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2013年2月18日 (月)

皆保険制度は絶対善であり混合診療は絶対悪?

循環器専門医でありながらうつ診療に一家言あるなど様々な領域で活躍する阪大の石蔵文信先生が、先日こんな大胆な提言をされているということを紹介しておきます。

【参考】日本の医療費と医者の数は半分にできる(2013年2月9日JB PRESS)

いきなり「石蔵さんは自らの哲学で一人ひとりの患者をじっくり時間をかけて診る治療を続けてきたが、いままでに「それでは病院の経営が成り立たない。辞めてくれ」と、5つの医療機関から離縁状を渡された経歴を持つ。」などとただ事ならぬ経歴を披露されている通り、この石蔵氏も一医師としてはなかなか波瀾万丈の人生を歩んでおられるようですね。
現在自由診療に従事している同氏の場合、平均的な患者層ではない方々を対象にしているだけにそのまま一般化するのは無理がありますが、皆保険という制度がすでに破綻しているのに日本人の悪癖として現場が一生懸命努力して辻褄を合わせてしまうという点には同意すべきところもあって、そのために混合診療・自由診療絶対反対のままではいけないという主張にはそれなりに聞くべき点はありそうです。
もちろん同氏のように「私の門を叩く患者さんの場合、平均して50万~100万円もすでに治療にお金をかけている」という特殊な患者層相手の自由診療がメジャーなマーケットになるとは思えませんが、近年患者側からもドラッグラグなどの問題もあって混合診療絶対悪という考え方はおかしい、医療の選択権を広げるべきではないかという声が少なからずあるのは周知の通りですよね。
TPP交渉にも絡んだ外圧は元より、先日は医薬品通販規制に違憲判決が出るなど内外から医療業界に規制緩和の圧力がかかっている中で、先日はこの混合診療問題に関しても今後認められていくことになりそうだというニュースが出ていました。

混合診療の適用拡大、規制改革会議が検討(2013年2月15日読売新聞)

 政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)が成長戦略の具体策として検討する規制改革の「論点」全68項目が14日、明らかになった。

 現在は「先進医療」の一部に限って認められている保険診療と保険外診療の併用(混合診療)の範囲拡大や、エネルギー確保のため、石炭火力発電所の新設要件の緩和などを検討テーマに掲げた。15日の第2回会合で事務局が提示する。同会議は、政府が6月をめどにまとめる新成長戦略への反映を目指し、早急に結論を得る方針だ。

 「論点」は、〈1〉健康・医療(12項目)〈2〉エネルギー・環境(11項目)〈3〉雇用(17項目)〈4〉創業・産業の新陳代謝等(28項目)で構成。

 混合診療の拡大は、保険適用との併用が認められている一部の「先進医療」の対象を拡大することで、患者の負担軽減を目指すものだ。先進的な医療技術の発展にもつながるとされている。

<規制改革会議>混合診療の拡大など3分野に重点(2013年2月15日毎日新聞)

 政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が取り組む約70項目の検討課題が14日、明らかになった。公的医療保険が適用される保険診療と、保険外診療を併用する「混合診療」の範囲拡大や、地熱発電の立地規制緩和、解雇規制の柔軟化などが主要課題で、規制を緩和した場合のメリットとデメリットなどを議論。具体的な規制改革案を策定し、政府が6月にもまとめる成長戦略に反映させる方針だ。

 規制改革をめぐっては産業界が大胆な緩和を要望している一方、労働組合や医師関連団体、関係各省庁の強い反発も予想され、安倍政権のリーダーシップが問われそうだ。

 政府は15日に規制改革に関する会合を開き、「雇用」「健康・医療」「エネルギー・環境」の三つを当面の重点分野に位置付ける方針。規制改革会議はこれを受けて、70項目の検討課題について本格的な議論に入る。
(略)
 「健康・医療」では、混合診療の対象範囲を再生医療などの先進的な技術全般まで拡大できないかを議論。最高裁判決も踏まえ、一般用医薬品のインターネット販売規制は全面的に見直す方向だ。書面交付が原則の処方箋を電子情報だけで出せるようにする。
(略)
 ただ、医療や環境分野の規制緩和には、安全や健康を害するリスクもある。また、労働時間や解雇規制の柔軟化には雇用機会拡大の期待がある一方、安易な解雇が増えたりする懸念もあり、規制改革会議にはこれらの不安への対応も求められそうだ。【久田宏】

