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2013年2月27日 (水)

「モンスター?ええ、たくさんいますがそれが何か?」

もはや医療現場でモンスターだ、クレーマーだと言われても当事者は誰も驚かなくなりましたが、世間では未だに一定のニュースバリューを感じているのか、先日こういう調査結果がそれなりの驚きと共に報道されていたようです。
当の現場ではすでに何やら諦観めいた境地に達している部分もなきにしもあらずですが、やはりこういう状況はおかしいし是正すべきなのだと決意を新たにする意味でもこちらの記事を紹介してみましょう。

モンスター患者に殴られた医師10人に1人 会話不足も一因か(2013年2月22日NEWSポストセブン)

 医師の10人に1人が患者から暴力を振るわれた経験がある――との衝撃的な調査結果が出た。

 医療従事者向けの情報サービスサイトを運営するケアネットが会員医師1000人に行った意識調査によると、自己中心的で理不尽な要求を繰り返す悪質な患者、いわゆる「モンスターペイシェント」に悩まされたことがあると回答した一般病院の医師が70.7%もいたそうだ。
 その内容は、医療スタッフに対するクレーム(60.5%)から、「訴える」「刺す」などといった脅迫(27.6%)、暴力(16.2%)、土下座ほか度を越した謝罪の要求(11.3%)まで。およそ医療現場とは思えぬトラブルが頻発していることが分かる。
 患者の健康を守るはずの医師が、患者によって身の危険にまで晒されている現状。同調査に寄せた医師の匿名コメントからは、悲痛な叫びが伝わってくる。

■俺の言うとおりの薬だけ出せと強要する(60代内科)
■循環器内科であるにもかかわらず局所を出して「腫れているので触ってくれ」と何度も強要する(40代循環器科)
■患者の自分本位な要求に応じなかったら、激昻して殴られたことがある(40代精神・神経科)
危険が予測される場合には、眼鏡やポケットの中身などを外すようにしている(30代精神・神経科)
■逃げ場のない個室で診察しているときに、監禁されたことあり(40代内科)

 患者は精神的にも不安定なのは当然だが、監禁や暴行まで発展すれば、医師にとっては明らかな業務妨害となるばかりか、犯罪行為に該当する。そのため、暴力事案が発生すると館内放送でスタッフが集まるような仕組みをつくったり、ボタンひとつで警察に通報できる非常装置を設置したりするなど、防衛策をとる病院も増えた
 だが、モンスターペイシェントの増加は、医療システムそのものが招いた結果だと話す医師もいる。医療問題に詳しい作家で医学博士の米山公啓氏が話す。
「いまの病院は電子カルテ化が進み、医師はパソコンのモニターを眺めながら診察して患者の顔色さえ見なくなりました。あの光景だけ見れば、患者が怒るのも無理はありません。経営効率を上げるためにコンピューターを導入したのに、結局は患者サービスにつながっていないのです」
 電子カルテ化により、レントゲンや血液検査の結果が診察当日に素早く出るなど、患者にとっては便利になった反面、医師と患者の会話が減っていく。「トラブルの7割はコミュニケーション不足による患者の誤解から起きる」(都内の大学病院医師)というのも頷ける。

 新渡戸文化短期大学学長で医学博士の中原英臣氏は、さらに厳しい指摘をする。
患者さんが納得するまで平易な言葉で診断をくだし、十分なコミュニケーションが取れている医師は、怒鳴られたり殴られたりすることも少ないと思います。それでもモンスターペイシェントやドクターハラスメント(医師による患者への嫌がらせ)の問題が収まらないのなら、診察室を可視化したり診察内容を録音したりするしか手はありません」
 現行の医師法では、正当な事由がない限りどんな患者でも診察・治療の求めを拒めないことになっている。そのため、医療機関としてはトラブル対策やリスク対応を定めておかなければ、現場の混乱は避けられない。

