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2013年2月20日 (水)

医療公的補助の充実は利用者モラルを低下させる?

生保受給者の医療費一部自己負担化に7割の医師が賛成するなど、日常的に密接な関係を強いられる医療現場では生保受給者のモラルハザードが世間以上に深刻に受け止められている傾向がありますが、実際に過剰診療によるメリットを一方的に享受している生保受給者によって一部病院がホテル化しているといった批判も出ているようです。
年々過去最多を更新し続ける生保保護費の半分が医療補助であるなど、国としても生保受給者の医療費削減にようやく乗り出し始めていますが、こちらも一部進歩的な方々の反対論に遮られてなかなか一般患者並みとまではいかないようですよね。
そんな中で先日は医療現場のスタッフに対する調査によって、生保や小児医療費補助といった公的補助の利用者達による生々しい悪用例が明らかになってきたということですが、多くの医療関係者にとっては「あ~あるある」といったところではないでしょうか?

公的補助の悪用例、医療従事者の半数が経験(2013年2月18日ビジネスメディア誠)

 社会福祉を充実させる上で、医療費の公的補助は欠かせない。しかし残念ながら、その制度を悪用する人も少なくない。現場の医療従事者は、公的補助の悪用をどのくらい見聞きしているのだろうか。

 QLifeの調査によると、医療従事者に「生活保護受給者による不適切な医療機関や医療資源の利用を見たことがありますか」と尋ねたところ、「ある」(46.6%)と「ない」(53.4%)が拮抗(きっこう)した。

 具体例を聞くと、「糖尿病のインスリン患者が、食費が無くなると、わざとインスリンを打たずに高血糖になり救急外来を受診し入院して、食費を浮かす」「数週分の処方を出したのに、数日ごとに薬をもらいにくる。特に湿布。そして他の医療機関でも同様に受診している」「夜間に寂しくなり詐病で救急車を利用し、病院で個室に入れろと叫び無理やり入院しようとする」などの声があった。

 子どもの医療費を無料にするという動きも各自治体で進んでいるが、それを悪用する向きもある。「子どもの医療費補助による不適切な医療機関や医療資源の利用を見たことがありますか」と尋ねると、「ある」は17.2%と、生活保護受給者ほどではないが、少なからずの人が見聞きしたことがあるようだ。

 具体例では、「必要以上の受診。ドクターショッピングをする。 子どものカルテで親の薬を出してほしいと言う。 無料期間が終わる直前に、必要のない検査や薬の長期投与を要求する」「どうみても母のでしょ? と思われる、ローションや保湿クリームが大量に処方されている」などがあった。

 インターネットによる調査で、対象は医療従事者744人(医師182人、看護師370人、薬剤師192人)。調査期間は2012年12月23日から2013年1月11日。

医療従事者(医師・看護師・薬剤師)が経験した公的補助の悪用例 「生活保護受給」46.6%、「子ども」17.2% 「過剰な受診」「薬の過剰請求」「コンビニ受診」…中には悪質なケースも(2013年2月18日朝日新聞)

 株式会社エス・エム・エス(本社所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:諸藤周平)と株式会社QLife(キューライフ/本社所在地:東京都世田谷区、代表取締役社長:山内善行)は、「医師」「看護師」「薬剤師」の3者に対して、「自身が経験した公的補助を悪用した不適切な医療機関の利用」についての調査結果を発表いたしました。調査は両社が運営する3サイト『院長jp』『ナース専科コミュニティ』『ココヤク』の会員に対して行い、医師182名、看護師370名、薬剤師192名の計744名から回答を得ました。

 不適切な医療機関の利用について、医療従事者の46.6%が「生活保護受給者によるもの」、17.2%が「子どもの医療費補助によるもの※1」を目にした経験が「ある」と回答しています。
 不適切な医療機関利用の内容としては、「生活保護受給者によるもの」では「過剰な受診」「必要無い量・種類の薬の請求」「実態とそぐわない入院希望」などの回答が多く、「子どもの医療費補助によるもの」では「コンビニ受診(=緊急性もないのに、夜間や休日に病院の救急外来をコンビニのように利用すること)」「家族間での薬の使いまわし」などの回答が多く見られました。中には、明らかに転売目的で薬を希望するケースや処方を断った医師に対して“何かあったら責任取れるのか”と恫喝する等、悪質な報告もありました。

