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2013年2月12日 (火)

新専門医制度 素案煮詰まる

断続的に報じられている専門医制度改革の問題は、先日も取り上げましたように大枠のスケジュールが決まったところですが、それに合わせて厚労省の最終案がほぼまとまってきたということです。

専門医:第三者機関が認定…厚労省最終案(2013年02月06日毎日新聞)

 学会ごとの認定で質のばらつきがあった「専門医」について、厚生労働省の有識者検討会は6日、20年度から第三者機関が統一して認定することを柱とした最終報告書の素案をまとめた。在宅医療と高度な診療の橋渡しをする「総合診療医」も専門医に位置づけ、患者の高齢化に対応。専門医の養成施設を地域ごとに指定し、診療科の偏在解消も目指す。【井崎憲】

 従来は各学会が研修や試験をクリアした医師を専門医と認定してきた。素案では、来年度に新たな第三者機関を設立し、認定や養成プログラムの基準を学会の協力を得ながら作り、診療領域ごとに定員も設定する。
 さらに外科や小児科など18の専門医と総合診療医を「基本領域専門医」とし、臓器や疾患別に細分化された高度な領域の専門医とは別に分類した。医師は基本領域の一分野で専門医になったうえで、高度な領域の専門医へ進む2段階方式となる。
 総合診療医は、高齢化でニーズの増える在宅医療や頻度の高い症状に対応し、従来の診療所等の「かかりつけ医」より、他の専門医と柔軟に連携する。

 欧米で専門医の適正配置の仕組みがあるのに、日本は診療科と勤務地は自由に選べ、地域によって救急や産科医師が足りない。第三者機関は専門医が不足している地域の医療機関を養成施設に指定し、偏在解消を図る
 新制度の研修は17年度から始め、既存資格の扱いは、第三者機関で移行基準を決める

 学会ごとの専門医認定制度は1950〜60年代に始まった。厚労省が広告を許可する専門医だけで55種類で「患者に分かりづらい」との指摘があり、日本学術会議が08年、根本的に見直した制度を10年以内に確立するよう求めていた。
 医療・介護の問題に詳しい東京財団の三原岳(たかし)研究員は「患者目線で前さばきする総合診療医は多くの病気に対処できるし、必要な時は適切な領域の専門医を紹介するので、重複の検査・投薬も避けることができ、結果的に医療費も下がる」と話している。
(略)

まあ結果的に医療費が下がるかどうかはともかくとしても、専門医なるものを各学会が次から次へと認定していくことでその実態も力量も判りにくいという批判はあったわけですから、いずれにしてもそろそろ抜本的な改革が求められている時期ではあったと思います。
特に注目していただきたい点としては現状の問題テントして「欧米で専門医の適正配置の仕組みがあるのに、日本は診療科と勤務地は自由に選べ」るという点を挙げ、新専門医制度によって「専門医が不足している地域の医療機関を養成施設に指定し、偏在解消を図る」とされている点で、すでにあった御礼奉公的な専門医取得システムが公的な制度として固定化され政策的に活用されていくということですよね。
すでに専門医の分布や研修状況に関するデータベース構築も始まっているということでやる気満々ですが、もちろんこれだけでは義務ばかりでメリットがない制度ともなりかねないですから、今のところは新専門医資格の有無によって診療報酬に格差がつけられるのでは?という予測がなされているようです。
また新専門医制度においては基本的に「専門領域は一医師一領域であるべきだし、複数領域を容易に取得・維持できるような難易度であってもいけない」とされてい るようですが、そうなりますと例えば今までのように全科当直などということが専門外であることを理由にして成立しがたいものになり現場が立ちゆかなくなる とは、今までの議論の中でも出てきていたわけですね。
ただ現実問題として新制度下では専門医資格の取得・維持が今よりも一段も二段も厳しいものになっていくと言うのであれば、専門医の分布も今後ますます認定施設に偏ってくることも予想されますから、何らの認定施設に認定しない中小医療機関に取っては医師確保と診療報酬格差のダブルパンチでいよいよ統廃合の危機を迎えるということになっていくのでしょうか。

