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2013年1月22日 (火)

高齢者社会福祉 今や各国で課題に

本日のお題は表題の通りなのですが、まずは東アジア諸国の高齢者社会福祉の実態ということで最近見かけたこんな記事を紹介してみましょう。

老後資金なく…高齢でも働き続ける韓国(2013年1月14日中央日報)

  韓国の高齢者は労働市場に参加する比率が世界最高レベルで、職場から完全に引退する年齢も最も遅いことが分かった。年金など高齢者福祉システムが十分に整っていない中、子どもの教育費などのため老後生活資金を蓄えていないためと解釈される。

  経済協力開発機構(OECD)が13日に出した報告書「高齢化と雇用政策」によると、韓国高齢者(65-69歳)の2011年の雇用率(人口に対する就業者数)は41%で、OECD32カ国の平均(18.5%)の倍以上だった。この雇用率はアイスランド(46.7%)に次いで世界2番目で、日本(36.1%)はもちろん、米国(29.9%)、カナダ(22.6%)、英国(19.6%)、ドイツ(10.1%)など主要先進国を大きく上回る

  実質引退年齢も韓国は男性71.4歳、女性69.9歳で、メキシコ(男性71.5歳、女性70.1歳)とともに調査対象国のうち最上位圏だった。

  韓国はOECD加盟国のうち実質引退年齢が遅くなった唯一の国だ。統計比較が可能な27カ国のうち、高齢者の実質引退時期(男性基準)が40前の1971年より遅くなっているのは韓国(65歳→71歳)が唯一で、日本(72歳→69歳)など他国はすべて引退時期が早まっている。

  こうした現象は、退職年齢(平均53歳)が世界で最も早い韓国人が、生計を維持するために労働市場に残留するためと考えられる。しかし高齢者向けの雇用と教育・訓練プログラムが不足し、自営業に飛び込んで失敗する高齢者も多い。

  OECDは報告書で「韓国の場合、高齢に入る前の50歳代半ばで再就職のための体系的な教育・訓練プログラムを受けられるよう、政府が政策的努力をしなければならない」と勧告した。また「高齢者が産業現場で災害にあう比率が相対的に高く、高齢者の安全に政府と企業が関心を向ける必要がある」と伝えた。

生まれてすぐ申し込んでも間に合わない?北京の養老院は100年待ち―英紙(2013年1月20日レコードチャイナ)

2013年1月16日、英紙デイリー・テレグラフによると、高齢化が急速に進む中国では、養老施設の不足が深刻で、北京のある養老院では入居待ちの高齢者が100年後分まで埋まっている。18日付で環球時報が伝えた。

中国では高齢化が急速に進んでおり、15年には60歳以上の人口が2億2000万人に、今後40年以内に5億人に達し、その時の総人口約15億人の3分の1を占めると推測されている。

中国ではこれまで、年老いた親は成長した子供たちと一緒に暮らし、子供たちが親の老後の面倒をみてきた。しかし、1979年の一人っ子政策の導入によって出生率が大幅に低下し、高齢者だけでの生活を強いられるケースも急増している。

北京では現在約45万人の高齢者が一人暮らしをしている。しかし、北京には公立の養老院が215カ所、私立の養老院が186カ所があるのみで、高齢者100人につきベッド3床しかない。これに対し、北京市民政局は養老施設の大幅な拡張を表明し、15年までにベッド12万床を増床すると確約している。

上海の養老施設の状況も北京と同様に非常に逼迫しており、上海市政府は養老施設の拡張とケア人員の大幅な増員計画を打ち出している。上海のある私立養老院では、数年前まで60床のベッドをいかに埋めるかに苦労してきたが、2~3年前から状況が変化し始め、ここ数カ月間は問い合わせの電話が鳴りっぱなしだという。関係者は「昔は親を養老院に入れたりすれば近所の人から非難されたものだが、今は状況がまったく変わった。親の側も一人での生活を望むようにさえなっている」と話した。

一方、中国政府の養老政策は、高齢者の90%は家庭で、7%は公立の養老施設で、3%は私立の養老施設でというこれまでどおりの政策を継続する可能性が高いという。(翻訳・編集/HA)

