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2013年1月28日 (月)

医師集団逃散で札幌市児童心療センターが頓挫

久しぶりに医療崩壊系の話題か?ということで、本日はこちらのニュースを紹介してみましょう。

札幌市の渡部副市長、退任へ(2013年1月26日読売新聞)

 札幌市の渡部正行副市長が退任することが26日、わかった。渡部副市長はすでに辞表を提出しており、上田文雄市長は近く受理して正式発表する見通し。渡部副市長は2011年7月就任で、4年の任期を半分以上残した異例の退任となる。

 渡部副市長は保健福祉分野を担当。発達障害のある子供の診療を行う市児童心療センターで昨年、常勤医が相次いで辞意を表明し、5人のうち4人が今年3月末で退職する事態となった。診療体制の維持が困難になるため、渡部副市長は北海道大医学部に医師派遣を求めたが、協議が難航。行政手腕を巡って市議会で批判が出ており、退任で責任を取るとみられる。

 渡部副市長は札幌医科大出身の精神科医で、元北海道職員。道心身障害者総合相談所長で退職して09年4月に札幌市に入り、保健福祉局医務監を務めた。

「肝いり」副市長、異例の退任…常勤医退職続々(2013年1月27日読売新聞)

 札幌市の渡部正行副市長(62)が辞表を提出していることが26日、わかった。

 上田文雄市長は近く辞表を受理する見通しだ。担当の保健福祉分野では、市児童心療センターの常勤医の大半が職場に対する不満を漏らして3月末で退職する見通しとなっており、事態打開の道筋を立てられないことから退任で責任を取るとみられる。2011年7月に副市長へ就任して以来、任期(4年)の半分以上を残した「異例の退任」となる。渡部氏の退任後、札幌市の副市長は当面、2人体制となる。

 渡部氏は札幌医科大出身の精神科医で元道職員。市関係者によると、上田市長が市長就任前の弁護士だった時代から親交を持ち、道を退職した渡部氏を上田市長は09年4月、市保健福祉局の医務監として招請、その後、副市長に抜てきした。「肝いり」の登用が挫折したことで、上田市長の任命責任が問われる可能性もある。

 同センターでは昨年、常勤医が勤務状況などに不満を述べて相次いで辞意を表明、5人中4人が3月末で退職する方向だ。4月以降の診療体制の維持が困難になるため、渡部氏は北海道大医学部に医師派遣を求めて交渉したが、現段階でも医師確保にめどがついておらず、市議会や市内部から渡部氏の行政手腕を問題視する声が出ていた。

この児童診療センター崩壊の経緯については札幌市の宮川潤市議が詳しく取り上げてくださっているので参照させていただきますが、簡単に言えばもともとは同市の市立病院に精神科専門の分院があったものを、昨2012年4月から成人と小児とに二分し前者は市立病院に統合、後者に関しては別施設とし道内唯一の児童精神科入院施設として誕生したのがこの市児童診療センターだと言うことです。
発達障害や自閉症など現代の子供達を蝕む様々な問題を扱う中核施設として新たに設立されたという形ですが、やはりこうした患児を抱える親御さんとしてはなかなかデリケートな問題でもあるだけに相応に重症者も多かったという大人の精神科患者と同じ施設で扱われることにも心理的抵抗はあったのかも知れず、医師の専門領域分けで考えてもこれ自体はそれほどおかしな政策というわけでもないように思いますね。
しかし162床の施設を二つに分け市立病院精神科が38床、児童診療センターに28床となれば形の上ではかなり減床にも見えますが、実際には老人など長期入院患者が多かったせいかセンター側では空床が非常に目立っていたということで、このためもあってか札幌市保健福祉局がここに児童福祉施設をも統合してしまおうとしたことが退職騒動の発端であったようです。
医師にすれば小児精神科の専門施設のつもりで来ていたものが児童福祉施設と一緒にされるという話が突然持ち上がった、当然身体的問題も相応に多くなるだろうこうした施設の面倒までも見ろと言われるのでは話が違うというものでしょうから辞めたくなるのも理解出来ますが、どうやらその計画をほぼ一人で推進したのが市保健福祉局医務監から副市長にスライド登板した渡部氏であったと言うことらしいですね。

