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2013年2月13日 (水)

医療スタッフの労働環境改善 患者側にとっても重要な問題ですが

寒い日が続きますけれども、先日はこんな我慢大会めいた記事が出ていましたのをご覧になりましたでしょうか。

看護師ら雪の中で座り込み 佐賀、長時間夜勤中止求めて/佐賀(2013年2月9日朝日新聞)

 みやき町の国立病院機構東佐賀病院の看護師ら延べ200人が8日、長時間夜勤の中止などを求めて病院正門前で座り込んだ。雪が時々降る中、約8時間半にわたって「医療、看護体制の充実を」と訴えた。

 東佐賀病院の2交代制の夜勤は午後5時45分から翌日午前9時まで。15時間以上の長時間で「健康を損ねたり退職を余儀なくされたりしている」と中止を求めている。全医労東佐賀支部の大橋典子支部長は「病院が民営化されると合理化圧力が強まる。その前に2交代制夜勤を中止させたい」と話した。

佐賀と言えば比較的温暖な地域という認識がありますけれども、さすがに雪が降るような状況では思わず中止なり延期なりしたいと思ってしまった人も多かったのではないでしょうか。
看護師と言えば医師と比べてずいぶんと組織化が進んでいる様子があって、選挙などでもすっかり影響力を失って久しい医師会などに比べるとしっかり自前の候補を当選させていたりするようですが、それはともかく記事にある通り昨今では二交代制を導入する病院が増えてきているようですね。
世間の評判を聞くと二交代制になってから日勤-深夜といった無理な勤務が減り休みも増えた、十分休養が取れるので楽になったという声がおおむね多いようですし、各種調査によっても二交代勤務の方が疲労度が低く一度導入してしまうと三交代制に戻りたいという人間はいなかったという話もありますが、元々反対論に与していた方々にすれば好評だからとなし崩しに認めるのも受け入れ難いところはあるのでしょう。
このあたりは本来スタッフの労働環境改善という課題が先にあって、その実現の手段として行われるべきものであるはずですが、例えば特殊な院内環境などが理由でどうしても二交代制では負担が大きいというのであれば世間の病院と自院とで何が違うのかと改めて見つめ直し、何でも元に戻せではなく職場環境全体を見直す好機にしていくことも必要ではないかと思いますね。

世間の標準に比べて労働環境が悪く、かつそのことによって社会にも悪影響を及ぼしている業界の一つとしてトラック業界があって、近頃では長時間労働の原因ともなっている荷待ち時間に他業界同様料金を課してはどうかとか、以前にも取り上げましたように過労運転を強いた場合には雇い主に罰則が与えられるようになったりと、地味ながら少しずつ勤務環境の改善が図られているようです。
医療の場合もスタッフの過労が医療の質低下を招き患者の不利益につながることが明示されている以上は国民側も医師らの疲弊に危機感を持つべきであるし、また日医ら業界団体も余計なことに政治力を発揮(苦笑)するくらいならひたすら労基法を遵守した労働環境実現でも主張していれば多くの支持も得られていたかも知れないのに、どうも未だに苦労は買ってでもせよ的価値観が残っている方々がいるようですよね。
そんな中でさすがに昨今では当たり前の価値観が広がってきたということでしょうか、長年医師の労働環境問題を放置してきた一部病院では近年相次ぐ逃散や医局派遣打ち切りによる医師不足に頭を悩ませている施設も多いと聞くのは良い傾向ですが、さすがに行政の側でも現場の自浄作用欠如にしびれを切らしでもしたのでしょうか、ようやくこうした話が出てきたようです。

勤務医などの「雇用の質」でガイドライン-厚労省、来年度中の策定目指す(2013年2月8日CBニュース)

 厚生労働省は、勤務医などの「雇用の質」に重点を置いた勤務環境の改善に向けたガイドラインを策定する。厚労科学特別研究事業の研究班(座長=酒井一博・労働科学研究所長)が、全国の医療機関の好事例を調査・研究し、医療従事者が健康で安心して働けるためのノウハウなどを集め、医療機関に提示する方針だ。同省は2013年度中のガイドラインの取りまとめを目指す。

 厚労省は昨年10月に医政局、労働基準局など省内横断的な「医療分野の『雇用の質』向上プロジェクトチーム(PT)」を立ち上げた。同PTは、医療従事者の勤務環境を改善するための施策を検討し、8日にその成果として、「雇用の質」向上マネジメントシステム(仮称)の概要を明らかにした。ガイドラインを策定するための厚労科学特別研究事業の「院内マネジメントシステム確立に関する研究」は1月に動き出している。