年金支給開始がさらに遅れそうな日本では高齢者の働き場所をどう確保するかということに腐心しているくらいで、働き続けられるならうらやましいほどじゃないかという声も聞こえてきそうですが、老後の生き甲斐として手に職を生かすということとその日その日を食べていくために働かざるを得ないということでは全く事情が異なりますよね。
中国に至っては入居待ち100年とは何の冗談かという話ですが、彼の国ではもともと社会保障システムが未完成なところにもってきて例の一人っ子政策の影響で今後高齢者を支える若~壮年人口が著しく不足するという予測がされているほどで、特に何らかの事故や疾病で子供を失ってしまった老親にとって老後の生活に対する不安はひとかたならぬものがあるようです。
先日は中国で成人した子供に親孝行を義務化する法律が出来たと話題になっていましたが、これなども具体的内容には乏しく努力目標に近いとは言え違反した場合には訴追することもあるということですから、その背景には乏しい社会保障を親子関係強化によって何とか補おうとする行政の苦しい意図が込められていることは間違いなさそうですね。
このように最近はアジア各国でも高齢化進行に伴い老人への社会福祉が課題となってきているようで、一面ではこの道の先達である日本としても介護機器輸出など新たなビジネスチャンスにつながると見込んでいるようですけれども、その日本においてもまだまだ到底需要に対して充足している状況とは言えないというのがこちらのニュースからも判ります。

「たまゆら」火災 高桑被告に猶予付き判決 群馬(2013年1月19日産経新聞)

 ■「福祉に注力」姿勢考慮

 寛大な判決をいただき、ありがたい-。渋川市の老人施設「たまゆら」火災の18日の判決公判。元理事長、高桑五郎被告(88)は閉廷後の記者会見で犠牲者や遺族に改めて謝罪するとともに、執行猶予付き判決に対する感謝の言葉を口にした。判決では、多くの犠牲者を出しながらも、私財をなげうって福祉事業に力を入れていた被告の姿勢も考慮した。(伊藤徳裕)

 前橋地裁の半田靖史裁判長は18日の判決公判で高桑被告に禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年6月)、元施設長、久保トミ子被告(76)に無罪(求刑禁錮1年6月)を言い渡した。
 「社会的弱者を救いたいと福祉事業に力を注いだことには、敬意を表さなければいけない。しかし、火災から入所者を守るのは施設運営の根幹。今回の教訓を忘れずに」
 半田裁判長から公判の最後にこう諭されると、グレーのスーツに茶色いネクタイ姿の高桑被告は深々と頭を下げた。
 公判後、記者会見した高桑被告は「身に余る寛大な判決をいただき、ありがたく思っている。亡くなられた方のご遺族に対し深くおわびしたい」と消え入るような声で語った。担当した猿谷直樹弁護士は「予見可能性など、こちらの主張が受け入れられなかったのは残念だが、火災実験などを実施して緻密な認定をしていただいた」と一定の評価をした。

 公判で裁判長は、火災報知機の設置▽避難訓練の実施▽必要な宿直職員の配置-などの防火管理上の注意義務を怠り、「漫然と施設を運営していた」と厳しく断罪した。
 一方で、生活困窮者ら社会的弱者を救いたいと私財を注いでたまゆらを開設し、低料金で認知症患者らを受け入れていたことに言及。「十分な資金的余裕がありながら防火管理を怠ったわけではなく、事実関係もおおむね認めており、慰霊行事も行っている」と理解を示した。
 高桑被告は今後も福祉事業に関わっていくことを明らかにし、「低所得者を受け入れる施設は満たされておらず、行政の光を当てていただきたい」と福祉事業への思いを語った。
 高桑被告は平成24年3月に支援者の協力で慰霊塔を建立しており、同被告は「月命日には余生をささげておわびを続けていきたい」とうなだれた。
(略)
 多くの傍聴者で埋まった法廷だったが、死亡した入所者は身寄りのない高齢者が多く、地裁によると、この日も遺族からの傍聴希望はなかったという。

行き場のない低所得高齢者 受け皿いまだ整わず(2013年1月19日東京新聞)

 十人が火災で死亡した群馬県渋川市の老人施設「たまゆら」を運営していたNPO法人(解散)の元理事長に有罪を言い渡した十八日の前橋地裁判決。火災から三年十カ月となる今でも、身寄りのない低所得の高齢者を受け入れる認可施設は足りないままだ。たまゆらのような無届け施設が受け皿を果たしている事情は変わっていない。