 前出の米山氏は、防衛一辺倒の医療サイドに同情的な見解も示す。
「いまは小さな医療ミスでもすぐに訴えられて、医者の刑事責任が問われる時代。医者の裁量権は法律では通用せず、訴えた者勝ちみたいな風潮になっています。でも、そうやって医療現場が弱体化すれば、無難な処置しか行われなくなり、最終的には患者のメリットがなくなることを、もっと考えるべきです」
 医師と患者。立場は違えど対等な信頼関係のうえに成り立っていることを、改めて双方が認識する必要があるだろう。

医師の7割、モンスター患者に“遭遇” 「組員連れてくる」と脅迫、優先診察を要求…(2013年2月23日産経ニュース)

 医療従事者や医療機関に理不尽な要求をする「モンスターペイシェント(患者)」に対応したことがある医師が67.1%に上ることが、医療情報サービスサイトを運営する「ケアネット」(東京都千代田区)の調査で分かった。「暴力団を連れてくる」などと脅迫したり、医療従事者に暴力を振るったりする事例もあり、警察OBを雇う医療機関も増えている。

 モンスターペイシェントに対応したのは、診療所やクリニックでは57.4%にとどまったが、一般病院では70.7%。要求内容は「スタッフの対応が気にくわないとクレームをつける」60.5%▽「待ち時間へのクレームや自分を優先した診察を求める」47.1%▽「不要な投薬を要求する」37.6%-など。

 医師からは「モンスターペイシェントの対応に疲れ鬱病になった」(40代の内科医)▽「生活保護の患者が薬をなくしたと取りに来る。自費で、と言うと『殺す気か』と怒鳴り散らす」(30代の内科医)-などの声が寄せられ、「精神科は、モンスターか障害かの区別が難しい」「どの程度から警察に通報すべきか分からない」などの戸惑いも聞かれた。

 医師が患者とのやりとりに苦労しているとの声を受け、初めて調査を実施。今月、1000人の医師を対象にインターネットで回答を得た。

しかしNEWSポストセブンの記事などはコメントしている面々が例によって現場事情に縁遠い方々ばかりで「さもありなん」と思うような内容が並んでいるのもいつも通りでおもしろいなと思うのですが、一応は患者側にも問題があるということを認めているような記事になっているところが同編集部としての成長ぶりを示しているのでしょうかね?
無論どのあたりからをモンスターと称するかもなかなか定義が定まらないところがあって、例えば患者が暴れて怪我をするといったことは電カル導入など無関係に昔からあることですけれども、それこそ精神科ならそれくらい当たり前という考え方の先生であれば元より問題視もせずカウントされないということもあるかも知れませんね。
個別に「こうした行為を受けた経験がありますか?」と質問事項を詳細に設定して答えさせればまずもって何らの問題にも遭遇したことのない医師はまずいないと思いますし、あるいは残る三割は真性M気質だったりむしろ医者の方が患者以上に(以下略)なのかも知れませんが、ともかく日常診療で問題に直面することが非常に多いということは世間にも認められつつあると言えそうです。
同時にこうして記事を読むだけでも不快感を覚えた人は少なくないと言いますが、クレーマー問題とは単にクレーマー本人とスタッフとの関係であるのみならず、ほとんどの場合限りある医療リソースを無駄に浪費し周囲の善良な一般患者にも直接間接の不利益を及ぼしているということは、当事者のみならず広く国民全員が共通認識とすべきでしょうね。