かつて混合診療解禁反対論と言えば「お上が安全性も保証した医療だからこそ保険で認められているのであって、それを無視して怪しげなものに手を出すなんてとんでもない!」などといった論調も見られていたようですが、さすがに昨今そこまで国を信用する人間もそう多くはないようですし、日本の医療が徐々に時代遅れになりつつある現状が知られるにつれむしろ保険診療のデメリットが強調されている感があります。
無論現場の医師サイドにしても怪しげな代替医療めいたものを使いたい連中は今でもしっかり商売に励んでいるわけですし、実際には諸外国ですでに一定の実績を挙げているにも関わらずまだ保険収載されていない先進的医療を、今の先進医療を拡張するような形でやっていきたいという意見が大多数ではないでしょうか?
無論患者側から怪しげな代替医療を求められることになるかも知れない、だから混合診療なんて認めるのは面倒くさくなるだけだという素朴な反対論もあるでしょうが、こうしたものは求める患者と提供する意志・能力のある医師とが揃っていなければ行えないことは当然ですから、主義主張に反することを求められた場合には今まで通り紹介状を書いて送り出すやり方で対応すべきでしょう。
また仮にそうした混合診療によって思いがけない副作用なりが発生したとしても、あくまでも基本は保険診療であって混合診療部分は患者側に求められた場合にのみ行われるオプションであるということを徹底しておけば、患者側としても自分の選択で起こった結果ですから過去に見られたような医療訴訟乱発という事態には至りにくいのではないかと思います。

一方で混合診療解禁を求める訴訟などに対して表明されてきた「抵抗勢力」たる医師会側の主張も「混合診療導入で保険給付の対象が狭められる可能性がある」という点に要約されてきた感があってさすがに安全性云々はさほど強く主張しなくなってきたようですが、では狭められることが必ずしも悪いことなのかと言うとそうでもないのではないか?という意見もあることは併記しておかなければフェアではないでしょうね。
ご存知のように諸外国では高齢者への透析導入は保険給付の対象外とされるなど、医学的妥当性と経済的妥当性とを両天秤にかけて保険給付の範囲を厳密に設定している場合が多いことからも判るように、日本のように子供からお年寄りまで同じ点数表で一律画一的な医療を提供しているというのはむしろ弊害のほうが多いのは当然ですし、近年ようやくそれはおかしいという声が上がってきているところですよね。
現状では医療給付の制限と言えば療養病床におけるそれのように施設の経営的な視点から現場スタッフの裁量と努力で細々と行われていますが、例えば超高齢者に化学療法が可能であるということとそれを行うべきであるということがイコールでないことは当然で、医療とは本来患者それぞれに最適な内容をオーダーメードで施していくべきものだという考え方からすれば、現状の皆保険制度はむしろそれに逆行するものとも言えそうです。
子供には感染症や先天性疾患、青壮年には悪性腫瘍や救命救急、高齢者には緩和ケアや介護といった具合で年代毎に給付範囲や内容に傾斜をつけることは国民の理解も得やすいでしょうし、「出来るだけのことをしてください」という家族の一言で寝たきり超高齢者をICUに収容してあとで症状詳記をまとめるのに苦労する、なんてことをいつまでも続けるのが良い医療というわけでもないでしょう。

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コメント

> 石蔵さんは循環器系の内科が専門だが、米国留学中に「バイアグラ」の研究をすることになり、帰国してから男性の更年期障害などについても診療するようになったところ、こちらの方が事実上の専門になってしまったと言う。
> そして、そういう患者の多くが実はうつ病なのだそうだ。石蔵さんは複数の大手企業で産業医のアドバイザーとしても働いている。そこで多くの男性患者と接するなかで「夫源病」という“新しい病気”を発見した。
> 精神が病んだ夫はもちろん病気だが、そういう夫を抱える妻は病気にかかりやすいことが分かったというのだ。30~40代の若い女性でも頭痛やめまい、動悸、息切れ、不眠といったような更年期の女性によく見られる症状が出る。その原因を探ると夫にあった。
> 石蔵さんは『妻の病気の9割は夫が作る』(マキノ出版、税抜き1300円)という本を出しているので興味がある方はそちらをお読みいただきたいが、石蔵さんの治療で夫が治ると妻の症状も改善していくという。

これだけでもう十分おなかいっぱいなんですが・・・・

投稿: take | 2013年2月18日 (月) 08時48分

混合診療に反対ってよりも混合診療に伴って出てきそうな問題を気にかけてる気がしますが。
窓口でのトラブルは増えるでしょうし未払いのときのダメージも保険支払い分がないだけ大きくなりますよね。
ところで患者さんから混合診療を要求されたときに断ることってできるんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2013年2月18日 (月) 09時09分

ナマポが不正利用しないように自由診療の分は自費請求でよろしいか?w

投稿: aaa | 2013年2月18日 (月) 10時10分

給付の対象が狭められる件ですが、歯科では既に多くの処置がまともにやろうとすると赤字になる様な点数です。なので諸外国並みに入れ歯等を私費にしてその分普通の治療の診療報酬を上げないとやっていけない、というのは結構前から言われています。医科も生かしてるだけの様な給付は押さえて足りない部分に金を回さないと廻らなくなると思います。