 NPO法人「ふるさとの会」(東京都台東区)はたまゆら火災で行き場を失った元入所者の三人を受け入れた。林栄さん(83)は会が運営する無届け施設「自立援助ホームふるさと晃(あきら)荘」で暮らす。
 軽い認知症がある。昨夏は二度、かつて暮らした東京・錦糸町で帰り道が分からなくなった。二十代で結婚したが、長女の誕生後に離婚。二十年の独り暮らしで体調を壊し、生活保護を受けるようになった。たまゆらでは「みんなとカラオケをするのが楽しかった」とほほ笑む。
 たまゆらで亡くなった十人のうち六人は墨田区の生活保護を受けていた。特別養護老人ホームに空きがなく、有料老人ホームには生活保護費では入れない。林さんと六人も墨田区のあっせんでたまゆらに入っていた。

 ふるさとの会は二〇〇五年から、低所得の高齢者が暮らせる受け皿をつくろうと、改修済み古アパートを借り上げ、空き家をなくしたい大家と高齢者をつないできた
 入居者は六畳間を二つに仕切った個室に暮らし、必要なら訪問介護など介護保険のサービスを受けられる。さらに薬の管理や外出の付き添いなど身の回りの世話をする職員が常駐する。介護保険や生活保護に含まれない付加的な支援だ。
 しかし、入居者が生活保護費だけで暮らせるよう運営費は切り詰めざるを得ない。病気や障害が重くなると、人手に不安がある。滝脇憲常務理事は「行政には空き家などの資源を生かし生活支援する制度設計をしてほしい」と訴える。
 厚生労働省によると全国の有料老人ホームのうち二百五十九施設(一一年十月現在)が無届け。国は低所得者向けの軽費老人ホームを増やそうと設置基準を緩和し、国と都は補助制度も設けた。しかし、都内で開設されたのは十五施設二百五十一人分(一月現在)で、目標の二百四十施設二千四百人分には遠く及ばない。都の担当者は「事業が始まって間もない。失敗ではない」と話す。

判決では施設の構造、入所者の状態などから考えると、仮に有料老人ホーム並みの防火管理体制が敷かれていたとしても犠牲者は避けられなかったという判断を下したようですが、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするしかありませんね。
年金等である程度常識的な費用負担が可能であれば入所できる施設は相応にあるとは言え入所待ちの長い行列が出来ている、一方で余分にお金を出せば入所できる施設には費用面で厳しいとなると、特に低所得かつ身寄りのない高齢者においてはどうしてもこの種の脱法的な施設の需要が出てくるのは仕方のないところです。
最近ではマスコミですら高齢者医療の優遇はいい加減にしておけと言う論調が主導的ですし、実際に高齢者医療政策の見直しも始まっていますけれども、高齢者に対して積極的な医療はほどほどにするにしても同時に介護はきちんと整えておかなければ生活自体が立ちゆきませんし、介護の充実が回り回って結局は医療に対する負担軽減にもつながるというものですよね。
社会保障の全般的な見直しが進んでいますけれども、無論過剰な部分や相対的に優遇されすぎて不要不急の需要を掘り起こしている部分は見直す必要があるとして、その一方で明らかに不足がちなところにはきちんとコストとマンパワーを投じていかなければ後々かえって高く付くということにもなりかねません。

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コメント

麻生さん発言撤回しちゃいましたか。
言ってることは当たり前のことだったのにまたマスコミに叩かれて老人の濃厚医療が続いちゃうんだろうな。

投稿: こてっちゃん | 2013年1月22日 (火) 08時41分

「チューブの人間だって、私は遺書を書いてそういう必要はない、さっさと死ぬからと手渡しているが、
そういうことができないと死にませんもんね、なかなか」
「死にたいときに、死なせてもらわないと困っちゃうんですね、ああいうのは」

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013012100359

マスコミ曰く麻生が老人はさっさと氏ねと暴言吐いたことになってるww
ちゃんと元発言あたったら全然ニュアンス違うんだけどな

投稿: | 2013年1月22日 (火) 09時08分

無届け施設でも姥捨て山みたいなものばかりでなくまじめなものもあるんですね。
問題意識を持っている人たちだけが疲れ果てるまで頑張って後の責任だけ押しつけられるんじゃやってられないでしょう。
これは行政の方でこそ当事者としての問題意識をもたないといけない事故ですよ。

投稿: ぽん太 | 2013年1月22日 (火) 10時55分

そろそろやるかと思っていたらやっぱりやりましたね(苦笑)。>麻生氏
あの人の場合実際の映像を見るとさして違和感ないんですが、文字起こししちゃうとそれはまずいって発言が多すぎます。
しかしいいところのボンのはずなのにあれはどうなんだろう?