※1:自治体により内容は異なりますが、子どもには医療費補助があります。その医療費補助を利用し、主に子どもの両親が不適切な医療機関の利用を行うことを意味します
(略)

半数程度しか悪用例の経験がないというのはずいぶんと少ない気もしますが、実際の例を見ていますと日々の診療に追われていると見過ごしがちなケースも大いにありそうですね。
生活保護受給者に限らず小児医療費無料に関しても不適切使用がそれなりにあるということですが、やはり実体験として一過性に終わる小児医療よりも長年その道に精通してきた生保受給者のそれは目に余るということでしょうか。
元ネタとなったキューライフの調査結果が公表されているのですが、掲載されている実例を見てみますと単なる不正利用というよりは昨今問題になっているクレーマー、モンスターと言われる事例も垣間見え、もともとこうした素因を持つ者が社会から利益供与を得られるようになることでモンスター気質が顕在化してくるという構図が浮かび上がってくるように思います。

・医学的には不要と思われる薬を出して欲しいと言われて、いくら説明しても診察室に居座り、出すまで帰らない。(医師)

・症状がはっきりしないまたは現在ないが来るのが大変と言われ、執拗に薬剤の処方を要求される。処方について断ると、何か有ったら責任を取ってくれるのかと医療者を脅かす事が有る。(看護師)

大部屋だとうるさいとクレーム。個室で元気なのに何日も入院していた。(看護師)

・必要以上の受診。ドクターショッピング(=かかる医者を次々と代えて診断を受けること)をする。 子どものカルテで親の薬を出してほしいと言う。 無料期間が終わる直前に、必要のない検査や薬の長期投与を要求する。(医師)

・保護者の仕事の都合によるもの。「時間内は待つのが面倒」と終わってからの時間外受診を平然としながら言う。(看護師)

実例を見ていて気になるのが明らかな過剰処方、重複処方といったチェックすれば判るはずのものが相当に挙げられていることですが、特に複数の医療機関を連日重複受診し同じような薬を過剰量処方されているようなケースは以前にも大いに話題になったところで、当然ながら全量を自分一人で使うわけではないでしょうから明らかに何らかの違法行為が行われていると判断されますよね。
理想的には医療機関や調剤薬局間で随時情報のやり取りを行い過剰診療をチェックできる体制を作れるならよいのでしょうが、未だに全国で末端医療を支えている零細医療機関や薬局でそうしたデータベースに参加する体制を取れるかと言えば難しいものがあり、当面はお金を出す側の行政主体で病名に対して不相応なコストがかかっていないか、受診頻度は妥当かなどのチェックを入れるしかなさそうです。
ただもともと生保関連業務では行政側も人員不足が著しく認定や見直しの公平性担保も難しいと言いますから、以前に大阪の橋下市長が表明していたように生保が受診できる医療機関を思い切って絞ってしまうことも一つのやり方で、例えば地域内の公立病院に限定するともなれば(当該施設の先生方にとっては大変でしょうが)副次的な効果として集中による混雑を嫌った受診者の足が遠のくということもあるかも知れません。
しかし今回の調査で挙げられた実例の数々にも見られるように金銭的保護を受けた患者は受診モラルが低下しやすい傾向が明らかになってきたように思いますが、先日クーポン騒動で話題になった某飲食店店長も盛んにクーポン客の客層が悪いとつぶやいていたことが何やら思い出されて興味深いですね。


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コメント

>不適切な医療機関の利用について、医療従事者の46.6%が「生活保護受給者によるもの」、17.2%が「子どもの医療費補助によるもの※1」を目にした経験が「ある」と回答しています。

あたりまえだが生活保護受給者の四割が不適切利用してるわけじゃない。
ごくごく一部の不心得者の振る舞いを取り上げて全体がそうであるみたいにいうのは印象操作だね。

投稿: 名無しのごん | 2013年2月20日 (水) 09時26分

>あたりまえだが生活保護受給者の四割が不適切利用してるわけじゃない。

ですねどう考えてももっと多いw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年2月20日 (水) 09時30分