ただ医師以外の職業においてもこうしたことは当たり前に起こっていることであって、むしろ医療の現場では歴史的に見ると他の職業では当たり前に通用していた「(誤用的な意味での)お客様は神様」的価値観は希薄で、お金を払う顧客の立場であるにも関わらず先生、先生と医師を持ち上げてくれる文化があったことも事実ですよね。
そうした環境で育ってきた古典的な医師達は自然上から目線の診療態度となっていたのでしょうが、それがいい方向?に働くと問題患者は容赦なく一喝し叩き出すというフィクションの世界ではおなじみの医師像となり、体罰が当たり前だった時代の教育現場と同じく絶対的強権の存在下での平穏は保たれていたのかも知れません。
さすがに今の時代多くの先生方は学部教育の段階から患者の権利とは何かといった話を聞いて育った世代ですからこういう昔気質の先生は絶滅危惧種化していますが、そうした先生方が増えてくると共に戦後自由主義教育全盛な方々の横暴が目に見えて増えてきたようにも感じられるのは偶然の一致ではないと思いますね。
もちろん医師の態度がクレーマーを呼び寄せるという側面はあるにしても、以前にも紹介しましたように患者調査によれば多くの方々が「医師の態度が昔よりもよくなった」と回答している、ところがそれに反してクレーマー、モンスター事案がこれだけ絶讚急増中であるということから考えると、医師が態度を改めればクレーマーなどいなくなるなどという発想は空論に過ぎないことは明らかです。

そもそも何故こんな非常識な連中が増えてきたのかと言えば、そうすることによって利益を得られると学習してきた経験があるからで、例えば古典的クレーマーとして有名な読売新聞の渡辺勝敏氏なども「新聞社で医療を担当している」と伝えるなどして執拗に特別扱いを要求したことが休日に不要不急の手術をねじ込ませるという結果につながった訳で、こうした対応をする病院側が彼らをさらにつけあがらせてきたとも言えるでしょう。
そうであるなら唯一最大の抜本策は一切の不当な便宜供与を止めることと言うことに尽きるということになるでしょうし、すでに一般企業などでは一線を越えクレーマーと認定すれば知識と経験を備えた専任スタッフが対処する、場合によっては弁護士に相談したり刑事告訴も検討するといった強力な対応を取ることでスタッフと一般顧客を保護するようになっているとも言います。
医療現場では人的資源の不足や上層部の危機感の欠如のせいかそこまでには至っておらず個々のスタッフの判断に頼る局面も多いのは残念ですが、幸い医療は様々なルール上の制約で雁字搦めになっていますから、うまいこと利用すればクレーマーの不当な要求にも対処出来るんじゃないかとも思いますね。

実際に今現在ではさらに世代が一回りして現場もある程度対処法が身について来たと言うのでしょうか、担当医も問題患者は敢えて抱え込まなくなってきましたし、どうしても立場場引き受けざるを得なくなっても可能な限り距離を置くとか、最終的にはそうした立場にいること自体を放棄するようになってきましたが、一見後ろ向きな行動が医療現場の環境改善にも一定の役割を果たしつつある側面も少なからずあるように感じますね。
それは余談としても、最終的には医療の現場においてクレーマー認定されることは損であり、善良な患者であることが最大の利益を得られるのだという認識が滲透すれば、限りある医療リソースを最大限効率的に活用できる上にスタッフも国民も等しく幸せになれる理屈ですね。
そのためには人の振り見て我が振り直せとの言葉通り国民側の認識も大事ですが、医師らスタッフも態度によってきちんと患者教育をしていくことが必要ではないかと思います。

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コメント

>医学博士の中原英臣氏

中原英臣って医師でもないのにいつも医師面してしゃしゃり出てくるよね。そのくせ「医者しか知らない危険な話」って本出したりして誰も突っ込まなかったのかな?こんなド素人にしたり顔で現場のこと語られても仕方ないんだけど。

投稿: | 2013年2月27日 (水) 09時38分

医者と医学博士の区別がつく素人なんていないですからww残念!ww

投稿: aaa | 2013年2月27日 (水) 09時57分

いい加減な医者だってたくさんいるじゃん
そいつら何とかするのが先だろ
こっちは命預けてんだよ

投稿: ちか | 2013年2月27日 (水) 10時36分

お互い人間同士なのですから相性もありますし、患者は選べる立場なのだから合わない相手に無理に付き合うことはないです。
いい加減な医者だと思ったらかかるのをやめる、それが一番手っ取り早くいい加減な医者によるリスクを軽減する道でしょう。
でも二人目、三人目と医者を変えていってもずっといい加減な医者にしか出会えないと感じた時は、少し立ち止まって我が身を省みてみる必要もあるでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月27日 (水) 10時56分