もう一つ、新専門医制度移行で注目されるのが既存の専門医資格の扱いがどうなるのかと言うことですが、恐らく乱立する旧専門医資格に関しては必ずしも質的担保も為されていない以上そのまま新制度に100%引き継ぎという可能性も低く、仮に引き継ぎがなければ旧資格をそのまま続けるのかということも議論の対象になってきます。
特に未だに根強くあるのが旧専門医資格をそのまま移行措置で新専門医として認定するのはどうか、いっそ移行措置など認めない方がよいのではないかという意見ですが、現状では麻酔科など一部を除いて単なる名誉資格の域を出ていない専門医資格が診療報酬など実利的な側面を持つようにもなれば、移行措置の有無によって現場に大混乱が発生する可能性も出てきます。
先日厚労省から出た素案においては移行措置について「なし崩し的にならないよう、第三者機関において適切な移行基準を作成することが必要」であり、「各学会認定専門医の更新のタイミング等に合わせて、移行基準を満たす者から順次移行を可能とすることが適当」だと言っていますが、逆に言えば基準を満たさなければ移行は認めないと読めますね。

おそらくは厳しい新専門医の移行・認定基準を到底満たすことが出来ない「なんちゃって専門医」は全国に数多く存在するはずですし、特に認定施設から離れた開業医をその支持母体とする日医などはこの点に敏感に反応しないではいられないかと思うのですが、興味深いことに日医による素案の修正案を見ると専門医更新に一定の手術件数など厳しいハードルを設けることはそのまま受け入れているようです。
また前述の移行措置にハードルを高く設定することに関しても「なし崩し的にならないよう」の一文を削除することでこれまた受け入れているようなのですが、そうなりますと各種専門医資格を大量喪失していくことになるだろう会員に対して日医がどのように顔向けをするつもりなのかと他人事ながら心配になってきますよね。
一方で専門医の認定を行う主体について厚労省素案では単に「学会から独立した中立的な第三者機関が学会との密接な連携の下で行うべき」とされていたものを「各学会、日本医学会、日本医師会との密接な連携の下で」と書き改めており、なるほど組織としての利権をここで確保しているのだなとよく判る話ではないでしょうか。
日医としては例の生涯教育などを専門医更新の要件にするなど新専門医制度下で構造的に日医の役割を拡大していきたい腹づもりのようですが、組織としてはそれでよしとしても末端会員として受け入れられるものなのかどうか、ここでもかねて非民主的な組織運営が指摘されている日医の利権団体としての適格性が問われそうにも思います。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

専門医の維持を厳しくして診療報酬にも格差をつけられちゃ爺医発狂でしょう
おそらく移行期間とやらで向こう何十年かは現状維持と思われ

投稿: kan | 2013年2月12日 (火) 08時51分

ちょうど端境期にあたる今の研修医、レジデントがいちばん悩ましいんじゃないですか。
はやく認定施設や研修期間は確定してもらいたいでしょうね。

投稿: ぽん太 | 2013年2月12日 (火) 09時59分

旧専門医資格をどうするのか、例えば自称資格としては存続を認めるのかどうかで学会そのものの存続にも関わりそうなのですけどね。
そして第三者機関なるもののメンバーがどのような顔ぶれになってくるのかも問題で、またぞろ患者目線云々の理屈で市民代表と称するプロの方々でも入って来た日には大変な騒ぎになりかねません。
仮に診療報酬などに差が付かないで呼称だけの問題となった場合、むしろ業界団体として認定する旧資格の方が格が上ということになることもあり得るかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月12日 (火) 11時29分

現行の学会専門医の撤廃など言語同断。むしろ資格が何もなくても診療科を看板にして診療していることのほうが問題でしょうね。
新専門医制度により従来の専門医が苦労して取得した資格を失うなど、現役医師のモチベを低下させるだけ。
また診療科によって資格取得の難易度に天地の差がある。
ある診療科ではマークシートの易しいテストのみの試験でほとんどの受験者が合格
ある診療科では難しいテストの後で、教授3人の監視下での臨床診察実技がある
それを十把一絡げのごとく「学会専門医乱立で意味なし」みたいに言うのはどうかと。
だいたい第三者機関って何者ですか?そんな素人集団に専門医資格を認定する権利があるのかと。

