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2013年1月23日 (水)

開業医冷遇時代に期待される役割

本日まずは先日の日経メディカルでこんな記事が出ていましたことをざっと紹介させていただきましょう。

外来中心の開業形態では窮地に?患者減や標榜科の制限で、診療所の経営悪化は必至(2013年1月21日日経メディカル)

 診療所数は増加を続け、1軒当たりの外来患者数は減るばかり。この傾向は今後も強まり、経営不振に陥る診療所はさらに増えるとみられる。新専門医制度がこれに追い打ちをかけそうだ。
(略)
自由標榜ができなくなる?
 医療コンサルタントとして開業支援を手掛ける匠の社長の原田裕士氏は、「20年前は開業1年後にはどの診療所も1日50~60人の患者を確保できていた。しかし今は、開業して3年たっても30~40人にしかならない」と語る。

 国内の有床診療所と無床診療所を合わせた一般診療所数は増加を続け(図6)、12年4月末には10万10施設に達し、初めて10万施設を超えた。さらに、02年に長期の投薬が解禁され、05年度は16.7日だった内服薬1種類当たりの投薬日数が11年度には20.5日となり、患者の通院回数は減っている
(略)
 加えて、長引く不況により、「かぜ程度であれば市販薬で済ませたり、処方された医薬品の服用回数を減らして長期間持たせる患者も珍しくなくなった」(原田氏)。その結果、診療所の外来患者数は減るばかりだ(図6)。これに追い打ちをかけるように、近年の診療報酬改定では急性期医療の立て直しに重点が置かれ、外来中心の診療所には厳しい改定が続いている。

 さらに今後は、現在のように診療科を自由に標榜できなくなる可能性がある。専門医の質を高めることを目的に、現在検討されている新専門医制度では、専門領域を2階建てとし(図7)、学会から独立した中立的な第三者機関が資格を認定することが決まっている。それに伴い、標榜する診療科を専門医資格と連動させる案が浮上している。
(略)
 既に専門医資格を取得している医師に対しては、移行措置を設けるなど配慮がされる見通し。また、専門医資格がなくとも、新たな研修を受けることで、患者が確保しやすい総合診療科(仮称)の専門医資格も取得できることになりそうだ。ただ、専門医資格の有無によって外来患者の数が左右されるケースも考えられ、患者獲得の面で苦戦を強いられる医師も出てきそうだ。

開業医は在宅医療に活路
 外来中心の従来型開業が立ち行かなくなっている中、診療所はどうすればいいのだろうか。原田氏は「立地や職員の採用形態、資金計画について慎重に検討した上で開業することはもちろんだが、在宅医療にも目を向けるべきだ」と指南する。在宅医療は、最近の診療報酬改定で手厚く評価され、平均在院日数を減らしたい病院からの患者紹介も見込める。超高齢社会で死亡者数が増加の一途をたどる中、看取りを担う役目も期待されている。
(略)
 開業すれば悠々自適な生活が保証された時代は今は昔。在宅医療へ乗り出したり、専門医資格を取得するなどしなければ、生き残りはますます難しくなる。

まあしかし、厚労省としては医師は診療効率の良い大病院に集約化したいと考えているのが見え見えですから、これはこれで望んでいる通りということでほくそ笑んでいることでしょうし、仮にどこからか開業医の利益確保に配慮した反対意見が出たとしても今さら政策的誘導の流れは引き戻せないのではないでしょうか。
一般論としても勤務医よりも開業医の方がQOMLは高いとされているのですから、それだったら収入面では逆にしておかないとおかしいという考え方はさほど不自然なものではないし、顧客でありスポンサーでもある国民の感情としても365日24時間奴隷のように滅私奉公している基幹病院勤務医と、盆暮れ正月は長期休暇で悠々セレブ生活をエンジョイしている金満開業医のどちらにお金を出したいかということですよね。
要するに今までのように何らかの良く判らない物質的、あるいは精神的束縛から自由になり開業しさえすれば楽してウハウハの生活が送れるという時代ではないということですが、診療報酬上も専門医・標榜科といった制度上も、そして顧客の絶対数でも今後あまり目立った改善点が見込めそうにない開業医としてどこで飯の種を探していけばよいのかと悩んでしまいますよね。
もちろん開業であっても高度な専門性をアピールしたり自由診療主体にしてみたりと様々な道は考えられるでしょうが、社会的にも求められ医療資源配分最適化の面でも求められている重要な仕事がこれからの開業医にはあるだろうと言うことです。