三重県警伊賀署は18日、伊賀市荒木、無職清水隆容疑者(61)を、暴力行為等処罰法違反容疑
で緊急逮捕した。

発表によると、清水容疑者は18日午前2時15分頃、伊賀市西明寺の歯科医院を訪れ、歯科医の
男性(46)を駐車場に呼び出し、治療を申し入れたところ、断られたため、ナイフを突きつけて
「一回死んでみるか」と脅した疑い。
男性が逃げたため、清水容疑者は自転車で逃走。男性の110番で駆けつけた伊賀署員が、近くの
コンビニエンスストアで清水容疑者を発見。任意同行し、署内で緊急逮捕した。
清水容疑者は、この歯科医院で治療を受けたことがあった。調べに対し、「歯科医院には行ったが、
ナイフで脅していない」と容疑を否認している。

(2013年2月19日12時03分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130218-OYT1T01784.htm

投稿: | 2013年2月20日 (水) 09時49分

生保の多い地区ですが医療だけなら不適切利用は1割以下でしょう。ただ働けないから生保という人は本当に少ないですよ。受診指示しても仕事があるからその日は来られないってちゃんと役所に収入申告してるのかどうか。不正受給も含めたら問題のある人はかなり多いはずです。

投稿: 場末で診療する者 | 2013年2月20日 (水) 10時05分

ちゃんとした定量的な調査ではありませんから数字は参考程度にしかなりませんが、それだけ現場では(悪い)印象が強いということは言えると思いますね。
しかしたいていの客商売には客層というものがありますが、医療従事者は日常的に社会のあらゆる階層の人間と接していますから、世間と少しばかり違ったイメージを持っている場合がありますよね。
糖尿病持ちの教師の担当にはなりたくない、なんてことを言われても知らない人間には何の事やら判らないでしょうから(苦笑)。
まあこうした現場の感覚を伝える記事がきちんと表に出てくるようになってきたのは良い傾向ではないかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月20日 (水) 11時17分

ナマポも一部有料化するだけで不正も減るし医療費削減も出来るんだがw

投稿: aaa | 2013年2月20日 (水) 11時48分

>病名に対して不相応なコストがかかっていないか、受診頻度は妥当かなどのチェックを入れる

なにか対策はするらしいですよ。ただ指導の対象が患者なのか病院なのかどっちになるんでしょうね?

生活保護レセプト、高額請求の医療機関抽出
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39252.html

投稿: ぽん太 | 2013年2月20日 (水) 11時57分

生活保護受給者がすべて不適切利用者ではないが、不適切利用者はすべて生活保護受給者ではないかw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年2月20日 (水) 17時16分

乳幼児医療の不適切利用を経験した医師が17%ってーのは、明らかに少ない。
単に調査対象が小児科医でないだけだろう。

一度休日診療所にバイトに行ってみな。
絶対毎回一人はそういうのいるから。

つーことは、調査対象を小児科医にしたら、ほぼ100%経験者になりますぜ。

投稿: | 2013年2月20日 (水) 18時38分

私が担当する範囲では極端な不正に走っている生活保護受給者はいないように思います。
まあ、私はぬるい書類を書かないし、ぬるい処方もしないし、私の療養指導に従わなければ市役所にホウレンソウしますから、不正に手を染めたくても難しいのではないかと。
やはり、医師の側が毅然とした態度を取ることが一番大事だと思います。

投稿: クマ | 2013年2月20日 (水) 18時50分

何が不適切かという定義の問題もあるのでは?
子供の熱が下がらないからといって日に何度も来院する親は珍しくない
ただ彼らが無料だからそれをやっているのかと言えば微妙な気がする
もちろん動機はどうあれ問題患者なのは疑いないのだが

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年2月20日 (水) 18時52分

>不適切利用者はすべて生活保護受給者ではないかw

それは言い過ぎ。震災被災地でも不適切利用は問題になってたよ。

投稿: アレン | 2013年2月20日 (水) 19時41分

>それは言い過ぎ。震災被災地でも不適切利用は問題になってたよ。

敢えてカエルの解剖をさせて頂きますが、元ネタがありまして…、

イスラム教徒がすべてテロリストではないが、テロリストはすべてイスラム教徒ではないか。

オランダかどっかの政治家の放言だか新聞の暴言です。グクったんですがソースは発見出来ませんでした。よってウロです。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年2月20日 (水) 20時58分

医療での不正は多くは医師の裁量で防げる問題ですよ。
効率よく対策したいなら不正に協力的な医師を集中して指導すべきです。

投稿: ドロっぽ | 2013年2月21日 (木) 13時49分

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