2011年の市議会で市長が持ち出した渡部氏の副市長就任が特に問題もなく承認されていますが、記事にもあるとおり札幌医大出身の精神科医で北海道立心身障害者総合相談所長等を歴任、さらに前述の通り札幌市保健福祉局医務監を経て副市長に抜擢されたということですから、よく言えば専門家として元々こうした児童精神科や発達障害の領域では政策的にも一家言あった方ではあるのでしょう。
ただ同氏の副市長就任直後には札幌市で乳幼児検診の民間委託を検討するという話が持ち上がり、地元小児科医会や市民団体からの猛反発を受けて結局頓挫するという騒動があったようですが、この時にもトップダウンで突然話を持ち出した新任の副市長と現場との間で対立が激化したことが騒動の発端であったということで、どうも根回しをしたり地道に説得したりという仕事は苦手な方だったのかなという印象も受けますね。
今回の児童心療センターにしてもいきなり話を立ち上げて現場医師の逃散を招いた後で母校以外の他大学に頭を下げに行く羽目になるとは何ともちぐはぐな話ですが、やりたいことの是非はさておくとしてもやはり何度も似たような失敗を繰り返しているということになれば、残念ながら政策を実現するために求められる行政手腕という点ではいささか疑問符がつくと言わざるを得ないのでしょう。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

副市長が常勤医として働いたらいい

投稿: | 2013年1月28日 (月) 08時40分

ここは給料も安いと聞きました。それで仕事だけ増えるんじゃやってられないでしょう。
医師が減っても続けるそうですから過労にならなければいいんですが。

投稿: ぽん太 | 2013年1月28日 (月) 09時35分

追記ですが、やはり事務方が現場に口を出しすぎたことが主原因であったということです。
行政としてはセンターを設立して関連する諸問題をこちらに丸投げすれば終わりという気持ちだったのでしょうが、勝手に丸投げされる方はたまりませんからね。

札幌市児童心療センター 大量退職の背景
http://ishi-tenshoku.seesaa.net/article/301768978.html
 続いて、今年度末に退職予定の黒川新二児童精神科部長が問題の背景を説明した。センターの前身は市立札幌病院静療院で、今春、成人部門が切り離された。2014年春に発達医療センターと統合し、障害者関係など4施設も移転してきて複合施設となる予定だ。

 この過程で、複合施設のあり方について事務方が現場医師の意見を十分に聞かないなど様々な対立があったという。センター所長に現場の医師が就かず、事務方の医務監が兼務したことなど、運営をめぐる考え方の違いにも不満が募った。

 さらに、子どもの時に来院した患者が成人後も入院・通院している問題も抱えていた。黒川部長が8月、成人向けの診療所を開くため退職の意向を示したところ、若手医師3人も行政や黒川部長への不信感などから退職を決めたという。

投稿: 管理人nobu | 2013年1月28日 (月) 11時31分

>>若手医師3人も行政や黒川部長への不信感などから退職を決めたという。

部長が退職すると労働強化するのは明らかなので「逃げ遅れるな」といっせいに退職を決めたって
ことでしょうか。

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年1月28日 (月) 13時29分

これだけの騒ぎになっても待遇を改善した、現場の声を聞き入れたという話もないようだし残る意味もないのでは
むしろみんな辞めちゃうなかで一人だけあとに残る先生がどんな人なのか気になるなあ(゚ー゚)

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年1月28日 (月) 14時46分

児童精神科は精神科医なら誰でもやれる部門ではありません。
精神科医の働く場としてはきつい部門に属し、専門性も高いです。
今回のは給料云々ではなく管理人さまのコメントにもある児童福祉施設の統合が一番の原因ではないかと思います。

児童や思春期の精神医療に少しでも首を突っ込んだことがあるなら、その分野で日夜がんばっている先生をないがしろにするような対応はしないと思いますが・・・副市長にはそちらの経験がなかったのでしょうかね?