緩和ケア促進で自宅死亡率1.9倍に-厚労省戦略研究、多職種連携がカギ(2013年1月21日CBニュース)

 がん患者への緩和ケアを推進する取り組みで、地域の自宅死亡率が1.9倍にー。多職種連携の促進など地域の資源を最大限に利用するという方針で、2008年から5年間実施された4地域での緩和ケア研究プロジェクトを通じ、自宅死亡率や「望んだ場所で最期を迎えられた」人の割合が有意に上昇し、医師の緩和ケアへの困難感が大幅に減ったことが、20日に東京都内で開かれた公開シンポジウムで報告された。この研究は厚生労働省の「第3次対がん総合戦略研究事業」の一環で、「緩和ケアプログラムによる地域介入研究(OPTIM研究)」(研究代表者=江口研二・帝京大医学部教授)として行われた。要因の分析では、多職種の「顔の見える」関係により、専門家へのアクセスを構築したことが、緩和ケア普及のカギになったと結論付けられた。

■4地域で取り組み、世界最大規模の研究

 取り組んだ地域と、拠点となった病院・団体は、山形県鶴岡市・三川町(鶴岡市立荘内病院・鶴岡地区医師会)、千葉県柏市・我孫子市・流山市(国立がんセンター東病院)、長崎市(長崎市医師会)、浜松市(聖隷三方原病院)。
 これまで十分な緩和ケア体制がなかった所では新たに築き、既に体制がある地域では総合病院やがん専門病院を中心に、研究班の作成したマニュアルなどを取り入れて体制を強化し、介入前と介入後を比較。地域緩和ケアプログラムを行うことによる成果と、それが何によってもたらされたかを分析した。医師だけでも計355人が関連の多職種カンファレンスに参加するなど、大規模なプロジェクトで、分析をまとめた聖隷三方原病院緩和支持治療科部長の森田達也氏によると、現時点で世界でも最大規模の研究だという。

 地域で強化されたのは、▽多職種カンファレンスなどの地域緩和ケアコーディネーション・連携の促進▽マニュアルの配布やセミナーによる緩和ケア技術・知識の向上▽がん患者・家族・住民への情報提供▽緩和ケア専門家による診療・ケアの提供-。研究班が介入の手順書や緩和ケアのマニュアル、患者向けパンフレット、評価ツールなどを作成し、4地域で用いた。

 介入前と介入後を比較するために用いられた主要評価指標は、▽自宅死亡率▽専門緩和ケアサービスの利用数▽通院中のがん患者による苦痛緩和の質評価▽遺族による終末期がん患者の苦痛緩和の質評価-の4つで、介入後の患者・遺族調査は計1950人が対象となった。このほか、医師や看護師の知識、困難感なども、介入前と後に聞いた。

 がん患者の自宅死亡率は、4地域で介入前(07年)は6.8%だったのが、介入後(10年)は10.5%に大幅に増加。特に浜松地域では7.0%から13.0%へと、1.9倍になった。この間、全国では6.7%から7.7%へと小幅な上昇にとどまった。自宅での看取りが増えたものの、介護負担を聞いた調査では負担の有意な増加は見られなかった
 患者が望んだ場所で最期を迎えられたかどうかを遺族に聞いた調査では、「とてもそう思う」「そう思う」の合計が、介入前の32%から41%に増えた。特に患者が自宅で亡くなった場合は、「全くそう思わない」「そう思わない」「あまりそう思わない」の割合が、10.4%から1.9%へと大幅に減った

■「ついで」に相談できる関係がカギ

 顔の見える関係ができたことで、何かの「ついで」に緩和ケア患者について相談できるようになった-。緩和ケアにより自宅での看取りが増えた要因は、多職種の緩やかなネットワークだった。
 研究班は、それぞれの地域で中核となった計101人にインタビューを行い、結果に結び付いた要因を分析。退院前カンファレンスなど、多職種が会う機会が増えたことが、他の専門職への相談事案ができてから実際の相談までの時間を短縮したり、相手の事情を知ることで調整をより適切にできるようになったとした。4地域の地域緩和ケアチームへの患者の紹介経路を分析したところ、8割が電話やメール、カルテの共有、訪問などの「ついで」にされた相談であり、正式な依頼は2割だったという。
 森田氏は、地域緩和ケアの基盤整備のためには、「専門家への緩いネットワークによるアクセスを構築する」ことなどにより、既存の医療機関や人材、地域団体などを最大限活用するよう提言。専門知識のセミナーでは地域の拠点病院が主導し、ネットワーク構築には医師会など、地域から働き掛けることが好ましいと話した。