札幌西署は26日、札幌市西区山の手6の7、医師滝内敏朗容疑者(45)を器物損壊容疑で現行犯逮捕した。

発表によると、滝内容疑者は26日午前3時半頃、家から金属バットを持ち出し、近所の月決め駐車場で除雪をしていた重機の運転席側窓ガラス2枚を割った疑い。運転席には作業員がいたが、けがはなかった。

同署幹部によると、除雪車は前日の夜から作業をしていた。調べに対し、滝内容疑者は「(除雪の音が)うるさくて腹が立ってやった」と話しているといい、26日午前2時頃にも作業員に「うるさい」と苦情を言ったとしている。

滝内容疑者は、札幌市中央区で整形外科医院を開業している。

(2013年2月26日16時12分 読売新聞)

投稿: モンスタークレーマー | 2013年2月27日 (水) 14時11分

医療の場合

「患者は神様」ではありません!

健康保険料を必要以上に支払っている
”健常人”が神様です。

投稿: 重っち | 2013年2月27日 (水) 18時43分

医師自身が上記のようか患者さんの対応で疲弊するのも問題ですが,同時に「真っ当な受診を行っている大多数の普通の患者さん」が回りまわって不利益を被る点も問題と考えています.
スカイマークのお客様向け告知文が一時話題になりましたが,私も見習って似たようなことを診察室の前に掲示して診察を行っていますが,はっきり言って「無用なクレーマーへの対応」の労力はかなり減らすことができました.無論これに引っかかるのは1%も満たないのですが,それでもこれらの方を排除もしくは他の患者さんと同様のルールに従って頂く,ようにはできたので相当心理的負担は減りました.
その分は普通の患者さんに還元できており,大変有意義かと考えています.
気になる点としては眼前から消えた数人のモンスターペイシェントがどこへ行かれたか,なのですが,おそらくは同様の行為を繰り返して警察を呼ばれるたびに医療機関を転々とするか,どこかで医者を刺してお縄になるかの2択かと考えております.願わくば自分が刺されないといいなと考えておりますが,インナーに防刃シャツ(対刺突用)が欠かせない日々ですね.後は筋トレをがんばってからは胸ぐらを掴れたら掴み返す「ような」対応で応対するようになり,ぐっとクレームは減りました.健康維持目的でしたがなにか別のところで役立っています.
私も管理人さんが仰っているように「3人以上回って皆医者がおかしいと思ったら少し考える必要がある」というご意見は最もだと思います.ただ,これが通じるのはそもそもモンスターペイシェントなどではなくて,元来は普通の人で種々の要因が重なっただけで少し要求過剰になっただけのような気もします.
後は生保の人が薬なくしたら,私は全例国民健康保険や市の担当職員やに連絡して,過去に複数回同じことがないかをチェックしています.不正があれば絶対に自腹ですね,はっきり言って嘘をつく方は死んでも文句はいえないか,と.
しかし,生保の更新書類に「疾患はあるが軽労働は可能」な旨の記載とチェックを入れても99.999%は労働しないんですよね.市に連絡しても色々理由をつけて給付の変更は行いたくないみたいですし…
何にせよ大多数の普通の患者さんに不利益を回さないよう,日々クレーマーと戦う日々であります!

投稿: 医療過疎地域地方勤務医 | 2013年2月27日 (水) 19時57分

身体を鍛えることが効果的とはまったく同意いたします。
ところで掲示だけでそうまで著効するとはすばらしいのですが、差し支えなければぜひ文面を教えていただけないでしょうか?

投稿: 某内科医 | 2013年2月27日 (水) 21時19分

つ「頭のおかしな人の判定基準」
http://blogos.com/article/57037/?axis=b:186

投稿: | 2013年2月28日 (木) 12時13分

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