投稿: クマ | 2013年1月28日 (月) 16時31分

>ここに児童福祉施設をも統合してしまおうとしたことが退職騒動の発端であったようです。
追加情報にあった、発達医療センターのウェブサイトを見ると
「お座りが出来ない、上手に歩けないなど運動発達が遅いお子さん、運動が苦手なお子さん、手指の細かい動作が不得意なお子さん、筋肉の力が弱いお子さん、運動障がいのあるお子さん、言葉がなかなか出てこないお子さん、耳の聞こえが心配なお子さん、お友達と上手に遊べないお子さんなど発達に心配のある方はご相談ください。」だそうです。
札幌市児童福祉総合センター内にあって、(同センター内には他に児童相談所、児童発達支援センターが同居)、
医療機関としての名称は札幌市児童福祉総合センター診療所。診療科目は小児科、整形外科、耳鼻咽喉科(難聴外来)、眼科、歯科。
小児科は月〜金曜/午前・午後なので常勤医がいるのかもしれませんが、他の科はおそらく非常勤でしょう。
まさか統合後は現・児童心療センターの医師だけになる計画だったとも思えませんが、どのような診療体制が計画されていたかですね。
単に根回しが悪かっただけなのか、計画に無理があったのか。

投稿: JSJ | 2013年1月28日 (月) 17時51分

こんばんは

発達医療センターと,コドモックルとの統合は検討でき…………なかったのでしょうね.この2施設の統合なら,さほど困難はなかったでしょうからね.
でも設立者が札幌市と北海道ではね………

投稿: 耳鼻科医 | 2013年1月28日 (月) 18時51分

ワンマンの部長が周囲に要求されるがままに仕事を拡大する
→下々の医者が業務の選択と集中をするよう諌めるが、部長は聞かない
→成人部門と分離し、保健福祉局に移管して、老健以下の医療体制となる
→保健福祉局が成人の発達障害も診察するよう無茶な要求をする
→更に、部長が秘密裏に開業準備を進め25年春に退職することが発覚
→今まで耐えていた下々の医者が、激怒して一斉に退職を決める
→成人精神科の診療能力を持たない次席医師だけが取り残される(←今ココ)

実際の過失割合、部長医師:次席医師:市当局=8:1:1

投稿: 774 | 2013年1月28日 (月) 21時02分

耳鼻科医さまへ
その手の施設が病院の近くにあるとなんでもかんでも病院を頼ってくるようになります。その上、児童精神科の先生も人がいいので、なんでもかんでも受け入れてしまうので、仕事が際限なく増えます。で、いつか何らかの形で破綻します。

投稿: クマ | 2013年1月28日 (月) 21時30分

発達障害やら専門外まで小児精神科医にやらせるつもりだったの?
老健の顧問で老医に何でもやらせる(実は何もできない)のとおんなじ感覚?
ありえない

投稿: 地味医 | 2013年1月28日 (月) 21時50分

けっきょくいつもの通りで事情を聞いてみれば破綻して当然、うまくいかなくて当たり前ってことなんだよね
北大が引き受けるそうだけどこの状況で送り込まれる先生たちもイヤな感じだろうなあ

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年1月29日 (火) 15時38分

>この状況で送り込まれる先生たちもイヤな感じだろうなあ

イヤならやめればよろしいやめないって事はイヤじゃないって事だろ奴ら筋金入りのドMだからw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年1月29日 (火) 16時18分

精神科医って自分自身の精神はどれくらいタフなんだろ?
多少デプっても自分で治療できるから強そうにも思えるし

投稿: れんちゃん | 2013年1月29日 (火) 21時22分

北大も誰も送り込めないですよ。
急に異動させられる児童精神科医なんて存在しませんよ。
だから、このまま焼け野原確定です。

投稿: 774 | 2013年1月29日 (火) 21時29分

児童精神科医がドMだなんて本当のことを書いたらダメですよw

れんちゃんさまへ
精神科医はメンタルが豆腐レベルの人が結構多いです。私も他人のことは言えませんが。

投稿: クマ | 2013年1月30日 (水) 00時03分

クマ様

コドモックルには児童精神科を扱う先生もいる筈だし,心身障害児の療育もやっていたのでよいと思ったのですがね.
まぁ仕方ないですね.

投稿: 耳鼻科医 | 2013年1月30日 (水) 06時46分

そもそも平成24年度になって週2日しかレントゲンも取れず、血液検査も外注になって半日結果が出なくなり、物言えぬ自閉症者をたくさん抱えた病棟としては致命的な状況だったからね。医者としては怖くて勤めていられないですよ。
コドモックルの2名の児童精神科医は児童心療センターの若手医師たちとは出自も同じでとても仲良しなので、統合出来れば医師の体制としては最強ですが、病院自体が腐っているので誰も跡を継ぎませんでしたね。

投稿: 774 | 2013年2月22日 (金) 00時55分

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