものを明らかにした上で根本治療を行なおうとしていることの証明であって、残念ながら未だ根治が行えず対症的治療に留まる場合でも可能な限り何故効果があるのかという仕組みを解き明かしながら治療を選択しているということですね。
そもそも新薬一つ当てれば巨額の収益が挙がることから世界中の製薬会社が鵜の目鷹の目で新薬開発競争を行っている中で、そんなに目に見えた効果のあるものであればとっくに調べられ臨床応用できないかと検討されているのが普通ですから、200年もの歴史(苦笑)を誇りながら何ら有効性が確認できなかったホメオパシーなどはまず間違いなくそこらの砂糖玉を舐めている程度の効果しかないと言うことでしょう。

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コメント

詐欺師あるいは単なる金儲けが目的の輩と本物の似非科学者を混同してはならない。
そして似非科学が本当に似非なのかは後世の検証を待たなければ確定できない。
だからこそ本物の似非科学者の扱いは難しい。

投稿: 立花 | 2013年2月 7日 (木) 09時18分

>愛や感謝を伝えた水を瞬間冷凍すると、たいへん美しい結晶となるのです。

身体にいいではなく美しいという主観的な評価なのがうまいですねこの人。
水に感謝したって有害であるはずもないからうそをついてるわけではないし。
毎日の記者さんはつっこまれないよう意識しながら記事を書いたんでしょうね。

投稿: ぽん太 | 2013年2月 7日 (木) 09時48分

うそはうそであると見抜ける人でないと(新聞やテレビは)難しい。ってことですね。

投稿: JSJ | 2013年2月 7日 (木) 09時59分

立花さん
本物の似非科学者の定義と混同してはいけない理由を、差し支えなければ教えて頂けますか?

投稿: JSJ | 2013年2月 7日 (木) 10時00分

当時は異端とされたガリレオの地動説が実は正しかったからと言って、異端の説を唱える者すべてがガリレオになれるわけではないという有名な言葉がありますな
科学の世界は閉ざされているわけではないが一定の書式はあって、まともな再現性もない実験やそれを説明づけるきちんとした理論も用意しないで既存理論に反することを言うだけでは相手にされないのも当然かと
将棋や囲碁の画期的な新定石を見つけたいならまずゲームのルールくらいはちゃんと理解してからにしろってことですな

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年2月 7日 (木) 10時57分

>うそはうそであると見抜ける人でないと(新聞やテレビは)難しい。

座布団一枚!
ただ彼らは人を騙すフィクションのプロフェッショナルでもありますから、情弱な旧世代の方々がうっかり引っかかったからといって直ちに馬鹿扱いされるのもかわいそうにも思いますね。
子供の時からテレビの言うことはまず嘘であると考え情報は裏を取る、ソースに直接当たって見るという作業を繰り返していけば、いずれある程度まともな判断力を備えた人間も増えていくんじゃないかと期待したいです。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月 7日 (木) 11時43分

ありゃ、解りにくい文章ですね。推敲が足りませんでした。↑
訂正です。
「本物の似非科学者」の定義と、詐欺師や金儲け目的と混同してはいけない理由を、差し支えなければ教えて頂けますか?

投稿: JSJ | 2013年2月 7日 (木) 11時46分

夜更けに眠い目をこすりながらボスの期待通りのデータを出す作業を延々繰り返していた院生時代はつまらないうっかりミスで二日がかりでやった作業を台無しにしたことも何度かありましたっけ。
泣きそうになりながら一人で片付けしてるとつい「もしかしたら失敗じゃなくて誰も考えもしてなかった予想外の現象を見つけてたのかも」なんて妄想抱いちゃうんですよね。
そんな妄想からいつまでも覚めないままで突っ走っちゃったらトンデモと言われちゃうのかなって思います。

投稿: ナーガ | 2013年2月 7日 (木) 11時55分

本物の似非科学者と偽りのそれとの違いは似非科学の追求を目的とするか手段とするかの違いとも言える。
それゆえ科学の素人ではあっても社会常識によってある程度これらの区別は可能となる。
だが本物の似非科学者と単なる誤った科学者との区別は科学的知識をもってしてもしばしば困難である。
だからこそ本物の似非科学者の与える社会的悪影響は単なる偽りの似非科学者の比ではない。
かの偉大なるライナスポーリングとは似非科学者であったか否か?

投稿: 立花 | 2013年2月 7日 (木) 13時52分

立花さん、ありがとうございました。

ただ私にはやはり、立花さんの言う「本物の似非科学者」がよくわからないです。
どんなトンデモ理論の持ち主であろうと、その証明と検証が科学の作法に則っている限り科学者を名乗ってよいと考えているので。

投稿: JSJ | 2013年2月 7日 (木) 15時48分

>どんなトンデモ理論の持ち主であろうと、その証明と検証が科学の作法に則っている限り科学者を名乗ってよいと考えているので。

そこは大変に重要かつ難しいところでしょう。
ただし方法論が作法に従っていれば科学者という定義は一般常識に照らし合わせてやや理解されがたいかと。

個人的にはある程度首肯できる、というより他に確実な代案がない消極的賛同といったところですが。

投稿: 柊 | 2013年2月 7日 (木) 16時00分

「首相夫人も絶賛」とか付け加えれば完璧だったのに。

投稿: 名無子 | 2013年2月 7日 (木) 19時33分

エセの定義も案外難しいんですね
創造論なんて神がそういうふうに創られたのだって言えばなんでもありだし

投稿: ken | 2013年2月 7日 (木) 22時52分

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