投稿: 逃散前科者 | 2013年2月12日 (火) 15時30分

取得の条件を厳しくするまではともかくとして、維持までも難しくしてしまうと大変なことになりそうな悪寒
専門医は専門的に特化した特定の施設にだけいればいいと考えているのかも知れないが、今ある認定施設の固定化に他ならんでしょう
駆け込みで施設認定を得ようとして専門医指導医の引き抜き合戦が起こるかも知れんですな

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年2月12日 (火) 16時42分

今現在、日本専門医制評価・認定機構で専門医資格と認定されるものに対しては、旧専門医から移行。
それ以外の専門医は全部チャラのほうが良いのでは?

■加盟学会の会員数及び専門医数等の一覧表
http://www.japan-senmon-i.jp/data/index.html

投稿: とある内科医 | 2013年2月12日 (火) 16時56分

新制度への移行問題、結論は次回に  厚労省・専門医検討会

 厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」(座長=髙久史麿・日本医学会長)は6日、最終報告書の年度内取りまとめに向けて、
厚労省が提示した「報告書素案」に基づき議論した。現在、各学会が認定している既存の専門医資格を、新専門医制度の資格として
移行できるかどうかや、移行の開始時期については、賛否両論が出て決着せず、結論は次回会合に持ち越した。

桐野高明構成員(国立病院機構理事長)は「極端に、それ以前は認めないという考え方もある」とし、「すっきりしておいた方がいい」と
移行措置は必要ないとの考えを示した。門田守人構成員(がん研究会有明病院長)は「新しい制度(が始まる)よりも前に移行措置が来るのは
国民に分かりにくい」とし、新しい制度が始まることが強調されるようにすべきとした。小森貴構成員(小森耳鼻咽喉科医院長)も
移行措置には反対した。

MEDIFAX

投稿: | 2013年2月12日 (火) 17時11分

ほんとに移行措置なしにしちゃったら大騒ぎだけど、騒ぎになってないとこみるとありなんだろうな…

投稿: 籔 | 2013年2月12日 (火) 19時11分

旧専門医を全ちゃらじゃぁ、日本の歴史上、初めて専門医制度設立とおなじでしょう。

投稿: とある内科医 | 2013年2月13日 (水) 18時51分

感じとしちゃ専門医を有効期間限定みたいな風にしたいのかも
合格したら◯年間は有効です、引き続き必要ならまた取得してくださいみたいな
知識のアップデートを保証するにはいいかもしれないけど

投稿: 蘭々 | 2013年2月13日 (水) 19時16分

そうするなら勤務医の給与は上げてほしいですね
日本の医師は給料が安すぎます

投稿: anonymous | 2013年2月14日 (木) 00時02分

旧専門医資格をチャラにされて憤慨する人は、資格商法に騙されて憤慨する人と同じだと気付くべきです。
旧資格をチャラにする人に対して憤るよりも、資格商品を売りつけた人に対して憤るべきだと思いますよ。

投稿: | 2013年2月15日 (金) 09時58分

試験経由で専門医資格をとって、定期的に更新し続けて、すでに日本専門医機構で専門医として認定されているものも新制度導入時にチャラにするのは問題ではという意味ですよ。
専門医機構で専門医認定されているものは、緩い、やや厳しめと違いはありますが、定期的な更新制をとっているから。

資格商法とかそういうことではありません。

投稿: とある内科医 | 2013年2月15日 (金) 11時34分

Vol.41 心臓外科医600人の専門医資格を剥奪
http://medg.jp/mt/2013/02/vol41-600.html#more
09年からは資格を取得してから5年を経過 した専門医に対して、資格を更新するための実績を積んでいるかどうかを審査している。この結果、昨年の審査で13人の専門医について、専門医資格の更新を しないことを決め、その資格を剥奪した。さらに今年、25人が専門医の資格を失う見通しとなった。これによって、この5年間に資格を剥奪された専門医は 600人を越え、608人となることがわかった。