投稿: 管理人nobu | 2013年1月22日 (火) 12時34分

麻生失言に賛否 終末期医療への言及メディアは否定的だけど…

麻生太郎副総理兼財務相(72)が、終末期医療について語った発言が批判されている。
自身の個人的生き方として「さっさと死ねるようにしてもらわないと」などと発言したのだ。

首相時代に失言を連発させたため、メディアの「麻生攻撃」が始まりそうだが、
今回の発言には、肯定的な意見も聞かれる。

注目発言が飛び出したのは、21日午前の社会保障制度改革国民会議。
麻生氏は「残存生命期間が何カ月かと、それにかける金が月に一千何百万円だという現実を、
厚労省も一番よく知っているはずだ」とし、財政負担が重い現状を指摘。

そのうえで、「私は少なくとも遺書を書いて、そういうことをしてもらう必要はない、
さっさと死ぬからと書いて渡しているが、そういうことができないと死ねません」「いいかげん死にたいと思っても
『生きられますから』なんて生かされたんじゃ、かなわない。しかも政府の金で(高額医療を)やってもらっていると思うと寝覚めが悪い。
さっさと死ねるようにしてもらわないと」と述べたのだ。

メディアは即反応し、同日午後から「不適当発言」と報道。
民主党の細野豪志幹事長は「とにかく生きようと頑張っている人の意思は尊重すべきだ」などと批判した。

麻生氏も同日午後、「公の場で発言したことは、適当でない面もあった。
当該部分は撤回する」とコメントを発表。記者団に「個人的なことを言った」と釈明した。

発言の場所やタイミングに問題があるとはいえ、終末期医療については、さまざまな意見があるのは事実だ。

ニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ!」では22日朝、女性リスナーの「麻生氏はよく言ってくれた。
助かりもしないのに生かされて、家族に迷惑をかけたくない。70歳を超えた方の言葉は重い」といった意見が披露されていた。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130122/plt1301221214004-n1.htm

投稿: | 2013年1月22日 (火) 14時02分

>しかしいいところのボンのはずなのにあれはどうなんだろう?

いいところのボンだが宇宙語連発のルーピーという例もあるw

投稿: aaa | 2013年1月22日 (火) 14時43分

「株式会社麻生」で地元福岡県で大病院を含めた医療法人(弟氏が理事長)の経営にも関わっているわけですから、この発言は妄言ではなく確信的な発言だと思います。賛否が渦巻くあろう事も承知の上でしょう。
言い方が適切かはともかくとして今後の超高齢社会に向けての重要な提言だと思います。
こういう意見が出たらとすぐにマスゴミが一斉に正論をふりかざして過剰反応するのはいかがなものか?
先日NHKの番組で全く身寄りのない生保の方が延命治療をとことんやってほしい旨の発言がありましたが、ナンセンス極まりない。国が破産しても終末期濃厚医療をエンドレスに際限なくなっていいという事でしょうか?
高齢者の終末期濃厚医療は保険適応外・全顎自己負担にすべきでしょうね。
この件で何も知らない無責任な部外者(マスゴミ)が正論を振りかざせば日本の医療は早晩破綻します。

投稿: | 2013年1月22日 (火) 17時32分

マスゴミの言葉狩りにはもううんざり
この発言で騒いだ会社は責任とってもらわないとね

投稿: てんてん | 2013年1月22日 (火) 19時19分

共同通信は、麻生財務相が同会議で高齢者などの終末期医療に関し「政府の金で(高額医療を)やってもらっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらわないと」などと述べたと伝えた。
財務相は同記事について会見し、「主語が抜けている。議事録でも『私は少なくとも』と主語を入れている」と述べていた。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MGYRIT6JTSE801.html

投稿: | 2013年1月22日 (火) 19時51分

予想通りの捏造だったと。こりないね~。

投稿: がんちゃん | 2013年1月23日 (水) 09時03分

麻生太郎副総理が高齢者の終末医療に関して「さっさと死ねるようにしてもらうとか…」と発言したことをめぐり、野党やメディアは批判的な半面、ネット上では擁護論が目立っている。「マスコミの抜き出し方に批判殺到」と題した「まとめ」も登場し、700回以上ツイートされている。
http://www.j-cast.com/2013/01/22162272.html?p=all

マスゴミによる言論の自由圧殺は失敗した模様www

投稿: カスゴミワロスwww | 2013年1月23日 (水) 10時00分

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