 医療機関は、医療従事者が健康で安心して働ける勤務環境にするために、「雇用の質」向上マネジメントシステムの構築を目指すことになる。そのシステムの下で、▽現状の評価▽課題の抽出▽改善方針の決定―などのプロセスを経た上で、ガイドラインを参考にして改善計画を策定。改善計画を円滑に推進するためにPDCAサイクルの手法を導入する。

 このPTは、「雇用の質」向上マネジメントシステムのガイドラインを策定するほか、医療機関の先進的な取り組みや、ワークライフバランスなどの事例を幅広く収集・整理したデ―タベースを構築することも決めた。データベースを閲覧できるサイトの開設は14年度を目標にしている。【君塚靖】

一般論としてこうしたガイドラインの策定も勤務環境改善に向けた一つの契機になり得るということで賛同するものですが果たしてどの程度実効性あるものに仕上がるかと考えた場合に、実際の医療現場を見て見ますとスタッフが多忙すぎることも問題なのはもちろんながら、それに加えて職種間、あるいは同職種でも個人間で業務量に差がありすぎるということもまた一つの問題ですよね。
とりわけ前者に関しては人員を増やすということが根本的解決策ですが、どうしてもそれが不可能であるということであれば結局は需要の方を制限するしかないのは当然ですし、そもそも常に満床近くを維持していなければ経営上不利になってしまう現在の診療報酬システムにも根本原因があると言えるでしょう。
ただ確かに専門職スタッフはおいそれと数を増やすことは難しいとは言え、どこの施設でも専門職が専門職にしか出来ないことにだけ専念しているということはまずあり得ませんから、可能なことであれば安価な非専門職スタッフに仕事を任せていくことでさしたるコストをかけずに状況を改善することが可能であるはずなのですね。

ところが往々にして地雷病院などと言われる施設ではこうした業務分担がうまくいっていない、それどころか田舎公立病院では役所辺りから飛ばされてきた事務員がのんびり新聞を読みながら今日も一日どうやって時間を潰そうかと思案している一方で医師ら専門職が必死で働いているという状況があるわけで、それならば暇な方々にもう少しお仕事をしていただけばよいんじゃないかと考えるのは当然のことでしょう。
何しろどんな暇な人間であっても書類の上では週40時間法律通りきっちり仕事をしていることになっている訳ですから、民営化などを契機に職種間分業を見直すなどと言い出せば「不当な合理化圧力だ!」などと言われる、それどころか電子カルテ導入などを契機に会計・保険請求業務などもどんどん医師の仕事になっていくということがままあったわけですね。
結局のところ業務分担と言えば誰かの仕事を他の誰かに回すという作業に他なりませんから、特に既得権益で雁字搦めになっている公立病院などではあれはダメ、これは反対で何一つ改革も改善も進まないということがままありますが、そうであるならまず職場の現状を客観的に評価し環境改善のための元データを抽出する方法論を確立することが最優先の課題となりそうです。
ともかくも医師が毎朝点滴と採血に病棟で時間を取られたり、看護師が車いすを押し伝票を運ぶために院内を駆け回ったりと言った明らかに無駄な労働慣習を未だに改善することも出来なかった以上、業界内部の自浄作用に任せていたのでは何も話が進まないという前提に立ってのガイドラインが必要になるという気がします。

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コメント

どう見ても労組の動員ですね
深夜の詰め所じゃ二交代の方が楽だよねってひそひそ話してそうな

投稿: amiga | 2013年2月13日 (水) 08時42分

この手のガイドラインが役に立った記憶がないような(^-^;
だいいち安心して医療現場で働けない理由は他にあるでしょうにそっちは手つかずでは片手落ちです
応召義務撤廃と当直明けの休みを導入するだけでずいぶんと違ってくるのでは?

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年2月13日 (水) 10時01分

どういう内容になってくるのかこれだけでは何とも言い難いですが、少なくともこれは100%アウトだろうという事例をきちんと規制できるものには最低限してもらいたいですね。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月13日 (水) 11時37分

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ネタもとはREXさんです。 http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-1665.html#comment13507 いつも大変お世話になっております。 ついに決まりましたね。 奈良県も本当にバ... [続きを読む]

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