外科系は厳しいなあ・・・・内視鏡学会もこんな感じになっちゃうんだろうか

投稿: 某内科医 | 2013年2月15日 (金) 12時08分

日本は心臓外科医が多すぎるって言われてたんじゃ?もっと数を減らして一人当たりたくさん手術させろとかなんとか

投稿: アキラ | 2013年2月15日 (金) 13時42分

症例数の少ない病院、患者需要の少ない地域の病院から心臓血管外科専門医が去っていくわけで。

地方の病院の、大学病院の整理統合が始まる。

もちろん、専門医だけでなく、後期研修医も来なくなるわけで。

結果、地方で一県一心臓外科施設もあり得るわ。

ショボい大学病院心臓外科教室もなくなってしまう。

都市部でも同じ。

投稿: とある内科医 | 2013年2月15日 (金) 15時40分

結局は個々の医師の腕がすべてではないのでは?
「資格があるならば必ず有能な医師である」は真ですか?
逆に「有能な医師ならば必ず専門医資格を有する」は真ですか?
従来の専門医がちゃらにされるされないによってその人の能力が上下するわけではないのだから、単に医師としての極めて表面的な看板が変わるだけであると、今後の制度改正を捉えるほうが妥当だと思いますが。

投稿: しろうと | 2013年3月 9日 (土) 15時43分

確かに正論だし「理屈」はその通り。
でも医師も人だし、
人って結構エモーショナルな部分でこそ動くものでは?
だから「単なる」肩書きってのも無視できないような気が…

投稿: 上の方 | 2013年3月10日 (日) 11時42分

>「資格があるならば必ず有能な医師である」は真ですか?
>逆に「有能な医師ならば必ず専門医資格を有する」は真ですか?

個々の医師に専門的な診療を行えるだけの標準以上のスキルがあることを示すのが専門医資格。
患者が医師を選ぶため、病院が医師を採用し継続的に勤務させるため、の指標。
”自称”専門医ではなく、診療実績やスキルを定期的に見直すという(大抵は5年ごと)、お墨付きということ。
海外の先進国の専門医制度を日本でも導入なのだが、今回の日本の新制度はアメリカ型を猿真似。
カナダや英国やオーストラリアは専門医学会の試験を経て認定されるので、米国型とは異なる。
欧州大陸の国専門医資格認定も米国型とは異なる。

専門医資格の取得と更新条件を厳しくするのは構わないですが、従来の多数ある専門医資格のうち、どれを今後も専門医資格と認定するかでもめる。
まったくチャラにしたら、新人医師で新制度に参加する医師以外、誰一人専門医資格保持の医師がいなくなるわけで。
現時点で日本専門医機構で認められている専門医資格を保持している医師(20種類くらいでした?)は新制度で移行措置となり、移行後の初めての更新の時には新制度の更新条件を適応がベターでしょう。

投稿: とある内科医 | 2013年3月10日 (日) 14時06分

新専門医制度によって、専門医に対する診療報酬加算(ドクターフィー)の全面的な導入や、標榜診療科の限定化などが取り沙汰されているから、旧医師も注視しているのだと私は思ってました。
新専門医制度になっても専門医資格が「表面的な看板」に過ぎないのであれば、私は今持っている専門医資格が新制度に移行できなくても構わんです。

新専門医制度開始時点で診療報酬とか標榜診療科とかの実利的な意味を持たせるのなら、逆説的に旧専門医から新専門医への移行条件は相当緩和されたものになるでしょうし、
移行条件を厳しくするのなら当面 専門医資格は「表面的な看板」にとどまると予想します。

まあ無責任に予言しておくなら、移行条件は一泊二日の缶詰講習くらいになるんじゃないでしょうか。

投稿: JSJ | 2013年3月10日 (日) 18時35分

看板だけのことなら今までどおりに脱専門医の流れが加速しそうな気が。ただ病院にとっては標榜診療科などでメリットがあるならなんとか医師には専門医を取ってもらいたいはずですね。そのモチベーションを誰がどう維持させるのでしょう。

投稿: ぽん太 | 2013年3月11日 (月) 08時40分

どうせ当事者の長老方が話を決めてるわけだからして、あの方々の不利益なことになるとは思えません。
一部反対意見は黙殺しながらつつがなく移行措置が決まるんじゃないですか。

投稿: ぐっちゃん | 2013年3月11日 (月) 13時16分

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