投稿: 吉田 | 2013年2月18日 (月) 10時26分

けっきょくは保険給付をどこまですべきかってことじゃないですか?
歯医者さんなら金歯じゃなくて白いきれいな歯がいいって人は自分でお金を払うくらいなら皆さん納得できる範囲でしょ。
美容整形が保険の対象じゃないみたいなものでなんでもかんでも保険で払うことはないでしょ。

投稿: てんてん | 2013年2月18日 (月) 10時42分

給付範囲の制限が行われるかどうかも一つの争点ですが、給付範囲を積極的に制限すべきだと言う視点もあることは認識すべきだと思います。
高齢者医療問題などもそうですが、小児から老人まで同じ一つの制度でやっていくというのはやはり保険診療をゆがめる根源だと思いますし、また終末期医療問題など倫理的な面での悪影響も顕在化しています。
一方で給付制限については例えば基礎疾患のない高血圧患者に対してどの降圧薬を使っても大差ないと学会も言っているのであれば、それじゃ高い薬は保険で補助してまで使わせる必要ないですね?と言われても反論が難しいはずです。
それが医師の裁量を侵害すると言うなら高い薬には高いだけの効能があるのだとはっきり示さなければならないはずなのに、学会等にもあまり危機感が見られないのは脇が甘いと思いますね。
いずれにしても混合診療導入と同時に保険診療も範囲を見直すなり点数全体の配分を大幅に見直すなりしないと、相変わらず単なる点数合わせだと言われてしまうでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2013年2月18日 (月) 10時56分

>美容整形が保険の対象じゃないみたいなものでなんでもかんでも保険で払うことはないでしょ。

これみて思ったんですが:
極端に体重オーバーしてて心臓に負担かかって死にそうな人いるじゃないですか?
ああいう人には脂肪吸引を救命のために行うこともあるんですか?
そういうのも保険じゃなくて美容整形の扱いになる?

投稿: amiga | 2013年2月18日 (月) 11時01分

>歯医者さんなら金歯じゃなくて白いきれいな歯がいいって人は自分でお金を払うくらいなら皆さん納得できる範囲でしょ。
歯科の話だと金歯も含めて被せる物、入れ歯全部保険適用外せって話です。今でも奥歯の白い歯、前歯のポーセレンは保険外ですんで(前歯はプラスチックなら保険可)。眼鏡とかコンタクトみたいな扱いです。そのぐらいしないと他の治療にまともな点数を付けられないんだとか。
そういった範囲の制限を行う場合には混合診療を取り入れていかないとホントの金持ちしかいい医療が受けられなくなると思います。範囲の制限が必須なんで、混合診療は不可避だと思うのです。

>基礎疾患のない高血圧患者に対してどの降圧薬を使っても大差ないと学会も言っているのであれば、
「基礎疾患のある」患者に対してこの降圧剤は可、っていうシステムはそれはそれで病名の付け方等々で厚労省の理不尽が加速する気がしますw

投稿: 吉田 | 2013年2月18日 (月) 15時02分

>amigaさん

脂肪吸引で保険が使えるのは乳房再建で脂肪注入を行う時くらいでしょう。
手術自体が身体の負担が大きい上にたいして量も取れませんからそういう目的には向きません。
病的な高度肥満の人には胃を縫い縮める縮小手術をすることはあります。

投稿: 藪 | 2013年2月18日 (月) 15時36分

無くしてから初めて理解しますよ、皆保険とフリーアクセスの有り難味を。

ただ一度無くしてしまうと、もう簡単には皆保険には戻らないけどね。

投稿: 風はば | 2013年2月18日 (月) 15時40分

皆保険制度ってみんなそろって500円の日替わり定食頼むって前提ではじめてなりたってたってこと。
5000円でディナー用意しろだとかカフェテリアがいいだとか言いだしたらもうまわらないの。
いったんまわらなくなったらあっという間に経営が行きづまっちゃうくらいカツカツの零細経営だし。
どうにかしたいんだったらいっそ更地にしてぜんぶやり直したほうがいいかもね。

投稿: 飛鳥了 | 2013年2月18日 (月) 21時28分

医療の自由度が広がれば病院間で競争が激化する、その結果どうなるか?
ばくぜんと競争が起これば値段は安くなりサービスは向上する、だからいいことだと考えている人が多いのだろう。
だが医療では需要が供給を上回っている以上、自由化すれば売値が上がっていくのが市場原理なのだが……

投稿: あかまる | 2013年2月19日 (火) 09時37分

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