■診療所の医師に院内緩和ケアカンファレンス開放、意識に変化

 シンポジウム後半は、4地域の担当者がディスカッションし、取り組みや工夫について意見交換した。長崎市立市民病院地域連携室・前看護師長の小川富美子氏は、診療所の医師も参加する緩和ケアカンファレンスを毎週病院で実施し、診療所の医師が参加することで、「こんな状況でも帰れるのかと、勤務医の意識が変化した」と紹介。前鶴岡地区医師会長の中目千之氏は、退院前カンファレンスを徹底させるため、最初は会員の医師に電話して頼んだことを振り返った。鶴岡市立荘内病院地域医療連携室の室長補佐、叶野明美氏は、医師が医師役、看護師が看護師役をする庄内弁の寸劇をつくり、緩和ケアを市民に広めた取り組みで、「麻薬の正しい知識が得られたという声があった」と話した。
 浜松がんサポートセンターの野末よし子氏は、多職種が集まる会議は年間計画を立て、それぞれの職種の人が時間を確保しやすいように努めたことを紹介。柏市の平和台病院副院長・在宅センター長の山本文司氏は、「(研究班が作成した)『ステップ緩和ケア』というマニュアルを実践することで、スキルアップができた」と振り返った。【大島迪子】

かねて病診連携ということを考えていく上でこの終末期看取りを誰が担当すべきかという問題は決して小さなものではなかったはずですが、そもそも急性期の基幹病院が終末期の看取りまで対応するのは明らかに医療資源の無駄遣いであり、その結果本当に急性期施設でしか扱えない重大疾患の患者に手が回らなくなっているという悲しむべき現実があるというのが議論の大前提でしょう。
無論日本では昔から主治医制が敷かれているせいか、何も出来ることがなくなった終末期だからとホスピスにでも紹介しようものなら「今になって見捨てるのですか!」と泣きつかれる場合も多いでしょうし、患者を見送る側である家族からすれば「ここらで一番の病院で最後まで診てもらった」と親族や隣近所に胸を張りやすいのかも知れませんが、それは急性期医療を担う基幹病院本来の仕事ではないということです。
医師の側にも問題は少なからずあって、例えば昨今では公立病院であってもやれ平均在院日数短縮だ、病床稼働率改善だとやたら事務方からうるさく言われますけれども、取りあえずさしてすることもない末期の看取り患者で病床を埋めておけば面倒な新患も物理的に受け入れられないのですから、対応に追われて忙しくしないで済むというものですよね。
ただそうした周囲の事情によって患者本人が本当に幸せな最後を迎えられているのかということも問題で、結局のところ急性期医療とは「何らかの医学的な成果を得るために何かを我慢してもらうもの」という性質がある以上、ただひたすら安楽であることを追求する終末期医療とは全く性質を異にするものであり、スタッフもまたそうした対応においては経験が少なく高い質が期待出来ないということです。

かねてから患者本人に希望を聞けば多くの方々が住み慣れた自宅の畳の上で死にたいという希望があった、一方で現実的には家族の負担や往診してくれる医師がいないなどという理由でそれは無理だろうと諦観し病院で死を迎えていたという現実があったわけですが、逆に言えばそれだけ深刻な需要は存在していたということでもありますよね。
国もこうした事態を想定してかすでに患者の求めに応じて往診に出かけた際の往診料を細かく決めていますけれども、若い人が身体を壊したが体力も尽きて病院に行けない、仕方がないから往診を頼んだというケースと異なってこちらは持続的な需要が期待出来、なおかつ金惜しみもあまりしないだろう上顧客であるとも考えられますから、捨て置くにはもったいない潜在需要であるとは言えそうです。
先日は麻生副総理が過剰な延命治療も希望せず死にたいと思っているものが素直に死ねないのも困りものだといった身も蓋もなさ過ぎる発言をしていましたが、どうせ逝くなら安楽に苦しむことなく逝きたいというのもこれまた人情であって、金もなく病院にかかる事自体を忌避しがちな今時の若い者を一生懸命呼び込もうとするよりはこちらの方がよほど有望な市場ではないかと言うことですね。
無論医師の側としては指示を出しさえすれば終わることであっても、その陰には訪問看護・介護など多職種に渡る緊密な連携が重要なことは言うまでもないことで、くれぐれも目端の利く開業医だけがおいしい思いをして終わるということのないよう、役割分担や報酬体系などにもさらなる工夫が必要になるでしょう。

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コメント

在宅でお看取り方針って決めていても、いざ状態が悪くなるといわゆる「遠くの親戚」が騒ぎ出して
結局、病院に救急搬送->フルコース。で、入院の連絡を開業医に連絡したら、「no CPRになにしとるんじゃー」って
怒鳴り込まれましたよ、しかも院長宛に。で、院長からネチネチいやみをいわれて最悪ですな。

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年1月23日 (水) 09時29分

>盆暮れ正月は長期休暇で悠々セレブ生活をエンジョイしている金満開業医

…ウチの近所には見当たりませんが?(困惑)
*金満開業医はいないではないですが長期休暇どころかフルタイムで働いてて、だからこそ儲かってるって感じ。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年1月23日 (水) 09時44分

在宅をよくしてくれる先生はほんとによくしてくれて患者からも感謝されるし助かるんですが駄目な先生はもう…
とにかく先生一人一人の出来不出来の差が激しすぎるから相手を見て紹介していくしかないです。
でも出来る先生だからってなんでも紹介してたら過労でつぶれちゃうんじゃないかって不安なんですよね。
日常的にカンファレンスで顔を合わせるようになったらそういった空気は読みやすくていいでしょうね。

投稿: ぽん太 | 2013年1月23日 (水) 09時45分

金満なのかどうかは存じ上げぬがナマポ相手に儲けておられる先生は当所にもおられますな
医師会や政治家にも金をばら撒いているらしいがまともに相手にはされておらぬそうな
ときおりこちらにも紹介してくるが書状を拝見しても診断治療とも独創的すぎて対処に困るのだが
ああいう先生もあれはあれで地域の必要悪というものですかな

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年1月23日 (水) 11時04分

歯科の訪問診療だと1日に12人(相当無理な数字)廻らないと黒字にならない低点数だったり、施設等に行って1回2人以上診ると2人目の点数が大きく減るとか、相当無茶な話を聞きます。医師の訪問診療は何かあったときの責任の所在等もっと色々な問題があると思いますが、どうするんでしょうね。

投稿: 吉田 | 2013年1月23日 (水) 11時08分

結局は儲かるだけのコストを投じればある程度自然と従事者は増えていくでしょうし、歯科や眼科のように露骨に新規参入を掣肘しようという診療報酬設定もあるわけです。
ただ今現在この領域で直ちに報酬引き上げを検討するという話もあまり進んでいないようですから、どこまで厚労省と政治家が危機感を持つかですね。
今回の麻生氏の発言も一つのきっかけにしてこの領域の議論が深まればいいと思うのですが、マスコミは相変わらず失言だ、暴言だとバッシングすることしか頭にないようで困ったものです。

投稿: 管理人nobu | 2013年1月23日 (水) 11時53分

患者の年齢で自己負担に差をつければよいのでは?
高齢者には積極医療は高く、在宅やBSTは安くする
自己負担は安くても保険負担分は高くすればいいはず

投稿: akira | 2013年1月23日 (水) 12時24分

開業医の場合は定年も引退もなくエンドレスですから、80過ぎて歩くのがおぼつかない医師でも診療を続けているわけです。そしてそういう医師に在宅をやれと言っても無理な話で。
今後は現役の開業医の高齢化が問題になるでしょう。今後も新規開業が激減すれば、あと何年かすれば、地域によっては実質機能してる開業医はがいなくなるという事態も出てくるはずです。

投稿: 逃散前科者 | 2013年1月23日 (水) 16時58分

今後一層の高齢化が進むのにと思ってしまいます。
今のうちから対策をとっていかないとマズイと思います。

投稿: starfield | 2013年1月23日 (水) 19時25分

開業医が増えていくとどこかで過当競争が起こるでしょうし、恐らくほぼ同時期には高齢開業医の引退時期にも重なってくると思います。
そもそも外科系専門医が手術件数等をその要件にするようになっていけば、外科系の開業医は一斉に看板を下ろさなければならなくなるかも知れませんし。
最終的に開業医が過剰なのか不足なのかはその後でなければ判断できませんが、医師とは言えある程度の年齢になれば引退できるというのは労働環境上は望ましいことだと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2013年1月24日 (木) 11時22分

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